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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第四章
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冥界の力

 ファーレンとルアザが親子水入らずで会話をしている時に突如、爆破音と共に突風が吹き横から強い光が照らされる。


「なんだ!?」


 ルアザは何も予兆も無く訪れた事態に驚き爆破音がした方向に首を向ける。


「速いな! ルアザ一緒に来い!」


 事態を知っているファーレンは爆破音の方向に一瞬鋭い視線を向けた後、ファーレンはルアザの服の襟を掴み部屋の外へと出ていく。


 そして、城の屋上へ入ると、二人の神がいた。

 一人は銀腕の軍神ヌァザがいた。


「ついに来ましたかヌァザ様」


 神妙な声でファーレンは言う。


「あぁ。あ、そうだルアザ。はい、これ義手な」


 ヌァザはルアザに自分の義手の予備を渡す。


「……大きさが合わないと思いますけど」


 明らかに肩の部分の付け根が義手の方が大きく、ルアザは困惑した表情をする。


「大丈夫だ。サイズの自動調整機能もあるから、付けてごらん」


 ルアザのその言葉を信じ、切り口に近づけると義手に磁石のように引力が生まれ引き寄せ合う。

 そしてルアザには合わせて少し小さくなり、少し時間が空くとルアザは驚いたように目を見開く。


 ルアザの意思が義手に伝わり、右手を握り肘を曲げ腕を回す。 

 違和感は無く、せいぜい人肌の熱は感じない程度だが、本物の右手と遜色ない精度に驚きを隠せない。


「すごい……! ヌァザ様ありがとうございます!」


「医療の神が作った物だからな当然だ。ま、喜んでくれてなによりだ」


「良かったな! ルアザ!」


 ファーレンはルアザの背中を軽く叩き、我が身のように歓喜の表情を浮かべる。


「やぁ、ファーレン。その子が君の子かい?」


 軽やかな声と共に三人の中へと、輝く金髪を持つ爽やかな青年の姿を持つ英雄の光神ルーが飛び込んできた。


「そうですよ。ルアザ、彼は光神ルーだ」


「始めまして、ルアザ君」


「始めまして、ルー様」


 ルーはルアザに握手を求めると、ルアザもそれに応じ握り合う。

 二人共似たような爽やかな雰囲気を持つため、若干絵になる光景であった。


「もしかして、君はなんでもそつなくこなすタイプかい?」


 ルーはルアザに興味を引いたようであった。


「自分で言うのもあれですけれど、だいたいの物は少し練習すれば、それなりのレベルまで上げられますね」


「やはり。君とは何か同じ匂いがしたんだよね」


 ルーは長腕のルーと呼ばれる程、何事に秀でておりルアザと同じく万能なタイプだ。

 ルアザの万能な才能をルーは嗅ぎ取ったのだろう。


「光栄です」


 あらゆる方面が並以下の器用貧乏ではないどんな方面にも平均以上の実力を持つ本当の万能人に似ている、と言われ喜ばないはずがない。


 気が合う二人は更に話そうとするが、ヌァザが止める。


「話は後でなルー。お前はいつも通り前線で戦え。いつもはファーレンも指揮をとっているが、今回はルアザも来た事だから、例の物を準備しておけ」


「わかったよ」


 ルーは頷き屋上から出ていく。


 都市の城壁の向こうを見ると、空から地面まで何かが蠢いておりこちらに猛烈な勢いで迫っていた。

 遠くをよく見れば山そのものと形容されるにふさわしい本当に山の大きさを持つ人型の巨身が何体か地響きを轟かせながらやってくる。


「ルアザここで見ていろ。お前が戦う敵を」


 不安げに瞳孔が揺れるルアザに気を引き締めるような声でファーレンは敵を見ながら言う。


 導くような声でルアザは緊張の糸を張り、全てを射抜くような眼力を持つ眼差しをやってくる敵の方へと向ける。


 ファーレンはルアザの紅の澄んだ瞳を見ると、安心しつつも少し悲しげに瞳を潤わせるが、ヌァザと共に屋上から出て行く。


 下からはドタドタと騒がしい音が聞こえ、視線の先はもう既に何発ものの爆発の火が立ち昇り、虚理階層のザレト森林を焼け野原へと変えていく。


 都市の建物からはどこからともなく、兵隊が現れ城壁の上に登っていく。

 城壁の上には様々な兵器が置いてあり、バリスタのような物が巨大な矢を放つと爆発する。

 蹂躙するかのように爆発の密度と頻度を高め、それに比例して赤い肉片が宙に舞う。


 ルーも魔術を使い無数の光を地面へと突き落とす。


「戦争だ……」


 血と炎と死の世界が広がっていた。

 この世界を形容するにはルアザが言った言葉が最も似合い、現在行われている事は正に戦争であった。


 惨い光景が続くが、ルアザは恐れることなく目を離さなかった。


 これから入る世界を少しでも知るために。




 ◆◆◆




 今回は巨身がいるのか、それも三体。

 こちらは物資や兵に底が見えているのに敵は底が見えないから嫌気が差す。

 かつてのダーナ神族とフォモール神族の戦争をいつ見ても思い出す。


 龍(竜)はいないから、まだマシだろう。


「諸君、確実に敵は減っている! 今のまま攻撃を続けろ!」


 兵達を鼓舞をする。

 少しでも士気が上がってくれればいい。

 しかし、今のままでは余裕が無く、何かあったら対応しきれるかわからない。

 三体の巨身を相手取る時に敵の精鋭級が攻めたてるだろう。

 こちらには一騎当千レベルの戦士は自分以外存在しない。

 ……これで、自分も最後になるのだろうか?


『ルー、西から悪魔共が何体かやってくる。それに対応してくれ』


『了解』


 弱音を吐いてても何も変わらない。

 自分は英雄ルーだ。

 万難の大群を打ち倒そうではないか。

 フォモール神族だけじゃない、数多の魔族を討って来たのだ


「活路はある。光射す場所が」


 闇が満ちる時だからこそ、光は目立つ。

 まるで影と光が逆転したようじゃないか。


 逆に言えば影こそ光射す場所だ。

 まだ我々は闇に包まれ堕ちてはいない、闇を影に変えてやる。

 灯火が尽きなければどこまでも闇に抗える。


 振り返り、彫刻の如く佇むルアザ君を見て。




 ◆◆◆




 ルーが槍を持ち、猛然とした勢いで空飛ぶ悪魔達に向かい突進する。


 悪魔達はそれぞれ別の方向へと逃げて行くが、ルーから放たれる幾重ものの波動が空全体に広がり悪魔達は痺れたように体を硬直させる。


「ぐあっ!!」


 そして、ルーが腕を自身の方へと引くようにすると、悪魔達は自由を失い、力を溜めているルーの元へと急速に引き寄せられる。


「侵略の罪を受けるがいい!」


 強烈な風圧を生み出すルーの薙ぎ払いで悪魔達は消し飛ぶ。

 だが、少しの時間でもルーが軍勢から離れたため、何体かが爆発の隙間を通り城壁へと向かうが都市を覆う結界によって阻まれる。


 だが、時間が経つにつれて爆発から逃れ城壁へと暴走するように走ってくる魔物達が増えていく。


 そのぶん結果の縁際に死体が並んで建て積まれていく。

 そして一定の数の死体が集まると死体の内部から赤い光を放ち熱を持ち始める。

 その熱の伝導が瞬く間に広がる。

 始まりの赤光が熱の臨界点を超えると城壁から放たれる爆発とは段違いの大爆発が引き起こる。

 それが、連鎖的に引き起こり何層にも張られた結界はガラスのように粉々に吹き飛び城壁が剥き出しになってしまった。


 衝撃波とも表される聞こえる暴風と熱が城壁の兵達に向かい襲いかかる。


「ぅぐぅごぁぁ!」


 内部にも外部にも伝わる空気でできた破壊の津波は声帯を狂ったように叫び声をあげさせる。


「立て! 速く立つんだ! 登ってくるぞ!」


 ルーと何人かの実力者は防御して耐えた者は突っ伏す兵隊達に激を入れる。


 兵達は揺れる意識を喝を入れ立ち上がる。

 顔は上へと向き絶望など一欠片もしていなかった。




 ◆◆◆




「ルアザ、来なさい」


 表情を真顔から変わらず、戦場を見ていたルアザにファーレンは声をかける。


 ルアザはその声で振り向き、怪訝そうにファーレンを見つめ首を傾ける。


「どうしましたか?」


「重要な用がある。移動しながら話そう」


 ルアザはファーレンについていく。


「これからルアザにガルトの冥界の力を授ける」


 何事も無かったようにファーレンは非現実の事を言うためルアザは困惑の表情を浮かべる。


「どういうことですか?」


「はっきり言うが、この冥界の存続の可能性は無い、遅かれ早かれ滅ぶ運命だ」


「なんで!?」


「もう完全に防ぎれない程、魔族が攻めてくるんだ。今回は巨身まで揃えてきた。確実に潰しにきている」


 ルアザが訪れる前にガルト地方の冥界は削られに削られ、何柱ものの神々が討たれついにはヌァザとルーしか残らなくなった。

 人材も物資も残り僅かだ。


 巨身は高位存在の中でも最も数が少なく、龍(竜)よりも比較的に強い。

 何よりも圧倒的なサイズによる、踏みつぶしで三体もいればこの都市も平らに変える事も可能だろう。


「なるほど」


 ルアザはファーレンの言っている事を理解した。

 ガルトの冥界の命運は既に別れ終焉へと向かっているという助けてやりたいと思える程の悲哀な状況を。


「どんなに考えても救う方法は無かったんですよね」


「直接的に救うのは無理だ。しかし、間接的に救うのはできるかもしれない」


「あぁ、それがさっき言った冥界の力を託すという事ですか?」


「そういうことだ」


 力だけ渡されてもそれは救済になるのか疑問だが、当事者がそれで満足するのならば救ったと言えるのではないだろうか。


「冥界の力というのは一体どのような物なのでしょうか? できれば具体的にお願いします」


 ルアザの立ち位置から冥界の力とやらを見ると、貰えるのは嬉しいが、安全なのだろうか? である。

 冥界の力と聞くと死の力と類義すると認識してしまうため、少し躊躇してしまう。


 ファーレンもそれは予測していたため、説明を始める。


「まずは冥界とは何かだ。冥界とは虚理階層にある固有空間だ。普通とは違う法則が働く空間だ思えば良い」


 ガルトの冥界は周りと隔絶された空間だ。

 端まで行けば境界があるのがわかるだろう。


「冥界の維持も莫大な燃料が必要だ。自然法則が違うということは周りのエネルギーを受けつけられない」


 型式が違うとも表現できる。

 一見同じ箱が二つあるとして、蓋をしめる時にもう片方は型式が異なるため、しっかりとはまらずユルユルになってしまうと同じ事だ。


「そして冥界は神と崇められる程の莫大な力を持つ高位存在の力の供給源だ」


「高位存在レベルの力を授けられるのは少し気後れしますね」


 人間にとって力の関係無しで高位存在は神と崇める物だ。

 その神の力が人間に入るというのは禁忌を犯しているようで若干気弱になる。


「あぁ、そのままなら爆散する。パァーンッとな」


 ファーレンは手を爆散を表現をするように広げ、肉片が散らばる様子を指で表現をする。

 人間に火山を入れるような物だ。


「冥界の力というよりは機構をルアザに組み込む。そして段階的な封印状態にする」


「でも、全開には使えないんですよね」


 いくら封印しようが僅かな力しか扱えないのでは意味は無いのではないかと疑問に思う。


「力ではな。あくまで機構だ。でも、使いすぎれば死亡する」


 そして、空気の動きを感じると共に属性の流れを感じる異様な雰囲気を持つ扉の前に立つ。

 扉をまた開けると属性の流れが強くなり、扉の先の環境は変わる。

 その扉が何度も続き、途中で淡い光を漂わせる属性飽和現象が現れる。

 扉を開ければ開ける程ルアザは顔色を悪くして足取りもふらつく。


「あぁ、そうか体質が導体なのか。それはキツイな」


 ルアザが壁に手をつき苦渋に満ちた顔で黙っているのを見てファーレンはルアザの背中を擦る。


 属性を通しやすい体質のルアザは体に外部にも内部にもダメージを受けているのだ。

 属性の流れはあるのに属性飽和現象が生まれる程、属性濃度が高い場所はルアザにとって弱いが毒霧が混ざっている場所だ。

 空気が毒になる。


 ルアザは属性を操作して自分の周りのみ普通の属性濃度へと変える。


「もう大丈夫です。行きましょう」


 力強い声が戻り再び歩む。


 そして、最後の扉の前につき扉を開ける。


 部屋の中は滝壺にいるかのような膨大な属性の奔流の嵐が吹き荒らしていた。

 体が燃えるような悲鳴を上げる前にルアザは結界で境界を作り出す。

 そして、結界の内側の属性を整えるようにする効果を付与する。


 ファーレンは激しく動き回る少し属性を穏やかするのみであった。


「話は戻るが、冥界を維持するためのエネルギーを得るために高位存在達は何をしたのかというと、冥界の外側エネルギーの利用だ。方法を単純に言うと、冥界の性質を半導体に変えるようにして周りの見えざる力の流れを貯まるようにしたんだ」


 想像するなら流れる川の中にそこそこ目の細かい網を用意し、川底に固定すると若干の抵抗が生まれる。

 その抵抗された水やせき止められた砂利を集め、エネルギーとして扱うのだ。

 未来の言葉を使うなら抵抗された水が水力発電で、せき止められた砂利が火力発電のような物だ。


「で、ルアザにその抵抗を生み出すための物と抵抗されたエネルギーを利用するための物を組み込む」


 エネルギー生成機能とエネルギー管理機能を組み込むのだ。


「人工的に超人を作れる物なんですね」


「属州には隠しているけどロゼリアにあると思う。人工的に英雄を作る宝具が」


「じゃあ、早速組み込んでください」


「……実はな、ぶっつけ本番なんだよ。計算上では成功するはずなんだ。でもやってみなければわからない。……失敗すれば冥界が爆発する。仮にも人体改造と同等な事をしているからな」


 不安に支配された声でファーレンはルアザの表情を伺うように言う。

 この不安だけは拭いきれない。

 計算と予測を何度も行えば、行なう程、闇蔓延る深淵へと向かっているように不安が無制限に生まれ強くなる。


「父さんは、やって後悔するか、やらかして後悔するか、やらないで後悔するか、のどれが良いですか? あ、全ては無しですよ」


 ファーレンはルアザの冷静で毅然とした表情から発される質問に信頼感と困惑感が生まれつつもどう答えるか、考える。


(計算上は大丈夫なはずなんだ。行けるはずなんだ。……あぁ、でも、失敗したら全ての努力が無駄になる!)


 ファーレンはすぐには返答することができず、悩みに苛まれていた。

 始まりの力か終わりの力になるかが、わからず葛藤で頭痛もしてきた。


 静かに返答を待つルアザにファーレンは一瞬視線をやる。


 ファーレンは不思議に思った。

 ルアザの紅の瞳の威を放つ美しさに。


(なぜそんな目ができる。死ぬかもしれないんだぞ)


 不安や恐れによる迷いのない証拠である揺れる事無い大いなる瞳を持てる事に疑問に思う。


 そして、思い出す自分が次期総督だった頃を。

 気高い志を持ち明確な進行方向と溢れる勇気を持っていたあの頃の自分と同じ瞳だと。


 輝かしいあの頃が脳裏に映される。


(そうか、未来を恐れていないのか。ハハ、息子比べて自分は何たる様だ。…………老けたなぁ)


 ファーレンは思わず苦笑してしまう。


 同じ赤い瞳なのにルアザは金剛石の如く確固であり、自分は抱影の如く揺蕩している。

 恐れなしの子に成長を強く感じると共に自身の意欲の低下などの老化を感じざるおえなかった。


「未来は常に不安定だ。だが、不安定ではない。なぜなら現在の結果で未来は変わるからだ。未知と不定の未来は恐ろしい。だが、未知に足を踏み入れた者だけが光を放てる」


 力強い声と共に言う。


「父さんに必要なのは覚悟だ。望む未来を掴む意欲、やる気だ。やらなくては始まらない」


 ルアザは正直始めて頼りがいのある様子に少し驚きつつも笑みを浮かべる。


「ルアザ、父さんと一緒に始まりの一歩を出そう。勇気の一歩を……!」


「うん。(母さんとクラウと同じ安心感)」


 初対面の親子が並び立ち進み始めた。


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