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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第四章
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権謀術数

場面は『英雄と魔女』のすぐ後です

 黒妖の雫であり黒点が地面に落ちると景色は灰色と黒に染まる。


 燃素が抜けた炭と空間を蝕むように広がる灰が明かりなど一切存在を許さない空間へと変えていく。

 噴火のような荒々しさの無く、静かに侵食する。

 火山灰が降り注ぐような曇天のようであった。


 ユーハは景色が変わった瞬間、フィオナだけを除いて空間を切り取り、別の位相へと弾き飛ばして、ユーハ自身も別位相へと行く。


 飛ぶ瞬間フィオナの顔を見ようと思い振り返ったら老人のように人生に疲れ果てた顔をしており、ユーハは酷く貧弱な姿に目を背けるようにそのまま別位相へと飛ぶ。


 別の位相とは基準位相にもよるが、本来の時間軸から外れたた世界の事だ。

 別の世界線とも言う。


 ユーハは動物が何も存在できなくなる位相へと飛ばしたため黒妖の雫は消え去るはずだが、雫は大河のように墨汁にとなり空を我が物のように流れて染めていた。

 空は鈍く、鮮やかな良い色だけを奪い去ったようなつまらない灰色へと染め上がっていた。


 その大河は輪廻するように回り、最初は巨大で地平線のような円環も今では手のひらサイズへと変わっていた。


 黒縄の円環は収縮して黒点となる。


 ユーハはそれを傷物の果物を処分するようにに遠慮なく掴んで握りつぶす。


 一種の爽快感を得られるよな卵が割れるように飛び散る黒点は一滴一滴が震え人型を象る。

 そして、一つの人型が大きく成長して他の人型を取り込む。


 顔と思われる真円の球体部分の下部が鋭利な刃物が切れ込みを入れたように開く。

 半月状に開いた穴から声が出る。


「始めまして、永劫の転生者よ。我の要求は魔女の肉体とお前の魂だ。さぁ、よこせ」


 最初の麗しい程の丁寧な物言いから一転し、欲望に溢れた物言いであった。


「始めまして、魔神の王。邪魔だ、死ね」


 ユーハは最初から抹殺覚悟の殺意に満ち溢れた声であった。

 悪意を持った部外者が長い人生史上で最も大事な場面を汚されたからだ。


 早速ユーハは攻撃を仕掛ける、地面を力のあらん限り蹴り上げる。


 蹴り上げた瞬間、辺り一帯の地殻がめくり上がり大地が壁となって魔神の王へと襲いかかる。


 遥か後方へと転移した魔神の王には地殻の壁は届かないためユーハは射程距離を伸ばす。

 地殻の壁の左右に磁力の壁を生成すると、地殻の壁は集合性を破綻させ音速を何百倍にも超えた速度で直線移動をする。


 即席のレールガンから放たれる天然の巨弾が魔神の王が立つ場所を跡形も無く破壊する。


 轟音が収まり、残った空を覆う土煙に包まれた場所から千の光線が放たれた。

 一本、一本が都市一つを抉り去る太さを持つ巨大な一条がユーハに向かい迸る。


「ハトラ」


 ユーハはその名を呼ぶと空間が捻り曲がり光線はユーハだけを見事に避けて行く。


 後方が激しい明滅を繰り返す中、捻り曲がった空間へとユーハは貫手をして空間を貫く。


 人工精霊のハトラがユーハの血肉へと変わり強化していく。


「容易く神級の精霊の殺して吸収するとは」


 虚理階層に一時避難をして魔神の王はユーハの実力を考察する。


「逃げるな」


 階層を飛び越えて突如現れるユーハの手と恐ろしい声が魔神の王の体を掴み引き寄せる。


「アッハッハッハ」


 魔神の王は心の底から笑いながら掴まれる事に抵抗はしなかった。


 元の世界へ戻った瞬間、魔神の王は己の体を原子レベルまで細かく分解させ一部の体を核融合を引き起こしユーハの目の前で自爆紛いの行いをする。


 灰色の上空に立ち上る山脈如きのキノコ雲が核融合から生まれた熱と衝撃波を形容させる。

 魔神の王は分離させた体を再集合を成しキノコ雲の全貌が見える位置にてユーハの気配を探る。


 魔神の王の意識が右へ左へと動く。


(下か)


 地面の中から特殊な物質でできた尖った石の柱が何本もそびえ立った。


 そして、魔神の王を囲むように立つ石柱の横から結界が出現し魔神の王を天井を除いて閉じ込める。


 魔神の王は即座に上へと逃げようとするが、後ろからユーハが完全に気配を絶ち、高速の爆裂拳を繰り出し結界に叩きつける。


 結界に押さえつけるように一撃一撃が相手の動きを先回りする最適な動きのもと殴り蹴る。


 攻撃の嵐の中、雷鳴の如く鋭い一撃がユーハを襲う。


 頭は体から離れ結界も石柱も余波で破壊される。


 ユーハの頭は体から離れたのを自覚しつつも焦りは無かった。

 なぜなら空間的には繋がっているからである。

 魔神の王の捨て身の反撃を本当に捨て身に変えようと一層爆裂拳が攻撃的になる。


 外形が岩のように変わり果てた後、ユーハは止めを刺そうと刹那、魔神の王の体は一本の剣となりユーハの体を貫き、核融合を引き起こす。


 だがユーハの体から世界を破滅させる熱も光も衝撃も生み出ずユーハによって阻止された。

 だが、この程度予測済みの魔神の王は四方から鎖を作りあげユーハの体を縛ろうとする。


(空間的な効果を無効化する鎖か)


 つまり三次元上の動きを止める鎖だ。


(核融合爆発に巻き込まれて再構築すれば良かった)


 過去の選択を悔いるが現在行うべき行いも既に計算済みであった。


 最適で最少の動きで避けるのみであった。

 剣の魔神の王が突き刺さろうとも中身が焼かれる痛みで狂いそうでも最良の動きで鎖を避ける。


 そして、仕込みが終わるまでの刹那の間に頭部を体部を接着させ貫く剣を砕いて原子崩壊を引き起こす。

 ユーハの体内という最も攻撃力の高い場所にいるため避ける事も逃げる事もできず砂以下へと変わり果てる。


「いいぞ、いいかも、いいんじゃないか」


 完全に治療が終わった後、虚空に魔神の王の狂う音が響き渡る。

 楽しそうに狂った声のような音であった。

 爆笑が笑わずに声となったような音だ。


「何も良くねぇよ」


 愉快な音とは正反対にユーハは不愉快な声で仕込みを発動させる。


「〈凛冽の波動〉」


 だが、その時だった。

 空間を歪め魂感を狂わせる超高圧の魂力の波動が辺り一面を襲った。

 細胞さえも凍てつかせるような痺れる波動によって現在ユーハにかかっている魔術的効果は剥がされた。

 単純な魂力の波動を極めると全ての魔術的効果を打ち消す奥義となる。


 だが、その魔術の術式や同等以上の魂力の技巧を持つ者なら全ての魔術的効果は消えはしない。


「〈凛冽の波動〉」


 返すようにユーハはいてつく波動を繰り出した。

 魔神の王が存在する場所は既に認知している。


 〈凛冽の波動〉によって隠された場所は剥がされる。


 その瞬間文字通りの青天の霹靂を自身の力を濃く影響された黒雷を落とした。


 大地など容易く穿つ黒雷がユーハに直撃する。


「ぐっ!」


 己の結界を突き破る魔神の王の招雷が自身の体を迸り唇が切れ鼻血が出る。

 外側はこの程度の傷しか残らないが、中側は

 別であった。

 心臓の脈拍は狂い血液が泡立つのを識覚している。


(追撃を許す前に……!)


 ユーハの周りには無数の黒槍が禍々しい回転共に向かっていた。

 それに加え現在進行系で己の身を蝕む黒い天空の大剣が構えられていた。


「ぬああぁぁぁぁぁあ!!」


 今すぐできるユーハが行った事は特殊な効果など一切含まないただの身体強化であった。

 張り上げる声は空気のみならず空間にヒビを走らせガラス以下の産物へと変える。


 破壊の音響が空間を割り三次元世界を崩壊させる。


 ユーハは空間の破片を掌握し空を掴むように拳を握りしめる。

 集まる空間の破片を自身の剣と合成させる。

 三次元以下の物質を使用者の技巧で全て切り裂く事が可能な次元剣が完成する。


「はっ」


 次元剣の一振りで三次元空間が裂け直線上にある者も全て空間が裂けた形と同じように切り裂かれる。


 魔神の王の攻撃も自身も例外では無かった。

 虚空の斬裂が魔神の王の体を真っ二つにして分けていた。


 魔神の王ここで討伐と言いたいところだが、限りなくこの世の頂点に立つ王が体を真っ二つにされた程度で死にはしない。


「細胞一つ潰れた程度だなぁ」


 愉快そうに告げる魔神の王の圧倒的な命の量。


「へぇ~。じゃあ、細胞の数だけ殺してやるよ。一秒何殺が良い」


 獰猛な笑みを浮かべながら、もう絶対に逃さない獲物へとユーハにとって魔神の王は変わる。


「再生能力もあるからな」


 燃える滾る焚き火を更に大きくさせるような事を言い血祭りを楽しむ。


 魔神の王は久方ぶりに心が揺れ動く。

 揺れる節のついた複数の振り子が誰も予測ができぬ状態になったように震える。


 自分でもわからぬこの楽しさ、何事も楽しまなくては。

 それこそ、万物の存在意義。


「アーッハッヒャッハッハッハ!!」


 喜色満面と言える三つの曲がりに曲がった穴が魔神の王の頭部に出現する。


「頂きの天楽、和やかなる世楽、渾然味わいても、愛しの癒やしの遊具たりえず我楽ならん」


 紡がれる流麗な詩言からは想像できぬ力の揺れを世界に響かせ刻み込む。

 天に重力特異点である黒渦が出現し、地に存在しうる万物は溶けるように光へと変わり蒸発するように空へと登る。


 そして、特異点を喰らう魔神の王。


「落ちろ」


 三次元が裂け四次元になりきれない三次元が己の重みから生まれる重力に従い垂れ下がる。

 空間の穴に周囲が吸い込まれないのはユーハが完全に周囲をコントロールをしているからだ。


 槍や針のように垂れ下がる先にいるのは魔神の王。


 対抗するように魔神の王は上下に開く口を左右に開くように変化する。

 口の中心部に星の輝きを顕現させ、黒鉄玉が発射される。


 互いの攻撃は速くはないが、自身を潰す程に圧縮しそれでも足りぬと言わんばかりに周りからエネルギーを奪おうとしているが、二柱の創造主がそれを許さない。

 相対する存在のエネルギーを奪う事を命じているからだ。


 空から落ちる黒山槍は天を集める黒鉄玉と激突する。

 割れるようで弾けるようで開くような形容し難い現象が起きる。


 結果だけ言えばこの位相の三次元世界と物理階層は消滅しそうになったがその時生まれたエネルギーを二柱が全て吸収した。

 別位相世界一つを滅ぼしかけたと評しても良いだろう。


「我が生まれた時のようだ。懐かしい」


「この世界でここまで本気を出したのは初めてだ」


 景色が裏返るように無傷の二柱は現れる。

 魔神の王は高ぶる思いを爆発させるようにメラメラとオーラを立ち昇らせている。

 対照的にユーハはフォースを周りを支配していた。


 魔神の王はオーラから変化の概念である【火】を抽出する。

 同時に変化の速度を加速させると、膨大な熱を帯びる炎へと変わり勢い良く成長する濃薄のある赤光が放たれる。


 万物は熱で焼かれながら急速に変化し、構成物質が変わって行く。


 ユーハは【火】属性が権能を振るう空間に時間加速の結界を張り、変化の差を作りあげ無効化する。


 だが、魔神の王はそれを予測しており、加速空間を利用して己を一瞬にして何倍ものの速度を引き出し結界に穴を開ける。


【火】属性が盛る炎が振るわれ空気をプラズマに変え土を蒸発させる順番が循環され熱の雷電がユーハを包む。


 包まれた刹那、【風】属性が働き爆風が吹き荒れプラズマも熱も荒々しく増幅され暴れ出す。


 移動の概念である【風】がユーハの内から発動されたのだ。


【火】属性は変化の理だ。

 移動には変化が必要であるため移動の【風】属性の上にある属性である。

 一時は【風】属性に満たされたがすぐに支配権を取り戻しユーハに襲いかかる。


 魔神の王もただ放つだけの攻撃ではユーハには通じない事は理解しているため、今のはユーハがどのような対応をするか見てそれから本命の一撃を放とうとしていた。

 後出しの攻撃は有利だ。


 赤手の斬線が【風】属性で薄くなった空間を二つに割る。

 一つは熱が湧く炎熱空間に、もう一つは雷光蠢く雷電空間にへと変わる。


「ちっ、騙された」


 心底悔しそうだが、声には喜びに満ちていた。


 魔神の王はどちらの空間にも何が起きたかわかる。

 ユーハが火剣で真っ二つにした瞬間怪しい感じは感じていたが、その予想は的中しており、【風】属性により爆風が生まれた瞬間に幻影と入れ替えていたのだと気づく。


 見事に欺かれたから次来る何かに気づいていても対応が遅れる。


 初期に魔神の王が放った破壊光線と同じ光線が魔神の王の周りを包んだ。


「時よ止まれ!」


 上位の次元と深部の階層の時間を止めあらゆる物の時間を停止させる。

 同時にあらゆる運動が停止する。


 だが、時間を直接止めたためすぐに解除しなくてはならなかった。

 なぜなら、世界は常に動いている。

 慣性の法則に似た法則に則って。

 そんな中に時間停止という世界の運動を急停止させると莫大な力が生まれる。

 世界から引き剥がされその時の衝撃は世界崩壊の一歩手前くらいはあるだろう。


 魔神の王もその程度で死にはしないが、僅かながらもダメージは得てしまうため、余計な力の減少は控えたい。


(焦りすぎたな……)


 しかし、時間停止空間が世界の運動で壊される時の抵抗と軋みを感じない事に全てを察せられる。


「勝敗を決める差、わかっただろう?」


 突如現れるユーハの自信の籠もった声と共に次元を超えて切り裂く剣の一振りが魔神の王を両断した。


 ユーハが行った事はまず幻影で騙し込み、本体は適当な亜空間に隠れ、隙が生まれたら破壊光線を隙間無く放ち、時間を止めたら水力発電の如く溜まった世界の運動エネルギーを回収して、そのエネルギーで魔神の王を断ち切る、上位次元ごと。

 階層で言えば存在や形を司る生命階層は切った。


 追撃で魔神の王の体に手を添え、分解の概念である【破壊】の光を放つ。

 ここは連撃はせずに楽に一撃必殺の確実な方法を取る。




〈凛冽の波動〉はいてつく波動です。

あの、味方の良い効果を打ち消すアレです。

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