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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第四章
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巨大な力と雑な技術

 城壁の上で戦っているルーは身覚えのある強烈で恐ろしい気配を感じた。

 根拠は無いが今すぐ身を隠す必要性が生じる。


「皆! 今すぐ城壁の下に飛び降りろ!!」


 何度も苦しめられた全滅必須の魔眼の眼差しから守るために。


(この気配……! 即死の魔眼!)


 まだ城壁の上にいる兵士を無理矢理にでも突き落とし、ギリギリでルー自身も降りる。


「すまん……!」


 まだ、城壁の上にいる兵士達を救えなかった事へと懺悔を口にする。

 そして、死の気配が失せるとルーは魔族達を一掃しながら城壁の上へと登って行く。


 驚くべき人物がルーの視界に入っていた。

 もうすでに輪廻の輪に入ったはずの、自分の祖父にして宿敵である巨身バロールがそこにいた。


「バロールがなぜ……。いや、そんなものはどうでもいい、即死の魔眼がまた開く前に討たなければ」


 視界を広げれば傷一つ無く屍となり横に倒れている兵士達を見て、バロールの方へと飛び出そうとした瞬間、後方の城から一種の高揚さを感じる程の力の移動を感じる。


 ルーは力を感じると、確かな笑みを浮かべる。




 ◆◆◆




 時は少し巻き戻り、場所は城の地下へと変わる。

 これからルアザに行う事をファーレンは先程から説明していた。


「この鎖は冥界の力を授けるための物であり、お前が暴れてもここ部屋から処置が終わるまで出さぬようにするためだ」


 ルアザの手足に何本ものの鎖を付けて行く。

 まるで囚人や咎人のようだが、これは安全と確実性を上げるための物だ。


「頼みますよ」


 ルアザはただ、これから襲うであろう痛みを覚悟する以外すべき事は無い。

 だから、ファーレンの働きでこれから起こる事が変わるのだ。


「任せておけ」


 安心させるように明るい笑みを浮かべ部屋から出ていき、処置を始める。


 ルアザは結界を解いて寿命が氷を削るように減っていくのがわかる程、属性の暴風に身を蝕ませるが耐える。


 鎖をジャラジャラと音を響かせながら部屋の中央へと座り、心臓の音しか感じなくなるほど静かに心に波を浮かばせずに待つ。


 どこかからパチッと電気が走るような音が部屋の中に生まれると鎖のから熱とプラズマが発せられルアザに伝導する。


「っヴヴヴヴゥゔヴゥぅゔ!!」


 皮膚が熱や電気で焼かれる事は無いが、痛みだけを取り出したような物であった。

 熱が壁を破壊するような痛みと電気が刃物ではなく、針で切り裂くような痛みがルアザを残酷に襲う。


 ルアザの体に電気で枝木のように伸ばし冥界の機構をルアザに組み込むための道を作り上げる。

 熱で冥界の機構を焼き付けるように熱量を引き上げる。

 身体に備わった回路に新しく回路を刻印していく。

 階層を潜り、次元を越えてあらゆる方向に回路の線を伸ばす。


「あぁァァァァァァァァあぁ!!」


 回路が広くなればなるほど痛みは増す。


 次に訪れる刺激は痛いと思える程の気持ち悪さであった。

 得たいの知れない物が入ってくる異物感による苦痛がルアザに慣れを生まれさせず、飽きさせない。


 だが、全て耐えられる。

 全身が真っ黒になるほどの火傷よりはだいぶ楽に感じた。

 皮膚は爛れ、水分は蒸発し、神経は剥き出しになり空気が針へとかわった時の痛みよりはマシだ。

 神経さえも炭へと変わった時の死が確定したと悟ってしまう恐怖による絶望感よりはマシであった。


 それと同時にトラウマでもあるため発狂する。


「アァァァァァァァァァア!!!!」


 いままで苦痛による唸り声のような悲鳴から、狂気と解放からの甲高い悲鳴へと移り変わる。


 そして、解放の効果でルアザは鎖を大きく音と共に揺らして暴れ出す。

 鎖に繋がられた暴獣にルアザはなる。


 激しく熾烈に動く事で少しでも痛みを柔らげ痛覚から気を逸らす。


 壁に衝突する寸前で鎖は弛みは無くしルアザを止める。

 共に精神さえも蝕む異物感と死滅の記憶による暴風のような動きをしばらくすると、痛みは失せて行く。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」


 オーラの技術で自分の体内を探りながら焼き焦げた体内を治癒し整える。

 整えると同時に非常に感覚的だが、新たな臓器や器官が存在するのがわかり、使用方法も体に文字通り刻まれたため理解する。


 試しにおもむろに機構を使用する。

 ほんの少しだけ抵抗力を高め使用可能なエネルギーに変換されるのを感じる。


 オーラがその分増しルアザの周りに力の流動が生まれる。


 そして立ち上がると同時に扉が開きファーレンが胸を抑えながら安堵に満ちた笑みを浮かべている。


「いや〜、成功して良かった、良かった。完全な定着と均等化は自分の体が勝手にやってくれると思うから成功だな」


 まだ機関を組み込んだばかりなため、若干安定はしないが時間経過で安定し、粗も無くなる。


「精神的に体力を使いましたよ」


 頭が回らないませんね、と続き自分の今の状態に苦笑する。


「ルアザに組み込んだ機関の名前は【輪廻の息吹】という物だ。まずは力を慣らさないとな。少し戦場で戦ってもらおうか」


「酷使しますね」


 鈍い思考では思うように体は動かないと判断しているためだ。


「仕方ないだろう? 人手がいないからな。それにあと少ししたら冥界は消える。何をしても大きな影響は生まれなくなる前に慣らしたほうが良い」


 仮に全てを吹き飛ばしても空間を遮断しているため、最悪な事は起きない。


「そうですね。ちなみに冥界を失ったら父さん達はどうなるのですか?」


「輪廻に還る。お別れだ」


 軽い感じ言いつつもその声は不安に苛まれる大きな後悔を残していない証拠であった。

 ファーレンは息子に会え、力と意志を託せたため特に悔いる点は無く、ルアザを信じるのみであった。


「そうですか。…………じゃあ、見ていてください。僕の勇姿を」


 ルアザは少し悲しげな表情を浮かべるが、息を少し吐いた後に朗らかな笑みを浮かべ、自信のある一言を言う。


「あぁ、見物させてもらおう」


「行ってくる」


 ルアザの足取りは軽く風のように向かっており、疲労は感じさせず、不安は風と共に散ったように感じる。


「行ってらっしゃい」


 ルアザは扉の外へ出て数十メートル程歩いた時、振り返りファーレンの方に軽く走ってくる。


「武器が欲しいです」


 汚れの無い瞳と常識を語るような声で言う。


「…………武器庫に行こうか。来なさい」


 このタイミングで慎重で冷静な行動に出たルアザに呆れるところはあるが、ファーレンはルアザを案内する。


 ◆◆◆




 舞う髪を通常通り首の後ろ辺りで束ねたルアザは様々な武器を手に持ち、背負い、魂力で掴みながら城の窓から飛び出す。


 弓に術式封入がされた矢を用意しながら、屋上へと向かう。


 そして、屋上で最も高い場所へと移動し弓矢を構え、封印された輪廻の息吹を大半を開きエネルギーを取り出し、敵をしっかりと狙った後に、弦を離し魂力で矢を押し出し加速させる。


 全力でただ、高出力で魂力を解き放つ。


 空気が破裂するような音が生まれ、城壁の遥か先で大爆発を起こすのを確認する。


「体に負担はあるが、慣れと工夫でなんとかできる」


 輪廻の息吹を使用した反動とも言える物が体内に走るのを感じ、現在こ状態で使用過多になれば、障害を残す可能性はある。

 だが、徐々に適応していき負荷を減らして行けばリスク無しで膨大な力を扱えるようになるだろうと判断する。


「身体能力は多少上がったかな。でもバランス能力はあまりか」


 先程放った矢は真っ直ぐに飛ばず横へ数度ズレたため、ルアザを中心に着弾点は斜めに大きく放れた場所であった。

 ルアザは動体視力などのバランス能力の上昇は高い上昇を期待できない。


 バランス能力という体に備わった力方向調整能力があまり変わらぬ事に顔を顰めながら大きな懸念を覚える。

 なぜなら、ルアザは力だけ手に入れただけであり、正当な方法で力を手に入れたならば同時に身につく技術がルアザには不足していた。


 技術は力の加減が大きく関わる。

 最低限な力とで動ければ、疲労感も少なくなり、無駄な悪影響を広まるのも防げる。


「戻ったら。ユーハさんに相談しよう」


 技術は力とは違い、順当にしか身につかないため効率的な修行方法を行う必要がある。


 ルアザは物理階層が有りそうな、遠い先へと視線を向ける。


 屋上から飛び降り地面を強く蹴り、城壁の上までたどり着く。

 そして、城壁から飛び降り、全力で魔術を行使することが解禁される。


 腕を振るうと同時に空気の壁を縦横無尽に吹かす。


 形にならない大規模な嵐が吹き荒れ魔族があり得ない方向に体を折り宙に舞ったり、体の一部が風に攫われたりと悲惨な光景が残る。


 次にルアザは指をパチンと鳴らすと電気が届く場所まで全てを死滅させる雷光を轟かせる。


 光った、と思った瞬間、感電死が確定する電圧と電流の奔流が魔族達の体を駆け巡る。


 肉が焼けた焦げ臭い香りが風に乗る。


 更にルアザは指を飛行している魔族に向ける。

 すると極太な〈雷撃砲《トルトニウム〉》〉が指先ではなく拳全体から放たれる。


「チッ」


 先程のただ電気を放出しただけの魔術とは違い、指向性の持った大電力が細かくジグザグを描きながら空気を貫いて行く。


 ルアザが狙った飛行している魔族は炭も残らず、体全体を灰に変えて、空気に溶ける。


 ルアザが小さく舌打ちをした理由は、指先から放つはずの〈雷撃砲トルトニス〉が拳全体から出てしまった事である。


 術式はいつも扱う〈雷撃砲トルトニス〉だが、電力生成量を増やして後の細かい部分は自分で行うという形である。


 そして、問題は自分で行う細かいが上手ではないことだ。


 電気は四方八方にすぐに散り、殺傷力が高くなるほど散りやすくなる。

 ただでさえ指向性を持たせる事に偏らせた術式を改良するのは気が重かった。


 全能感が無限に湧き上がるが、完璧にコントロールできない力は酷く醜く見え、すぐにでも美しくしたい。


「まぁ、簡単な物なら楽か」


 ただ効率を追求しただけの簡単術式は干渉されやすい物なため、基本的に術式は複雑になっていく。

 そのため、ルアザが指す楽な魔術の数は少ないのだ。


 意識を自らの体から慄く魔族に意識を向け、剣を持ち、地面の上を飛ぶように駆け出し動きの鈍い魔族の一人を切り裂く。


「……鈍い、下手」


 今行った剣の一振りはルアザにとって思わず声に出てしまう程下手であった。

 数ヶ月の片腕で剣を振っていたため、その影響がルアザの正確性に大きなブレを生じさせていた。

 魔術も剣術も辟易させられる。


「……修正すれば良い」


 二太刀目で高い正確性を半分以上取り戻す。

 次に扱いが難しい雷の魔術を対象の相手だけを撃ち抜く。


 ルアザは天才だ。

 天才とは天性の優れた感覚で困難事を容易に行える人物の事だ。

 経験とは違う直感に似た物を持っている。

 ルアザもその直感と今までの経験を利用し、迅速な修正を可能にした。

 だが、ルアザが目指すべき場所はそもそも衰えないという段階であるため、精進あるのみである。

 天才に果てしない向上心を持たせればルアザのように異常な成長速度で駆け抜ける事になる。


 オーラとフォースを扱い風と身に宿し纏う。

 周囲一帯の空気の流れが感覚になり、敵の位置や大きさを把握する。

 ユーハが教示した対軍勢の戦闘法であった。

 常に波状攻撃と一斉攻撃が繰り出される状況は全てが奇襲となるため、隙を無くし予想外を排除する。

 後は、自分で考えろ。


 技術の冴えを取り戻すには危険だが、実戦が一番良い。

 相手は必死になって自分を殺めようとしてくるため、嫌でも必然的に戦いながら成長しなくてはならない。

 実戦とは少し荒いが研磨材としては有能な類いなのだ。


 剣を閃かし、艶を追い求める。




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