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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第四章
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怒りのクエレブレ

 ザレト森林を抜け出したルアザは州都リーペへと向かう途中にある廃都で身を休めていた。


 ユーハのように数多の魔族を蹴散らしながら音速を超えて何十時間も走り続ける程の体力は無い。


 無秩序に生えた植物が比較的に少ない建物に入り少し中の埃を掃除する。

 潜む影から獣のように鋭い牙を持つ動物が出てくるが、身を横に翻し避ける。


 そして動物が着地する瞬間に掴み上げ、外へと放り投げる。


「なんかいるな〜、て思ったら本当に出てくるとは」


 周りを感知魔術で調べ、何もいないことを改めて確認する。


「やっぱり腹が減らないな」


 ユーハは近くにある椅子に座り込み、自分の腹を撫で、そう呟く。


「輪廻の息吹とオーラとフォースを使えるせいか、食事が必要なくなってしまったな」


 オーラが使えるから、体が必要な要素はわかり、その要素は基本的にそこら中に溢れている。

 フォースでかき集めた体の要素を輪廻の息吹を使用し吸収するという機構ができてしまった。

 つまり栄養は口から取り入れなくてもいつでもどこでも取り入れられ結果的には排泄物も無くなるだろう。

 悪影響としては胃腸の存在意義を失い、長い間使わなく、突如使う時は調子が悪くなるだろう。


「たぶん、このまま鍛えていけば、睡眠や休息さえも不要となるだろう」


 不眠不休の境地に至れるまでに費やすだいたいの年数がわかる。

 半年前後くらいだと予想する。


 生育環境がアレなせいで性欲は薄いため、ルアザの三大欲求が既に風前の灯火となっており消え去りそうだ。


「……」


 意識を何か得る代わりに何かを失う未来を想像させ、ルアザは冒険の書を取り出しこれまで起きた事の全てを書く。


 事件が立て続けに起こり、自分の根底を染める変えるような重要な事もあっため混乱した情報を自分なりにまとめ整理する。


 思考の中こ整理した情報を文字に変え筆を走らせていく。


『自分はガルト州を統治する一族の直系一族であった。つまり自分は王族であり王子ということである。冥界で父親と出会い、ガルトの神々と出会い様々な力と一緒にガルトの復興の思いを託され、受け継いだ。正直自分にできるかわからないが、やってみよう。自分にはその責任がある』


 簡潔にまとめられたガルトの冥界での出来事を記し、その後詳細になにがあったのか書いていく。

 重要な事なため、何ページにも渡り記していく。


『母親があの時おかしくなった理由は故郷が見るも無惨な姿に変わっていたからだろう。前のページに自分の故郷について書いてあるが、書いてある通り狂ったからだ』


 かけがえのない故郷が滅ぶというのは心に穴を開けるとかいう生易しい物ではないだろう。

 掴めないな喪失感と現実を何が何でも否定したい気持ちだ。


『諦めそうになった時は自分の誓言を思い出していこう』


「ふぅ」


 冒険の書を閉じて懐にしまうと、周りの変化に気づく。


 意識を外へと向けると、雨の音が聞こえると同時にルアザは極限まで気配を消す。

 龍であろう高位存在がやってきた事に気づいたからだ。


 頭頂部に漏れる水が当たろうとも、決して微動だにしない。


 生物としての差が生み出す圧倒される気配が張り詰める精神を舐める。


 そして、別の気配が影に含むれている事に気づくと同時に結界を瞬時に張る。


 魔術という強力な気配が噴出して水龍が反応して、尖った尾を気配の元へ空気裂いて突き伸ばす。


 結界は貫かれる事は無く民家は砕け散り、ルアザは破片と共に散る。


「生きていたのか。クエレブレは」


 ルアザは尾の主の姿を見た時、唖然とした。


(でも、友好的な態度ではないな)


 空に浮かぶクエレブレの恐ろしい威圧を放つ瞳がルアザの方を離さず睨みつけている。


「お久しぶりです。突如連絡が途絶えたので心配しましたよ」


「死ねぇ!!」


 とりあえず挨拶だけはするが、返されたのは殺害宣言と雨雲の柱であった。

 ルアザは竜巻を生み出し渦巻く雨雲を相殺して防ぐ。


「何か私が貴方にしましたか?」


 怒りに染まったクエレブレに対してルアザはまず身の憶えの無い恨まれる要因について聞き出したい。

 十中八九、何か誤解している可能性が大きいため説得をしたかった。


「お前が! シャナを殺したんだろうがぁ!」


 クエレブレの怒号と共に雨量が増え道通りが水に浸り始める。

 霧さえも出てくる雨量の中ルアザは堂々とした佇まいで冷静にクエレブレを見据えている。


「シャナさんを殺した憶えは無いです。前提として最後に出会った時は私はまだ子供でしたから殺害は無理です」


 感情に訴えるように若干の否定の感情を込めて雨の音にも負けぬよう私は無実だと言い放つ。


「嘘をつくなぁ! 我は精霊から聞いたぞ。お前がシャナを殺した、とな!」


「同じ精霊であるナベロンの言葉は信じないで、その精霊は信じるのですか」


 同じ第三者による言葉で差が生まれる事にルアザは疑問に持つ。


「我が聞いた精霊は我々偉大なる者の中でもそれなりに有名な情報屋だからだ!」


「騙されてますよ」


 諭すようにルアザは短く簡潔に今の状態を伝える。


「人間よりは信用できる!」


「……そうですか。(話にならん)」


 ルアザは察する。

 クエレブレは感情で会話をしていると、合理性を持った話ができていないということに。

 クエレブレは自分の事を下に見ているが、ルアザはクエレブレを下に見ていた。

 あまりよろしい眼差しではないが、ルアザにとってクエレブレは既に少なからず悪なる存在だと認識をしている。

 平和的な解決をしたく、本当に正しい情報なら真実を語り合う事になんの躊躇いがないはずだからだ。


(シャナさんの仇を討ちたいのか、自分の鬱憤を晴らしたいのか。どちら共であれば、まずは鬱憤の方から消そう)


 平和的な解決をできる希望はまだあるため、ルアザはまずクエレブレの怒りを抑える事にする。

 熱炉となったクエレブレの頭を一度冷やし、冷やすためには熱をどこへ放出させる必要がある。

 攻撃の種類や方法でクエレブレの熱量はある程度計れるため、それに合わせて行動と選択をする。


「何度だって言いましょう。貴方が間違えている」


 魂力の剣を手の中に収め剣をクエレブレに真っ直ぐ向けると烈風が吹くことにより雨を散らし、クリアとなった景色の中宣言する。


 クエレブレはルアザの不遜な物言いに更に頭に熱を登らせる。

 確実に葬り去る事を亡きシャナに誓い、脳内に暴れる熱を口内に移動させるように属性を溜める。


 龍の息吹が吐き出される。

 圧倒的な暴力がルアザを襲うが巨身の拳を正面から打ち砕いた時よりは軽い威圧なため、息吹の端に移動して軽く受け流し距離を取っていく。


 ルアザは周りの雨から濃霧を生み出し、自分の姿を眩ませる。


 クエレブレは長い身をうねらせて、霧が包む空間へと分け入って行く。


 龍の優れた嗅覚でルアザの残り香を辿り、牙を左右から挟むが虚空を口の中に入れるだけであった。


 次は不自然な風の流れが生まれた場所に体を体当たりをしても建物が音をたてながら崩れるだけであった。


(どこだ! どこにいる!?)


 龍のどんな生物よりも優れた感覚に確かな輪郭を描く情報がのらない。

 自分の思い通りにいかない苛立ちを解放するように惑わす霧を吹き飛ばすが、すぐに霧が空間を支配する。


 感知魔術を使いルアザの場所を確認しようとするが、ルアザによってクエレブレの感知魔術は霧の中に溶けて行く。


(逃げてはいない。確かに今魔術が乱された。近い場所にいるはずだ)


 クエレブレは空に向かい、上からルアザの場所を視認しようとする。

 鳥の視力と同等な龍の視力に見つからないはずがない。


 深い霧によって真っ白に染まっているが、影の輪郭や濃度と鮮明な解像度により、動く影を見つける。

 注視すると同時に温度感覚を鋭敏にし、動く影の温度を感知する。


 他よりも一定高い温度を持つ動く影を追い急降下して建物ごと口の中に入れ飲み込む。

 口の中にある砕けた建物ごとブレスをまき散らし、ルアザを追い詰める。


 地面を這うように襲う燃える水から逃れるために空へと足を踏み入れる。


(よし、収まってきている。あとは時間が解決してくれる事を期待しよう)


 自分の妨害に対して落ち着いた対応にルアザは安堵をしてクエレブレから大きく離れる。


 クエレブレも離れるルアザを追う。


(自分の事に関して知っている精霊か。それも自分の人物関係さえも知る)


 ルアザは地上を走りながらクエレブレに情報を与えた精霊について考える。


(本当にその情報は正しいのか? 故郷にいたころは高位存在との出会いは基本的にシャナさんだけだったから。そもそも知っているはずがない)


 怪しいのはもう一つ高位存在魔王の癒し(ラファルエ)だが、確信できるほどの理論は無い。


(いや、高位存在だから、想像もつかない情報収集能力があるかもしれない。だが、それでは完全に予想不可能になる)


 情報収集の方法がなんでもありだという前提にすると、どんな理論も成り立ってしまう。


(まずは2パターンに分けよう。情報は誤っている場合と情報は正しい場合を)


(情報が誤っている場合では、情報提供元がダメなのか、それともクエレブレさんの解釈が間違えているかのどちらかだろう)


 願わくば情報が誤っている方に期待する。

 誤解さえ解ければすぐに解決する問題だからだ。


(情報が正しい……正しくはないが意図して嘘の情報を伝えたのらば、何か自分に関わっている)


 頭が痛くなる可能性だが、なんとなくこちらの可能性の方が高い気がして実際に頭が痛くなる。


(クエレブレさんからのやり取りが途切れたのはロゼリアに着く少し前だったから三ヶ月程前。その時にクエレブレさんの耳に嘘の情報が入ったのが妥当だろう)


(それまでに出会った高位存在は記憶にないな)


 辛い事もあったが、普通に楽しい旅であった。


(一方的に知られている、と考えた方が良いだろう。そうなると…………やっぱり魔王の癒し(ラファルエ)か?)


 一定の結論に達するとと潮の香りがする。


「もう海か」


 後ろを振り向くとクエレブレは比較的な理性が戻った目をしており、そろそろ止まる事にする。


 龍は海や水に関わりが深いため、環境的にはクエレブレが有利だからだ。


「どうした? やっと死ぬ覚悟ができたか?」


 通常通り傲慢な口調でルアザの上を舞う。


「まだ死ぬわけにはいかないのでできてませんね」


 冷静な口調で不敵な笑みを浮かべながらクエレブレを見上げる。


 刃性を生むほどの鋭利な風がルアザを襲い、ルアザも無数の飛ぶ斬撃を振り放ち相殺する。

 クエレブレの尾が相殺し終わった瞬間にルアザを叩きつけるが、迅速に避ける。


 そして、ルアザも回避不可能な大量の水分が含んだ大嵐が結界を張るルアザを海岸まで吹き飛ばす。

 ルアザもこれには僅かな時間、驚愕と混乱に頭を濁らせるが、すぐに気を取り直し着地する。


 陽炎として形となった熱風が次にルアザを襲い、高圧力のウォーターレーザーがルアザの足下を砕く。


 熱風はフォースを駆使して切り裂き、ウォーターレーザーの圧力を利用して大きく下がり、海に足を浸からせる。


 予想以上な怒涛な攻撃にルアザは思考を休める暇が無く次々に判断を下さなくてはならなかった。

 まずは海から出なくてならない。

 主力の雷の魔術は海中では自分も感電してしまい使えないからだ。


 クエレブレは豪風を吹かし、一気にルアザの距離を詰める。


 同時にルアザも距離を詰め、剣を構えてクエレブレが交差するタイミングで剣を握りしめて横に振るう。


 骨にまで響く衝撃に握る手を軋らせるが、確かな手応えが更なる力をもたらす。


「グオォオ……!」


 ルアザはクエレブレの丸太の如く太い牙に深い切れ込みを入れており、切れ込みの周りには電気が通ったかのように黒い谷が生まれていた。


 最後まで切れなかった理由はルアザの自身の固定不足だったからだ。

 岩が何個も積む巨大な重さを持つクエレブレが突進してきたのだから、軽いルアザは掠っただけでも馬に轢かれたようになるだろう。


 魔術で自身を固定したルアザは剥がれるように宙に吹き飛ばされていた。


 クエレブレはいち早くルアザを見つけ、息吹を吐こうとする瞬間に世界を揺らす強力な波動が体を通る。


(なんだ!? この波は!? それに魔神の気配が沸き上がっている!)


(ユーハさん、何が?)


 州都リーペの方向に一斉に瞳を向け注視する。

 確実に何かが起こった、世界を変える何かが。

 世界の動向に目を離せず、ルアザとクエレブレは一時停戦をする。


「なっ!?」


 ルアザはクエレブレとリーペに意識を割り振りすぎて海中からの刺客に気づかずその脅威に襲われる。


「グッ!?」


 クエレブレも同じように襲われる。


 海中から巨大な触手がルアザの体に巻き付いており、クエレブレの長い体には何本ものの触手が巻き付いている。


 ルアザは雷を落として触手を爆ぜさせるが、爆ぜた瞬間再生という今起きた事を疑うような事が起きる。


 クエレブレも触手を切り裂くが、ズレ落ちる事は無く、切れ目は消えていた。


 そして、ルアザとクエレブレは海中に引きずりこまれる。


 ルアザはオーラとフォースで海中で行動は可能であるが、圧倒的に不利な海中へと落ちていく。


 手を伸ばしても光を掴もうとするが、クエレブレと共に沈んでいく。

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