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初代勇者~表裏一体  作者: ヘリコプター
第五章
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海での出会い

 剣を鞘に収め、フードを深く被り自身の顔隠す。


 そして、相手の姿を観察する。


 赤い槍を持った女性の人魚(マーメイド)を先頭に鍛えられた体を持った海の人種達の集団であった。


 逃げ去っても良いが、別に犯罪を犯したわけでもないので逃げる理由は無い。

 意味も目的も無く逃げるというのは相手に誤解を与えやすくなる原因となる。


(広い海で起きた事件に自分はもう片足入れてしまっているのだろう。それにクエレブレさんにも色々聞きたい事がある)


 被害者なのか加害者のような直接的に関わったのか、それとも重要参考人になり得る第三者として間接的に関わったのか。


 海の人種達とルアザとの距離が狭くなる。

 どちらとも冷静な様子だが、互いに警戒による緊張が内心を支配する。


 互いの警戒線の距離が触れ合うと海の人種達は止まり、ルアザを静かに見つめる。

 ルアザも落ち着いた様子で海の人種達を見つめている。


「……」「……」


 海の人種達は互いに目を合わせ若干囲むように広がる。


 ルアザはフードで隠れた視界を魔術で透過しながら、目を回して注目する。

 第一声は十中八九向こう側から来ると予想できるため、余計な事をして警戒心を煽らないで待つ。


 この集団のリーダーと推測される凛々しい容姿をした女性が口を動かそうとする。


 その時ルアザは勢いよく左に向き、目の前にいる海人(シーマン)の手を勢いそのまま掴む。

 居場所を入れ替えるように強く引っ張り、ルアザは自分の体全体を海人シーマンを隠すようにする。


 ルアザの視線の先は横腹部向いており、一部分だけを守る結界が構築されていたが、紫色の何かが通ると、結界は容易く貫かれルアザの横腹部を掠めただけで軽く抉り取る。


 ルアザは抉り取られると同時に紫の何かを掴み取っていた。


 紫の何かは先程、異型の人魚(マーメイド)が生成した槍であった。


 それが豪速で投げつけられ、ルアザが常に行っている感知魔術の範囲に入った瞬間、ルアザは槍の起動上にいる海人(シーマン)を助けようとしたのだ。


「グゥッ!!」


 すぐに槍を手放し、横腹部を抑える。

 熱い痛みに海水が浸っても冷める事は無く、更なる熱さを生み出すだけであった。

 ルアザはまず、結界で抉れた場所を囲み、内部にある海水と漏れ出る血を抜く。


「大丈夫か!?」


 周りの海の人種達が急いで泳ぎ寄り、ルアザの身を案じる。


「えぇ、大丈夫で──!!」


 ルアザは安心させるように素早く返答した時に驚くべきことに気づいた。

 海の人種達もルアザの傷口に目がいっているため、ルアザが驚愕により言葉を止めた理由がわかる。


 抉れた傷口には小爪程度の紫の鉱石物が癒着している。


 ルアザは痛みに堪えながら接合部ごと切断しようと鋭利な刃を射出しようとする。

 しかし、術式を組み立てようとした時に術式が歪み、暴発を恐れ術式を解体する。

 同時に体のバランス感覚が崩れ、体の操作がままならなくなる。

 水中でも平気な理由であるオーラとフォースだけは死ぬ気で維持をしているが、その他の魔術は維持ができなくなってきていた。


 ルアザは覚悟を決めて紫の鉱石物を摘み、一息つくと、勢いよく引き抜く。


 まだ傷口が癒えていないかさぶたを取るような感覚を体の内部に走らせたような激痛に襲われるが、ルアザは少し顔を顰めた程度であった。

 ルアザは人が知れる最大の痛みを経験しているから、痛みに対してはある程度の耐性はついている。


 ルアザは治癒の魔術を使用し細胞組織の再生と結合という超微細レベルの細胞活性化を行う。


「申し訳ありません、初対面でずうずうしいですが、何が柔らかい布のような物は持っておりませんか?」


 ルアザは止血などの最低限の処置を行い、早めに完治させたいため、チラリと顔を向け助けの手を求める。


「おい、医療袋を持って来い」


 凛々しい容姿の人魚(マーメイド)は後ろにいる男の人魚(マーメイド)に指示をする。


「はっ!」


 鞄の中から明らかに医療袋の方が大きいため、妖精の鞄と思われる。


「これは保療布と言う物で、医療道具だ。陸の人種に効くか分からぬが、我々が重宝している物だ。付けてみると良い、同じ人類だから、悪影響はあったとしても少ないはずだ」


 海草を加工したような絹糸できた薄布に似た非常に美麗な膜を渡される。

 ルアザは一瞬だけ観察した後、傷口を覆うようにする。

 柔らかく粘着性の素材であるため、何もしなくとも肌と傷口に貼り付いた。


「感謝します。この恩は必ず返します」


 熱さを伴う痛みが冷えた保療布によって冷やされ痛みも抑えられると、ルアザは安堵し、感謝の言葉を述べる。


「いや、いい。仲間の命を助けてもらったからな」


「そうですか。ここは引きましょう」


 ルアザにとって人を助けるのは当たり前だが、ここで自分が無理にでも恩を返そうとすれば、十中八九恩の返し合いが始まるのが予想できる。

 恩を返そうとする事で生まれる物が目的であった場合は別にだが、今のところそのような目的は無い。


「で、何用で?」


 ルアザは傷口を繋ぎ直した服で隠すと、本来の話へと戻る。


「この紫の鉱石物できた槍の持ち主を追っていたら、目立つ音と光が聞こえたため、参った次第だ。そもそも、なぜこの海中に陸の人種がいるのだ?」


「クエレブレという名の龍に追われて海にまで追い詰められたら、タコのような巨大な怪物にクエレブレ共に海に引きずり込まれました。そして、色々と戦いがあったら、自分は紫の鉱石物のような物が体中に生えた人魚(マーメイド)と戦いに入り、撃退したらこの現状ですね」


 ルアザは自分で語っていて、休みの一時も無いなかなか怒涛の時間であったな、と思う。


 海の人種達は疑惑感がありつつも、驚いた様子はしていた。


「それは、本当か?」


「はい、本当です」


「では、なぜそのクエレブレという龍に追われていたのだ?」


「うーん、彼の龍いわく、私が自身の妻を殺したと見ているらしく、自分を仇討ちしようしている感じですね。クエレブレの妻とは会った事はありますけど、殺した憶えは無いですけどね」


 同情を誘うように気苦労が強く帯びた声で説明する。

 実際に強く気苦労しているため、現実的でありながらも感情に訴える。

 ルアザも、それをわかって演技をしている。


 初対面の人と話す際ユーハがよくやっていた手法だ。


「なるほどな……。そういえば、陸の人種は水中では呼吸ができず活動できないはずだが、見る限り大丈夫そうだが、なぜだ?」


「特殊な魔術を使用しているので大丈夫ですよ」


 オーラとフォースの事である。

 属性を宿し、その属性の耐性と一体化をすることによりあらゆる環境に適応するのだ。



「クエレブレさんを追います。どうやら、誰かに誑かされたようなので。ですので、聞きたい事がありますから」


 クエレブレを騙した相手の事について詳しく知りたかった。

 その相手は何を目的にして、自分を襲わせたのかを知りたい。

 常に暗殺者に狙われ続けているような物だ。


「そうか。実はな、あなたを襲った巨大なタコのような生物は、深淵の怪物という恐ろしい魔物なのだ」


「そうなのですか。では、あの紫の鉱石物の人魚(マーメイド)は?」


 深淵の怪物と異型の人魚(マーメイド)は別物なであることをルアザは見抜いていた。

 また、深淵の怪物よりも話ができそうな異型の人魚(マーメイド)の方が気になる。


「アレは……………」


 彼女は視線を伏せながら言葉を詰まらせて、黙り込む。


「……言いにくいのであれば、言わなくとも結構です」


 なにか深い事情があると察したルアザは、踏み込まずに様子見をすることにした。


(クエレブレを追っている限り、いずれ知れる事だろう)


「我々は都市メラトリオの者であり、サリアスという名の紫の鉱石物を生やした人魚(マーメイド)を追ってここまで来た」


「そのサリアスが何をしたのですか?」


「簡単に言えば、破壊行為だな。都市の一部に被害が出た」


「それはご愁傷様です」


「今のところ人命の被害は出てはいないが、危ない状況であった。最終的には私が相対して、サリアスは都市から離れた感じだな」


「すごいですね。サリアスはかなり強かったですよ」


「私は英雄だ。腕には自信がある」


「……………! 英雄である貴女がじきじきにサリアスを追っているのですか!?」


 ルアザは最初は関心していたが、瞬時に英雄という重要性に気づき、非常に焦った口調となる。


「そ、そうだが?」


 ルアザが突如、穏やかな口調から勢いづいた口調に変わったため戸惑いながら返答をする。


「そんな重要な事を放置して、私と話している暇なんて無いじゃないですか! さぁ、今すぐ追ってください!」


「あー、そういうことか。……サリアスは必ずやってくる。その時に私は決着をつける。必ずな……!」


 ルアザがなぜ焦燥感に満ちていたか、納得できた彼女は安心させるように笑みを見せた後、その笑み中に舌に刻み込むような決意を含んでいた。


「そうですか……。その時にはしっかりと解決してくださいね」


 ルアザも念を含ませるように言った。


「あぁ、わかっている。私がやるべきことだからな」


「では、私はクエレブレを追いますからこの辺で。お世話になりました」


 ルアザはクエレブレが遠く離れる前に追尾を開始したいため、話を切り上げようとする。


「深淵の怪物も追うのだろう?」


「一応は」


「なら、私達と共に行かないか? 私達はサリアスを追うと同時に深淵の怪物の調査をしている」


「……良いかもしれませんね。大海原を一人で彷徨うよりは」


 海中ではルアザは自身の実力を十全に発揮できる程、経験も知識も無い。

 そのため、了承をして協力関係を築いた方が互いに利益がある。


「私はセミナ・ユーンベクル。あなたは?」


 友好の証としてセミナは名前を名乗り、ルアザにも問う。


「名はルアザ・ミラレア。よろしくお願い致します」


 ミドルネームにダーナが入るが、ルアザは自分が王族の末裔だと宣伝する気は無い。

 ルアザの認識では既に自分だけが残った血筋であるため、自分だけダーナ家と名乗っても効果が否める。

 もう一つの理由としては名乗る度に王族と驚かれたく無いからだ。

 だから、名乗ってもフードを取らず絶世の美貌も晒す事は無い。



予定が詰まりすぎて、投稿する暇が無かったです。

今年の夏は忙しいですが、楽しくもあります。


夏だからといって、舞台が海とかは関係無いです。

偶然、相性の良い時期が重なっただけです。

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