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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
48/149

本戦準決勝第一試合

 コロッセオ裏にて、ルアザは魔術の竪琴(マギアライアー)を弾き、魂力操作の腕を確かめてもおり、体にこもった無駄な力を抜かしリラックスしていた。


「ゥ~♪」


 小さな鼻歌を歌いながら音程を合わして奏でる。


 目を開け、純白の肌に二つの真っ赤な太陽が現れる。

 立ち上がり、周りにある貸出用の武具を見ていく。


 剣をまず手に取るが、少し構えた後すぐに元の位置に戻す。

 次に槍を振り回すと、少し考えた素振りをして元の位置に戻す。


 それから弓矢、盾、杖、槌などを構えて見るが、すぐに戻す。


「どれで行くか」


 これから武技交える相手は熟練の精霊魔術師だ。

 精霊魔術の利点は圧倒的な威力と質にある。

 人では出せない魔術を出せる点が精霊魔術の目的であり、最大の利点。

 精霊魔術と書くが、特に精霊限定ではなく妖精、龍、巨身などの高位存在から力を貸してもらえれば、精霊魔術である。

 弱点は他人に魔術の行使を頼むため、事細かい事には向いておらず、万が一怒らせたら悲惨な事になる。


 だが、それらの情報伝達(コミュニケーション)能力は時間をかければ解決するものだ。


 今回の相手は平均寿命250~270年の長寿で有名な〈森妖精人(エルフ)〉である。

 しかも、皺が刻み込まれている長く生きた〈森妖精人(エルフ)〉だ。

 だいたい〈森妖精人(エルフ)〉で皺が出てくる年齢は百歳程なため、相手は人生の半分以上は生きていることは確定だろう。


 つまり、弱点らしい弱点は無い相手だ。


「槍……かな。攻撃力を上げていきたいし」


 ルアザは今回守りに入ったら負けると確信していた。

 攻めは最強の防御と、言うように防御も兼ねた戦い方でいくつもりだ。


 向こうに見える、待機場にはセレンがおり、こちらを見つめることも無く、集中状態であった。


 そして、二人は呼ばれ会場の中心で相見える。


「お久しぶりですね」


「はい、お久しぶりです」


 セレンがルアザと同じような朗らかな微笑みを浮かべながら、挨拶をし、ルアザもそれに返す。


「どうですか? ロゼリアは」


「おもしろく、魅力的で皆優しい人達が多い。そんな印象を抱きました」


 まるで恋に浸る惚れた乙女のように視線を遠くさせ、ロゼリアを称賛した。

 ルアザにとって、自分を差別しない場所というのは少ない。

 それだけで歓喜に身を震わすだけの価値があり、ロゼリアは文明の象徴のような場所だ。

 興味深い物多く、知的好奇心をくすぐり飽きさせない。

 最も繁栄した都だと断言しても良い。


「ロゼリアに訪れた人々は漏れなく、称賛の言葉を口々に呟きますが、やはりいつもの事でも褒められるということは嬉しい物ですね」


 我が事を褒められたように、喜色満面な笑みを浮かべる。


「一応言っておきますけど、多少は気に食わない所はありますけどね」


 例えば、物価が高いなど。

 これ結構切実な問題であり、常に頭の隅に置いて置かなければならない。

 ルアザは潤沢な量の財産を持っているが、それは地方や属州を基準にした量だ。

 首都ロゼリアではそこそこ節約していたり、かるくお小遣いくらいは稼いで過ごしていた。


「ウフフ。素直な人ですね」


「世間一般的には失礼な人だと思いますがね」


 小さく笑みを綻ばせるセレンに呆れた視線を軽く投げつける。


「だからこそ、信用できる。そう思いませんか?」


「信用も信頼も証明し、時間をかけて築く物ですよ」


 ルアザは信じられるということが一番わかっている。

 差別と迫害をされ続けられたルアザはどうしたら、自分の事を安全だと認識して貰えるようにしたら良いか、考えない日はなかった。


 例えばルアザは村、町を襲う魔物や盗賊を打ち倒し顔を見せて凱旋したら、更に危ない奴だと認識され、居心地悪くなったため、出ていった。

 少ないが何人かは信用してくれたが、少数派の中の少数派みたいな数であったため、止めた。

 もちろん少なくとも嬉しかったが。


 それからユーハの助言を貰いながら、ルアザは悩んだ結果、信用、信頼は一朝一夕でできる物ではなく石の上にも三年の気持ちで築かなければならないものだと。


 築くだけならルアザが行ったようにすればいいが、その後築いた物が忌み子という信用崩壊の原因一つで崩壊するのだ。

 信用、信頼の耐久性が無い事が一番の問題なのだ。


「貴方はきっと良い人ですよ」


「何をもって、その答えが出てくるのかが、わかりません」


「精霊や妖精達が言っているからです」


 突如、セレンの周りに二つの巨大な存在とそれを覆うように漂う存在が出現する。


 比較的に会場と近い場所に座る観客はその気配を感じて視線を宙に迷わせていた。


 一方ルアザは視線を迷わせずにしっかりと二つの巨大な存在へと向けていた。


 人型の高位存在が二柱おり、無言で頭だけ小さく会釈をする。


 そして、ついに試合開始の合図がなされる。


 ルアザは服の中に収納している腰の下辺りまで伸びた自分の髪を取り出し、垂れ下がる二割程の髪を切り裂いて一瞬で燃やして粉状の灰へと変え風に乗せる。


 灰の粉は空気中に舞うと、広がった部分のみ属性が少し荒れ始める。

 それは現実にまで現れ始め、風が吹き、地面は脈動するように僅かに揺れる。


 セレンが呼んだ妖精がルアザの忌み子と呼ばれる原因で、セレンの制御から逃れ始めた。

 これらの妖精は二柱の眷属か、それに近しい関係である。

 フィールドそのものを自分の有利にするために連れてきたのだろうが、ルアザは自分の身を切る事により未然に防いだのだ。


「それは光栄です」


 ちなみに人で言えば上司だけを残し部下が遊んでいるという状態だ。

 ルアザは笑顔で言っているが、彼女から見れば妖精達を離反させた原因でもあるから、若干喧嘩を売っていることになる。


 だが、主戦力は二柱であり、その他は補助でしかない。

 主戦力だけでも、十分に戦えるのだ。


 ルアザはほんの僅かだが、更に髪を切りセレンに見えぬよう背中に隠しながら付与魔術を行う。

 ルアザの体はかなり質の良い魔術媒体となる。


 付与魔術は物質に別の性質を付け足す魔術だ。

 例えば、剣に炎を纏わせたい場合に使ったりする。

 しかし、付与魔術がしやすい、しにくい物質がある。

 先程述べた例のように超短時間限定的な状況であれば、大きく関わらないが、魔術師が使う道具や魔術は大きく関わる。


 単純なシステムを付け足したいなら付与が簡単な方が楽だが、複雑なシステムになると、難しい方も使う。


 大きく分けて、導体、半導体、絶縁体とレベルが分かれており、用途に合わせて使い分け組み合わせる。


 その中でもルアザの体は導体に属しており、非常に付与した効果に染め上がりやすいのだ。


 今回ルアザが付与したのは強度上昇と重量増加の二つであった。

 髪は強度上昇で針のようになり、重量増加で空気の揺れも多少は対応できる暗器をその場で作った。

 できた硝子レベルの針を服や地面に刺して、仕込んでいく。


 その短い間にセレンは二柱と話すような様子を見せ、話し終わると液体できていそうな一柱が手を向ける。


 魂感が痛くなる程の巨大な属性が術式に乗り形作られる。

 そして水の一柱の手のひらから水飛沫も無く一本の水の光線を襲いかかる。


 それを結界で僅かに逸しながら、横に避けるが、結界は数秒で消滅する。

 次に空気のように軽く漂う風の一柱が視線をルアザの横に向けると、ルアザを挟み込むように左右から衝撃波が発生する。

 爆音と共に発生したため、ルアザの鼓膜に大ダメージを与えながらもルアザはしっかりと防いでいく。


 そして返すように、槍先から顔一つ分の水球を中から圧縮された衝撃波を開放させて、指向性を持たし、弾丸のように飛ばす。

 その中に交じるように槍を持って己も突っ込むが、二柱が張っている結界に阻まれる。


「フェサル穿ちなさい。ノワス貫きなさい」


 槍を模すように水のノワス、風のフェサルが視線を物質で覆い始め、鋭く撃ち抜く細い糸のような水の線を、禍々しく打ち抜く荒縄のような固体同然の気体の線が飛ぶ。


 片手を槍から離し、鋭利な形をした結界を手に纏い手刀で一瞬で切り裂く。

 少しでもズレたら手が持って逝かれるが、ルアザの正確性が可能にする。

 そして手刀の形を保ったまま、地面に向かい斜めに線を引くように振るうと、地面が弾けるように抉れ互いの姿を消すが、フェサルの風が空間を綺麗にする。


 だが、空間を洗った先にはルアザはいなく、セレンの頭上にいた。

 上から圧倒的なアドバンテージで雨のような数でたまに雹を纏わせ刃を降り注ぐ。


「フェサル、起こせ」


 セレンが手を叩いた。


 意識と共に弾けるような爆発音が会場全体を支配する。

 空気の大地震とも言える物が放たれたからだ。


 セレンは驚きに目を染めていた。


 ルアザは変わらなぬ小さな微笑みを浮かべながら、試合の初期位置に傷一つ無く立っていた。


「危なかったですよ」


 軽く口調で言っているが、ルアザが持つ槍は木っ端微塵に砕け散っている。

 ルアザは槍を大剣のように扱い、衝撃波に対抗し叩きつけて武技の命と引き換えに衝撃を和らげたのだ。


「ですが、王手です。私の勝利です」


 武技を失ったルアザは圧倒的に不利だ。

 魔術は二柱に邪魔され、思うように術式を組み立てられないのは明白である。


 セレンは勝利を確信して指示を出す。


 ルアザはとりあえず抵抗はするが、その抵抗も虚しく二つの渦が直撃し、砂煙を上げる。


 砂煙が薄くなった瞬間突如、なんの予兆も無くセレンの顔の真横から、そこにあるのが当然のように穂先が出現して今まさに当たろうしていた。


 ノワスが水をクッションにして防ぎ、フェサルが四本の竜巻の槍でカウンターを行うが、竜巻の槍は何も当たらず、何も掠めず宙に溶けていく。


 常に張り続けている感知魔術も反応がないセレンと二柱は即座に同じ判断を下す。


 だが、それを邪魔するように後ろから、髪の針が飛んで来ていた。


 脆い氷のように簡単に折れるが、数があれば多少の時間稼ぎにはなる。


 ノワスを中心に水鏡のような薄く広い湖のような物が展開される。


 すると、一部に波紋が出現すると、その地点に打ち上げるよう衝撃波が発生する。


 何も打ち上がる事は無いが、虚空からラン目を細めているルアザが出てきており、景色に飲み込まれるようにまた姿を消していく。


 波紋がまた静かに広がるが、複数広がりはじめる。


 複数の波紋が互いの波紋と衝突し、水鏡自体が機能しなくなっている。

 だが、それでも新たに発生している部分を狙い下から水の柱と上から風の柱が襲いかかるが、二つは衝突することなかった。

 その代わり間の空間が歪み始め、徐々にルアザが二つの攻撃を防いでいる姿が現れ始めた。


 セレンはその隙を逃さぬよう、指示を出そうとするが、また空間から分身したかのようにルアザの姿が彩られる。


 防ぎ終わったルアザはまた姿を消そうとするが、軽く目を見開くと水鏡の領域から離れるだけであった。


 そして、襲いかかり、増えて、更には追尾してくる攻撃から逃れつつルアザは自分の体を見渡し水滴が付着していたら払っていた。


 そして、自分の指を噛み自分の瞳と同じ色の血液を垂らしながら、避けていく。


 そして、ルアザが再び水鏡に足を踏み入れた刹那、水鏡の水は赤く侵食するように染まり始める。


 そして、赤くなった水はセレンへと襲いかかるが、二柱が防ごうとする瞬間、二柱は後ろを振り返ると、その時にはセレンは退場していた。


 ニコニコと笑顔を浮かべながら現れたルアザはその隣に目玉二つと腕八本にその手には様々な種類の筆を持っていた。


 この異形は精霊フイ。

 ルアザが当初【画家】と読んでいた存在であり現在は契約精霊だ。

 その名の通り景色をその八つの腕で塗り替えたりとそれ以外にも様々な事が可能な精霊だ。


 今回の戦いではルアザを景色に塗り替えて、姿や気配を完成に消していたのだ。

 そもそも今回は正面から正々堂々と戦ったら単純なステータス差で負けると予想したから、多少搦め手で倒した。


 ルアザは冒険の書以外にも動植物にも興味があり、別のライブラリと呼んでいる本に描かれている絵はフイが描がいている。


 そして、二柱はルアザに語りかける。


「セレンからの伝言です。『いずれまた会う時は協力しましょう』と」


「我々もやるべき事があるので、これにて。そして、そちらの同胞も見事な物でした」


 ノワスは小さくお辞儀をした後、フェサルと共にその場から消える。








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