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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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本戦準決勝第二試合

「なるほど、そういう事ですか」


 セレンの視界に広がるのは地平線の先にまで、広がる華麗、多様、豊潤な花畑が存在していた。


 百万人の人口を擁する超大都市ロゼリアにはまず、こんな花畑を広げられる程の土地は無いため、幻覚の類、もしくは本当にこういった場所に飛ばされたという、合計二つの可能性を一瞬で求める。


「しかし、私はどうやってここに来たのかわかりませんね」


 飛ばされた可能性だとしたら、転移された時の違和感が無さすぎるし、精霊の加護とも言える物が付いているセレンに何かあったら、ノワスとフェサルがすぐさまに来てくれるはずだが、来ない。


 気まぐれの精霊だが、セレンは長い付き合いで余程の事が無い限り、裏切る事は無いと断言してもいいと思っている。


「本当に突然ですね。準決勝で試しに負けてみて、反応を見ましたが、ここまでとは」


 資料ではセレン以外の敗北者はまだ、ごく普通に生活をしているはずだ。

 当初、予想していた試合の敗北が条件というのは外れたかもしれないと、悟るが、可能性の一つとしては捨てられない。


 時間経過という条件を外せば、いつでもどこでもこのような事を起こせる。

 自分は圧倒的な強者だ。

 様々な精霊と契約した、精霊魔術師として、頂点に立つ存在だと。

 高位存在に深い関わりがあるというのは人類側でも高位存在側でもかなり、注意される物だ。

 故に敵から見れば、計画土台からひっくり返される可能性がある早々と対応しておかなけれはいけない対象である。


「まぁ、いいでしょう。幾年も前から、想定していた事が起きただけです。致命的ではない」


 そもそも、セレンは自分の立場から考えると、真っ先に自分を封じ込める可能性があると、考えていた。

 何年も前から予想していた事態にすぎないため、比較的に冷静で焦ることは無い。


「周りをまず、調べますか」


 周辺を見渡しながら、花畑の中を歩いていく。


(ロゼリアは別に私がいなくとも動く。不安は少ない)


 セレンは自分が敵だったら、どうするか考える。

 何も影響をあたえなくさせる。

 いくら行動しようが、辿り着けない場所に置いておくだろうと。




 ◆◆◆


 赤い炎の矢、陽炎を空間に記す熱の光線、透明な氷の矢、這い寄る冷気の腕が会場を彩っている。


「お主、魔術会に入らぬか? 今なら上級会員登録で入れるぞ」


「遠慮する。興味無いから」


 獣頭の獣人(ビースター)が商人がよく浮かべている、思わず信用してしまう笑みを浮かべながら誘う。


「ならば、ワシが勝ったら、考えるくらいはしてもらおうか。普通に勝負してじゃ、つまらんからのう。失う物があるから燃える。老人の身には素晴らしい燃料になるからの。どうじゃ?」


 白く脱色した毛を興奮させるように立たせる。


「へぇ、じゃあ。こちらが勝ったらできる事なんでも叶えるということで」


 ユーハの要求とマティアトスの要求が不釣り合いだが、ユーハは悪どい笑みを浮かべて氷の矢でユーハの背後の全てを塗り変え、一斉にマティアトスへ向かう氷の矢が壁が倒れるように襲いかかる。


「くっ!。せこいのう」


 絶対に負けられない戦いになった焦燥感と賭け事を提案しなければ良かったと思う後悔に満ちた表情でマティアトスは杖を振るう。

 熱の光線が拡大して空気を震わす熱の壁となり、氷の矢の壁と激突し、水蒸気爆発を引き起こす。


 水蒸気爆発さえもマティアトスは利用し、指向性を持たせてユーハの元へ向ける。

 爆発そのものが大砲の砲弾となるが、指を起点に超圧縮された空気を剣のように振り下ろす。


 形が存在しない気体が固体の地面を抉る光景は身の毛がよだつが、気体である事は変わらないため、属性操作ですぐに散らす。


「そっちが持ちかけた話だろう?」


 またユーハは氷の矢を背後を埋め尽くすが、今回は一斉攻撃ではなかった。


 左右に分かれた矢の集団は、軍隊のように陣形を変える。

 今の形は超攻撃型の円錐型となって突撃していく。


 だが、途中で裏切り者が出てきていた。

 裏切り者は巨大化して氷山のようになり、矢など山に敵わない事を意味するように、塵芥の如く散らす。


 これは属性操作権がマティアトスに奪われたのだ。


 何百の矢を操るには人間の属性操作力では必然的に一つ一つ権限を薄くさせるしかない。

 それ故に容易に権限を奪われる。

 そもそも、どちらも常識外れの属性操作技術を持っているから実現できている光景だが。


 人は複数の事を同時にやってのける数は基本的には手足の指の数よりも少ない。

 氷の矢は作るだけなら、それで終わりだが、それを浮かせてそれなりの速度を持たせる必要がある。

 もちろんある程度グループ化させるなどの工夫も行っただろうが、ユーハは無双とも言える情報処理能力を持ってできる芸当を汗一つもかかずにやったのだ。


 マティアトスは技術、知識、経験が総合化された最終的に得られる実力(・・)の高さが相手の魔術を簒奪できる要因であろう。

 魔術師殺しの技とも言える物たが、相手の術式を奪うという行為は難しいが一定数できる者はいる。

 ルアザもルキウスに対してやっていた。

 で、今回マティアトスの何が凄いのかと言うと、術式を侵食ではなく改造してくることだ。

 魔術という物は基本的に危険であり、術式の組み方を間違えると最悪自爆してこの世からさよなら。

 術式の改造は正確性と秒を切る実行速度と正しい判断が必須要項である。

 これらの要項を得るには地道で長い練磨が必要であり、成し遂げたのがマティアトスというわけだ。


 氷山は適当に足を動かして避けたが、その向こうには誰もいないかったが、一つの影がどこにいるか示していた。


 ユーハは上に首を曲げて、太陽を背にして時間をたっぷりと使い術式を組んでいた。

 その証拠に莫大な属性が見える形となって渦を巻いている。


 だが、時間は平等だ。

 ユーハも時間をかけて術式を組み、冷気が手のひらの上に回転しながら集合し始めた。


 互いに手のひらから拳サイズの球状な物が射出される。

 マティアトスは放熱だけで、周りの空気に火が点く温度の煮えたぎる青い炎を纏った赤い玉であった。

 逆にユーハはあまりの温度の低さに空気が液体化して垂れ落ちている。

 白い玉も暴れる空気が大人しく固体化され集められた物だろう。


 だが、二人は途中で相手へと向かう玉を停止させる。


 二人は射出するまで、相手の魔術を把握しておらずどちらも『これなら、勝てる!』と信じた魔術を放ったが、今回は相性が悪かった。


 先程、水蒸気爆発起こしてばかりなのに、それ以上の急激な気体への状態変化による体積の大膨張が引き起こされる。


 距離が離れていれば、爆発にも対応ができるが、残念ながら近い。

 二人諸共爆発に巻き込まれただでは済まないだろう。

 特に空中に浮いているマティアトスは会場に張られた結界に激突して終わるだろう。

 ユーハは地面というおろし金で惨酷な姿へ変わるかもしれない。


 どちらにせよ危険極まりないため、二人は止めたのだ。


 その代わりどちらも莫大なエネルギーを持っているため、燃料代わりにして、別の属性へとそのエネルギーを組み込む。


 攻撃側が常に速いのは、この世の摂理のようにマティアトスが一瞬にして術式を完成させる。


 ユーハもほとんど差は無く、魔術を展開させる。


 鋭く、鈍い、爆音並みの音が無数に響く。


「バカな。ワシの必殺が……!」


 マティアトスは驚愕に満ちた表情をわかりやすく表に出し、その後鋭い歯を見せ、深く興奮した笑みを顔に現れた。


「だが、それだ! それだ! ならばこれならどうだ!」


 地面から薄く塵が集い始め、その塵により不可視の魔術の形が見える。


 その形は巨大だが、包丁のように薄い力場であった。


 そして、透明な巨大な包丁はユーハの一歩手前付近で速度が急激に低下し始めるが、ユーハの鼻の先まで到達して、塵と共に霧散する。


「残念」


 皮肉めいた笑みを浮かべ、相手の魔術を防ぎきった。


「お主、新たな系統の防御魔術を作ったな?」


「そちらこそ、名付けるなら圧力魔術とも言える物を行使したな?」


 二人は意味ありげな笑みを薄っすらと浮かべ質問には答えない。


(結界により防御以外にも守ることを専門とする魔術を昔から、研究を為されてきたが、結界の圧倒的利便性、万能性には勝てず台頭することは無かったが、目指すべきモデルをここで見るとは)


 防御魔術。

 大抵の結界魔術で代用でき、術式の組み方によって防御特化へと変える事も可能だから、不遇な思いをしている魔術だ。

 ユーハは結界魔術に頼らず、防御魔術を完成させたのだ。


(たぶん、手頃な空気を超圧縮させて、一点集中して線や点レベルまで面積を減らして力がそこに集中するようにしていることにより、切断を可能にしているのだろう。鋭利性を高めるために、砂利代わりの微細な結界を混ぜているし。ここに液体があったら恐ろしい)


 超高圧縮による切断が見えざる攻撃の正体だ。

 ユーハは顔色一つも変えずに、防いでいたが、周りには深く刻まれた線のような物が多く残っていた。

 最初からやれば初見殺しであるが、今回は殺し合いではなく、試合をやっている、趣旨が違うのだ。


(それに、会場全体とまではいかないが、薄く広く圧力がかかっているから、魔術の完成速度が僅かに遅い)


 ユーハがなぜ、魔術師であるマティアトスと魔術戦を行ったのかというと、ルールに則っても勝てる自信があるからだ。


 だが、実際は時間的な遅れを取る事が多い。


 考えている間にもマティアトスは属性を次々と操り始める。

 ユーハはその操る属性を奪うように強引に属性を掴む。

 マティアトスは奪われた属性は放置して、その隣にある属性を操り始めるが、またユーハに妨害されるが、今度はマティアトスが力づくで引っ張る。


 属性の奪い合いが始まった。

 人が操れる属性の量、範囲は決まっており、個人差はあるが、大きく離れていない。


 戦争などで魔術師の部隊が一箇所に集中する場合があり、そのまま集中した状態でやると属性不足と属性操作権が別の人へ別の人へと移転を無限にしはじめ、属性を縄にした綱引きみたいなのが始まる。


 当然機能しなくなり、最悪予想だにしなかった術式が組まれ始め、大爆発して敵味方諸共壊滅するという事がある。

 というか実際にあった。


 だが、とある魔術師がその属性の綱引き状態に注目して、少ない人数で同じ事をやりはじめた。

 そして、属性操作権を最終的に取ったのは魂力操作、属性操作の腕が一番上手い人が勝ち取った。

 魔術師達はその経験から魔術の特訓にはピッさタリだと、結論を出した。

 誰でもこの特訓は使えるため、すぐに広まり、それを利用した魔術師の戦い方も発展した。


 魔術師の強さを決める要項は身体と精神の体力、あらゆる知識、属性を操るための根本技術である魂力操作技術、そして術式を組むための属性操作技術。

 例外はあるがこの四つが実践系の魔術師として大事な事だ。


 マティアトスはフェイクやフェイントを織り交ぜて、どちらかと言えば後手に回っている。

 先に仕掛けたユーハが先手という主導権を握り、勝負を組み立てている。


 魔術師を剣士などの武器を扱う職種で例えれば、自分の武器を複雑に絡み合わせ、指一本分の力加減によって斬られるか斬られないかが決まるような状態だ。


 観客席にいる魔術師達は、自分の右手をユーハ側、左手をマティアトス側と置き、自分だけの属性の綱引きを始め、シュミレーションする。


「美しい、興奮する」


 魔術師の誰かが小さく水滴を落とすように呟いた。 


 魔術師達は皆この言葉を波紋のように胸中に浮かばせる。

 同業者が夢を見せてくれる、自分が昔、子供時代の頃見せてくれた輝きを思い出させてくれる。


 そして、魔術師の服装をした一人が無邪気な笑みを浮かべ、会場へと指を指す。


「どれ」


 ユーハとマティアトスとの間に突如強烈な魂力が出現して属性が混然とした制御不可能な状況に陥る。


「なっ!?」 「ちっ!」


 すぐさまに属性操作を止めて、事態の鎮静を待つ。


 マティアトスにとっては救済の瞬間でもあった。

 綱引き事態はユーハが優勢であり劣勢のマティアトスはなんとかチャンスを来るのを待ち耐えていた。

 予想外の形で機会が訪れたが、機会が訪れたその後の事を描いていたマティアトスはその計画通りに事を進める。


 距離を大きくとったマティアトスは瞳を閉じ術式を組み立てる事に集中する。


 点火し、その米粒のような火は風というエネルギーが吹き込まれ、燃え盛る。

 そして、それを圧縮し白い炎へと変えるという工程を何度も繰り返し、太陽そのものと言える白炎の真珠が完成する。


 放熱だけで、確実に人を焼死できる熱を持っており、ユーハはもちろんマティアトスも耐熱に特化した結界など何重にも張る。


 マティアトスは油断の無い視線をユーハに向けてとうとう、白炎がユーハへと落ちる。


 眩いばかりの光を放つ白炎に目を細めつつも、手には魔術で作り上げた仮想の剣を持つ。


 剣を縦に振るうと、炎は真っ二つに切れるが、流動体なため、剣の細い一閃では意味をなさなかった。


 白炎がユーハをそのまま飲み込もうとするとき、ユーハの剣に魂力が渦巻き始める。

 白炎という莫大な力を蓄えるほぼ暴走しているような物を制御して、剣に炎が集まり始める。


 そして、一定の所で急激に白炎は剣に取り込まれ始め、それと同時にユーハは炎の中へと身を入れ、出てくる時には青色に変わった剣を横一線に振られていた。


 太陽の光を塗りつぶす輝きを共にマティアトスは退場する。


 ユーハが行ったのは白炎の球を自分が組み立てる術式に組み込んだのだ。

 まず、他人の魔術を奪い、同時に自分の術式へと属性を安定させながら変えて組み込む。


 しかも、白い炎へと変わった自然界ではあり得ない熱量を持つエネルギーを数秒で自分の支配下に起き完璧に制御していた。


「おい、ハトラ。仕込んだか?」


「もちろんですぜ」


「あと、ついでにあいつにも」


「あいつてすか?」


「そうそう」


 二つの視線はとある魔術師風の一人に向いて確かめ合っていた。


 見えない聞こえない会話をして、現在起きている何かしらの事件を探っていく。

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