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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第二章
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ナベロンの頼み

 黒い玉が現れたがルアザは注意深く様子見しようとした瞬間、黒い玉から一条の黒閃がルアザへと向かう。


 ルアザは横へ一つステップし避けていくが、次々と黒閃が発せられる。


 ルアザは黒い玉を中心に円軌道で駆けながら、観察をしていく。


 ルアザは強力な魔術を行うべく、属性を集め始めるが、黒い玉が術式構築を邪魔し魔術を行えなくされてしまう。


 やり方を変えながらルアザはそれを何回か行った。


(知能は有り。……1・2・3・4…)


「ここか」


 ルアザは襲いかかってくる黒閃を避けずに、結界の剣で弾き、飛びかかって切りつける。


 黒閃の威力にも変化があることに気づいたルアザはそれを観察していると、一定の回数で威力が減少する物があった。

 そして、今現在ルアザはその威力が減少した黒閃を弾けると判断し、それが成功したのだ。


「ペプュアアア!」


 ルアザは伝わる触感から斬れたと確信し小さく笑みを浮かべ、黒い玉は一本の線から一つの面へと変わる傷口に悲鳴を響かせる。


 悲鳴をあげている間に追撃を行いたかったルアザだったが、傷口から黒い液が垂れてきている事に警戒をした。


 黒い液は周りの草花を溶かし、地面から謎の湯気のような煙のような物が上がってきた。


 黒い玉は熱を奪い始め、ルアザの息を白くさせる。


 黒い玉の魔術行使領域から離れたルアザは剣を消失させ弓矢を構え、引いて、放つ。


 飛矢は真っ直ぐ黒い玉へと向かうが、黒い玉が広げた結界の障壁によって阻まれる。


(矢の無駄になるな)


 ルアザは迅速に判断したあと、そこら辺の石を拾い投げつける。


 石は風を切り裂きながら、先程の飛矢のように向かうが、黒い玉は魔術でそれを受け止め、逆に呪いを付けてルアザへと投げつけるられる。


「うおっ!」


 ルアザは予想以上の知恵と投石の威力に驚き腰を軽く捻りながら目を見開く。


 黒い玉はルアザの隙を狙い地面に太い一線を描きながら黒閃を放った。


「っ!」


 次の行動に繋げにくい避け方に後悔しつつも、迫る黒閃に対抗して障壁となる結界を前方に張る。

 黒閃は結界を縦に荒く切り払うが、既にルアザは結界の後ろにはおらず、横へと移動しており、空へと足を出し宙を駆ける。


 黒い玉もそれに気付き幾つ物の黒閃を放つが、三次元的に動き回るルアザを捉えきれず刃を向けてくるルアザから逃れるように距離を取ろうとするが、その時には深く剣に突き刺されていた。


 そしてルアザは止めの決定打の衝撃波を剣先からを生み出し、黒い玉に真っ赤な血が弾け出、大きな穴が開く。


「パプミャラアアアァァァァァ!!」


 断末魔を響かせ、黒い液と血液をし垂らせながら地面へと抵抗なく落ちて行く。


 ルアザは警戒を怠らずに上から見下ろし、処理を始める。


 そして、上から途中から凍っていく水をかけ、黒い玉と黒い液を氷の中へと包み、黒い泥と同様に更に冷やし木っ端微塵に砕いた。


 粉状になった黒い玉は塵へと変わり、大地に帰る。


 しかし、ルアザは黒い塵を小さな一袋分だけ回収していた。


「死の呪いなど、存在しなかった」


 ルアザは粉を摘まみながら、そう結論を出す。


「黒い玉と泥は一時的に封印しているだけだな。呪いなんてないし。たぶん、単純に危険だからだろう」


 ルアザは顛末をこう予測する。

『力を持った妖精が村の近くにいたから、とりあえず様子見で封印して、ちょうど良いところに死んでも別に構わない腕のある旅人に適当な罪を付けて、討伐させよう。倒せなくともこちらは無傷で情報は得れる』


 良く言えば村人思いの行動だが、余所者からしたら、躊躇いも無く生贄にしてくる村だ。


 目が遠く暗くなるルアザはこれからの出会いに恐れを覚える。

 この非情な対応が世の中の常識だとしたら、足取りが重くなった。


「厳しい世界だ……」


 あの頃の平和な生活が恋しく、辛いこともあったが、楽しいことも多くあった。


「ならば、いつか来るはずの楽しいを期待しよう」


 辛い時の一瞬の幸せは全ての疲れを吹き飛ばしてくれた。

 まだ、旅は始まってばかり、いずれ幸せが来ると信じる。


 ルアザは探知魔術を使用して完全に討伐が成功したと判断したら、穴の空いた地面を直し、村の方向に向き直り埋めた穴へと背を向ける。


 足を前に出そうとした時に背後に気配を感じ、振り返ると、体長はルアザの胸程の高さであり、体の半分は占める長い三本の足を持ち、黒を基調にして華やかな色彩が目立つ鳥が佇んでいた。


 ルアザは僅かに反応するのみで、驚きという程感情は揺れず、不動の山如く警戒心を保つ。


「うむ、合格」


「どちら様でしょうか?」


 鳥が喋る事には驚かず、冷静に相手の情報を得ろうとするが、ルアザの警戒心は話が通じる相手と認識し、僅かに緩む。


「私はナベロン。例の村の守護精霊である」


「そうでしたか。貴方は敵ではないと判断してもよろしいので?」


 ルアザが何よりも欲しい情報とは相手の素性でもなく形姿でもなく味方か敵かのどちらかだった。

 正直、相手の言う真偽など今の時点では価値が低い。


「うむ、敵意はない。安心せよ」


「良かったです」


 ずっと張っていた精神をほぐすと、小さな息が出てきて微かな笑みを浮かべるが、安心はしていない。


 息をわざとらしく吐いたのも、あくまでも相手の反応を見る演技が半分まざっている。


(敵ではないか……)


「話を戻そう。君には少し私の依頼を受けてもらう」


 精霊らしく、人の都合など考えない思考でルアザに言う。

 ルアザもそれは断ろうとはしない、何をされるかわかった物ではないからだ。

 それにメリットもある、報酬を貰える可能性がある。

 高位存在である精霊の報酬は人にとって非常に魅力的なものだ。


 しかし、疑問がルアザの頭に浮かぶ。


「自分よりも村の人達に頼めば良いのでは? そちらの方が依頼の完遂しやすそうですよ」


 そう、信用と信頼があり見知っている村人達に依頼をした方が安心できるのではないか? と思った。

 自分達に繁栄を提供している精霊の頼みならば、喜んで了承するだろう。


「それも考えたが、精霊間の事なのだ。愛しき村の者共を巻き込みたくない」


(あぁぁぁぁあー!! 絶対、危ないくてめんどうなやつだ。これ)


 ナベロンの言う事にルアザは心の中で、後悔の悲鳴を大声であげる。


『精霊間』、それはつまり下等な生物である人間には理解するのが極めて困難な物だと理解し、『巻き込みたくない』という言葉で気が緩められない危険な物が待ち受けているという事も理解してしまう。


 ナベロンはルアザの心境など気にせず淡々と話していく。


「まず、何をするのですか?」


 ルアザは己の身を守るため、まだある疑問を一度記憶の隅に置き、多少失礼でも回り道せずにストレートで最も肝心な事を聞く。


 この時のルアザは思考を猛回転させ、今まで得た情報からあらゆるパターンを出し、ナベロンが放つ言葉にも傾聴しており、あらゆる情報器官を行使していた。


「それは、とある龍の説得と十分ある可能性として戦闘だ」


「龍との戦闘は普通に死にますから、その……誠に申し訳ございませんが、今回のご依頼については辞退させていただきます」


 ルアザは『何かを救う』と親に誓ったが、まだ、何もしていないのに、親が向かったと信じたい、向こうの世界、に行くのはまだ早い。


 それに、龍とは世界最強の一角に座す、人が幾ら努力しても届かない天上の存在であり自然法則の一つだ。


 ドラゴンならまだしも、龍は不可能なのだ。


 これは恐怖とかそう言った物ではなく、常識の次元に位置する物だ。

 恐怖は己の常識が壊れる時に訪れる物だが、元々常識的な存在なため、『来る』、『来ない』ではなく『いる』という存在だ。


「大丈夫だ。その時は私が君を補助しよう。彼の龍も人相手に本気を出したりしない。危なくなったら逃げれば良い」


(あ、僕が戦うんだ)


 精霊の性格と自分の印象がなんとなく理解し始めたルアザであった。


「……その龍と何を揉めているのですか?」


「龍に疑われているのだ。彼の龍曰く何か大事なものの匂い?がこの辺りにあるらしく、私がそれを隠していると深く疑っている。そこで、完全な第三者である君が審判して欲しいのだ。どちらの肩を持たない者ならば、彼の龍も納得するはずだ」


 鳥の表情はわからないが、ナベロンは目元を少し下げ、疲労が溜まっている様子であった。


(どのくらい疑われているか知らないが、口調から長い間疑われているのだろう)


「じゃあ、最初に戻るのですが、合格という意味合いは?」


「我々を知覚できるという点において合格だ。まず、相手を知覚できないと、話さえもできないからな。ちなみにどのくらい見えている?」


 ルアザは当然ナベロンの姿を見えているが、高位存在は人と生きている次元がズレている部分がある。

 次元のズレも大きいわけではないが、次元の壁というものは基本的に厚いため、同じ人類でも知覚できる人とできない人と別れる。


 でも、大多数の人々は近くにいれば、気配くらいはわかる。


「姿から声まで、だいたいの事は知覚してますよ」


「姿まで見えるのか。よく見れば我々に近い体の持ち主であるな」


 ナベロンはルアザに近づき、ルアザの周囲を回りながら観察する。


「その龍は短気なんですか?」


「うーむ、龍は短気な者が多いから、たぶん彼の龍も短気であるな。しかし、龍共は自尊心が高く、人一匹そこらの石ころのような感覚であるから、君に怒りの形相を向けないはずだ」


 怒りやすい者は質は良い悪いはあるが、『自分』というものを持っている証拠だ。


「一応聞きますけど、疑惑を持たれるような身に憶えはないんですよね?」


「うむ、彼の龍とはつい最近出会った。関わりなどない」


「わかりました。それなら、なんとかなりそうです」


 真偽はどうあれ、嘘を作る理由がどう考えても見つからない。

 嘘という物は基本的に対象から何かを奪い取る事を目的としているため、ルアザは精霊にとって魅力的な物を持っていないため、信用をして進むことにした。



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