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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
零章 ルティーア編
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上げ潮

 都市ガレテは強く豊かな都市を中心とした支配と統治を行う、いわゆる都市国家であり、ガレテの周辺には約十一の都市国家がある。


 この都市国家らは同じ系統の守護神を奉っているため、基本的には仲は良く都市連合と言える程に緻密で密接な連携力を有している。


 ラテマアの町は一応ガレテの勢力圏とされているが、距離が離れすぎているため、都市程巨大ではない町が独立しているような状態である。


 そして、都市ガレテは他の都市にラテマアの町の崩壊と深淵の怪物の情報を周知した。


 深淵の怪物の情報で各都市で厄介だと唸ったのが理屈は今のところ不明だが、あらゆる生物を同じ深淵の怪物へと変身させてしまうことであった。

 つまり、近づけば近づく程、敵が増えるということだ。


 だが、希望はある。

 守護神達が全面的な協力を約束をしてくれた。

 人の力では決して出せない力を持つ高位存在達の協力は大きいと同時に神と崇められる高位存在が警戒をする程の脅威に各都市の市長は不安を覚える。


 そして、守護神からも確実にやってくると言われているため、各都市は防衛力を急速に高め、最前線になるガレテを支援していき、都市間での連携を強めて行く。


 海溝付近にいる偵察隊が深淵の怪物の動きを感知し、ガレテに連絡を送る。


 ガレテ上層部はついに来たかと覚悟をする。


 そして、鯨のような鳴き声が聞こえると同時に地響きを起こしその震えが水中に伝わり、空間全体が揺れるような状態となった。


 深淵の怪物達が波が上がるように海溝から次々と飛び出し、ガレテへと狙いを定める。


 妖精が普段放つ淡い光が鋭さを持ち、深淵の怪物の体表に染め付ける。

 華やかな色を持つが、隠しきれない畏れが滲みだしていた。


 花のよう白い頭を持つ深淵の怪物が花弁の頭部から粉のような物を散布し始める。


 そして、その粉を吸着させた深淵の怪物は一層、姿を化物らしくさせる。


 都市ガレテと海溝の間には複数の要塞を繋げた壁が建築されており、多くの戦う人と武器が収容されている。


 同時に防衛設備としての役割で法陣結界の要点としての役割を果たしていた。


 法陣結界とは結界自体に強度や硬さはなく、基本的にだいたいの物は素通りできるが、結界を境界として結界内部に何かしらの特殊効果を生み出す結界だ。


 直接的な防御力を持つ、普通の結界との併用も可能だが、準備時間の不足と貴重な資材の消費量が増えてしまう事により併用はしていない。


 都市を覆う程の超大型結界は莫大な量の資材を必要とするため、高位存在に力を貸して貰っている場合が多い。


 今回展開している法陣結界の効果は情報連絡網の質の向上と専用回路の構築環境である。

 組織力を高める事を重点に置いた効果だ。


 色々と効果を付与しておきたかったが、時間不足で最低限やっておくべき事を考えた結果この効果である。


 兵達を強化し、多少不眠不休でも戦え続けられる効果なども提案をされたが、明らかに人よりも肉体的性能は上な相手に『個』の力を高めても大した効果は見込めないというのが予想でき。

 だから、『個』は後にして『郡』の力を強める事に注力した。


 法陣結界以外にも罠などを多く配置している。


 現在進行系で海の地雷である機雷に接触して爆発を起こし血肉を吹き飛ばしている深淵の怪物が多くいた。


 爆発が猛威を振るう光景に城壁要塞の兵達はこれからの戦いに怯える不安を払い、士気を上げていく。

 勝利の自信が身に宿り始める。


 だが、指揮官達は油断せずに燃え盛る泡の動きを見ていた。

 そして、一人の指揮官が泡の影から深淵の怪物の頭を確認すると、すぐに優れた連絡網で城壁要塞の指揮官に周知する。


 水中に響く臨戦の命令音が兵達の緩んだ心持ちを締める。


 そして、爆発から逃れた深淵の怪物達が訪れた。

 速く、不気味な泳ぎ方でやってくる深淵の怪物に誰もが注目する。


 水中では守る方が圧倒的に不利である。


 なぜなら、水中は泳げれば立体的に行動できるため、下だけではなく上も塞がなくてはならない。


 地上で言えば空を飛べるのだから、空中対策をする必要があるということだ。


 つまり、守る場所が多くなり上の方へと人材や資源を割かなくてはならない。

 その割いた分だけ下は負担は多くなってしまう。

 柔軟に人材の移動をすれば解決するが、簡単にはいかない。

 しかし、無理だからと上を疎かにすれば、ただ弱点を放置することになるため、そこから突破される要因となる。

 基本的に戦いというのは攻めが主導権を持っているため、守りは攻めに振り回される運命なのだ。


 なので、機雷など動かない兵器は上の方へと多く配置され守備兼攻撃の役割を果たすようにしいる。


 爆炎のような泡を上にして、下の戦いが始まる。


「しっかりと狙え! 敵は固いぞ!」


 城壁要塞の壁際には超急速に下方向へと向かう水流が流れるようにしてある結界が張っている。

 できる限り敵が壁よりも上へ行かないようにして、登って来ても流れに逆らうため、登る速度は遅い。

 その隙を狙い武器や兵器が振るわれ敵を撃退する仕組みだ。


 現在はその仕組みが上手く発揮しており、壁の穴から槍を突き出したり、城壁に登ってこれた深淵の怪物を落すなどと思惑通りであった。


「落ちろぉ!」


「うおりゃぁ!!」


 しかし思惑通りにいかないのが戦争という物であり順調さは一つの光弾と共に止まる。

 遥か遠くから飛んできた光弾が城壁の上にいる兵達を砕いた。

 砕かれた兵の近くにいた兵は顔面に肉片が当たり、血の生暖かさが海水と共に溶けていく。

 ついに被害者が出た。


 そして、散り散りに吹き飛んだ兵の穴を通るように深淵の怪物の数が増えて行く。


「恐れるなぁ! こちらも切り札を出す、衝撃に備えよ!」


 指揮官が一歩退く兵達に間髪入れずに激を飛ばし、恐怖により倒れる心の柱を支える。

 兵達も決して恐怖に屈していない態度の指揮官を見て後ろに下がる足と尾を自らの意思をもって止める。


「構え」


 そして、城壁内部から一人の兵が多くの武器を持ってきて兵達はその武器を順番に受け取り、武器を構えた。


「撃て」


 二人で一つを扱う銛のような物が収まっている射出機のような物が指揮官の号令と共に放たれた銛が水中を空中で進むかのように海水を切り裂いていく。


 そして、銛は深淵の怪物や地面に刺さると、銛が眩しく光始める。

 刺さった深淵の怪物や銛の周りにいる深淵の怪物達が感電により激しく痙攣をする。

 輝きが銛を破壊するほどになると、爆光と共に大きな衝撃波を放たれた。


「電爆弾、着弾確認」


 先程の兵器は電爆弾と呼ばれる物だ。

 電力が急上昇し溢れた電気が周りに走り、感電を誘う。

 近くに電爆弾があればそれが電気の通る道の中継点となり強力かつ広範囲な電撃を周囲に与える。

 そして、一定の電力になると電爆弾は爆発する仕組みとなっている。


「効果…………有」


 電爆弾の効果を観察し、期待内の十分な効果を発揮した。


「よし、諸君恐るに足らずだ。我々の力は通じている」


 指揮官も未知の生物達に我々人類の力が通じるか不安であったが、今しっかりと効くとわかったため、口調も心なしか明るくなる。


 そして、周りの指揮官達も電爆弾を放ち優勢を保つために殲滅の勢いを強める。


 爆発による一瞬の白く塗りつぶされる景色が続くと、小さな泡一つ分だか海に穴が空く。

 真っ白で海水という液体が満たされない海の陸が出現した。


 太陽を遮る物は無くなると深淵の怪物達は突如を上を見上げ、海上へと向かい泳ぎ始めた。


 深淵の怪物が上へと泳ぐ途中にヒレは現実的にあり得ない速度で変形していき、まるで鳥の翼のような広いヒレへと変化した。


 その広いヒレを畳み、尾ヒレを力強く動かすと速度は上昇していき、太陽が別れたような煌めく水飛沫を上げながら、海上へと深淵の怪物は飛び出した。


 海上飛び出してすぐに深淵の怪物の広いヒレを広げて行くとヒレが抵抗となり、空気の上を滑るように滑空をする。


 最初の深淵の怪物を先頭に次々と海面を架空し、海中上部にある機雷などの無数の罠がある極めて危険な場所を完全に避けて行けた。


 つまり、無傷の深淵の怪物の軍勢が上から城壁要塞を砕きにやってくるということだ。


「結界展開!!」


 一応城壁要塞にも硬度のある普通の結界は展開できる設備はつけてあった。


 鳥の嘴のように烏賊の嘴のように固く鋭利になった深淵の怪物が海上の空気を水中へと混ぜながら、突進してくる。


 泡の炎を纏いながら結界を深淵の怪物から滲み出るオーラで焦がし、脆くなった結界に凶悪な銛のような嘴をぶつける。


 展開したばかりの決して良い結界とは言えない結界は崩落し隕石が降るように深淵の怪物は加速しながら落ちてくる。


「宝具だ! 宝具を使え!」


 その声の後、海中の地面に積み重なっている白い砂が上へと伸びる。


 宝具〈白砂型描(ミィンセーユ)〉の能力だ。

 〈白砂型描(ミィンセーユ)〉は砂状の物質を使用者を意のままに操れる。

 効果範囲は砂粒が視認できる、もしくは確認できる範囲までと極めて広範囲である。


 ただ、現在の問題は事態を解決するまでの速度だ。

 巨大で大量の砂を操る程、砂の操作速度が低下してしまう。

 そのため、工夫した事は一定の量までは既存の魔術師が砂を操り、人の限界を超えた部分は〈白砂型描(ミィンセーユ)〉を扱う。

 そうする事により操作速度が低下せずに常に高速で操れる。


 砂が壁となり深淵の怪物を捉える。

 しかし、所詮は砂、完全に進行を止める程の力は無いが、組織の連携力が光る。


「冷気弾発射! 続いて徹甲弾発射!」


 着弾と同時に気温を一瞬にしてマイナスの温度へと変える魔術の術式が封入された弾丸が発射され砂に着弾する。


 氷の種が水中へと急速に根を伸ばし、砂が混じる事により、強固な氷塊へと変身する。


 そして、巨大か氷塊をそのまま放置していては重力に則り落ちて行くため、氷塊の下にある城壁要塞が潰れる事になる。


 それを防ぐために氷塊内部にまで届く徹甲弾を打ち込む。

 内部に刺さった徹甲弾を爆発を起こし、深淵の怪物ごと木っ端微塵にして海の藻屑へ変えてしまうのだ。


 打ち上がる複数の徹甲弾が砂が混じることにより強固な氷になった物でも難なく貫き、一瞬の熱と輝きが巨大な衝撃波を生み出す。


 兵達の誰もが上に首を曲げ、爆発による暴れる水流が訪れ目を細める。


 バラバラになり、水流に拐われる氷の欠片の中にある、深淵の怪物の欠片達が見え隠れしていた。


「おい! 上見てるな! 前見ろ!」


 必死になって刃物を振って壁上に深淵の怪物が乗らぬようにしている兵が上を見て呆けている兵に叱咤をする。


「あ、悪りぃ」


 沸き上がった感情の一声に大きく目を見開き、虚無感のあった瞳に艶を取り戻し、協力して泳いでくる深淵の怪物を討ち倒す。

 しかし、まだ討つ必要のある深淵の怪物はたくさんいる。


「俺らが上の方に集中している間にこんな近づいていたのかよ」


「そうだよ! はよ気付け! ったく」


 周りの兵達は怒りを深淵の怪物に叩きつけている兵に申しわけなさそうにしていた。


「ぐあぁ!」


 肉が裂かれた事による痛みの叫びが戦場に響く。

 響きの中心地にいる兵達はすぐさま叫びに反応し、叫びのきっかけとなった敵を退ける。


「下げろ!」


 すぐに肩から血を溶かしている兵をすぐに下げ、指揮官はすぐに司令部に連絡をする。


「こちら──だ。負傷者がでた。そろそろ現在戦っている兵達の疲労が表面化してくる、増援もしくは交代を要請する」


 現在連絡、報告している指揮官も負傷者が出て、自分達が疲れている事に気づいた。

 それは無意識に冷静さを失っており、深すぎる集中による視野狭窄状態であると。

 初期の広い視野と相対的狭く、半分程にまで縮んだ視野に危機感を覚える。


「了解」


「さて引き継ぎの準備をしておくか」


 指揮官は深淵の怪物がまだまだ這い出てくる海溝に目を向け終わりが無さそうな量に辟易とする。

 海溝の奥を見つめていると、見つめ返されるように一瞬の目立つ光るが現れる。


 光弾が再び降り落ちた。

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