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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第五章
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現在のラテマア

 セミナとルアザがラテマアに向かう時に青い燐光の確認する。

 同時に二人の心臓が色濃く緊張の鼓動が走る。


 青い光が徐々に強くなるにつれ、煩わしい鼓動は静まり冷静な思考と同調し、雑音の無いせんれされた脈拍へと変わる。


 そして、一定の距離まで近づいたらルアザは存在を誇示させるように輪廻の息吹とフォースを連動させ、周囲に濃い力場を生み出す。


「ここからは、自分が行いますので、基本的には何もしないでください」


 ルアザは真面目な口調ながらも機械的でやや命令感のある声でセミナにお願いする。


 セミナは託すような目をルアザの見えない顔に向け、何も言わず小さく頷く。


 ラテマアに張られた結界は既にに時間が経過さており消失している。


(出ようとした様子は無いのか)


 セミナは結界内部の境界部を見て、特段目立つ程の地形の変化などは見られない事から、深淵の怪物や【溟孔龍(バハムート)】の激しい抵抗な無いと推測できる。


(数十年前のあの激しさは何だったんだ?)


 過去と現在の大きすぎる差に本当にあの時封印した同じ深淵の怪物がここにいるのかと、疑惑を持ち始める。


 ラテマアも【溟孔龍(バハムート)】の異次元の巨大がそこにあり、口を開け飲み込んでいるような強烈な気配が海流に乗る。

 波が体を打ち付けるが、異様な静かさに不気味さも覚える。


 ルアザは周囲を確認しながら、ラテマア全体を包み込む気配の源へと向かい歩んでいく。


 青蛍光石の光が周囲を照らしていた影に変化が生まれ、変化した方向へと向けると、数体の深淵の怪物が近づいてきた。


「……何者だ?」


 海草のように手足の部分が枝分かれした細い体だが、鞭のような強靭性のある体をした深淵の怪物がセミナとルアザの前に立つ。


「私は都市メラトリオ及び、同系の守護神を祀る各都市からの依頼を受け各都市代表の代弁者として参りました。代表者へのお取次ぎをお願いできるでしょうか? お手を煩わせる非礼と突然の訪問を詫びます」


 高い質の教育を為されたであろう洗練さが光る礼儀正しさと決して偉そうな感じはしない、中立者としてふさわしい挨拶をする。

 ルアザの声も中性的であるため、存在感が強いが儚さのような物があり、中立性を際立つ。


「そうか上の都市からか、遠路遥々よく来た。非礼については詫びる必要は無い。汝らが訪れる事は主が予期していた事である。ついてきてくれ」


(第一関門は越えた)


 最初の対面の時点で命のやり取りをする事も想定していたため、一安心というところだ。

 少なくとも話が通じる存在であるというのがわかる事は嬉しいものだ。


 完全に廃墟と化し風化が始まっている光景にルアザは哀愁を感じ、故郷の光景がラテマアの光景に重なる。


 だが、多くの深淵の怪物が頭の上に広がる海中を泳いでおり、故郷の見えぬ妖精達が具現化したような面白さがあった。

 加えて形は妙だが、建物が再建されている姿も見られる。


 後ろに黙ってついてくるセミナは警戒心が爆発しそうである。

 ルアザはセミナの必死さに苦笑しながらも、周りの風景を油断無く観察していく。


 順調な波に乗って機嫌が良くなっている時に三人の前に地上の花が海草に変わり脱色した姿をしたやや見上げる程の大きさを持つ、深淵の怪物現れた。


「英雄セミナがなぜここにいる!?」


 花弁部分の鎌首がセミナを見下ろすように向き、セミナを影で覆う。

 そして、ルアザが自然な動作で静かにセミナの前に立つ。


「……彼女は私の護衛のようなと認識してくれれば、と言いたいところですが、彼女とは敵対していたと聞いております。当然、どちらとも黒い感情がある事は察します。ですが、それを承知で連れてきました。今だけは私と同じ中立の立場だと認識してください」


 目の前に影を作る深淵の怪物がいきり立つ前に素早く大量に言葉を放つ。


「……おい、お前はなんとも思わないのか!?」 


 ルアザ達を案内する深淵の怪物は、考えるような素振りをする。


「……英雄セミナよ。 我々と血族にならないか?」


 おもむろとした口調で深淵の怪物の誘いをする。


「断る」


 当然セミナは即答。


「汝は?」


「魅力的な提案ですが、遠慮しておきます」


 ルアザにも誘いを受けたが、苦笑しながら断りの返答をする。


「向こうに敵意は無い。時が憎しみは薄れさせた。無意味だ」


「そうか……。だが、なにか一つでも仇を取らなくては気が済まん!!」


 花弁のような頭部を持つ深淵の怪物は鋭利な刃物へと変化させた腕のような物をセミナに向かい振り落とそうとする。


「……止めてください。話し合いに来たのですから」


 力が乗り振り落とされる前にルアザは復讐心に満ちた深淵の怪物の腕を結界で覆い、動けなくしていた。


「その通りだ。主を待たせるつもりか?」


 止める様子が一切無かった案内役の深淵の怪物は拘束された深淵の怪物を諭す。


「…………一度引こう。だが、主様がお前達との敵対を決定するならば、真っ先に抹殺してやる」


 深淵の怪物のどこか感情を感じられない口調でありながら、感情的な内容の捨てゼリフを残して去る。


「時間を取らせた。すまぬな」


「対応してくださり、ありがとうございます。ここで交渉決裂するのでは無いかと、ヒヤヒヤしまたし」


「すまない。ミラレア殿。私がいるせいで、邪魔をしてしまった」


 ルアザの本気でやや焦った様子にセミナは申し訳なく感じる。


「別に構いませんよ。こうなるのも覚悟の上で了承しましたし、自分一人では取り合ってもらえるか不安でしたから。いるだけで十分、役に立っていますからご安心を」


 ルアザはセミナの価値として、まず敵対した相手と戦う仲間の一人としての価値と深淵の怪物達への交渉チケットの価値、もう一つは先程恨みを買われたように、囮としての価値である。


 最後の囮としての価値は悪意があると思われるが、ルアザは当然フォローする。

 加えて、セミナを話せる深淵の怪物と話せない深淵の怪物を分ける試験薬としての価値もある。


 ルアザはやるからには、あらゆる物を利用する。

 クラウのように冷徹とも見れる程の事をエウレアのような優しさで中和させ、ユーハのような微細な感覚でバランスを取る。


「さて、我々は深淵の怪物は【溟孔龍(バハムート)】の眷属である」


 唐突に語り始める、案内役の深淵の怪物。


「我々は高位存在の中でも最上位の力を持つ【溟孔龍(バハムート)】の眷属になれて非常に誇り高いと思う」


「だが、眷属である我々は弱い。不甲斐ないと思っている」


(アレ程、私達を苦しめて、まだ足りないと)


 やや、見当違いの結論をセミナは出してしまっている。


「かなり、自分達を卑下しますね」


「卑下? 結果を出せていない。我々は主のために役に立てていないのだから、その評価は正当な物だろう」


 話に一息ついた時には莫大な力を放つ気配の元へと辿り着く。

 床だけは無事で柱が数本と門の縁があるだけのほとんどが倒壊した神殿のような建物の前で止まる。


 ルアザは表情は変えずとも、明らかに高位存在としての格が自分の祖先以上を持つ存在に未来が暗くなっていくような恐れが湧き出す。


 セミナは懐かしく、かつて相対した波動に立ち向かうように目元を鋭くして、自分の使命を再度、確認して心を強く保つ。


「ここから先は汝らだけで。先には主である【溟孔龍(バハムート)】様がおられる」


「ご案内ありがとうございます」


 ルアザは前に出そうなセミナを見て、己の役割を柱にセミナより先に前に出る。


「では、失礼なきように」


 ルアザは頷くと同時に少し考え込むと案内してくれた深淵の怪物に近づく。


「…………貴方も共に行きませんか?」


 ルアザは案内役の深淵の怪物な手を差し出す。


「……なぜ?」 (ミラレア殿? 何を?)


 ルアザの唐突な行動にルアザ以外の二人は予想外の誘いに驚く。


「…………貴方は【溟孔龍(バハムート)】に求めている事がある。真意を聞きたい、本音を知りたいという求めが」


「それはそうですが……」


「良い機会です。今、聞きましょう。遠慮をする必要は………………多少はありますが、躊躇う事は無いです」


「ミラレア殿! それは我々の代理人としての役目を放棄しているのでは!?」


 セミナから見れば、突如敵側に肩を持つ言動と行動に警告音を激しく鳴らす。


「……あぁ、貴方も私を代理人にするという案もありますね。それと……仕事役目は放棄しません、私は責任という物は知っていますから」


 セミナの言い分に無関心を装うようでありながらも、立場がある人間が語る時のように確固とした口調で語る。


「何が目的なのだ?」


 今まで以上に大きく偉大に見えるルアザの誘いに乗ってしまいそうになるが、理性で押し留めて最も重要な事を問う。


「……【溟孔龍(バハムート)】との対話は手数は多い方が良いからです。我々は外側の者ですが、貴方は内側の者。別方向の攻め手が欲しい」


 常にルアザはチャンスを探っており、思考を【溟孔龍(バハムート)】交渉モードになりながらも交渉手札を探る思考も維持していたのだ。


「……動かねば何も変わらない……。……汝らとご同行願う」


「貴方はこの未来を期待していた。おめでとう、期待していた未来は現実となりました」


 細く枝のような物がルアザに伸び、ルアザは枝のような物と握手して頷く。


「ユーンベクルさんもご安心を。これは貴方が求める結果に少しでも近づくための過程にすぎないのですから」


 ルアザはセミナに向き直り、今度は深淵の怪物側を下げてバランスを取りながらセミナの猜疑感を拭き取る。


「そうか……。その言葉を信じよう」


「じゃあ、行きましょうか」


 ルアザは階段に足をかける。


 漂う妖精がルアザに纏わりつく。


 前方にそびえ立つ門は既に扉の部分は倒壊し、縁の部分だけが残っている状態だが、【溟孔龍(バハムート)】の気迫が新たな扉部分となっている。


 縁だけあれば門としての役割を果たしている。


 ルアザは〈世界録(オムニバス)〉を撫で、耳飾りを軽く擦る。


 門の向こう側へとルアザが最初の一歩を踏み出した。

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