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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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縁が集まる

 次の日、ロゼリアのとあるそれなりに大きな神殿にて。

 新聞のような形で最近起きた事や伝えておたきたい事に関して軽く報告する掲示板がある。

 そこに、多くの人々が情報を取得していた。


 掲示板には、こう書かれている。

『オリンピック、闘技大会にて予選第三、第五、第八グループにて、予選開始からどれも十秒以内で本戦出場者決定』


 つまり、第三、第五、第八グループで第一のように初見殺しに似た様子が起きたらしい。


 その他にもオリンピックで起きた事が書かれている。


 ルアザの事に関しても書かれている。

『神々にも勝るとも劣らない美貌』と書かれていた。


 その神々に匹敵するルアザは現在公衆浴場で体を清め、お湯に体を沈めていた。


「フゥ。お湯に浸かるだけでこんなにも気持ちいい物だとは。しかも貸し切り状態」


 基本的にルアザは綺麗好きで定期的に水浴びで体を洗っているが、お湯に浸かる事は無い。

 そもそも、そんな発想が出なかった。


 そして、風の噂で浴場という物があるらしく、市民の人気な場所だと聞きルアザも興味と高揚感を持った。

 しかし、浴場は裸で入るらしくルアザはこの時点で諦めた。

 家族レベルで親しく無い人に自分の無防備な姿を見られるなんて、僅かにきついところがあるため、ルアザは少し嫌煙した。


 今の時間は皆、仕事をしており、浴場に来る者は少ない。

 ルアザがいる浴場は立地的にも人通りは僅かで、上手く時間が重なれば貸し切り状態となるのだ。

 ルアザは旅人であるため、決まった仕事は無く、お金に関しては旅の中に得たアイテムを売ったり交換したりして得ている。


「ロゼリアに来て正解だった。やはりロゼリアの人達は私を差別しない」


 人々はルアザを喝采し笑顔で近づいて来る。

 この光景は未だに子供くらいが見る光景だ。

 いつもは、ルアザから離れ、笑顔など見たことがない。


 ルアザの常識では異様な状態であるが、最も望んでいた状態でもある。


 今すぐにでもロゼリアに定住したい程だ。

 自分なら仕事はすぐに見つかるだろうから、その選択肢も悪くない。

 だが、この世界をもっと見たいし、本来の目的を達成するまで考えるだけの案だ。


「でも、フードは被っていようか。素顔を晒す誰もが振り替えって注目してるからな。そんなにも綺麗だろうか?」


 水面に写る自分の顔を見て、ここまで来るのを思い出す。

 男女問わず、一目惚れだから結婚してくれと、戸惑いと驚愕をするような事を言う者がおり、ルアザはもちろん丁重にお断りしたが、相手の落ち込む顔を見ると罪悪感が湧く。


「ロゼリアの人は、なかなか情熱的だな。それとも自分が冷めているだけかな?」


 感情と行動が同調する感覚は味わう事は少ない。

 基本的に冷静で何か行動する前に一つ、二つは思慮し体を動かす。


「そういった文化も良いだろう」


 お湯に波を立たせ、これからの事について考える。


 クエレブレからの連絡が途絶えて、約二ヶ月たった。

 その事から彼に何かあったのだと嫌でもわかる。

 シャナが無事に見つかり、ルアザには特に用はないため連絡を切ったという可能性なら文句なくおめでとうと言える。

 悪い方向で考えると龍であるクエレブレが何者かに行動不能状態になってしまう事も考えられる。


 ルアザもユーハと同様にガルト地方の情報を集めており、混沌とした超一級の危険地帯へと化しているらしい。


(龍をなんとかできる存在は限られる。行けば何かわかるだろう)


 精霊、龍、巨身などの代表的な高位存在がいる事は確信している。

 自然の理に近い相手は避けるしかない。

 入念な準備をしなくてはならない。


「のぼせそう。出ようか」


 雫を落とし、纏めた髪を下ろす。

 素早く着替え、浴場から出ていくと、店員の昨日悲惨な目にあった女性が声をかけた。


「兵士さんが呼んでいました。そこで待たせていますので、お早く」


 ルアザは少し目を見開き、不安と興味を携えて兵士の元へ歩く。


「久しぶりだな」


「久しぶりという程、長い時間たっていませんが、またお会いするとは思いませんでした」


 見合ったのは前日に事情聴取をされた兵士であった。

 互いに小さく驚き、苦笑いする。


「こちらもそう思う」


「しかし、また。何用で?」


「うむ、私はただのメッセンジャーにすぎないから詳しい事は言えないが、とあるお偉方がお前を呼び出している。ついてきなさい」


 ルアザも国、相手と用もなく逆らおうとは思わないため、抵抗もなく素直に兵士についていく。


「わかりました。あ、そうだ。女将さん。代金です」


「また縁あるお越しを」


 彼女が言うように、ここにいる三人は本当に縁という物が存在するのだと、悟る。


 極たまにこういった因果の収束があるから、人生は面白い。

 驚愕と納得が組み合わさりは弾けるような痛烈な爽快感を得られる。


 ◆◆◆




「ここだ」


 連れてこられた先には見上げる程の高さがある、華やかな建物であった。


「ユレイス家の家紋があるんですけど」


 門の隣に二つの頭が生えた龍の一種であるグリフォンが描かれた紋章がある。

 ロゼリア帝国の国旗にして皇帝一族を表す物であることを意味する。

 そして、建物の規模や高級感溢れる装飾品の数々が見える。


 だから、ルアザは冷静ながらも、予想以上に地位が高い人に呼ばれた事に緊張する。


「黙ってついて来れば良い」


 門番と出入りのやり取りをした後、ついに敷地に足を踏み入れる。


 ここではルアザはフードを取り視線だけを失礼がないように、小さく動かし建物内を観察する。


 屋敷で働いている奴隷達も外面内面を含めた一定以上の基礎能力があり上級奴隷だとわかる。


 奴隷の扱いを見ても無理はさせないが、最大限に無駄無く使えており、それなりに歴史ある家だと関心する。


「ルアザ·ミラレアを連れて参りました」


「そうか! 来たか!」


(……この声は)


 コロッセオで出会った人の声と同じ声がルアザの耳に通り抜け、身分が高いと予想はしていたため、驚きはしない。


 ドアが開き、入るように促され、ルアザはそれに従い部屋へと足を踏み入れる。


「うむうむ! 話の通りの見た目だな!」


 ルアザの姿を見回し、納得したかのように満足した表情を浮かべていた。


「はぁ……?」


 相変わらず距離の近い対応にルアザは困惑する。


「まぁ、話については後でいいや。改めて自己紹介をしよう。名前はユゥグトゥス・ガルメア・ファラン・キストル・ユレイス。皇帝の従兄だ」


「こちらも、改めまして。ルアザ・ミラレアです」


 ロゼリア帝国の中でも最上級の位階にいるという驚くべき事実は伝えられるが、ルアザはすでに想定していた結果であるため、何事も無かったように改める。


「座ってくれ。あと、そこの。飲み物と摘める物を運んできてくれ」


 ルアザの肩を親しげに叩き、座るように促し、首を曲げ近くに通った屋敷の者に命令をする。


「闘技大会本戦出場おめでとう!」


「良かったですよ。今思うとなかなかの大口を開いたものですから」


 微笑みに僅かな音を乗せて、安堵するように椅子に体を沈める。


「どうだ? これからの本戦は勝ち進めるか?」


「相対してみないとわかりませんね」


 ぶつかるであろう相手の実力自体はすでに自身の目で観察して、最低限の力は察せられた。

 どれも自分と同等な実力の持ち主であり、長所が多く、己の短所も補い、パッと見弱い場所が無く隙も見つからない。

 それは相手も自分も一緒なため、いかにして己の長所、短所を利用するかだ。


「おもしろくなりそうだ」


 ユゥグトゥスは仰向けになりながら、これからの闘技大会に思いを馳せて、微笑む。


「こちらは結構真面目なんですけどね」


「それが、実力者の運命なのだよ。諦めろ」


「まぁ、いいや」


「あ、そうそう。約四年前にお前の育て親のクラウ・ソラスに会って。伝言を伝えられたぞ」


 運ばれた飲み物とお菓子に手を伸ばしながら、日常会話をするように軽い口調で、ルアザが口から飲み物を吹き出せる情報を告げられる。


「ゴホッゴホッ! 詳しい話をお願いします……!」


 まさかここで、クラウの伝言があるとは思いもしなかった。

 コロッセオでもクラウの事が知れ、まるでクラウは自分がいなくなった後の事も予想して、自分が通るであろうと思われる場所に自分の欠片を置いていってるようだ


「なはは。君の変わらない顔が崩れる所を見たかった」


 ルアザのどの場面でも澄ました美しい表情を歪ませのをユゥグトゥスはその目で捉えて満足したようだ。


「そんな目で見るなって。美人の視線はどんな相手でも効く」


 麗美で冷たく呆れた視線がユゥグトゥスを貫く。


「まぁ、そんなことはどうでも良いです。それよりもクラウの事についてですよ」


「えっと、たしかこの辺に置いたはず。あ、あったあった」


 少し離れた場所にある棚から、一枚の手紙を取り出しルアザに渡した。

 ルアザは受け取った手紙をじっくりと見つめ、封を開ける。

 二枚の紙が畳まれております、文字が綴られている。

 早速一枚目を読む。


『ルアザへ


 ルーがこれを読んでいるということは、私は貴方の近くにはいなく、計画通りに事が進まなかったのでしょう。

 私はそんな可能性を予想して、信用できる元主人にこの手紙を託しました。

 私は元奴隷の身分ですからね、解放奴隷という奴です。


 そんなことはさておき、貴方の事について伝えましょう。


 ルーが育った環境や境遇に疑問に思ったはずです。

 ですが、まだ本当の真実については教えません。


 ルーが悪人になっている可能性があるからです。

 貴方の情報はかなり重大な物ですから、悪人になってしまっているルーが自分の情報をどう使うか、不安ですから。

 もし、ルーが悪人になってしまったら我々の責任でしょう。

 そうであったら申し訳ありません。

 そして、罪を償い、善人に生まれ変わってください。

 目を反らし、瞑りたくなる困難の壁がルーの前に立ち塞がっても勇気を出し乗り越えなさい。』


「やっぱり、僕には多くの事を教えてくれなかったのか。まぁ、自分でも納得する」


 ルアザはある程度地上を暮らし常識を学んでいると、クラウは特に武力、暴力に関わる事について、基礎からほんの少し発展させた部分くらいしかルアザに教えていない事に気づいた。


 最初はクラウの知識と経験が少ないから、自分に教えられなかったと考察したが、今回の件で答えが導だされた。


 クラウはルアザの事を信用しているわけではなかった。

 ルアザは故郷から出た当初は白でも黒でも何にでも染まる存在であった。

 故に単純計算すれば、大きく二つに分けて、半々の確率で善悪どちらかに分岐をする。


 楽観的な性格の持ち主ではないクラウは、悪の道を歩んだ場合を考えてルアザに力を与えなかったのだ。


 特に武力は周囲に対して痛烈な強い影響力がかるため危険と判断し、せいぜい、自分の身を守れる基礎の範囲しか教えなかったのだろう。


 だが、ルアザは基本的に天才と呼ばれる類の人物なので、独学で弱体化したクラウと互角に戦えるようになったのはルアザの絶え間ない努力の現れだ。


 そして二枚目を読む。


『どうしても、自分自身は何か、知りたければガルト州にある州都リーペとザレト森林に向かいなさい。

 そこにエウレア殿と私が隠し続けたルーの秘密があります。

 貴方の父親についても。

 この手紙の封に付いている石が導き、鍵として使う場面があるので大事に保管しておいてください


 クラウ・ソラスより』


「……ガルトに全てが眠っている」


 クラウの手紙を読み終わったルアザは小さく呟く。

 なんとしてでもガルトに行く理由が現れ、自分自身でも自分が決意したと明確にわかる。

 儚さある清白な白い体とは対照的な存在感がある赤い瞳は無意識に西に向いていた。


「さぁ、運命の子よ。我に頼みたい事があるのだろう。言ってみろ。この出会いは必然であり、過程の結果でもある。故に汝の手助けをしてやろう。このユゥグトゥス・ガルメア・ファラン・キストル・ユレイスが次なる答えの過程となろう」


 ユゥグトゥスは立ち上がり、まるでオリンピック開会式で見た皇帝のように威厳と吸い込まれ、ついて行きたくなる雰囲気を纏わせる。


 不敵な笑みは彼が持つ本来の太陽のような輝光の笑みを星のように煌めかせ、果てなき深みをもたらす。


 彼が偉大なるロゼリア帝国を支配と統治をする正真正銘の皇族だと強制的に理解させられる。


「今ならこの縁を切れる」


「何を言うか。ここまで来たのだから、おもしろそうだ!」


 ユゥグトゥスの本音はこれだろう。

 ルアザもなんとなく半分くらいは確信して、彼の乗りに合わせたのだ。


「個人的にはなるべく深くまで巻き込みたくないから、少しだけ力を貸してほしい」


 これはルアザの本音だ。

 協力してもらえるのは嬉しいが、核心的な部分までは入らせない。

 自分でもこの運命が荒波を航海する船のように大変で険しい道のりになるだろうと感じているからだ。


「オーケー、オーケー!」


「じゃあ、早速ですが、ガルト州の地図とかあります?」



 口調を丁寧に戻す。


 ユゥグトゥスとしては別に丁寧な口調に戻さなくとも、先程の口調で構わないが、こういったことは強い信頼関係が必要だから気長に待つ。


 ユゥグトゥスは書庫の部屋からガルト州の地図を持ってくるように、部屋の外にいる奴隷に命令を下して持ってこさせる。


「ガルト州に行くのか? それは許可できないな」


「あぁ、そうでしたね。二級立入禁止区域に認定されてましたね」


 ロゼリア帝国が指定する二級立入禁止区域は軍隊が対応するレベルの危険度を持っている場所となる。


 だから、ユゥグトゥスは国に所属する者として、明確に決められた法律を破るわけにはいかないのだ。


「闘技大会本戦に出場してるから、実力は備わっていると思うが、ダメだな」


「どうしてもですか?」


「そうだな。せめて、闘技大会準決勝まで進めれば、考えてはくれるだろう」


 仮にユゥグトゥスが許可しても立入禁止区域を担当する者が許可をしなかったら、入れない。

 つまり、信用が足りないのだ。

 どこの馬の骨か知らん奴に何が起きるか、わからない場所に行かせる程、担当者も愚かではないのだ。


「うーん。こっそり行ったらどうなります?」


「捕まる」


「なるほど、正当な手続きをもって堂々といきますか」


 表情一つも変えずに、捕まると、宣告したユゥグトゥスにルアザは冗談や不可能という物を感じず、素直に正攻法で行く事にした。


「だから、他の奴に声をかけられてもついていかないように。特に今回の選挙の立候補者たちにはな」


 立候補者達は当然漏れなく、それなりの地位に就いている。

 彼らの利害が一致し、数が集まれば力押しで通ってしまう可能性がある。

 特にルアザは見栄えを極め、帝国有数の実力もある、味方にすれば利益しかない。

 すでにルアザは多くの立候補者達に狙われている。


 ユゥグトゥスはそんなルアザを守っているのだ。

 中立勢力の皇族が後ろ盾になれば、ルアザも必然的に中立となる。


(ただ、皇帝陛下の一声でどうにでもなるんだよな)


 立候補者達に目を付けられているということはユゥグトゥスのように皇帝も多少は目を付けている可能性もある。


 そして、ルアザはせめてでも概要は知っておく。

 調べる事事態は禁止されていない。


「なるほど、ここが州都とザレト森林か」


 ガルト州は平野が広がると同時に森林が栄えた州だ。

 東に大樹海、西に森林地帯そして、人類の長年の努力で切り開いて来た、南沿岸部から中央の平野。

 そして、北はバルメニア地方へと繋がる街道。


 州都は南西の沿岸部付近にあり、ザレト森林は中央の平野の真ん中にある森であった。


「フムフム、三ヶ月あればつくかな?」


 指を地図の上になぞり、歩むであろう道のりと日程を計画する。


「いや、今のガルトはとてもじゃないが、中央を通って行くのは危険すぎる、少し遠回りになるが沿岸部を沿って行くのが安全だ」


「実際どういった状況なんですか?」


「魔物共が柱梁跋扈している状態だな。正直ガルト地方の人々は全滅しているだろうな」


「それ、一級指定した方がいいのでは?」


 一級、つまり国が軍事力だけではなく、様々な力をもって対処に当たる事態だ。

 ほぼ、国の敵認定されている。


「いや、今は西方軍が対応できているから、二級で十分だ。一級は影響がでかすぎる」


 国内の力をただでさえ金食い虫の軍事に集中させれば、大きな傷を招く諸刃の剣のような物だ。


「ザレト森林の方が近いから、沿岸部を通りつつ最短距離で入る。そして、リーペへ向かう。粗方そんな感じで良いだろうか」


 情報が足りなく、ユゥグトゥスにも聞いてみるが、本人もとにかく何が出るかわからないらしい。


 ルアザはなかなか、一筋縄ではいかない運命に乗ったものだと、これからの苦労を思うと憂いる。


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