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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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夢にて集う英雄候補

 体内時間が目覚めの時を知らせる。


 だが、視界に広がるのは部屋の天井ではなく、雲一つない鮮やかな青空であった。


 自分の最も新しい記憶と、現在の情報と大きなな食い違いがあり、朧気な頭が困惑に支配される。


 だが、起床後すぐに訪れる眩しい日光と然程変わらない強烈な刺激であることは確かである。


「?………」


 徐々に思考は鮮明になっていき、異常に気づき始める。

 一度気づいたら、六つの感覚器官も目が覚まし、脳がすぐに周りの情報を集めるように指示する。


「!!」


 短時間で集まった情報は驚愕、疑問、焦燥感、不安感などを抱かせるのは十分な量であった。


「えっ!? どうなっているんだ!!」


 闘技大会に出場して敗北した一人が悲鳴と遜色の無い声を上げる。


「誰かー! 誰か! 誰かいないのか!」


 とりあえず、得体のしれない状況に陥り、自分の能力では対処できなさそうなため、助けの声を出す。

 一人でいるよりも二人いた方が、リスクは分散されるし、互いに共感し、安心できる。

 不安で悩まされる思考を明瞭に比較的に冷静な状態へと持って行けるからだ。


「……誰もいないのか?」


 しばらく、声を上げていても虚しく声は響きもせずに消えていく。


 彼はキョロキョロと首を回して周りの景色を観察するように見つめる。

 そして、景色の遠い先に白い線のような物があり、青い空に目立つため、注目する。


「白い線? いや、建造物か?」


 目を凝らし、よく見つめると下から上にかけて徐々に細くなっており、滑らかに細くなるのではなく階段状に凹凸をつけて細くなっているからだ。

 あくまで推測だが、何かしらの建造物だと判断し、特に行く場所も無いため、天を昇る白亜の塔へと足を進める。

 太陽が浮かんでないのに木漏れ日がある林の中を歩いて、明らかな異常事態を不安が常に忍び寄るが、今は耐えるしかない。




 ◆◆◆



 塔の周りには数多くの人々がおり、知り合いであれば、無事を喜び、赤の他人でも微笑みを返すなどの安心感を示させる光景が広がっていた。


 そして、知識と知恵を司る魔術師達が集まり、現在の状況について話し合っている。


「たぶんだが、ここは精神階層空間、通称、夢現界なのでは?」


「いや本当に精神階層か? どこかの高位存在の固有空間かもしれないぞ?」


「どっちもという可能性がある」


「どこぞの高位存在が精神階層に固有空間を作っている。支配していたら面倒すぎる」


「いや、夢現界だからまだマシだ。魔界であったら終わるぞ」


「天界が良かった」


「贅沢言うな。この夢現界の創造者、支配者がヒュプノス神、オネイロス神であってくれ」


「もしかしたら、冥界かも」


「泣く」


「話を戻そう」


 脱線しかけた話題を戻す。


「なぜ精神階層だと、判断できた理由は神殿から連絡が来たからだ」


「連絡が取れるのか? じゃあ早速救助を呼んでくれ」


「すまないな語弊があった。伝えられたに近い」


「どういうことだ?」


「そうだな。夢現界に飛ばされる瞬間、何の眷属かわからないが伝えられたという形だからな。それで最後で接触もない」


「怪しすぎる。もしかしたら、我々を貶める言葉かもしれない」


「どちらにせよ、結局わからないから、大きく分けて二つのパターンを予測してこれからの動きについて、対応策を出そう」


 そして、魔術師達は壮絶な討論をし始め、対応策を研磨して洗練させる。

 ある程度まとまり始めると、周りが若干騒がしくなり、それに魔術師達は気づくと、目を見開き歓迎の意を示す。


「マティアトス老師。ご無事で」


「お前達も無事で安心したわい」


「我々は師がいるだけで心強いです」


「ちょっと、ちょっと私の事を忘れてもらっちゃ困るよ」


 元気な活発な声と共に現れた自信たっぷりな様子の少女であった。

 ゴホンと咳を一つして声を出す。


「この魔術会きってのとっても可愛い天才魔術師アイラル・フロッテちゃんを忘れてもらっちゃ困るよ!」


 一際激しい存在感を放つアイラルに皆は若干苦笑しながら呆然とする。


「お主、本戦の第二試合で負けたおったじゃないか」


「私まだ十六歳ですよ!? 〈森妖精人エルフ〉の熟練精霊魔術師に勝てるわけがないでしょう!?」


「君と同じ十六歳の準優勝者がいるが」


「誇らしいですね!」


 胸を張って満面な笑みでそう言う。


「まぁ、良いわ。なんか伝えたい事があるんじゃろ?」


 目立ちたがり屋のアイラルだが、今回はちゃんと用があって訪れたのだ。

 無邪気で振りまく明るい笑顔を消して硬く真面目な顔になると、周りの人々も覚悟するようにな顔を浮かべる。


「精神階層に位置していることはマティアトス老師が解析してわかりました。皆さん。悪いニュースです。魔物がいることを確認しました」


「ワシも確認したから間違いは無い」


 疑いの色を消せない人もいるため、マティアトスは注釈を言い情報の信頼性を高める。


「数は?」


「確認しているのは、ワシとアイラルの二体だ。最低の数という意味合いじゃがの」


 まだ非確認の魔物がいる事は誰もが、脳裏に浮かびあがる。


「じゃあ、倒せばいいじゃねぇか」


 とある戦士が気合に満ちた声で言うが魔術師達は暗い顔だった。


「どうしたんだ? 幸いここには闘技大会出場者しかいない。つまり足手まといと言える奴はいない。皆でしっかりと戦術を練っていけば、なんとかなるはずだ」


「危険すぎる」


「それはそうだが、危険を排除する方が大事じゃねぇか?」


「例の魔物を夢現生命体と呼称する。最初に結果を言うが、殺されれば、精神の消滅だ。この世界、夢現界で死ぬということは、ハイリスクすぎるのだ」


 死ねば転生などない解放とは言い難く、次は無く消滅するという天界の楽園にも行けずに虚無に還る。

 想像が上手くできないが、死よりも恐ろしい何かだと感じる。


「そ、そうか……。ちなみに精神が消滅すればどうなるんだ?」


 戦士もその恐ろしさが自身を走り抜け、小さな声で納得した様子を見せる。


「元の世界にある肉体は呼吸しかしない植物状態になる。本当に言葉通り生きた肉塊となる」


「……無茶言ってすまなかった」


 周囲の雰囲気は暗く希望の灯が風で揺れ、大きく小さくなった。


「皆落ち込まないで、良いニュースもあるよ!」


 曇り空の雰囲気が漂う中、一閃の輝きを放たれた。

 皆は視線や首をアイラルの方へと向ける。


「この塔を登ればいいのよ! 解決する努力をしなくちゃ、何も変わらないわ!」


 先程から語る魔術師は額に手を当てため息を吐くが、覚悟を決めたようにアイラルに言葉を放つ。


「それはニュースではない、提案というのだ。だが、このティウス・ラ・ザルトライト、その案に賛同しよう。だが、一撃全滅を防ぐためチームを分けたい」


 己に纏っていた恐怖を拭い去るように名家のザルトライト家の一族の一人と再確認するようにフルネームを言う。

 そして、自信を持ったのか不敵な笑みを浮かべ、周りの人々に提案をする。


「うむ、ティウスに賛成じゃ。元の世界の体は無防備となっている。一刻も早く事態を解決しなくてはならない。それつまり「あーもう、おじいちゃんの話は長い」…………皆共に頑張ろう」


 長い演説らしき物が始まりそうであったため、アイラルは自分の上司の話を悪気もせずに途中で無理矢理止める。

 豊かな体毛を沈ませて若干縮んたように見えるマティアトスであった。


 そして、隠居一歩手前の老人を置いて、アイラルなどの太陽と関係性が高い青葉の若者達は希望を失わずに、自信とやる気を漲らせる。

 そして、ティウスなどの社会の中心である労働世代の中年達は現実味のある真面目な表情で会議をしていた。


「わぁ、私よりも綺麗! 髪はちょっと固いけど、それが良い感じのストレートになっているしサラサラ! ねぇ、何かケアとかやってるの?」


 そして、ルアザもしばらくたってここに訪れ、注目を浴びた。

 誰もが、ルアザに見惚れる中アイラルはその群中を抜けて、ルアザの周りを歩いて髪を遠慮なく触っていた。


「いや、特には」


 ルアザは顔には出ないが、少し驚き呆然していた。


「えぇ!! 羨ましい! 世の女性が大金を払って維持しているのに! でも、考えて見ればこの髪質だから、こんなに長く伸ばせるのね!」


「自分でも便利だと思っていますよ」


 アイラルの近いが嫌悪感が無く、逆にに親しみやすい雰囲気に当てられたのか、ルアザも少し明るい声で返答する。


「声も上品で美しい! 本当に性別がわからないね。ちなみに、………………いや、ダメよこういうのは謎だから良いのよ! 絶世の美貌を持つ性別不詳の神秘的な実力者! 良いね! 良いね!」


 興奮度がどんどん上がっていくアイラルを見てルアザは少し苦笑をしつつも、おもしろく仲良くしたい人だ、と思った。


「こら、アイラル。失礼だろう、大人しくしてくれ。その美貌、ルアザ・ミラレアさんですよね。でしたら闘技大会準優勝選手に会えて光栄です」


 アイラルの後ろから、ティウスがやってきており、騒ぐアイラルの頭を軽く叩いてルアザの方へと向き直る。


「ありがとうございます。あと、今どういった状況でしょうか?」


 そして、ティウスがルアザに事態を説明する。


「なるほど。四つのチームに分けると」


「そうです。貴方にはこの塔の調査グループに入ってもらいます」


「構わないですけど、リーダーは誰にするのですか?」


 基本的に今この場いる人達は我が強くリーダーを選ぶ際に正当な理由がなければ、不満が出てくる事を懸念した。

 ちなみにルアザは人を率いた経験は無い。


「ちょうど、軍で部隊の指揮官だった人がいるのでその人がリーダーです」


「わかりました」


 そうして、ティウスはアイラルを掴んで去って行く。


 ルアザは塔グループが集まっている場所へと向かう。


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