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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第五章
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ユーハの世界録

 ユーハはまた場面を変えるような口調であり、今回は余裕の無い、どこか厳しい口調であった。


『世界は今、危機に瀕している』


(どういうこと?)


『筆頭の魔族である魔神達を率いる王、魔神の王が表舞台に現れたからだ』


 我と力が非常に強い魔神達を統率する存在が現れる事にルアザは驚きを持ち、得体の知れなさき恐怖を抱く。


『俺はルアザ君と別れた後、魔神の王、略して魔王と戦った』


「ま、まさか、負けたのですか?」


『そして勝った』


「あ、勝ったんですね」


『だが、殺せたわけではないのだ』


 勝利と抹消は別物なのだ。


『戦いが終わった後、俺は死んだ。愛する人と共に殺してな。そう、これでやっと終われたんだ』


 詳細は語らないが、口調から満足した様は理解できる。


「愛する人を殺せたの……ですか……。僕とは大違いですね。僕は殺せませんでしたから……」


 ルアザは人生で最も心や頭に刻まれている記憶を思い出す。

 剣先を家族に向けた時の目を背け、逃げたくなる罪悪感と拒絶感。

 勢いそのまま振り落とそうとする正気とは思えない狂った感覚。

 目が合う時は体が固まり、動きのキレが無くなった。

 恐怖が本能と結びつき、理性が振り落とす勢いを止めてしまう。


 最も恐ろしい精神状態であった。


「ユーハさん。貴方はなぜ、この恐怖を乗り越えられたのですか? 僕にはわかりません」


 自分が悪に染まる事により、自分が明確崩れ行く感覚を身に沁みてわかる。

 何よりも最も大事な存在を己の手で消す、圧倒的な矛盾感。


 混沌とした混乱が解放されず圧縮されていき、ブラックホールのような物にならないのか。


「しかも、少し嬉しそうに」


 絶望はせずにまるで希望を手に入れ、夢を叶えたかのような様子がルアザには理解できなかった。


『これが俺の妻。綺麗だろう』


 明るく快活は雰囲気を携えた美しい女性である。

 ユーハを引っ張りどこかへ連れていきそうな、風のような雰囲気さえも持っている。


「幸せそうですね。良かったです」


 ルアザはあまり、恋や愛など理解できる程、生きているわけではないが、悪い物ではないと理解できる。


『そしてな、魔王は妻の体と俺の魂が欲しかったんだ。魔王曰く、更なる高みへと至りたいらしいから俺達が欲しいらしいが、実際のところはわからなかったし、あの時は機嫌が悪かったから、興味もなかった』


『死亡してすぐに俺達の体を取り込み、結果的には大幅に強化された。強化される前は自分と互角くらいの実力はあったから、対応は難しいだろう』


「それは、…………また……」


 ユーハでさえ頂きも底も見えない程の力を持っていたのに、魔王はそれ以上となると、星を見上げるような話であった。

 そのため、巨大な敵が現れたという実感はあまり湧かずにいる。


『奴は魔族らしい、魔族だ。自己欲求を最優先させている。だからこそ、真っ直ぐで止まらない』


『魔族勢力が大々的に表に出てきた。栄光の時代はここで止まり、戦争の時代へと変わるだろう。ガルト地方のようにな』


「なるほど……」


 ガルトの惨状が世界中に広がる光景を想像する。

 ロゼリア帝国は滅び、統率者を失った人々絶望に瀕してしまい、魔族達に刈り取られ搾取される暗黒時代の光景を。


『魔王は巨大な相手と戦う可能性はある。相手はわからないが、魔王以上となると創世の三神くらいしか思いつかないがな』


(……)


 完全に人智を超えた存在である。


『あと、伝えておきたいのが、この本と同じくらい重大な道具を作ったから、いずれは回収して欲しい〈黒錠〉と〈白鍵〉という物だ。どんな道具や場所とかは本に書いたから、難しいだろうが行ってみてくれ』


「この本と同等な物。絶対に回収しなくては」


 危機感に近しい感情でルアザは必ず〈黒錠〉と〈白鍵〉を確認すると決める。

 十中八九、不滅性を付与しているのは容易に想像できる。


『そろそろ、録音も終わる。ルアザ君、自分は君を導く言葉はかけない。これからは全て自分で考えて行動しなさい。君の親が亡くなった時のように。それにこれまでの導きは基本的に俺のために導いた物だからだ。これ以上君の運命に影響するわけにはいかない』


「俺のため?」


『これ以上は言わない。だが、ルアザ君を代表して謝るよ。申し訳ない』


 ルアザはユーハの謝罪がわからなかったが、文章の前後から自分に関わる重大な何かであると、わかった。

 そして、ユーハはそれを利用した事に謝罪していると解釈する。

 だが、視線の方向はここではない遠い場所を向けていた。


『ここでは簡潔な事しか言わないが、本の中に詳しく事は書いてある』


『最後に君と出会えて良かった。さよなら』


 最後に口角を少し上げ、確かな半円の輪郭を描く笑みと別れの言葉と共に消える。

 すると、停止した時間は解除され、何事も無かったように世界は動く。


「…………お世話になりました。ユーハさん」


 ルアザは目を瞑り、今までの思い出を思い出す。

 初めての出会いは絶望しかけていた自分を言葉一つで救い上げ、力強く、希望に満ち溢れた名字をいただいた。

 親も何もかも失った自分にとって初めての光だった。


 首都ロゼリアまでの道中は常識などを一度も怒らず懇切丁寧に教えてもらい、社会に溶け込めるようにしてもらった。

 見新しい物をたくさん見せてもらい、様々な事を苦無く経験させてくれた。


 そして、首都ロゼリアからは対価無しで自分が強くなるために技術や知識などを教示し、自身の才能の多くを発掘してくれた。 

 教われば教わる程、ユーハを敬い、自分が目指すべき場所だと確信した。


「貴方がいたから、私はここまで来れました。私の親のように守護し成長させる貴方は私にとっては親愛を向ける対象です」


 数多の知識と絶大な力を持つユーハはもういない。

 だが、託された物はある。

 世界のあらゆる事を記した書が。


「今まで、ありがとうございました」


 ルアザという人物の半分は故郷の親で構成され、もう半分は教導のユーハによって構成されいる。

 優しい親と強き師がルアザの基盤となり、理想像となっている。


 ルアザは二つの大事な何かを失い、空気が背中に流れるような感覚を覚える。

 だが、この感覚は悪い物では無い。

 浮遊感とも言うべき軽やかさと同時に風が背中を押すような、どこか感じ憶えのある物であった。


「フフフ、懐かしい。新鮮感とは違う思考が澄みきるような、この味」


 頼れる物が無い不安はあるが、自分で何もかも自由に作れる解放感のような物があり、おもしろい。


「親との別れよりはマシだ。憂い無く進める」


 本を拾い、中を閲覧する。


「……まずは、本………………………ユーハの〈世界録(オムニバス)〉を精査して、概要を理解し必要な情報を目星をつけておかなければ」


 ユーハが託した本にユーハの〈世界録(オムニバス)〉というルアザは固有名詞を付けた。

 本としての範疇を越えた物であり、世界最高峰の道具の一つであると自覚しているため、固有名詞を与えなければ失礼だろうという気持ちと、利便性から付けた。

 通称、〈世界録(オムニバス)〉である。


 目次を見ており、未来について書かれているページまで捲ると、未来に記されている文字は目まぐるしく書き換わっており、読めなかった。


「……未来は不確定というわけか……。これ、そもそもどこまで予言しているんだ?」


 あらゆる場所と時間での可能性を予言しており、全てが記されているとはいえ、欲しい答えを探り当てなければならない。


「場所と時間を指定…………いけるな」


 検索能力も備わっているため、条件を指定すれば、ある程度は情報を絞ってくれるが、現在進行形で膨れ上がる情報が塗りつぶす。

 だが、ルアザは優れた頭脳で情報を整理し理解する。


「でも、直近数秒程度か。まぁ、使う場所では使えるだろう」


 未来のついて記されている場所から、精査対象を一度外す。


「……ユーンベクルさんとメラトリオ神は揉めているのか」


 〈世界録(オムニバス)〉は現在と過去についても記されている。

 そして、検索条件はルアザの周辺である。


 〈世界録(オムニバス)〉は調べようと思えば誰が何を話しているか一字一句知る事ができる。


「……様子見しようか」


 討論は自分の意見を洗練してくれる。

 完全な平行線にならない限り介入する気は無い。


 そして、ルアザは〈世界録(オムニバス)〉を読み、目立つ情報、必要な情報、〈白鍵〉〈黒錠〉の情報などと最低限は得ておく。


 〈世界録(オムニバス)〉を閉じ、腰に戻す。

 品性のある細かい銀鎖に手を添える。


「魔王よりも魔神の方が厄介だ」


 ルアザは魔族対策についても同時に考えていた。


(ユーハさん曰く、魔王は現在、休息中らしい。なんやかんや、ユーハさんとの戦闘に莫大な力を消費したからだ、と。実際の所は不明だが)


 存在の次元は上がったが、失った物は大きい。


(何かと戦うなら、万全な準備をするだろうから、ある程度な時間は必要だろう)


 魔族は愚か者が多いが、能力のある物の方が多い。

 能力は知恵も含むためら魔神の王なのだから非常に賢いのだろうと予測する。


(長年、あらゆるものを苦しめて来たのは魔神だ。すぐに被害を生み出す魔神を警戒すべきだろう)


「封印されし魔神は特に厄介だろうな。殺せない理由があるのだから」


 単純に強い、特殊な能力があるなど、討ち倒せなかった理由は容易に思いつく。


「手札を増やしつつ、まずはロゼリアまで戻ろう。ロゼリア帝国は数多の魔神達を討ち倒し、封じ込めた実績が多数ある。ロゼリア帝国こそが対魔族戦でのキーマンだろう」


 大神達の多くがロゼリア帝国を守護しており、魔神や悪魔という高位存在への耐性は強く、高位存在に並ぶ強者達も多数席巻している。


 軍も兵器も多く揃っており、単純な武力という点では大きく期待でき、力至上主義の魔族にも互角くらいはあるだろう。


「海の都市達とロゼリア帝国の窓口になれるかもしれない。上手く行けば、それなりに権限を握れ、発言力など大きくなれる」


 ルアザも何も持たずにロゼリアに行くだけでは見向きもされないだろうから、何らかの手土産のような実績が必要だと考える。


(現皇帝の従兄弟であるユゥグトゥスとの伝手はあるが、彼とはあまり借りを作りたくない)


「政治は恩を必ず返さなればならない。もちろん返すが、タイミングは選びたい」


 時と場合はこちらが都合の良いタイミングで借りを返したい。

 主導権の違いだが、ロゼリア帝国そのものとの交渉条件にも並ぶ。

 ロゼリア帝国は巨大だからこそ、裏切り者や愚か者が出てくるはずだから、油断はできない。


「できればの話だから、何もやっていない今で想定しても無毛な話か」


 ルアザは〈世界録(オムニバス)〉を開き、セミナとメラトリオの状況を確認する。


 盗み聞きしているため、多少の罪悪感は感じるが、メラトリオという高位存在が自分に対してどのような処置をするか、予め知りたい。


(自分は祝福と言える程の結び付きの強い加護を持っている)


 ルアザは耳飾りに手を添え、中に宿る先祖が自分に反応しているのを感じる。


(自分は利用価値は高い。どのように使われるかの真実は知り得ておくべきだろう。互いに信頼関係も無いからね)


「えぇぇ……。なかなか決断が速い」


 苦笑いと共に、今すぐにでもここから離れた方が良いのかな、と思う。


「会ってすぐに生贄にするとは」


 封印の要点となる場所にはルアザが候補に上がり、実質的には決定のような物であった。


「ユーンベクルさん。僕もそう思います。さすがに何も知らない人にいきなり、生贄となれは、倫理的にも無理だと思いますよ」


 そして、話が平行線になりそうだとルアザは悟る。


(逃げて危機から脱出するか、あえて、封印の楔になるか)


 二つの選択肢が並び、ルアザは現在この分岐点にいる事を自覚しており、進む方向について考える。


(……自分から立候補しよう)


 僅かな自覚で結論を出す。


(ここで恩を売れば、必ず自分の助けになる。それに今回は魔王が放った封印を解く波動が関わっているようだし、無視できない。クエレブレは深淵の怪物とやらに引きずり込まれたから、現状が気になる)


 深淵の怪物にはルアザが求める物に近い場所にいるため、挑戦してみる価値はあると判断する。


(信用、信頼問題は加護が保証してくれるから、一定の信用は得られているはずだ)


 高位存在が加護を下位存在に与えたらその下位存在を保護をしていると見られる。

 つまり、後ろ盾を下位存在は得る事となるため、高位存在と相手をする時、他の高位存在が認めた存在として見られる。


(何よりも困った人は助けれるなら、見捨てられない)


 そして、セミナとメラトリオの剣幕が鋭くなるのを見計らい、部屋に入り話に介入する。


「私がその封印の楔になっても良いですよ」


(ただ単に封印の楔にはならないけどね)


ルアザは真実の情報しか書いていないGoogleを手に入れたような物です。

性能はGoogle以上です。

万能ですが、情報しか書いていないため、それ以上の価値は無いです。

なんか、世界の根源に干渉して改変とかできないです。


そして、ルアザの心情としては、かなり責任を感じています。

仮にあなたただ一人へとGoogleの社長の遺産であるGoogleの全データを与えられます。

世界情勢は世界大戦が始まった直後です。

どの勢力にも奪われないようにしなくてはなりません。

頑張りましょう。



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