光と幸せの奇跡を勇気、知恵、力をもって実現する者
「えぇ、元気になりました。えっとオムニバスさん?」
「ユーハで良い」
「あの、ユーハさんはどこに向かうのですか?」
ルアザにとってユーハはかなり大きい存在になっていた。
親を失い、穴がまだ空いていたルアザの魂を埋めるように自分が望む答えを次々と出すため、ルアザはユーハの事をクラウとも似た師匠のような導き手のように感じていた。
だから、ルアザは出来ればユーハについていこうと考えた。
「ん? そういえば君は?」
「そうだ。リャムラさん。親がどこから来たか知ってています?」
当初の目的を思い出したルアザは、早速リャムラに聞く。
「ええっと……」
「ガルト地方だ」
老人であるリャムラは約十五年前の記憶を探り出すのは、時間がかかるため、ナベロンが代わりに答える。
「ガルト地方ってどこですかね?」
「この大陸の西の端だ。君と俺の目的地は一緒だ。ちょうど良い一緒にガルト地方へ行かないか? 長い旅となるし、一人よりも二人の方が楽しいさ」
ルアザの質問を既に用意してあったかのようにスラスラと流れるようにユーハは話す。
「良いんですか? 常識知らずなので多大な迷惑をかけると思いますよ?」
非常に助かる提案だが、絶対に迷惑をかけるとは予想できる。
だから、先程、幸せの根源となろうと目標を定めたため、いきなりそれを破るのは、罪悪感と無力感に包まれるためルアザととしては、確認するべき事項だ。
「別に構わない。君は謙虚すぎるし、わからない事は聞いて来るから問題が起きる時は、突然だろう」
ルアザの様子や性格はこの短い間で十分わかることだ。
その性格から鑑みるにユーハの合格点にしていた。
「じゃあ、共にガルト地方へ行きましょう」
今浮かべているルアザの表情には不安などなく、安心に満ちた明るい表情を浮かべている。
特筆すべき悩むべき事項は今のルアザには無く、久しぶりに晴れ晴れとした気分であった。
「あぁ、行こうか」
晴れ晴れとした表情に当てられたのかユーハも微笑みを浮かべ立っているルアザに一歩近づく。
「そういえば、お主。名字持っておるかい?」
先程から記憶の底をまさぐっていいたリャムラはとある事を思い出す。
「名字? ファミリーネームという物は無いですね。それが何か?」
「このロゼリア帝国で名字が無いと、奴隷の身分を表す事になるから、自由に旅するなら必要だよ」
ロゼリア帝国ではほとんどの人は名字はどこの集団に所属しているか、わかりやすくするためにある。
奴隷と言っても様々な奴隷があり、階級もあるから、最底辺の身分とはいかないが、共通していることはあらゆる権利が剥奪されている。
奴隷の身分に就く者は人ではなく道具という認識が世間の常識だ。
「奴隷ですか。悪くはないですけど、自由に旅したいので、遠慮をしておきますよ」
ルアザは親から世間の身分について学ばされており、知識としては身に付いている。
奴隷は厳しいが悪ではないと。
「そうかい? お主なら帝国首都なら最高級の奴隷として大事にされると思うがね」
奴隷は道具と同時に財産だ。
仮にも人を売っているのだから高額に売買されている。
当然、普通に考えて高額な物は大事に大事に扱われる。
そこが奴隷の最大のメリットだ。
衣食住だけは買い主が提供して、奴隷はその代わり労働力を提供する。
働きによっては自由人にもなれる。
奴隷は主人の命令されたことさえやれば、壊れない限り、生きる上で最も重要な衣食住が手に入るのだ。
「えっ! まさか自分って価値が高い!?」
リャムラの言う事にルアザは自身の価値を悟り、自分で自分にビックリする。
アルビノの珍しさと見た目も良い、そして魔術も使える戦士であり賢いが無知。
最高級の奴隷を体現しているような物だ。
「かなり。拐いにくるくらい」
思いがけない情報に喜んでいるルアザに冷や水をかけるような厳しい一言が突き刺さる。
「……名字欲しいですね」
誘拐される程、価値が高いという事実に、照れるくらいの少しの嬉しさと誘拐への恐怖が合わさった心境だった。
「作ってあげようか?」
ユーハは軽い口調でそう提案する。
「良いんですか?」
「良いよ、良いよ。カッコいいの作ってあげるから」
「頼みますよ」
そう言いしばらくの間ルアザの名字決めの会議を行った。
そして、何個かの候補が決まる。
「まず一つ目。『エウレア』。最近減ってきたけど○○の子ですと、わかりやすい名字」
出身地の名前と親の名前という二大名字からとった。
「二つ目『エルファ』。君のお母さんの名前と最初を意味するアルファを組み合わせた名字」
始めて名字が付くためアルファと付け、そこに親の名前を組み合わせた。
「最後に三つ目『ミラレア』。龍の意味があるミラとお母さんの名前のから少し取って意味を変え希少という意味で組み合わせた名字」
龍、竜は勇気、知恵、力の象徴であり、そこに希少を合わせ、それを拡大解釈をし名字を一つの言葉として『実現』の意味合いがある。
「そうですね。ミラレアにします」
決めた理由はなんかカッコいいから。
「じゃあ、今から君は『ルアザ=ミラレア』だ。次からそう名乗ると良い」
「自分はルアザ・ミラレア。うんうん」
噛み締めるように自分の新たな名前を反芻して名前を呟く。
無意識に口角は僅かに上がっていることから、相当気に入っている事がわかる。
「じゃあ、そろそろ出発だ」
「えぇ、行きましょう。リャムラさんもナベロン様もありがとうございました。いつか、また会いましょう」
「気をつけてね」
互いにその言葉を最後とし、ルアザとユーハは地平線の向こうへと足を進めていく。
そして、ナベロンは青空に溶けるように翼を広げ姿を消していく。
リャムラは石にもたれかかり、クスリと笑う。
「思い出すね。十五年前を」
◆◆◆
約十五年前。
嵐の日。
「ううヴぅあぁぁぁぁぁあぁあ……!!!」
ベッドに寝っ転がっている若き頃のエウレアが体全体に大量の汗をかき、顔は辛苦に満ちていた。
「あと少しだよ。さぁ、もう一回力を加えて!」
リャムラは必死な顔で膨らんだエウレアの腹とエウレアの様子を見ながら気合いを入れ直すようにそう言う。
「うヴんんんぅうあぁぁ!!」
顔を赤くし、息も絶え絶えなエウレアは残された体力を総動員してお腹に力を込める。
エウレアはあまりの痛みに気絶しそうな意識を、使命感が繋ぎ止め力を振り絞る。
「………………─────────!!」
次の瞬間、部屋に産声が響き渡る。
甲高く、圧縮に圧縮された声が解放されたかのような悲鳴と勘違いしそうな大声が響く。
その声に不快感を示す事がないエウレアは達成感に満ちたような安らかな表情を浮かべ、視線をその声をあげている対象に溢すと、目を見開き、驚きに塗り固まれた。
(そ、そんな私の子が忌み子……!)
リャムラが困惑に支配された表情をしながら、白い赤子を抱きエウレアを見つめる。
エウレアは赤子を見て、僅かながらも嫌悪感が生まれてしまったが、それ以上の嫌悪感と噴火するような怒りが自分自身を襲った。
(私は、今なんて思った! 親として思ってはいけない感情を持ってしまった!)
少ない体力でも、震えは無く両手を赤子に腕を伸ばす。
リャムラは白い赤子を大事に大事にエウレアの手に乗せる
乗せられた赤子にエウレアは決して重いとは感じなかった。
乗せられると同時に嘘など含まれていない無限とも思える愛情が生まれ、まだ鳴く赤子に無償の愛が注ぐように瞳を向け目と合わせる。
「待ってたよ。私の私の大事な大事な宝物……」
胸辺りで赤子を抱きその言葉を言うと、赤子は急に鳴くのを止め、安らかに目を瞑り、静かに小さな胸を上下させる。
「名前はどうするんだい?」
「……この子は必ず厳しい運命にみまわれる。だから、強い名前にします。私の故郷の神々の中でも英雄であり、光を意味するルーと幸せを意味するヌアザを組み合わせた名前『ルアザ』と名付けます」
そう言った後に赤子に向かい力強い明瞭とした声でこう言う。
「命名します。あなたの名前はルアザよ。どんな万難辛苦の中でも光であり、幸せを失う事がない英雄の中の英雄のようになってね」
その後、エウレアはルアザ、ルアザと起きないように優しく何度も呼び掛ける。
二人の手は握り合い繋がっていた。
◆◆◆
「させません!」
クラウが剣を振ると、襲いかかってくる巨大な岩が真っ二つに割れ、勢いを失い地面に落ちて轟音を鳴らした。
そして、剣を持たない片方の手には雷霆の槍が握られており、クラウはそれを空を悠々と飛ぶナベロンに突き飛ばす。
「〈雷霆槍投〉!」
神速の一撃がナベロンの片方の翼を弾けるように抉り、ずれた重心に従い墜落する。
そして、クラウは宙を駆け登り、魂力も電気が大量に混ぜられた剣をナベロンのもう片方の翼を狙い下から空気と共に斬り上げる。
だが、翼と接触した瞬間、金属音が響き、翼は切れなかった。
しかし勢いは消えずに斬り上げられたため、ナベロンは羽を撒き散らしながら、落ちていく。
「ぐぅ……!」
落ちるナベロンは翼を急速に再生させ、地面スレスレで滑空し体勢を持ち直そうとするが。
「遅い」
翼を再生させ終わった時にはナベロンの周りには縮小し続ける結界が何重にも展開されていた。
(勝っても被害が大きい、負けを認めよう)
ナベロンは翼を折り畳み、地面に降り立ち勝敗が決する。
(もうこの剣は使えませんね)
剣身は歪み、大きく欠けた刃を見てそう思う。
(ですが、エウレア殿とルアザを守れました。目的果たされたましたし、悔いはありまんね)
達成感に満ちた表情をしていた。
◆◆◆
「懐かしい」
リャムラは記憶に刻み込まれた日を思い出す。
嵐の日に産まれたのだから、ルアザの事は正真正銘の忌み子だと思った。
だか、実際はエウレアとクラウ・ソラスはこちらの攻撃に躊躇いも無く全身全霊で抵抗した。
幸い村には被害が届かなかったが、ナベロンと自分は大きなダメージを受けてしまった。
「忌み子とか関係ない。絶対に譲れない大事な物を守るためなら、巨大な力を行使できる」
それはリャムラもナベロンも一緒だ。
「お主の親はその力を行使したぞ。お主はその力に値する程の人になれるのか、期待しよう」
「名の通り、|光と幸せの奇跡を勇気、知恵、力をもって実現する物となれ」
強い眼差しをルアザか歩いて行った地平線の向こうへと向ける。
これにて第二章は終わりです。
少しだけ零章のような幕間が入ります。
ここまでお読みになっていただきありがとうございます。
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ミラレア=ミラ(龍、竜)+レア(希少)
龍、竜=勇気、知恵、力
希少=奇跡
龍、竜の実行力の意味合いと奇跡を組み合わせて『奇跡実現』の意味合いにしました。
ミラ=某ハンターゲームのミラ○○から。




