応援団の練習 その弐
「じゃあ、書いてきた?」
「うん!」「うん」「ああ!」
俺の言葉に、それぞれがさまざまに返事をする。
今回は旗を作る。
それで、各自家で旗のデザインを書いてきたのだ。
その後、投票で決めることになった。
「はい、じゃあまず、如月さん」
「はい!」
如月さんは、自分の自由帳を広げた。
そこに書かれていたのは……なんだこれ?キャラクターか?ミニキャラ?
「これ、何?」
「えーと、私たち」
如月さんに言われ、俺は確かにそうだが……と思う。
そこに書かれていたのは、黒髪ロングの女の子。
二つ結びのカチューシャをつけている女の子。
俺らしき前髪を分けている男の子。
翔らしきスポーティーな男の子。
これ、俺たち四人だわ。
「どうかな?」
「えっと。うーん」
これ、いくらなんでもまずいんじゃ……?
これに対するファンの攻撃は、かなりのものになると思うのですが……
「ちょっと、俺と翔が殺されるかもしれないから、ごめんね?」
「え?う、うん……」
如月さんは、俺の言葉にちょっぴり不思議そうな顔をしてから、しょんぼりと肩を落としてしまった。
ごめん。如月さん。
「次、翔は?」
「俺はな、これ!」
そう言って翔が自由帳を広げた。
そこに書かれていたのは、ううん?何も、書かれてない?
「翔?これって」
「ごめん、俺何も思いつかなくって。書けなかったんだ」
てん、てん、てん。
翔、何も思いつかなかったって!?
ちょっとした沈黙を打ち破るように枝豆さんが口を開いた。
「もう、しょうがないなあ。じゃあ次、豆のでいい?」
「あ、うん」
「豆はねえ、これ!」
枝豆さんが広げた自由帳には、枝豆のキャラクターみたいなのが書いてあって、そのこが「頑張れ!必勝!だっぴ♪」と言っている。
………なんだこれは!?!?!?
「わあ〜!かわいい!湖羽、かわいいよ!」
「本当!?だよね!二人とも、どう?」
わちゃわちゃ盛り上がっている二人。
なんか、ふざけてないか?この旗。
「と、その前に、俺の旗いいか?」
「え?うんもちろん!みたい!」
一番食いつきが早かったのは、如月さんだ。
枝豆さんは、「豆のはどうなの〜?」とちょっぴり不機嫌そうな顔をした。
「これ、なんだけど」
ちょっと恥ずかしいけど、自由帳を広げた。
俺が考えたデザインは、燃えるような炎のところに、必勝と言う文字が入っているデザインだ。
「おお!いいなこれ!」
「いいと思う!もうちょっと可愛さを足せばカンペキ!」
「うん、豆も花音に賛成」
三人とも、そこそこ高評価だ。
「ありがとう!じゃあ、可愛さって言うのは?」
「えっとねー、ほら、ここにこうして」
如月さんは、俺が書いた旗のデザインにサラサラっと鉛筆で何かを書き足していく。
「かわいー!これなら豆もいいよ!」
如月さんが書き足したのは、俺の旗の両端にくまやうさぎ、さっきの枝豆などが飛び出して旗を持っている、と言うところだ。
「じゃあ、旗のデザインはこれでいいか?」
三人はこちらをみて頷いた。
「あ、ちょっと待ってて!」
そう言って俺は教室を飛び出した。
職員室にたどり着く。
コンコン。
「失礼します。神宮玲です。コピーしていただきたいのですが、これを4枚」
「はい!どれ?」
出てきたのは山田先生だった。
俺はデザインの紙を先生に手渡した。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
山田先生は職員室を離れ、少し経つと戻ってきた。
その手には俺の元々の紙と、4枚のコピーした紙が握られていた。
「はい!どうぞ」
「ありはとうございます。失礼しました」
俺は先生から紙を受け取ると、また教室に戻った。
「あ、おかえり神宮くん!どうしたの?突然教室出ていくからさ」
「ごめん、これをコピーしてもらってた」
三人にコピーした紙を渡した。
「今度はこれに色を塗ってきてくれ」
「了解!」
「じゃあ、これにて解散!」
「「「「お疲れ様でした!」」」」
四人の声がぴったり重なり、俺たちはつい笑ってしまった。
そしてその後別れた。
如月さんはコピーした紙を大事そうに抱えていた。