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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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倒れそうな塔

 ルアザとアイラルは自身とルキウスとリナに飛行魔術をかけて、最短距離で攻略グループへと向かっていた。


 上からは時折、塔の破片のような物が落ちてきているのがわかり、戦闘中ではないかと推測させられる。


 不安と憂慮が胸中を支配する中、攻略グループの無事を祈る。


「皆! 大丈夫!?」


 そしてついに追いつき、心配の第一声が発される。


「アイラル?」


 攻略グループの視線は空を浮かぶアイラルと自分達の中心にいるアイラルの間を行ったり来たりしていた。


「そこの私は偽物よ! 皆、今すぐ離れて!」


 剣のように鋭い目つきを杖を自分の姿をした何かに向けて、今すぐにでも攻撃しそうな勢いであった。


「あなたこそ、なんで私の真似をしているのよ!? あなたこそが偽物でしょ!」


 糾弾の声が否定と糾弾の声で返される。


 空のアイラルと地上のアイラルは睨み合い、剣呑な雰囲気を膨らませる。


 周りの人々も二人のアイラルに困惑する。


 他の三人も同じ形となっており、怒りの火花を弾かせていた。


 だが、そんな時攻略グループを襲う夢現生命体が現れていた。


 攻略グループの人々もとりあえずどちらかが本物かは置いておいて、直近の危険である駆けて来る夢現生命体に対応する。


 二人のルアザは既に剣を激しく交え合っていた。


 自分がトラウマ同然の物を行うなんて、本当に自分であったらあり得ない事だからだ。

 だから、容赦皆無な冷たい顔で攻めていた。


「ちっ……」


 だが、偽物のルアザは強かった。

 自身の真似をしているだけあって、実力はあるが、戦い方が少し違い自分ではないと更に感じられる。


 このままでは時間がかかりすぎると考える。

 時間が味方するのは本物ではなく、偽物だ。


(こんな時にユーハさんがいれば)


 歯痒い思いだが、現在の僅かに拮抗している実力を今ここで変えなければ、不利なのは自分だ。


 今のままでは何も解決しない、ならばこちらも時間を利用しよう。


 ルアザは距離を取り、剣に莫大な属性を集め始める。

 滅多にできない長い溜めがある攻撃手段を行った。


 属性はルアザの意思に沿い、エネルギーを貯蓄するための術式として形となる。


 そして、限界までに溜めた瞬間、一閃を放つ。


 剣身は伸び、エネルギーの刃が大剣のようになり、振るわれる。


 偽物のルアザも当たらぬように避けようとするが、無限に伸び膨らみ続ける刃に空間は歪み、剣を中心に溢れ出した力が偽物のルアザを飲み込む。


 ついでに周りにいる夢現生命体を何匹か巻き込む。


 偽物のルアザは影のように薄い混沌とした肉となり、塔の壁へと激突する。


 僅かに動く肉を焼き払い完全に消滅させる。


「奴じゃないか……」


 期待はしなかったが、頭の片隅にどうしても奴に対して殺意が湧く。


 そして、ルアザは他の本物を支援して次々と偽物を倒していく。


 そして、塔の攻略グループと協力し、ひとまず危険を払い安全地帯を作り出す。


「なんで、騙されているんですか」


 現在の指揮者を集め、少し不満が含んだ声質で問い詰める。


「勢いに流されてしまったのじゃろうな」


 マティアトスは疲れた表情で、そう言う。


「いや、そこ統制していくださいよ」


 ルアザは司令塔としての役割と責任を放棄するな、と暗に言う。


「すまん」


「まぁ、いいですよ。やってしまったものは仕方ないので。次の行動を考えましょう」


 責めるようや口調から一転、晴れやかな声と共に手を叩く。

 困惑する人達を落ち着くように促し、すぐさまに乱れた秩序を取り戻し、再び健全な統制がひかれる。


「すごいな。カリスマ性に近い、不思議と信じられる」


 それを後ろから見ているマティアトスは感心するように、唸りをあげる。




 ◆◆◆



「「「あーあ、こんなに汚れて」」」


 まだ冷気が漂う場所に前が開いた白い服を着た、頭が三つ、腕が四本ある人間と比べて若干大きめな体を持つ者がいた。


 四本の手も一つ一つ形や色が違い、その中の一つを地面に触れると、ルアザ達が封じ込めた大鎌持ちが地面から浮き上がってくる。


「「「試作型じゃ、こんなもんか。でもコストが安いから、脚本の要求物はできているから、まぁ、いいか」」」


 四本の腕で試作型の大鎌持ちを掴み、六つの目で状態を観察する。


「「「軽すぎるか……」」」


 試作型の状態を考察するに、一気に集中砲火を受けた痕跡が残っている。


 試作型は耐久性、攻撃性を強く作っているため、完全に壊れる事は無いが一度圧倒されると、瞬時に撃破される弱点を持っている。


 速い攻めを行うために重く作らなかったが、それが仇になったようだと、反省する。


「「「試しにコスト度外視で、硬く、強く、速い、試作型ver2を」」」


 三つの口は愉快な笑みを浮かべて、四つの手を動かし、試作型を改造しはじめる。

 布は金属へと変わり大鎌が大斧に変わり、鎧の腕部分に大砲らしき物が付け足される。

 それに加えて先程の大鎌の刃の部分が長い尻尾のような物の先端に結合させられる。

 謎の薬を霧状に噴射させ、付着させる。


 最後に顔の部分と思われる場所に橙色に光る鉱石を入れられる。


「「「行ってこい。〈試作超軽量型殺戮兵器キルマシン・ゴーストタイプ〉から生まれ変わった〈試作型強化殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉」」」


 そう言うと、橙色の鉱石は鈍く光り、指を指された方向に向かう。


 そして、異形の者は期待の笑みを浮かべながら、高みの見物と実験の結果を見るために、空高く上がり姿を消す。




 ◆◆◆




 塔の壁が爆砕音と共に破壊される。


「「「「!?」」」」


 塔の中にいる者達は、突如やって来た明らかに危険が目の前に迫った音に体を跳ねらせ、一瞬頭が真っ白になる。


「全員臨戦態勢! 距離を取れ!」


 いち早く、マティアトスは乱れる思考を統制し、素早く指示を出す。


「ぐあっ!!」 「ギャアっ!」 「たすけ……」


 指示を出した瞬間三つの悲鳴と叫声の遺言が響き渡る。


「〈大爆発エクスプロージョン〉!」


 炎、熱、光の急速大膨張の魔術が三つの死体の間から輝くと、更にに壁を木っ端微塵にし、景色がよく見える大穴を開ける。


 視界が塵埃で遮られると、塵埃の向こうから極太の赤い熱線が直進してきて、何人かを巻き込みながら、マティアトスに向かってくる。


 ルキウスとルアザがマティアトスの前に出て、熱線を防ぐが、張られた結界は瞬き程度の時間を拮抗するのみで、容易く貫かれている。


 だが、ほんの僅かだが時間を稼げた。

 マティアトスの危機回避本能が動かぬ体を無理矢理動かす命令を送る時間と行動する時間が生み出された。


「ハァ、ハァ、ゴホッゴホッ!」


 マティアトスは必死な形相で指示を出そうとするが、先程の無理な動きに体がついてこれず、声が出なかった。


「アイラル! お前が指揮して皆、逃げろ!」


 鋭い目つきで口を開くが、咳をするマティアトスを見たルアザが代わりに指示を出す。


 塵煙を切り裂いてやってきたのは〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉であった。


 大砲の左腕を向けると、頭サイズの光弾が連射される。


 だが、後ろにはまだ、逃げられていないため、ここで避けるわけにはいかなかった。

 ルアザは体を回転させるように激しい動きで確実に上や真横に弾くようにした。


 手に伝わる感覚は骨に響く程、強烈であるが、しっかりと自分が思った方向に弾けているのがわかる。


 だが、最後の一発は処理が追いつかず、掠る程度であったため、軌道が変わり今逃げている人達に向かってしまった。


(まずい……!)


 ルアザも逃げる人も必死な顔であった。


「俺に任せろ!」


 横から飛び出してきたのは大剣使いの〈剛人オーク〉ローガ・ゼンレンティが大剣を横振りしながら飛び込んできた。


 その大剣はしっかりと、光弾を弾き飛ばし危機を防ぐ事に成功した。


 そして、ローガは強い目つきでルアザの方を見て頷く。


 ルアザも小さく頷き、目線を〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉へと戻す。


 ローガは逃げる人々の最後尾について下に降りていく。


(残ったのは三人か)


 マティアトス、ルキウス、ルアザがこの場に残った。


「後ろは任せよ」


 二人はコクリと頷き〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉に挑んでいく。


 ルアザは剣ではなく、ルキウスと同じように槍を使う事にする。


 魔術で編まれた槍を手に持ち、間に挟むように陣形を取る。


 〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉はマティアトスを狙い発進するが、横から強い衝撃を喰らい急停止する。


 そして、その隙を狙いルキウスもルアザと同じように槍の着撃と共に衝撃を放つ。


 それでも無傷で動じない〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉に二人は思った以上の重さに無言で焦りを出す。


 そんな〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉は右腕の大斧を振り回し、二人を払い除けようとするが、マティアトスの氷の巨砲が衝突する。


 次に青炎の一条を放つが、尻尾の巨大な刃が淡く光り吸収される。


「アレか!」


 ルアザとルキウスの脳裏に先程戦った大鎌持ちを思い出す。


「大きく広がって!」


 ルキウスはマティアトスに向かい大声で叫ぶ。


 尾の熱刃の一閃が光と熱が振りまかれる。


「いや、これはチャンスさ!」


 ルアザは逆の事を言い、斬裂の嵐の中に飛び入る。

 飛んでくる斬撃は雑な物ばかりで無秩序な方向へと飛んでいく。


 恐ろしいのは掠れる程の速さで動き回る刃の付いた尾である。

 その尾も見切りが可能で難なく避けられる。


 ルアザは両手に力を入れ魔術を組み合わせた掌底を放つ。


 金属が無理な力が加わり軋む音と同時に金属音と爆音が合わさった音が〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉の中と周囲に響き渡り吹き飛ばす。


 金属が大きく歪んだ音と触感を耳と触覚に入れたルアザは、自分の選択が正解だったと笑みを浮かべる。


「見事! 〈噴火イラプション〉!」


 遥かなる青空を熱の赤で染めた戦術級魔術が〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉に直撃する。


 塔の壁は小規模ながらも火山噴火と同等な魔術〈噴火イラプション〉にほとんど塵にされ、自身の重力で倒壊すると思いきや、倒れずそのまま建っていた。


「やったか?」


 ルアザはじっくりと炎の向こう側を睨む。


 三人は〈噴火イラプション〉とは別の熱の属性を感知する。


「離れるのじゃ!」


 マティアトスはその属性の形をすぐに読み取れ、〈試作強化型殺戮兵器キルマシン・ストロングタイプ〉は自爆しようと残ったエネルギーを全て外に放出しようとしていた。


 ルアザもルキウスも少し遅れて自爆の気配に気づき青ざめる。


 属性量から鑑みるに、〈噴火イラプション〉と最低でも同じ威力はあると、推測できたからだ。

 今逃げても間に合わないとわかってしまった。


 だが、三人はここで死ぬ気は無い。


 三人は壁が崩壊した向こうの空中に逃げ、三人が短時間でできる限りの高性能な防御方法をする。


 三人が張った結界は粉々に砕かれ、遥か彼方に飛ばされる。


「ルキ! ルキウス!」


 大爆発の音共に上を見上げたリナはルキウスが血を吐いて衝撃波にぶつかる瞬間を見て、悲鳴に似た声でルキウスの名前を呼んだ。


キラーマシンでは、ありませんキルマシンです。

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