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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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オリンピック始まり

 オリンピック開会式が終わり。

 ついにルアザが出場する最初の種目、闘技大会が始まる。


 合図の鐘の音が鳴り響き、観客の興奮の度合いを引き上げる。


「皆さん! 今日も元気ですね! そして、私も元気です! 今回の実況と司会を担当するマリウス=ケレアスです! このオリンピックの間よろしくお願いします。それと」


 実況者マリウスの騒がしいが気分を悪くさせない爽やかな声が広がる。


「解説のユーク=レイバーンです。よろしくお願いします」


 その隣にいる初老の男性が苦笑をしながら、観客達に手を振りながら自己紹介する。


「はい。あの、レイバーン将軍です!」


 レイバーン将軍は過去に闘技大会に出場しており、二度の優勝経験を持つ超実力者である。

 今は加齢による衰えから、軍の第一線からは外れているが、後進の育成を任されている。


「今日は、我らロゼリアの頂、我らロゼリアの中心、ロゼリアとはその者」


 マリウスが急に真面目で真剣な目付きと口調で、言い始めると、どこからともなく太鼓を叩く音がこの場を支配する。

 そして、今この場にいる人々は貴賎の別なく、男も女も全ての種族民族はとある方向に頭を垂れ、中には感激して泣いている者まで存在する。


「偉大なる皇帝陛下がお見えです」


 マリウスの威圧感のある厳かで静かな声が会場を動かす。


 そして、マリウスとレイバーン将軍がいる少し上な場所から、一人の男性が堂々とした立ち振舞いで姿を現す。

 誰もが黙り、ロゼリアの喧騒が幻想だったと認識を違える程、静寂としつつも力溢れる場所になっている。


「頭を上げよ」


 許可であり、命令の一度で人々はゆっくりと頭を上げ皇帝に視線を向ける。

 皇帝の眼差しは、向けられている視線の数を合わせた物よりも強烈な不屈の眼差しを民衆に向けていた。


「長くは話さん。選手達は全力をもって己の力を発揮させよ。余は期待している」


 短い言葉だけ言い去って行ったが、皇帝はオリンピックの主役は選手達だと物語っている。

 それは観客や場外からの妨害行為は許さないしし、選手達も主役であるため、ルール違反の卑怯な真似はできない。

 全て皇帝が見張っているからだ。


「皇帝陛下ありがとうございました。選手達もきっと陛下のご期待通りに己の実力を最大限にこのオリンピックで発揮させるでしょう。そして、我々も選手達を助け最高のパフォーマンスをできるよう見えないところでも援助していきます」


「では、始めていきましょう! オリンピック第一種目闘技大会の始まりです!」


 軽快、爽快なマリウスの声と共に気分を高揚させる音楽が奏でられる。

 先程の何も動かない静の空間から弾けるような動の空間へと変わる。


「ルールを説明します! 闘技大会はオリンピック種目の中でも最大の参加人数を誇る種目です。数を絞るために、最初は八つのグループに分けたバトル・ロワイアルの中を勝ち抜いた一人が本選のトーナメント戦に出れます。そして、そのトーナメント戦も決勝まで勝ち抜いた者が優勝者です」


 闘技大会は比較的に出場条件が低く、自分の実力に自信がある者が多く参加する。

 バトル・ロワイアルの集団戦とトーナメントの単体戦の二つの楽しみがあり、非常に人気だ。

 元々コロッセオに剣闘士と呼ばれる物があり、それは奴隷や立候補者が出る物だ。

 今回の闘技大会はそれの規模を拡張させ、剣闘士は出ないという形の競技である。


「そして、負けの基準は神々の眷族が判断します。神々の眷族が一人一人選手に憑いて、結界を張ってくれます。その結界が完全に破れた瞬間、その場から退場します」


 眷族。

 精霊が自分で生み出した場合であったり、主従関係で契約などした状態の関係の高位存在である。

 親と子供、上司と部下の関係である。


「武器防具については当然、宝具の使用は禁止しています。使用する技も戦術級レベルは禁止にしています」


 宝具。

 簡単に言えば、すごい強力な道具。


 戦術級は一撃で人間を百人、木っ端微塵にできる威力の物だ。


 そして、その他にもルールを説明し終わる。


「破った場合は即座に退場してもらいます」


「では、始めましょう。闘技大会予選、第一グループ入場してください」


 コロッセオ最大の広場。

 半径約300メートル、観客収用人数最大八万人。

 コロッセオ全体に対空、対地中まで360度全体に張り巡らされた、あらゆる防護結界、感知結界。

 観客を守るための防護結界があり、その結界もただの守るため結界ではなく、観客を楽しませ、飽きさせない工夫がなされている結界が張られている。


 その広場の横から数十人の人々が堂々と現れる。

 選手達は万の眼差しを向けられ緊張する者や逆に浴びるように手を広げサービスを行う者もいる。

 選手達が共通していることは今にも爆発しそうな高揚感を体の中に押し込み、染み渡らせていることだろう。


 中にはフードを被ったルアザがおり、広場を見渡す。


「では、鐘が二十回なったら、開始します。選手達はそれまでに位置についてください」


 マリウスの言葉を皮切りに、輝く笑顔をしていた選手達は野性的な獰猛な笑みを浮かべ四方八方に動き、自分が始める位置へ移動する。


 鐘の音が鳴るたびに、会場の空気は殺気に濃く満ちて、張りつめる。


 そして、二十回目の鐘が鳴ると、戦術級ギリギリな爆発、爆炎、竜巻、激流、土砂が誰かから放たれる。


 物理的な威力を持つ爆音が鳴り響き、コロッセオ全体が揺れ、人工的な災害が作り出された。


「おっと、いきなり必殺技が来ました! これで勝負は決まったのでしょうか?」


 耳を抑えるマリウスは実況者の維持なのか目だけは閉じずにしっかりと会場を見ていた。

 そして、マリウスの言動はその他大勢の観客の感想を代弁している。


「いえ、半数は残っていますね」


 それに対して、レイバーン将軍は一切動じずに目線を会場へと向けている。

 老齢の瞳には土煙や炎が支配する会場に微かな影を捉えていた。


 大規模な攻撃を繰り出したのは魔術師であった。

 そして、魔術師の必殺技を半数は防ぎきったのだ。


「凄まじいですね。圧倒的な初見殺し、単純ですが、見事な策です」


「初見殺しも対応できない雑魚は消えましたので、これからの戦いに注目していきましょう」


 会場の方は多くの選手達が、先程の魔術を放った魔術師に向かい攻撃を行っている。

 そして、その攻撃を行うことにより、隙がでる選手達を狙う者までと攻撃の駆け引きが行われている。


 だが、数は魔術師を狙うのが多く近接戦など対応できない砲台にしかならない魔術師が消えていく。


 現在残ったのは、近接戦も対応できる魔術師と強力な攻撃を防げる者だけが残り、互いに動きを止める。


「おや、どうしたのでしょうか? 皆動きを止めています。レイバーン将軍、選手達はどういった状態なのでしょうか?」


「そうですね。結論を言うと、誰を狙うか定めているのでしょう。今ここにいる選手達はあの激しい攻撃を掻い潜った猛者ですから、作戦を考えてもいると思います」


 災害の威力を耐えて、攻撃の雨を避けてきた英雄の素質がある、強者が残った。


「その作戦というの例えばどういった物があるのでしょうか?」


「何割かは誰かと組んで即席で連携を行うなどするかもしれません」


「なるほど。あ、動き出しました」


 動き出したのはルアザであった。

 ルアザは一番近くにいる、相手を倒すべく動き出したのだ。


 だが、相手はルアザと剣を交えることはせずに中心部へと向かう。

 ルアザとの距離はいっこうに変わらない。

 中心部へと向かえば必然的に逃げる相手を討とうとする者が現れ、早速、相手とルアザをまとめて吹き飛ばそうと溜めていた力を解放する。


 二人に即退場の一撃が降り注ぐが、ルアザはそれを待っていたかのように、フードの中でニヤリと軽く笑みを浮かべる。


 ルアザも当然、溜めており力を解放する。


 しかし、ルアザの攻撃と相手の攻撃とでは、やはり総合的に力の差がある。

 次の瞬間、石をぶつけ合うようや身の毛がよだつ音が鳴り、土煙がまた舞い、相手の位置を乱す。

 しかし、土煙の真ん中を貫いてきた。

 威力は弱めるが、進路や速度は変更せずにルアザに襲いかかる。


 だが、ルアザが十分受け流せる威力には下がったため、難なく剣で受け止める。


 そして、ルアザは左右後方から殺気染みた気配を感じたため、即座にこの場から離れ、殺気の対象からも離れる。


「釣れたのは六人か」


 残念そうな声と共に指を上に向ける。


 中心部に爆発音と共に大規模な風の柱が立ち、ルアザに攻撃を仕掛けた六人は上空へと打ち上げられ、高速で結界に激突して退場する。


 最初の大規模攻撃が終わった後、攻撃に参加している者が多い中、ルアザは罠を中心部に仕掛け、本番が有利になるよう対策していた。


 自分が囮になることで、相手の溜めていた高い攻撃力を使わせ、こちらの本命の打ち上げの対抗手段を無くすという作戦を立てた。


「惜しかったですね。彼らもチャンスを掴もうとしましたが、一歩及ばずでした」


「はい。非常におしいと思いますが、少し冷静ではなかったと思います。誰もが経験がある、集中状態が視野の搾取に繋がってしまったのでしょう。そして、少し博打のある作戦でしたが、良い作戦でした」


 会場はルアザをきっかけに流れ動き出す。


 三人組がルアザを狙い、一斉に襲いかかった。

 三人とも槍を武器としており、ルアザは剣のためリーチに大きな差がある。


 鋭く躊躇いのない拍手に値する突きを避けて、全てが敵になっている集団戦へとなっている渾沌の地へと向かう。


 一人が焦ったように、槍を投げつけるとルアザはその槍を掴み、奪う。

 そして、持ち手部分は木材でできているため、難なく武器破壊をし、軽くなった槍先だけを投げた相手に投げ返す。

 相手は結界を張る暇もなく、脳天に向かい槍先が直撃し、退場。


 残りの二人はフォローしない。

 ちょうどよく攻撃のタイミングがあり、連携した方が有利と判断したたむ急遽、連携をし始めただけの関係だ。

 元々自分一人で戦う予定だったため、一人減っても痛手にはならなく、そのまま消えてくれれば、御の字である。


(アホかあいつ。全員で潰し会うというルールなのに自ら隙を晒して)


(我慢していれば、何もなかったものを。もったいない)


 二人は一人に辛辣な評価を下し、まだ思考の余地があるため余裕があるのだろう。


「おい、逃げるな!」


「空を持つ者よ、その蒼穹なる巨大な手をこちらにかざし、見えざる満ちたの空を零れ落とせ」


 返答は詠唱であった。

 そして、詠唱した瞬間、岩が落ちてきたかのような重さのある空気が槍使い二人にぶつかる。

 精霊魔術の良い所は詠唱が成功した後の発動速度であろう。

 故に魔術の気配が気づいても対処が難しいのだ。


 二人が態勢を崩した瞬間ルアザの二連撃が振るわれ、退場する。


 残りは四人となった。


「混迷の中に一線を引く剣士よ、迷わぬ正しい剣の一振りを振るいたまえ!」


 ルアザと相対する魔術師から素早く大きな声で発音された詠唱が行われる。

 詠唱とは精霊魔術で言う、精霊に対して魔術行使の依頼文だ。

 故に大きな声で詠唱をした方が確実であり、威力が大きくなる。


 ルアザはよく聞こえた詠唱の言葉から、どんな攻撃か即座に察し、横に大きく避ける。

 しかし、今回のルアザのように詠唱は文からどんな効果か、予想できるため、詠唱は聞こえぬように隠したりすることも多い。


 横に大きく避けても突如、空間から生まれた斬撃はルアザを追い横に曲がる。


「!」


 普通は真っ直ぐに進む斬撃としてはあり得ない曲線にルアザは驚きを示し、対応に悩むが、すぐに判断を下す。


 ルアザは剣をその斬撃に合わせ受け流す。

 自分の体も回転させ、出来る限りの力を後方に流した。


 さすがに精霊の斬撃は百八十度曲がらなく、結界に衝突し姿を消す。


 たが、ルアザは回転などをやってしまう通り、斬撃の対応に集中して大きな隙を見せてしまった。

 当然相手はそれを見逃さす、ルアザが態勢を立て直した瞬間にはすでに炎の大波を放ち、止めを刺そうとしていた。


 指を起点にルアザは突風の魔術を繰り出し、炎の波を縦に割る。

 その多少の熱は我慢して割れた部分を利用し、ルアザは走り抜け、相手に接近する。


 軽い物は吹き飛ばす。

 特に形も質量も無い火など、多少は威力は少なくとも十分な効果がある。


 防護結界を張っているが、魔術師の近距離戦闘技術に遅れを取る程、ルアザの腕は悪くない。

 しかし、結界の破壊までに時間はかかる。

 体を回転させるときにもう片方の戦いを確認したが、既に終盤戦へと移行しており、時間が無いことに焦りを持つ。


「地衝波点!」


 ついに残りは三人となる。

 少し離れた場所にいる闘士は地面を拳で叩くと、ルアザと魔術師の地点の地面から突如として衝撃波が生まれ強制的に吹き飛ばされる。


 だが、二人とも空中で身を捻り体勢を整えるが、その隙を狙い、闘士は高速で跳ぶ。


 しょせんは武器程の攻撃力のない拳だからと、一撃くらいは耐えられると思えるが、ルアザも魔術師も向こうの戦いは見ている。

 闘士の拳には常に厚い空気の層とも言える物が纏っている。

 そして、その空気の層を打撃の瞬間衝撃波に変換して、一撃一撃が対応が難しい打撃へと変わる。


 そして、ルアザの対角線上には魔術師と闘士がおり、ちょうど挟まれている形となっている。


 だから、闘士は一番近いルアザを狙い、烈風を纏う拳を放つ。

 ルアザは慣れたように結界を張り、防ぐが、後方からは爆発と共に鋭く割れた石の弾丸が無数に襲いかかってくる。


 闘士は既に大きく離れ、石の散弾から避けている。


 ルアザは結界のなりかけのような魂力が粘土のようになった固まりを後方に作り出す。

 完全な結界を作るよりも構築速度は速く、重宝する技である。


 柔らかい結界に散弾の速度と威力は容易く吸収され、ルアザはその結界から衝撃波を生み出す。


 結界で受け止めていた石が魔術師が最初に放った時と同じように打ち返された。

 魔術師の結界に阻まれるが、後ろからの闘士の爆弾と同等の一撃が喰らい、結界で防ぐが勢いは防ぎきれずルアザの方へと勢い良く飛ばされる。


 そして、ルアザは剣先を向けているだけで退場が決定するのは容易に想像できる。


 魔術師は必死な形相で悪足掻きでナイフを魔術で強化して投げつけるが、《念動力〈サイコキネシス〉》で受け止め、そのまま貫かれ想像通りの結果となる。


 闘士が魔術師の影で隠れたルアザの死角から、異様な静かさを持ち、接近をしてくる。


 視覚にあまり頼らないルアザそれに気づいていた。


 次の瞬間、拳と剣が衝突し、会場全体に轟音を鳴り響かせる。


 〈念動力サイコキネシス〉で浮かして制御していたナイフを闘士の後方から静かに首もとへ向けるが、体を傾け避けられる。


 闘士は体を傾けると同時に体を倒しながら、ルアザの剣と同様な空気を切り裂く蹴りを行なった。


 腕でその蹴りを防ぐが、闘士は現在空中にいるルアザの足を倒れる時に掴み、地面に引きずり込む。


 二人は互いに掴み合いながらも、地面に衝突する瞬間離れ、綺麗に着地する。

 ルアザは疾風ごとく速さで闘士の方へと向かい、闘士は落ちているナイフを拾い、地面を陥没させる程の爆発力で地面を蹴りルアザへと向かう。


 そして、交錯した。


「闘技大会第一グループ本戦への出場者が決まりました! ルアザ=ミラレアです!」


 観客席からは爆発したかのように、騒ぎ誰もがルアザを称賛する眼差しをルアザに向ける。

 ルアザはそれを見て、決意する。


 皆に嫌われる可能性が十分にある。

 だが、今は自分の人気度が最高潮に高まっている。

 仮に疎まれても特に状況が変わるわけでもないから、実質ダメージゼロなため、特にリスクがあるわけでもない。

 だが、やはり怖い物がある。

 どんなに頭の中で理屈や安心できる理由をいくら並べても決して拭えきれない不安感。

 この恐怖と不安を今ここで、振り切らない限り決して自分の姿を見せることはないだろう。

 そんな未来が本能のような形で容易く想像ができる。

 勇気を出せと、本能でも感情でもない、自分の根幹に存在する何かが言い、励ます。


 その言葉を信じ、ルアザはフードに手をかけ、幻影を解き自分の全貌を晒す。


 観客席は喧騒に包まれていたが、ルアザがフードに手をかける時に、正体不明の実力者の顔がわかるときが来ると悟る。


 そうなると、誰もがルアザに注目する。


 そして、観客の期待通りにルアザはフードを外すと、ルアザが持つ究極的な美の顔に黙って驚嘆した。


 ルアザも自身には最高峰の美貌を持つことは知っており自覚もしている。

 ただ、ルアザは自分が思っている以上に美しい。

 育った環境の弊害が現れる。


 ルアザは黙って多くの眼差しを向けられることに少し恥ずかしくなってきて、少し速歩きで会場から去っていく。


 ちなみにルアザはフードが外れないように気を使いながら戦うという器用な真似をしたため、本気は出していない。

出場者の身体能力のスペックはモ○ハンの人達と同じくらいです。

鍛えれば同じ動きができるでしょうね。

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