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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第五章
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都市メラトリオ

 海中を進むルアザとセミナはひとまず都市メラトリオに向かい、再び準備をしようとしていた。

 サリアスをすぐに追うため、最低限の道具しか持ってきていない。

 多くこ深淵の怪物を封印しているラテマアは調査が不十分な深海にある。

 なるべく万全を期っしたい。


 色変わりのしない海底に大きく目立つ色が現れ、近づくと巨大な町並みを揃える都市の姿が現れる。


「あれが、都市メラトリオだ。陸の人種を入れるのは初めてだぞ」


「大きいですね。陸でもこの大きさは少ないですよ」


「海では巨大生物が多いから、どこか一つに集中した方が安全だからな。我々はり陸でも生きられるが、無力となる」


 ルアザのように海でも難なく行動できる手段があるなら別だが、水という保護物の無く、乾いた場所は精神が安定しない。


「わかりますよ。私も海では十全に動けませんので。この不自由感は心地が悪いですからね。もちろん、これはこれは面白いですけどね」


 生命活動を維持する手段はあるが、その手段によって己の命が支えられていると思うと、不安で苛む。

 だが、この冒険によって生まれる新鮮な感覚に興奮の涙が不安を削ぎ落とす。


 ルアザは不安を消せないが、安全な状況であるなら楽しめる程の余裕はあるのだ。


「だが、いずれは陸の世界にも行ってみたいと思うぞ」


 セミナはまだ見ぬ別世界の光景に夢を抱き軽く微笑みを煌めかせる。


「きっと楽しいと思いますよ」


 実際に楽しかった記憶を思い出しながら、ルアザもセミナの煌めきに同調する。


「さて、そろそろだ。泡道に入るぞ」


 暗い海の中にはっきりと見える文明の光が現れ、都市を張り巡らす泡道の最も外側に伸びる泡道へと向かう。


 ルアザは泡道の事を説明されなくとも、見ただけで仕組みを理解していた。


 泡のように柔らかく破れない膜の中に入ると急速な水流の流れを感じ、地上で言う追い風を受けるように追い流を背に受け加速する。


 そして、泡道は門のような何層にもなる巨大な膜に向かうと、膜の向こう側に透けて見える人々の生活の光景が見える。


「ようこそ。都市メラトリオへ」


 セミナは振り返り歓迎の意を示す。


 何層かある膜を一つずつ抜けて行くと、新しい泡道が繋がっており、この泡道の膜だけ非常に強力な物となっている。


 強力な膜の泡道を通ると、周りの建造物よりも大きめな建造物に繋がっていた。


「帰ったぞ」


 セミナ達と同様に武装した兵隊と推測される人物が泡道の出口に待ち構えており、セミナは笑みを向ける。


「お帰りなさいませ。ユーンベクル様」


 兵士も英雄であるセミナの帰還に満面の笑みを浮かばせ、喜ばしさを表現している。

 そして、兵士は見覚えの無いルアザの姿を警戒ぎみに注視する。


「とりあえず、ここは帰還の報告だ。私含めて以下八名全員無事だ。それとこの人は陸の人種だ。協力関係にある」


「陸の人種!? いや、陸の人種は水中では生きられず、溺れてしまうはずでは?」


「特殊な魔術を使用して水中でも大丈夫のようだ」


 ルアザは軽く会釈をする。


「そうですか、興味深い事がありますね。まぁ、何かありましたら。ユーンベクル様がいますし、安心です」


 兵士がセミナに向ける絶対的な信頼にセミナは気恥ずかしそうに苦笑をするが、英雄の宿命のような物だろう。


「では、みんなはすべき事を終えたらここで解散しても良い。私はメラトリオ様と話す事がある故に神殿へと向かう。ミラレア殿も私と共に神殿へと来てくれ」


「「「「わかりました」」」」


 各自返事をして、次の作業に取り掛かる。


 セミナはルアザを引き連れ、出口から出ていき、空中にある泡道に入る。


 ルアザは海底の都市を観察する。


 基本的に建造物は地面に建てられており、水中に浮いている建造物は少ない。

 材質からにして砂や泥を固めた物で作られており、積み立てるように築かれるのではなく、全て結合した一枚構成の建造方法である。

 建築、材料系統の魔術技術が高いと推測できる。

 一枚構造でも周りには華やかな飾りがあるため寂しくは無い。


 町並みもある程度は整っており、区画整理がされていた。


(水中は立体的に移動するのが基本だから、平面的な物は重要視されないと思ったのだが、地上程ではないが、計画性は町並みから見える)


 ルアザは左右やし上下の景色を視界に入れると水中には細さは様々な泡道が網目の如く通っており、荷物から人と多様な光景が広がる。


(物流面では完全に陸よりも海の方が優れている。そうか、物流が優れているから区画整理は当然するのか)


 人だけが通る泡道と物資だけが通る泡道があり、物資だけの方は残像が残る程速く移動しており、高速で物資のやり取りをしていた。


(海は三次元的に物を築けるのが利点だな。陸で三次元的な道を作るとしたら、コストが莫大で難しいだろう。せいぜい隣を繋げるくらいか)


 ルアザは泡道のような物を陸の都市で作った姿を想像するが、維持費や建造費が入り込み現実的な想像へと変わる。


(法や行政はわからないが、建築という点から見ると技術力はかなり高めな文明だろうか)


 建築学、材料学だけが目立つがそれだけでは無いだろう。


 次は文化の方はどうだろうか、と人々に注目する。


 老若男女問わず海の人種達の服装は地上の価値観から見ると、かなり開放的である。

 性に開放的で寛容的なロゼリアでも珍しいレベルである。

 女性は胸や股間を隠すだけであったり、男性も似たような物であり、このような服装の人々が何割かは占めていた。


(水中では衣服は余計な抵抗を生み、重くさせる。必然的か)


 環境による適応だ。

 重い物は煩わしく、いざという時に動けない。

 魔術器官が影響する領域に衣服は入っているだろうが、重い物は重いだろう。


(まぁ、誰もがというわけではないが。だいたいは一枚薄い衣服を纏う人が多いな)


 曲部を隠す場所の上に一枚薄い布を着るというのが、基本的な形なのだろう。

 痴性なような物は感じず、服装には品性を感じる。


 そして、人々はセミナを確認すると、子供も笑顔で手を振っており、セミナは微笑みを返す。


「慕われているのですね」


「……まぁな」


 声が小さく気恥ずかしそうだが、喜びによる笑みの色が滲んでいた。


「どうだろうか、我らの都は?」


「魔術師の一人として非常に興味深い物がたくさんありますね。非常に素晴らしいかと」


 ルアザは自信を持って満点を与えたくなる都市であった。

 規模は地上の主要都市と比べて小さいが、一般的な都市レベルの規模はある。


「地上の人々に称されて光栄だ。繁栄という点から見ると地上には負けると思うぞ」


「それは一部だけです。地上の普通の都市はメラトリオまで発展してません。それに都市の作りからして別物ですよ。それに法律などの行政関係も発展度に関わるため、一概には言えませんが、物という点では最高でしょう」


「その発展も守護神がいるからだ。我々が生きる環境は何か保護してくれる存在がいなければ、厳しい環境だ。技術力が高い事は自負したいるが、技術力を磨くにはそれなりに安全性が必要であり、それを提供してくれた守護神らに感謝以外の思いは無い」


 海は食料問題なのがあり、浅い場所は日光が届くため、生態ピラミッドの下の方が多い。

 つまり、餌が多いため多種多様な生物がたくさんいる。

 そして、都市メラトリオ含め周辺の八つの都市の祖先は多種多様な生物達との競争に破れた。


 光が薄くなり、藍色の海となった深い場所まで逃げ、一生懸命生活をしていた。


 そして、色々あって高位存在の目に留まる。

 安全を得た後、苦しい生活から抜け出すため工夫を繰り返し今に至る。


「守護神ですか。ということは、この都市はかなり宗教の色合いが強いのですね」


「常に隣に守護神がいるから、そうかもな。地上は違うのか?」


「いや、基本的に地上も守護神いますが、常に隣にいるというわけでは無いですし、宗教と政府は明確に分けられていますね」


「なるほど。住み分けをしているのか」


 セミナな自分達とは違うシステムに新鮮感のある驚きを与え、新たな知識を吸収しながら感心をする。


「あとは、統治者に政治も宗教も全てを集中させる場所の方が多いかもしれませんね」


 ルアザの祖先達が正にそうだ。

 守護神の力を権威に変え、統治しやすくする。


「様々な形があるのだな」


「まぁ、その辺は時代に合わせてですね。アレが神殿ですか?」


 ルアザは神殿の領域に入った事を肌で感じ、高位存在が色濃い気配を探すと一つの建物に注目する。


「そうだ。メラトリオ神の本神殿だ」


 泡道の出口から出ると、影のような姿の魚の形をした妖精が出現しルアザに纏わりつく。

 神殿周辺は属性の動き整っているため、静かな場所を好む妖精が集まりやすい。


「妖精から好かれぬのだな」


 カラフルに彩られるルアザをセミナが苦笑する。


「そうですね。そういう体質なので」


 近くにいる多くの妖精がルアザに集う中、近くにいるにも関わらず自分に近づかない個体にルアザは興味深くすると、その場から姿を消す。


「さて、行こうか」


 セミナが先導して神殿の扉をくぐる。

 ルアザは足を踏み入れた瞬間、亜空間に入った事をルアザは知覚する。

 亜空間とは隔絶された別空間では無く、元の空間と繋がっているが、色々と加工された空間の事である。


 内部は派手な内装では無く、質実剛健なシンプルな見た目をしていた。


 そして、一つの門にたどり着く。


「セミナ・ユーンベクルでございます。サリアス及び深淵の怪物についての報告をしたいと思っております。加えて、協力関係になった陸の人種を紹介します」


 門の前で要件を言い、一拍置くとセミナはルアザを伴い門の中に入る。


 見渡す程の広い魔術的な機構を多く備わった部屋の中心部に海人(シーマン)らしき女性が小さな椅子に座って、セミナとルアザを待っていた。


「よく来たわね」


 高位存在にしては強烈な気配を撒き散らさないためか、意外と親近感を覚えされる高位存在がそこにいた。


「ご無沙汰しております、メラトリオ様」


「えぇ、じゃあ早速だけどサリアスはどうなったのかしら?」


「結論か言いますと、サリアスは取り逃がしました」


「わかったわ。……聞いていた報告では、最後に見たサリアスとは別物とも思えるわ」


 セミナが都市から出発した後にメラトリオはサリアスについて報告を受けていた。

 だが、最後に見たサリアスは一般人レベルの力しか持っていないはずであった。


「間違いなく彼女がサリアスです」


 セミナは重い確信を持って言う。


「そうよね。……場所はわかっているから、とりあえず様子見ね」


 メラトリオもセミナに確認を取ったが予想通りの答えが返ってくる。


「【溟孔龍(バハムート)】と深淵の怪物の動きについてはどうですか?」


「【溟孔龍(バハムート)】はラテマアから離れないわね。深淵の怪物達も思った以上に非活発的というのが現在の状態よ」


「では、続けて監視するという形で」


「そうね。何か策を練っている可能性もあるしね」


「彼らもバカでは無いですから」


 深淵の怪物は基本的には強く、一体抑え込むのに訓練された成人男性が数人程度は必要だ。

 そして、ほとんどは理性無き獣と評しても良いが、一部は自分達と同じくらいの知恵がある物もいる。


「近いうちに、次の行動を考えましょう」


 額を手で抑える。

 時が経っても厄介な存在である事は変わらない。


「あと、紹介しておきたい者がおります」


 セミナがルアザの方を向き、なるべく気配を消していたルアザが存在を顕にする。


「陸の人種ね。名乗ってちょうだい」


「メラトリオ神、お初にお目にかかります。ルアザ・ミラレアと申します。よろしくお願いします」


 礼儀正しく、無難な自己紹介でメラトリオの様子をルアザは見る。


「この都市の守護神をやっているメラトリオよ。よろしく。あなた強力な加護を纏っているわね。それなりに大物かしら?」


 メラトリオは興味ありげに愉快な笑い声をあげる。


「どうでしょうね?。今はあまり、大物というわけではないですね」


 王族の直系だが、滅んだと判断しても良い状態であるため、客観的には大物ではないだろう。


「で、陸の者がこの広い海に何用かしら?」


 フードの奥にある瞳を見透かされているようだった。

 ルアザはセミナに話した海に来た経緯をメラトリオにも話す。


「──というわけで、自分の目的と関わりが深そうな深淵の怪物を探るのが、目的達成の鍵となり得ると思いユーンベクルさん達と共に行動しようと思っております」


「セミナはそうなの?」


「はい、私が提案しました」


「信用できるかしら?」


「大丈夫です。ミラレア殿は初対面の時に私の部下を身を挺して庇ってくれました。良い人です」


 最初はセミナもルアザの事を尋問しようとしたが、相対した時の一連の行動から非常に好感を覚えた。


「少しセミナだけと話したいから、あなたは部屋から離れていてくれないかしら?」


「わかりました。門の隣で待っています」

最近、少し書くやる気が薄くなり始めました。

集中すれば、勝手に1話くらい書き終える物ですが、集中するまでの過程が長かったり、集中力が切れるのが速くなってきてます。

完全にエタる前になんとかしたいです。

作者も書きたい事はたくさんありますから。

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