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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第三章
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選挙

「皆さん! 私は皆さんを、もっと豊かで、満たされた生活を提供をしたいと、考えております!」


 ロゼリアにある無数の広場の中の一つで、一人の男性が拡声の魔術を使いながら、演説をしていた。


「そのためには、減税と規制の緩和! これを実行することが必要です! 減税することによって一人当たりの自由に扱える財産が増え、様々な物を買え豊かになれる! 規制緩和によって、新しい物、多くの物が表に現れる! そして、それが皆さんが買う。この需要と供給の関係をもっと大きくできるのです!」


 現在ロゼリアは執政官コンスルと新たな民会、元老院などロゼリア帝国を動かす政治家達を決める選挙を行っていた。


「ですので! 皆さんの清き一票をこのキリウス・パヌ・ユンクティウスにお願いします!」


 だから、別の広場では違う人が演説を行っている。


「諸君! ロゼリア市民達よ! 栄えあるロゼリア帝国の誇りはなんだ!?」


「戦いと進歩でございますっ!!」


 広場に乱雑に並ぶ、多くの人々の誰かが演説者と同じように力強い声で返答をする。


「そうだ! 故に私は諸君に提案をする! 十六年前ガルト地方で起きた悲劇をなんとかしたい!」


「私が執政官コンスルとなったあかつきにはロゼリア帝国の国力を費やしガルト地方奪還の戦いを始める!」


「ロゼリア市民として誇りが有るものにはこのクラーク・ゼル・ポントゥスに一票を入れて頂きたい!」


 どの演説者もその周りで話を聞く者もワアッ! と騒ぎ、己の信じる発展方法と正義を語り、共有していた。


「やっぱり次の執政官コンスルはユンクティウスさんだよ。国を豊かにするのは俺達だと、遠回しに言ってるから、俺達の事を信じているんだよ」


「いやいや、ポントゥスさんだね。彼は誇りとか言っているけど、彼の願いと狙いはガルト地方の復活と外敵の撃退さ」


「それはユンクティウスさんというか、ガルト地方の悲劇から生まれた執政官コンスルも同じだろ」


「いや、本気度が違う。これまでの執政官コンスルは戦力を小出しばかりでガルト奪還から何一つ進んでいない。それに比べポントゥスさんは議員になっていた頃からこのガルト奪還の公約を貫いてきたんだ」


「だがよ。戦争ばかりで、いいのか? 確かにこの国は戦争で豊かになった国だけど、ガルトを失った傷痕も癒えずにそんな大戦争を行うなんて、大丈夫なのか?」


 ガルト地方はロゼリア帝国国土の二十パーセントほどの割合を占める地域だ。

 ボルーラ大陸の西東の両端は比較的にアイリズ大樹海が広がっておらず、帝国の一大食糧生産地として名を馳せていた。

 だから、それを失ったロゼリア帝国は強烈な痛手を喰らい、現在千切られた傷を治している最中である。


「それなら、減税と規制緩和こそが間違いだと俺は思う。どちらも国力を落としてしまう政策だ。ここ最近の執政官コンスルはこういった形で国の力を落とす政策が多いぞ」


「別に落としているわけではないさ。国の莫大な力のほんの一部を俺達国民とかに薄く分けたりしている。当然税金が減れば、俺達が使える財産は増えるから、俺達の生活は良くなるし、その上がった分と分けた国力は、たぶん、だいたい一緒だと思う。基本的に税金は皆平等に集めているから、多少は長期的だけど、損はあまりないと思う」


 回収する富の量を減らす事により、国民全体的な私有財産が増え、富の使用量が必然的に増加し、経済が素早く大きく回ることによりあらゆる業種が富を持てることになる。

 その増えた富を税金として回収すれば、減税して一人当たりの回収量は減るが、十分に国に還元できる。

 これが、減税と規制緩和による狙いだ。


「でも、国に守ってもらえなくなるぜ。このロゼリアは安全だけど、ロゼリア帝国全体的に見れば、中にも外にも敵だらけだぞ。俺は心配なんだ」


 ポントゥス派の彼は持つワインを見つめる。

 ワインの水面に写っているのは、目角を下に下げて複雑そうに自分の髭を触る男の姿があった。


「お前の気持ちもわからんでもないが、大丈夫だ。ロゼリアは何百年の歴史があると思っているんだ。こんなこと帝国は何度も経験している。今回も乗り越えるさ」


「そうだな。皇帝陛下もまだ若いのに属州を見て回っている。ガルトの惨景も見て下さったはずだ。聡明な陛下だから、何らかの処置をしてくれるだろう」


 励まされた彼はコップの中のワインを飲み干す。


「無能に皇帝はできないからな。優秀な国の人達が決めた事は基本的に間違ってない。失敗するときは何らかの原因があるさ」


 ロゼリア帝国は皇帝を頂点にし、選挙で選ばれた執政官が皇帝を次ぐ権力を持ち、支えるという形の国だ。

 実は歴代の皇帝に血の繋がりがあるのは半分以下であり、残りの半分以上は養子などを取り帝位を継がせている。

 優秀な人材を養子にするということは、貴族、豪族、金持ちなどではよくあることであり、技術の保護、家の存続など様々な目的がある。


「それもそうだな。その原因が一番怖いけどな」


 皇帝も含めて、帝国上位層に無能はいない。

 ロゼリア帝国は実力主義の国だからだ。

 彼らが失敗を起こす原因としては何個かあげられる。

 まず最初から間違っている。

 例えば寝ている龍を起こすとかの、明らかに大惨事になるものをやってしまう。

 だが、ここで国の主要な都市や道を何十年に渡って塞がれたらどうだろうか? 失った利益、これから失う利益はは甚大であるため、強制的に排除するという選択肢が十分にあげられる。


 そして、一番多いのが、最初は良かったが途中や最後で躓く。

 外的要因など多くの原因はあるが、臨機応変に対応できない結果失敗する。

 政策によって成功確率が違うのだ。


 最後に理不尽。

 突然、予測不可能な何かが訪れ、強制的に終わらせるというものだ。

 災害と同じような物で、壊された後の備えをするしかない。


「大丈夫さ。仮に大失敗を起こしても、この国は自分で治せる力があるからな」


 高位存在が問題の場合は国の守護精霊である守護神達に頼ったりと対応策の手札はある。

 最終的には大国ならではの圧倒的な物量でなんとかすればいい。

 もちろん、最終手段を使わずに済む、低コストの手段の方を考え抜いて、実行する。


「おぉ、そうだな。我らが栄えあるロゼリアに乾杯!」


「あぁ、乾杯!」


 二人は笑みを浮かべ、互いのコップを掲げ残った酒を飲み干す。


(文明的な国だな。一般市民までもが、政治の話をし高度に知的な話し合いができている)


 その隣で、ユーハは食事を取りながら選挙の話を聞いていた。


(少なくとも同じ時代ならどこの世界よりも高い文明度を築き上げている)


 政治に興味のある市民が多く、ロゼリアの人々の極めて高い文明度に驚き、食事も深くなっていく思慮と比例して遅くなっていく。


(それはそうとして、今回のオリンピックは荒れるな。同じ時期に選挙も重なった。祭りは崇める物だが、今回は利用する者が多いだろう。こんな機会めったにないからな)


 参政権のある市民をいかに自分の票にしてもらうか。

 手っ取り早く、脅迫、賄賂という方法もあるが、立候補者は互いに動きを監視しあっているため、そんな事ができるはずがない。

 やってバレたら皆、好機と見なし立派な大義名分をかざし集中砲火がはじまる。

 弱みは絶対に見せないし、作ることもしない。


 参政権のある市民は基本的には多いわけではない。

 一部の人だけが持つ特殊な権利だが、その権利所持者も市民が土台となって、その権利を得ている。

 立候補者は参政権所持者も重要だが、市民の人気の方が重要視しており、参政権所持者は所詮は市民との間の仲介者にすぎない。

 故に市民の支持が多ければ有利になる。

 もちろん、最終的に投票するのは参政権所持者だから、バランス取りは必須だ。

 バランス取りもできないバカは政治もできないバカなのだが。


 で、選挙は基本的に大きい奴が勝つ。

 選挙活動で『国を食い潰します』とか言う奴はいるはずがない。

 皆、良い国を豊かな国を作りますと、言う。

 良い国を作るためには国が抱える問題を解決するのがよく取られる方法だ。

 だから、皆同じ事、似た事を言う。

 誰に票を入れても同じだが、人間の習性として、強い奴に従うという習性があり、そうなると必然的に力ある大きい立候補者に票が集まる。


 しかし、それは普通の選挙だったらだ。

 選挙活動と選挙の時期がオリンピックの開催と重なっている。

 つまり、立候補者の自身の派閥の者を出場させ、自分の仲間だと宣伝し、市民の支持を取る。

 その出場者が強い選手であればあるほど、有利に働く。

 それ以外にも理由はあるが、単純に票が集まりやすくなる点ではこの案が強い。

 現在不利な立場の立候補者達は逆転のチャンスだ。


 故に荒れに荒れる。

 今回の選挙は英雄達が大きな勢力を作っているのだ。

 賢い選手も一定数はいるため、スポンサーを複数つける人もいる。

 中には良からぬ事を企む者もいるだろう。


「俺も出場するか? なるべく情報は多い方が良いだろうし」


 出場する時のメリットは人でも高位存分でも有力者に近づけ、目的地のガルト地方の様子について詳細な情報を得られることだ。

 酷い状態であり、魔物などの危険種が跳梁跋扈しているとは聞いているが、それだけである。

 ユーハにとってその程度なら、解決できる問題であるため別に新たな情報はいらない。

 だが、もしもの事を考えると目的を達成しないまま終われないのだ。


「…………………よし、出場するか」


 長い沈黙の後、出場することに決める。

 何日も前から考えていたが、やっと決断を成した。

 元々警戒心の高い性格をしており、どちらでも良いという失敗のない選択肢で悩んでいた。

 そして、成功をもっと完璧にするため、情報というパーツを合わせることにしたのだ。


「とりあえず優勝して。ルアザ君には悪いけど、社会は厳しく、上には上がいることを思い知らせてやろう」


 そして、ユーハは出場登録を済ませて、ロゼリアの街中をブラブラと散策していた。


 武器を売っている店でルアザを見つけ、声をかける。


「ルアザ君」


「ん? ユーハさん。どうしました?」


「いや、見かけて声をかけただけ」


「そうでしたか。今、僕新しい武器を買おうとしているのですけど、この二つと悩んでていて、少し意見をもらえませんか?」


 現在ルアザが使用するクラウの剣は旅の中それなりの数をクラウの剣で振って、切って、叩いて、突いてきたのでボロボロになっていた。

 そのため、完全に壊れて涙を流す前に新しい剣を買い、クラウの剣は使わず鞄の中に大事に入れて置こうと考えた。


「いいよ。これとこれだね」


「そうです」


 ルアザのが視線を向けている先に二つの剣があり、片方は少し小さく、もう片方は大きい剣であった。


「他の武器を使わないの? 使えるだろう?」


 ユーハは店を見渡し、槍、棒、打撃武器などと様々な武器が揃っている。

 ルアザは代表的な武器は使える。

 ただ、得意なのは剣であり、ルアザが持てる荷物量にも限界があり、一番万能な剣を主に装備して旅をしている。

 他の武器の腕は鈍らぬように日々訓練と復習をしているため問題はない。


「使えますけど、さっき本を大量に買ったのであまり多くのお金はないですし難しいですね」


 ルアザが最も大事にしている武器、持ち物は知識、知恵である。

 重量皆無、応用力半無限、という万能の極みを至る武器だと認識している。

 書物を集めるの既にルアザの趣味と化しており、ルアザが自作した妖精の鞄の中に入っているクラウとエウレアの妖精の鞄は書物が多く占めている。


「どんな形で使いたいの? 小さい方だったら盾とかの小道具を使えるけど、扱いは難しいよ。他道具を使わない場合は軽くて取り回しが良くて使いやすいけど」


「今使っているのと同じように万能な形で」


 クラウの剣は並ぶ二つの剣の丁度、間の大きさをしている。

 悪く言えば中途半端だが、二つの剣が持てない物を持っている。

 逆に二つの剣が持っている物は持っていないとも言える。

 どちらも一長一短だが、使い方でそれは決まる。


「じゃあ、こっちの大きい方だろう。多少重くなっても魔術使えば良いし、攻撃力は確実にあがるだろう。攻撃力があることは防御に繋がるし」


「…………じゃあ、こっちの大きい方で」


 万能というのはどちらかと言うと防御の方が得意なのだ。

 攻撃で大事なのは圧倒的な力。

 どんなに小さい物でも極端な何かを持っていれば、それは武器となる。

 例えば、小さな針などだ。

 針一本あれば、大抵の小動物は殺められ、大型動物であれば、毒でも塗れば完璧な暗器になる。


 ルアザは魔術も必要な物からそれ以上の物は扱え、剣などの武器も魔術と同じように扱える。

 だが、近接戦に攻撃力が足りなくなることがある。

 一撃必殺を目指しているわけではないが、攻撃力不足で十分なダメージを与えられない。

 だから、少しでも攻撃力を上げておきたいのだ。


 そして、ルアザは店主に金を払い新たな剣を身に纏う。


「あ、そうだ。俺もオリンピック出ることにしたから、よろしく」


「えっ」


 何気なく言ったユーハの一言にルアザは目を瞑り頭を抱える。


 ちなみにユーハはルアザより強い。

 あらゆる方面で。



設定時代は西暦が始まる少し前くらいの時代です。

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