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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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夢のように見えない不安

「おや、ルキウスさん。貴方もここのグループで?」


「えぇ。ということは、そちらも?」


 フフフ、アハハと互いの長い睫毛を穏やかに曲げ笑い合う中、アイラルとは違う形で興奮の声を上げる物がいた。


「こ、これはルキ×ルア? うん、ルキ×ルア! …………ガハッ……!」


 鼻から血を出し、心の底から幸せそうな表情で倒れる。


 いきなり倒れた女性にルアザは状態を確認しようと急いで近づくが、その前にルキウスに肩を掴まれて止められる。


「大丈夫です。いつもの事です」


「えっ、ですが」


 心配な表情を浮かべるルアザを見てルキウスは倒れた彼女の頬を軽く捻る。


「起きて、リナ」


「う、うう私は。はっ! くっ、今度はこの尊み耐えれた……!」


 記憶障害していそうな顔から何かと戦い勝利した戦士の顔をして目覚める。

 ルキウスは慣れたような様子をするが、呆れたような顔を見せる。


「耐えていないから。いつもの発作かい?」


「発作とは失礼な。栄養を過剰に摂取しすぎただけ。責任はルキにもあるからね」


「なんでだよ」


「あの、大丈夫ですか?」


「は、はいーっ! もちろんです! 元気いっぱい満杯です!」


 彼女、リナはルアザに話しかけられて緊張した様子で、返答する。


「良かったです」 


 ニコリと笑みを浮かべ、安堵する。


「尊い………」


 またもや、気を失いそうになるリナの頭をルキウスはため息を吐きながら叩く。


「諸君注目!」


 緩んだ空気を引き締めるような、軍人特有の張りがあり、よく通る声が響き渡る。

 だらしらない顔をしていたリナもその声と共に表情は引き締まる。


「塔グループの統率と指揮を取る。マレイス・レトラックだ!」


 若干、白髪が目立つ壮年の男性だが、体はしっかりと鍛えられているのがわかり、経験と肉体が釣り合った頼りになる印象であった。


「三十二人のグループだが、このグループを四つのチームに分け、そのチームの隊長を決める。隊長に関してはこちらの方で独断で決めさせてもらった」


 彼が塔グループのリーダーであるため、勝手に決められても指示にはしっかりと従う。

 そして、次々と決定を為され組織としての形が築かれていく。


「私がこの第二チームのリーダーになりました。若輩の身ですが、精一杯頑張ります。皆さんも意見があるなら、遠慮せずにどんどん言ってください」


 ルアザは微笑みを浮かべながら、隊員の前に立ち語る。

 隊員達もルアザの準優勝をした実力を理由に不満な声は出ずに受け入れる。


 そして、第二チームは得意な物などから、なにができるかまで、詳しく互いの情報を伝え合う。

 情報から鑑みた陣形と作戦を考え、ルアザはチームリーダー同士での作戦などを緻密に話し合う。


 ルアザの第二チームはある程度万能なため、殿を担当する。

 ルキウスの第一チームが先頭を務める。

 グループリーダーがいる第三チームが全体の指揮を取りやすい二番手におり、三番手に詳しい調査と、もしもの時に主力となる魔術師達を固めた。


 そして、塔の調査が始まる。




 ◆◆◆




 塔の周りを全体の拠点と、その拠点を守る拠点グループが調査に行ったグループ達に思いを馳せていた。


「会長、本当にどうなっているのかな?」


 木の枝の上に座り足をぶら下げているアイラルは近くにいるマティアトスにどこか不安気か声で聞く。


「十中八九、ワシらは何か事件の渦中にいるのだろう。セレン殿が見つからない事は気がかりじゃが、それが犯人の性質を悟らせられる」


 セレンという存在は、神殿内で強固な地位を築いていた。

 マティアトスはセレンがその地位に就いている理由を知っている。


「え! 犯人がわかるの?」


「うむ。あくまでも推測だが、高位存在が犯人だろう。悪魔とか魔神とか呼ばれるタイプのな」


 魔の高位存在。

 秩序を嫌い、混沌を好み、自分以外のものは全て欲望のままに扱う高位存在、悪魔としか言いようのない存在だ。

 彼らの言い分は自由と純粋らしいが、その自由と純粋がたちが悪すぎて悪魔以外悪影響しか与えない。

 大多数から怒りと恨みを買いまくってるのだ。


「目的はなんでしょうかね?」


「あいつら何を考えているか予想できん。……単純に楽しんでいる愉快犯という場合が多いから、今回も愉快犯かもしれん」


 悪質な狂人に経験は通じない。


「も~、迷惑すぎるよ。私、明日までに提出しなきゃいけない物があるのに!」


「あぁ、そうだ。次、納期遅れたら減給」


「私がなんで! 悪いのは悪魔共だよ! 新しい杖が欲しいのに!」


「悪魔共に責任は取れない。取れるのはお前だけだ」


 アイラルの現実に戻っても苦しい思いをすることは確定されたため、悲鳴をあげて頭を抱える。


「ん?」


 アイラルは悲しみに満ちた表情を上げると、視線の遠い先に何かが入ったような気がして、確かめるために飛行魔術を行い、上から見る。


「あれは、夢現界調査グループの人達だ……!」


 塔の調査グループとは別に夢現界調査グループの集団があり、周辺の調査を任されたグループである。

 そのグループが全員が走ってこちらに向かってきている


「アイラル! ここを離れるぞ!」


 そう言うと同時にマティアトスはアイラルを魔術で掴み自身の体を浮かせて高速移動を為し、拠点守護グループの中心へと向かう。


「第一、二のチームは右方へ、第三、四のチームは左方へ分かれ、罠のポイントにて待機していろ。そして合図と共に挟撃して救助に向かうぞ!」


 マティアトスはすぐに指示を出して、周りの人も迅速に動く。


 周辺調査グループは夢現生命体の群れに襲われていた。

 リーダーの素早く優れた判断で被害無しだが、徐々に体力を減らしているため、距離も近づいていた。


 そして、陣形が組み終わり調査グループの左右から様々な遠距離攻撃が行われ夢現生命体に命中する。

 今回は群れとあって一体、一体は弱いが取りこぼしが出た。


 調査グループのリーダーが左右をチラリと見ると叫ぶ。


「起動!!」


 その言葉が発されると、地面が渦を巻き始める陥没と同時に水が吹き出て土砂崩れが引き起こる。


 調査グループはすでに罠の領域から離れているが、夢現生命体は土と石、泥水に飲み込まれ大地に還っていく。


 そして止めに冷凍させる。


 白の冷気がその場を包み静かな空間が形成される。

 だが、この場にいるものは油断無く武器をそれぞれ構える。


「…………皆ゆっくりと退くぞ」


 マティアトスが小さな声で命令を出し、指揮する場所が動くと全体もそれに合わせて動きはじめる。


 そして、塔の周りに被害無く再び集まり緊張を崩す。

 そして、調査グループリーダーに詳しい話を聞き始める。


「何があった?」


「なんの気配も無く突然、グループのすぐ近くに夢現生命体が大量に現れたんだ。そして、襲われて今至るという感じだ」


「なるほど。不可解な現象が多く起きると言われる夢現界らしいのう」


「困りましたよ。対処方法が気をつけるくらいしか無いですよ」


 ティウスが複雑な顔をして、頭を悩ませていた。


「何か、前兆とかなかったのかの?」


「無かった」


 申し訳なさそうに首を横に振る。


「もう一回とはいきませんよ。全体に危機をもたらしますし」


「いや、ここは多少の危険を許容して情報を集めるべきだ」


 ティウスの慎重意見とは逆な積極的な意見をマティアトスを出す。

 どちらも正しい意見なため、互いに否定しきれなかった。


「少数精鋭で機動力の長けた部隊を作ろう」


 妥協案として出される。


「そうですね。問題は誰が行くかですよ」


「人数は数人程度で万能なタイプが良い。ワシは体力があまり持たぬし、全体の指揮を取らねばならぬから却下じゃな」


「じゃあ、自分が」


「お主は副リーダーじゃ。もしもの事を想定すると、許可できん」


「とりあえず、塔グループを呼び戻して仕切り直しますか」


 どんどん、不利な状況になっていくのを感じ、何か光明となる篝火を求めずにはいられない。

 自分達が問題解決を確実にするため慎重すぎるだけなのか、ただ命が惜しくて臆病なだけなのかわからなくなっていく。



 ◆◆◆



 そして、最初と同じような状況に逆戻りをする。

 進まない現状に皆は顔を暗くして不安を隠せなかった。




 ルキウス、アイラル、リナとルアザを含めた合計四人が呼び出される。


「何かご用でしょうか?」


 突如呼び出されたルアザが代表となって用を早速聞く。

 そして、少数精鋭作戦について説明を受ける。


「なるほど。私は大丈夫ですよ」


「僕もです」


 ルアザ、ルキウスは快く了承する。


「フフ、溜まっている仕事をチャラにしてくれればいいよ!」


「ダメ。お前は上司命令で頑張れ」


 取り引きとは対等な関係だからできることだ、上司しかいない司令塔で部下のアイラルの下心満載な要求は権力でねじ伏せられる。


「リナはどうするの?」


 どこか、怯えている表情をしているリナを安心させるようにルキウスは語りかける。


「怖いけど、ルキが行くなら、行く。行きます!」


 その声を聞き、目を瞑り、再び目を開けると強い意志が宿った瞳をしていた。

 ルキウスもその燃える瞳に当てられ自信がついてくる。


「ありがとう。僕も君がいると心強いさ」


「ということで、皆、了承しました」


「よし、臨機応変に頼むぞ。お前達は我々の希望になり得るかもしれない」


 ティウスのその言葉に四人は頷き、期待に応えるよう努力することを決意する。


 そして、臨時の少数精鋭部隊が完成した。

 皆、十代後半程で若いが優秀であることは、この夢現界での活動でわかり、選ばれたメンバーなのだ。



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