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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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本戦第一試合

 コロッセオの中にドラムや鐘が大きくなり響く。

 万人クラスの観客達も今か今かと待ちわび、身に満ちる高揚と興奮を滾らせ、沸かせる。


「皆様! お待たせしました! 闘技大会本戦第一試合の開幕でございます! 選手達に大きな拍手と共に迎えてください!」


 ただでさえ、騒がしく静かになる瞬間などなかっま観客席が一層騒がしくなり、老若男女共に笑顔で顔を見合わせ、嬉しさと期待を共有し合い一種の一体感を生み出している。


「さぁ、二人が出てきました! どちらの容姿も性別を超越したとてもおもしろい組み合わせですよ!」


 一人はルアザ・ミラレア。

 美の頂きに座すため、結果的に中性的な容姿となっている。


「第一予選グループの勝者ルアザ・ミラレア!」


 ルアザはその声に軽い笑みを浮かべながら小さくヒラヒラと手を振り応える。


 観客席はルアザをいつも拝んでいる偶像のような視線と反応をする。


「サンリオ師匠! どうですか?」


「我々彫刻家の目指すべき場所が彼の者だと、私は確信した。見ておきなさい。帰ったら全く同じ姿の像を作るぞ」


「はい! あと彼もどうですか?」


「うーむ。あれも目指すべき場所だ。しかし、さっきの彼の者に対して人間味のある容姿をしている。こちらの方が難しい作品になるだろう」


「ですが、前に師匠がおっしゃいましました。まるで人間のような物を作れと」


「うむ、そうだな。難しい、でも作りたい。それが我々だ。お主はそちらの方を作ってみなさい」


 ロゼリアの中でも有名な彫刻家アメリス・サンリオが弟子に連れられルアザともう一人を見に来た。


「第二予選グループの勝者ルキウス・ペネクトラ!」


 二人目はルキウス・ペネクトラ。

 名前の通り男だが、ルアザの結果的な中性ではなく、根本的な中性的な美貌を持つ可愛らしい顔立ちであった。

 ルキウスはルアザと同じように小さくを手を振り、観客席からはルアザとは違い黄色い歓声が鳴り響く。


「どちらも性別がわからないですね。ちなみにルアザ選手、ルキウス選手、一応性別を教えてもらいませんか? 今からそっちに行くので」


 罵っているのか、単なる疑問なのかよくわからない質問だが、ルアザとルキウスは特に不満に思う様子を見せない。

 どちらも、慣れたよう表情であった。


 マリウスが拡音効果がある魔術道具(マギアエルガニーノ)を持ち、会場の方へとやってくる。

 息を切らしながら、まずはマリウスと近いルキウスに答えを求める。


「……男ですよ」


 ルキウスは小さな花が風に揺られるように苦笑する。

 観客の一部の男は心から吹き出す悲鳴のような声が起きる。

 さらに一応の女はショックを受けたように敗北感溢れた様子を見せて、男女と共に三者三様な光景を広がらせる。


 次にルアザに魔術道具(マギア)に近づける。


「……さぁ?」


 いつもの婉然とした穏やかな笑みに深みと艷美さが含まれ、薄い笑みが深淵のように引き寄せられる引力を持つ笑みを顔に刻む。


 ルアザはこちらの方がおもしろそうだと判断したから、自分の性別について明言はしなかった。


 観客席はルアザに教えろと文句を言う者から、大笑いするものやルアザの体付きを観察し、性別を判断しようとする者など、千差万別の光景が広がる。


 ルアザは観客席の反応に苦笑して、マリウスもルアザの視線からのメッセージを読み、追求はしなかったが。


「アハハハッ! では、負けたら教えてもらう事にしましょうか! さぁ、観客の皆さんルキウス選手を応援しましょう!」


 笑みを固まらせるルアザは、マリウスの方が一枚上手のようであることを認め、自分が持っていった流れを一瞬で変える事に驚く。


 美麗のルアザ、可憐のルキウス

 ある意味、対照的で同類な形姿を持つ者同士の戦いが今始まる。


「開幕です!」


 始まりの鐘の音が鳴り響き、観客達も我先にと応援の声を張り上げる。


「すごいですね。僕にはあんな事できませんよ」


 互いの武器を相対させながら、穏やかな表情を浮かべ、ルキウスは言う。


「やってみたかった事をやっただけですよ。勇気はほんの少しで良い。結果と評価はそもそも気にしてないから、恐怖も少ない」


 相手の動きを見ながら、答える。


「じゃあ、僕も勇気を出しましょうかっ!」


 ルキウスの武器は槍である。

 高い攻撃力に中距離を縄張りとし、近付けないため、攻防一体の完成された武器だ。


 ルキウスが槍先を向け、空気を切り裂く音を鳴り響かせながら、突く。


 ルアザはルキウスが突く刹那前に一、二歩斜め後ろに下がり槍の広い間合いから離れるが、到達する前に肩幅程、横に移動する。


 穂先は魂力の固まりである結界のように硬い刃が伸びていた。

 その事により、間合

いが伸び避けたと思ったら、突かれるという事態が起こるが、ルアザは魂感で魂力が操作されている事を事前に気づき避けれた。


「見事! 本戦に出れる実力はあるようですね!」


 ルキウスは可愛らしい顔とは対照的に熾烈で連続的な攻撃を繰り返し、魂力の刃も上下左右と自由自在に長さや出す場所を変えて来る。


 だが、ルアザは巧みな歩法や体の動かし方で余裕を持って避けていく。

 紅玉の瞳はルキウスと槍を同時に見つめ、観察をしていた、時折ルキウスの黄色い瞳と目が合うため同じように観察しているのだろう。


「はっ!」


 足を地面に付ける時に強く叩きつけるようにすると、ルアザを中心に地面が前後左右に大きく揺れる。


 正直ルアザはルキウスの連続攻撃から抜け出すのは難しいと考えていた。

 隙というものが今のところ見つからないため、どうしたものかと、頭を悩ませていた。

 悩んだ結果無理矢理、隙を作ろうと考え、色々と隙を生み出す方法を考えたが、地面を魔術で揺らすという方法を採用した。


 地震は陸に住み、大地を立つ人間にとって回避困難な全体攻撃なのだから、隙が生まれるのは必然的であった。


 地面が揺れることにより、ルキウスも槍も振れ、刃から拳一つ分くらいの隙間が生まれる。


 その安全地帯を逃さないルアザは地面に揺らしたを要領で、地面を蹴る時に衝撃を放ち高速でルキウスの元へ、剣の刃を勢いのままに振るう。


「硬いな……」


 ルキウスが纏う防護結界に刃は阻まれ、傷はつけられなかった。

 そして、すぐにルキウスは己が纏う結界に槍のように攻防一体な効果を付与する。


 魂感がルキウスの結界の大まかの形を教えてくれており、ルアザはその形と組み込まれた術式に目を細める。


 ルキウスの結界はまず、強い衝撃を受けると反射的に結界の刃が伸びるようになっている。

 何層にも張られた感知結界が刃の結界と連動しており、剣の間合いで対応は不可能だった。


 ルキウスは結界魔術のプロフェッショナルだと、わかる。


「ならば、魔術戦といこう」


 ルアザの周囲に指サイズの水の矢が百近く出現し、それをルキウスの元へ発射する。


 だが、ルキウスはそんな攻撃は物ともせずにルアザの元へと歩いていく。


 そして、ルアザは時折、氷の矢を混ぜている。

 同じ高速飛来物だが、液体よりも固体の方が圧倒的に威力が高い。

 更に鋭く針のような形をしているため、着弾点の面積が狭いため、力が集中し、高威力の弾丸となる。


(重さ? 威力? 距離? どれだろうか?)


 ルアザはまず、感知結界が何を基準にして信号を出しているか調べるに当たって数で攻める事にしたが、残念なことに相手の結界は予想以上に硬いというだけの嫌な情報だけであった。


 ルキウスもルアザの攻撃は避けずに、ただルアザと距離を詰めるだけであった。

 それは遠距離攻撃の手段がないのか、それとも他の策を持ち合わせているのかわからない。


(一つずつ調べて行こう。まずは重さからだ)


 現在、遠距離を取りながら水や氷の矢の連撃を停止し、全てをルアザの頭上に集め、更に水を生み出す。


 同時に距離を近づけさせないように牽制の魔術を放ちながら、ゆっくりと溜めていく。


 太陽の光を反射し揺蕩う水の巨大な玉が、完成し光を靡かせながらルキウスの元へ落ちる。


 結果は多少水の重さで遅くなるレベルだった。


「行きますよ!」


 そう宣言すると、ルキウスは槍を剣のように縦に振り落とすと、魂感が濃いと感じる程の魂力が解き放たれルキウスの前方を嵐の災害如く全て吹き飛ばす。


 ルアザは吹き荒れる突風を術式の一つへと変え、剣を起点に竜巻の剣を作り出し前方を薙ぎ払う。


 衝撃と渦がぶつかり合い、荒れた力の流れはうねり視界を奪う。


 ルキウスはその視界を広げた感知結界で補い、ルアザの鳩尾を狙い、荒れた空気から暗殺者の如くやってきた。


 ルアザも感知魔術で槍が来ているのを知っている。

 しかし、受け流せないため、穂先を狙い強く弾く。

 テコの原理で難なく弾けたが、弾いた先から鎌のような巨大な刃が出現し串刺しにしようと、弾いた分のリーチが一瞬で無駄になる。


 剣を構え、受け止める。

 あまり武器を真正面から受け止めるような行為は剣が痛むため、やらない方が良い。

 そもそも、使っているのは借り物であるため、実害は無いからできる行為だ。


 そして、もう一つ狙いがあった。

 受け止めると同時に魂力を操作し、槍に込められた術式に侵入し始める。

 魂力の操作は距離があればある程、あらゆる点において質は落ちる反比例関係がある。


 まずは剣に纏う魂力を槍の魂力に結合するような術式を組み始める。

 表面上から徐々に混ざり合っていく術式にルキウスは当然妨害しようとするが、ルアザの術式構築速度の方が圧倒的に速く、既に刃を瞬間的に出現させる術式に干渉し始めた。


(くっ! 無理だ。魔術の腕は向こうの方が高い!)


 ルキウスは即座に対抗は不可と判断し、刃出現の術式を解除した。

 その瞬間、剣と槍との魔術的な結合は消え、ルキウスは魔術を使わず普通の槍として使用してくる。


 ルアザもそのまま剣で受け流し、弾きと、先程の魔術戦とは対照的な互いの技量が試される武技の戦いとなった。


 ルアザの剣技は堅固で長い時間かけて築いた土台から繰り出される一振りは正確無比で、頭で考えた事を当然のようにやってくる。


 ルキウスの槍技は槍という突く、薙ぐ、切る、叩くという万能性を最大限に利用した、型があるようで無い変幻自在な戦法である。


 二人は会場を縦横無尽に駆け回り得物を交わらせる。


 槍の薙ぎからルキウス自身が動く威力の高い突きをルアザは剣を絡め、無数にある手札を槍の鋭い刃と共に抑え込む。


 そして、下からの膝蹴りで大きく反らし、ついにルアザがルキウスに接近する瞬間が訪れた。


 すぐさまに戻してくるルキウスの槍を掠めながら、強引に走り槍の長い射程圏内が無効化する

 剣の射程圏内に入る。


 そして、ルアザは首に狙いを定め、突きの態勢に出て魔術も併用した強化された一突きを放つ。


 体と腕が真っ直ぐと伸び、ルアザにかかっている力が最大限に利用され、ついにルキウスが纏う刃の鎧に当たる。


 ルキウスは剣が当たった瞬間ハッと焦燥感に満ちた表情を浮かべ、ルアザの突きから離れようとするが、ルアザついに来た機会を逃さぬようにする。


 刃の出現する時のベクトルは正面から衝突した場合ルアザの突きと比べると突きの方が勝る。


 鋭い突起状の物を出現させる自動反撃の結界術式は確かに強力だが、先程綴ったように、単純なぶつかり合いの場合は不利に働く事がある。


 しかし、ルキウスも術式を作り、組んだ行使者としてその弱点を知っている。

 その対策案として、纏う結界そのものの強度の強化であるが、ルアザはそれを魔術戦で知っている。

 故にその対応として、術式破壊という対魔術の高等技を繰り出し、結界の強度を著しく下げる。


 術式破壊は色々な方法があるが、ルアザが取った破壊方法は魂力を嵐のように吹き荒らすという事を行った。

 藁の家という術式が魂力の嵐で吹き飛ぶという仕組みだ。

 だが、ルキウスの術式は藁の家ではなく、立派な材木やレンガなど様々な材料を用いた堅固な術式だ。

 故にただ吹き荒らすだけでは効果は現れない。

 だから、ルアザはそれを一点集中させ、自分が持つ腕力で貫ける程度まで弱体化させたのだ。


 結果はルアザの思惑通りにルキウスは止めを刺され、退場する。


「今ここで、第一試合終了です! ルアザVSルキウスはルアザの勝利です。才色兼備を名乗れるのはルアザ選手です!」


 喧騒に包まれた観客を見渡し、ルアザが求めていた栄光と喝采を得れた。

 ルアザも歓喜に身を震わせるが、今回何よりも素晴らしいのは新たな経験であった。


「フゥ。自分とはまた違った万能タイプだった」


 ルキウスは手札自体は数があるわけではないが、そもそも持っている手札が高い質を持ち、万能なため、一芸特化の一芸が万能性が高いタイプの戦士であった。


 ルアザはそれとは逆に多くの手札を持ち、その手札も一定水準の質を持ち、次々と手札を切るタイプの万能型の戦士だ。


 万能な技に頼り、少ない強力な技を極める万能型と多くの技に頼り、集め、極めて行く万能型。

 大器晩成なのは後者だが、万能技というのは応用範囲も広いため、使う本人の資質による。

 前者も大器晩成と言っても言いだろう。


 二人、二つの似たり寄ったりは、互いに莫大な経験値を与え合い、自分の能力を研磨し合ったのだ。


 闘技大会第一試合、勝者ルアザ・ミラレア。

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