転生神護~ご都合主義過ぎて主人公が発狂する話~
お前は他人に興味が無い! 親に言われた。無視をした。
人間向いてない!友人に言われた。付き合いをやめた。
俺が死んだとき花を添えてくれる人はいるのだろうか。
その時は死んでいるのでその命題を解くことは永遠にできない。
「俺は……?」
「ようやく目が覚めたか、儂は神じゃ」
「へえ」
「お前の身体は死んだ。よってこれからお前を異世界に転生させようと思う」
「……」
「現世に未練は無いのか?」
「いいさ。どうせろくなもんじゃないし」
「分かった。世界最強の肉体、絶世の美女、一生遊べる金をやろう」
「オイオイ天国かよ。そんなにくれるのか?」
「ああ。儂は神じゃからな」
「そうか」
「そうじゃ。目を閉じよ」
「ああ」
「勇者アレス様。目は覚めましたか?」
「ああ」
「良かった。私は侍女のティナと申します。ずっと寝ておられて、魔王の毒牙にかかったのかと思いましたわ。さあ。旅に出ましょう? 支度は済ませてあります。選りすぐりの仲間も居りますよ?」
(相変わらずのご都合主義)
「アタイは騎士のエキドナだ。魔王に親を殺されたから一緒に復讐しに行く」
(一緒に復讐って意味わかんねえ)
「そうか。よろしく」
「着きましたわ。ここが魔王の城」
「早いなオイ」
「我は魔王サンドラ! 勇者よ! 観念してあたしの下に服従しなさい!」
(おっ! かわいい!)
「そんな妄言に耳を貸す必要などありませんわ! 三人で退治しましょう!」
(ティナうざいな。死ねばいいのに)
「きゃっ!?」
「どういうこと!?」
「サンドラ……とか言ったな? これが俺の力だ。逆らうなら貴様も消し炭にする。わかったな? わかったら俺に服従しろ」
「なんて……邪悪なの……わかり……ました」
「わかれば良い。お前は俺の女だ」
「はい……」
「流石だぜアレス様! アタイの見込んだ通りだ!」
「貴様も消えろ」
「ぎょえーーーっ!!!」
「ひ……」
「さて。これから俺はお前を餌にして全てを手に入れる。めでたしめでたし」
しかし、彼の生活は変わるどころか、どんどん惨めになっていった。
最初こそすべてを手にし幸せだったが、そこには独善しかなかった。そして独善には限界がある。
「クソ……これが俺の求めた世界だったのに」
「もっと。もっと楽が欲しい……」
彼は独り、ベッドで横になっていた。手にはゲーム、スマートホンが握られている。
「こんなはずじゃなかったのに……」
「才能……人間関係……何も” 労 ”の無い世界……どうじゃった?」
「初めから幸せでも……それは現実と同じ……地獄」
「賢いから疑問は持てど、考えるだけで実行できない貴様にはこの地獄がお似合いじゃ」
「てめえ……」
「誰がお前なんぞに花をやるか。今のままじゃ無理じゃろ。お前」
「……」
「ふっ。幸いまだ取り返しはつくぞ。これからどうするかは自分で決めい」
ここまで読んでいただきありがとうございました。これは作者個人が近しい者の「死」に抵触されて執筆したものです。矛盾は言うまでもなく、敢えて生じさせたものですが、「死」を通じて誰かの生きる気力になったのなら幸いです。