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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第五章
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臨戦の時

 戦神メラトリオは自分達の固有空間におり、同胞の守護神達と会議をしている時に高位存在の頂点に立つ気配を感じ取る。


「「「!!」」」


 一匹の魚が固有空間の中を泳いでおり、会議場の中心に辿り着く。


「……お話中、失礼します」


 機械的な礼儀正しさを強く感じるが、守護神達はリヴァイアサンに僅かな感情的な物が含んでいる事に気づいていた。


「魔族の進行に備えてください。」


「承知致しました」


「今まさに始まる時代は世界歴史上最も激しく、荒れた戦乱の時代になるでしょう。魔神達は目覚め、魔神を統率する王が表に現れました。彼奴らは世界を我が欲望のために、貪り尽くそうとするでしょう。それを全身全霊をもって止める覚悟をしなさい」


「「「はっ!」」」


「もちろん、カオスやアトゥムも動いています。乗り遅れないようにしなさい」


「リヴァイアサン様。神話を語るあなた様方が警戒するほどに魔族はそれほどの戦力を有しているのか疑問です」


 今まで、魔族の襲来とは言っても、なんやかんやあって解決できた事例の方が多い。

 魔族は魔神を筆頭に動くが、各自が好き勝手動くため、統率感はほとんど無い。

 圧倒的な力を持っているが、逆に言えばそれしか無いため、力さえ適切に対応できれば難易度は下がる。


 力は魔族達と同等以上の高位存在である守護神達にとって大部分の魔族はただのアホである。


「今までの魔族は氷山の一角。本当の意味での極悪性と徹底性を持った、魔族が表舞台にでてきたのですよ。それに伴い、今まであなた達に関わる事が無かった我々も表舞台に出る事になったのです。これがどれだけ恐ろしいのがわかりますか?」


「……!」


 秘密兵器とも言える物を各勢力、魔族勢力の一手で出さざる得なくてはならなくなった。

 秘密兵器は隠してチラつかせるのが基本的な扱いだが、魔族は堂々と強力な兵器として使用してくる。


 秘密兵器は脅しに使える能力を持っているため、その巨大な力を振るい合う世界は滅びの未来が見える。


「私も、私と対等な二体は徹底的に狙われるでしょう。つまり、十全な支援をあなた達に与えられないという意味合いです」


「そ、そんな!?」


 全世界に影響力を持つ力の助力は少ないという事に焦燥感と危機感を募らせる驚きを隠せない。


「たとえ、かつての敵でさえでも味方に変えなさい」


「……それは【溟孔龍(バハムート)】とその眷属達との協力をする、という事でしょうか?」


「そうです。既に私もコンタクトを取りましたが、あまり良い反応はもらえませんでした。

 唯一の救いとしては中立の状態というのはわかっています」


「ならば、そのまま放置して決して魔族勢力に向かわぬように睨みをきかせれば……」


「それは最低ラインです。もちろん、あなた達の過去の事情は知っています。血肉を削り合い、大切な同胞も失ってしまった過去を」


「……これは試練ですか?」


 若干だが、声の震えがある。

 思い出す過去の戦い。

 平和が突如、破られ、亡くなった家族を求める声や友の仇を取るために雄叫びをあげて、深淵の怪物の群れに突撃する兵の姿を。

 何度自分達は、最後の希望に縋り付くような声で『お助けください』と祈られたのか。


 現在も続く恨みや爪痕は全ての原因は奴らにある。

 神話語り様は心を持っているようには思えなく感じる。


「……どう受け取るかはあなた達次第です。ですが、私が示すのは良き未来のためです」


「「「……」」」


 守護神達は互いに目を配り合い、瞬間的な意思疎通をする。


「……できる限りの努力は致します。悪虐なる魔族を共に討ち倒しましょう」


 リヴァイアサンの淡々した口調だが、押し出されるような必死感を感じる。

 この必死感はどこか、【溟孔龍(バハムート)】との戦いに似た物を守護神達は感じていた。


「幸い、今はまだ、魔族よりも我々の方が勢力的には上です。油断せずに頑張りましょう」


 彼らの了承に伴い、リヴァイアサンは感情が見えない元の機械的な口調に戻る。


「【溟孔龍(バハムート)】について何か知っている事はありますか? 現在、私の信者と外部からの協力者が接触を図っております故に助けになりたいと、思っています」


「……そうですね……。私自身もあまり良くわかっていないため曖昧な情報ですが、よろしいですか?」


「大丈夫です」


「……彼女が求めている物は…………安堵? 募り? 永遠? 静寂? 証明? ……申しわけありません。この程度です」


 リヴァイアサンの宣言通り、要領を得なく、どうとでも解釈できる情報であった。


「いえ、それだけでも十分助かりますから。ありがとうございます」


「そういえば……。メラトリオ」


 リヴァイアサンは何かを思い出したようにメラトリオの方へ唐突に向く。


「何用でしょうか?」


「その外部から協力者が持つ本について聞いておいてください」


「わかりました。聞いておきます」


 メラトリオは不思議に思いながらもルアザに聞けばわかる事だと判断し、リヴァイアサンに問う事はしなかった。


「さて、厄介な施しを受けた魔族が深き海から上がって来ました。どうします?」


 話しを切り上げるようにリヴァイアサンは、頭を空間の外に向ける。


「当然、撃滅します。あなた様は心配せずに自身のやるべき事を行ってください」


 魔族は世界の敵。

 一切の容赦無く討ち倒し、平和をもたらす。

 莫大な力を持つ高位存在として生まれた責務を果たす。


「そうですか……。わかりました。僅かながらも、汝らに幸ある流れを」


 全員が気迫ある眼力を宿していることにリヴァイアサンは運命の流れを微かに触れて整える。

 それを最後にリヴァイアサンは空間に溶けるように去る。


 この流れが戦の匂いを強く漂わせる。


 ◆◆◆




「魔族か! 邪魔だぁあ!!」


 クエレブレが怒り形相を携え、自身に絡みつく触手を打ち払う。

 しかし、無数の触手は一つ二つ剥がす度にまた一つ二つと張り付いてくる。


 物理的に引き千切ってもすぐに再生してしまう事が厄介な点であった。


(どこから、急速な再生エネルギーを持ってきているんだ?)


 既に何十本物の触手を千切って、海の底へと沈めているが、動きに鈍さや衰える様子は見えない。


 不可解な点が多く見えるが、攻撃力は大した物は無い。


 クエレブレは少し魔術の行使に集中する。

 術式が辺り一帯を渦の乱流が無数に重なった滝壺のような空間が広がる答えを弾き出す。

 同時に全ての触手を瞬く間に切断する。


 切断部から伸びる細胞がもう片方への組織へと繋がろうとするが、竜巻顔負けの海の乱流に阻まれる。

 互いを飲み込むような渦に深淵の怪物に取り憑いた魔族は巻き込まれ、クエレブレから距離を離される。


「フン」


 距離を離す魔族を一瞥し、クエレブレは再びルアザを追おうと、尾を靡かせよとする。


「アハハ、どけ、どけ〜。俺の体だぞ!」


 突如、体の内部から響く不快な声。


「!!?」


 体の感覚が薄くなり始めるのと体の支配権が小さくなる。

 同時に魔族の汚い心臓が繋がり、その鼓動走り抜けるような焦燥感がクエレブレを侵食する。


(いつ! どこで!?)


 生命階層から上の階層を見ると、巨大な異物が己の生命階層を自分とは違う色形に染め上げている最中であった。


(そんな事よりも速く追い出さければ!)


 体内の外敵を排除する物体が働くように、生命階層の支配権を奪う相手に対して、排除命令を出す。


「もう、遅いぞ〜」 


 排除命令は抵抗をするが、著しく奪わる様子は変わらず嘲笑うような声が響く。


 ならばと、生命階層よりも上位の階層である精神階層から排除を試みる。


「クソ! 騙された!」 


 乗っ取っていたのは生命階層ではなく、精神階層であった。


「貴様、ワストラだな!」


 記憶の底から今回の出来事と同じ事件の情報が掘り起こされる。


 数百年前に精神や心の器である体を転々とするワストラと呼ばれる魔族がいた。

 当然、乗り移る体は自分の物ではない。

 だが、このワストラは難なく気に入った体を奪うという本来ならほぼ不可能をやってのけてしまう魔族であった。

 そして、奪った体で悪道邪道を繰り返す。


(せめてでも……!)


 こうも簡単に体を奪える理屈を理解する前に自分の体で好き勝手やられるのは断腸もの。


 抵抗としてクエレブレはワストラを封じ込めようとする。

 クエレブレの全身から結界を生み出され、周りの海水が集い凍結し始める。

 瞬きの間に行われた最後の抵抗であった。


(支配権は奪われたが、自分が失われるわけではない。短期な魔族だ。そう遠くない間に出ていくだろう)


(だが、ワストラは封印されたと聞いていたが、なぜ殺さなかったのか?)


 一抹の不安を覚えながら、動かなぬ体に憤りを感じて必死になっているワストラを見ながら、クエレブレは待つ。



 ◆◆◆




 深淵の怪物は仲間を増やす事もせず、各個自由にしており、一部の者は崩壊したラテマアを深淵の怪物に合わせた町並みに変えようとしている者もいた。


「おいおい、ハント、お前肝っ玉強すぎるだろ。創造主にかなり入り込んだ質問をしてよ」


「ターリア。元々、直接聞くという話であっただしょう。それが今か先かの違いですよ」


「いやぁ、血族の一同の前でアレは強いな」


 ハントはタリーアを伴い、ラテマアを泳いで周りの血族同様に自由にしていた。


「……過去に似たような経験がありましたから。まぁ、そんな事よりも、【溟孔龍(バハムート)】についてです」


「アレだけの質問で何かわかったのか?」


「はい、自分の推測では【溟孔龍(バハムート)】はサリアスさんの事に感心を持っていると思われます」


「そういえば、サリアスについては何も言及はしなかったな。だけど、口調が明らかに変わった」


 サリアスについては何も言わないが、様子が変わったため、気になる場所であった。


「何よりも名前を憶えている。私の名前は知らなかったのに」


「それは大きいな! 高位存在は全て名前を憶えているか、全く興味無いから憶えないのどちらかに偏るからな」


 高位存在は自分より下位の事を自身の優れた能力を頼りに出会った全て憶えるか、目についた存在だけを憶えるかのどちらかに別れる事が多い。

 人のようにすぐに忘れるわけでもなく、思い出す時はすぐに思い出せる。


「【溟孔龍(バハムート)】は十中八九後者です」


 自分の眷属でさえ、名前を憶えていない。

 その事から【溟孔龍(バハムート)】は全く憶えない派である可能性が高い。


「じゃあ、サリアスと接触するのか?」


「はい、サリアスさんを起点に計画を再開しようと思います」


 サリアスと再び合流する事が決まった。


「イメスはどうするんだ?」


「大丈夫でしょう。あの魔族も我らが主の威圧には芯の髄まで理解した事ですし、たぶんですが、現在は必死になって別の体を探しているかもしれませんね」


 二人は案外、イメスの事を心配していなかった。

 眷属でありながら始めて肌で感じた【溟孔龍(バハムート)】の力がとてつもなく巨大で深いため、【溟孔龍(バハムート)】を信頼を加えた敬いがあるからだ。

溟孔龍(バハムート)】の命令は魔族であっても絶対と言えるほど。


「俺的にはタイムリミットが過ぎて、抹消されるのが良いんだけどな」


 魔族は多少の犠牲を生み出しても徹底的に抹殺した方が将来的にも世界的にも為になる事だ。


「どうでしょうね。魔族はしぶとい。油断はできない」


 強欲な魔族でも命だけは、他の者共と価値は大きな差は無い。

 だが、追い詰められた魔族は生きるためなら本当に何だってやる。

 満たされるまで死ぬわけにはいかないからだ。


「よし、サリアスの元へ行こう」


 タリーアをサリアスの痕跡を辿るように、上を見上げる。

 地面を蹴り上げ、ラテマアから旅立つ。

 続いてハントもサリアスを追いにラテマアから出ていく。


「む……! 結界か」


 だが、もしもの時に封印が解けてしまった用の緊急結界システムがあるため、【溟孔龍(バハムート)】及び深海の怪物はラテマアには暫くの間隔離される。


「この程度な力づくでいけます。徐々に強度は薄まってきてますし、我々二人が通る穴くらいは作れます」


 魂力を渦巻かせた術式破壊を行い、結界に穴を作る。

 海流が穴から出入りするのを感じ、二人は目を合わせ、頷く。


 修復していく結界をこじ開け、光の無い暗闇へと飛び込む。


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