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ヒロシマで暮らしていた家を私は気に入っていた。しかし少し変な家だった。家の壁や備え付けの家具がやたらカラフルで可愛らしい雰囲気の内装に広々とした開放的なキッチンとリビングがあった。テレビのドラマで主人公が暮らしているような明るく開放的な部屋だった。しかしそこでしばらく暮らすと何故かその部屋の上の階の部屋に引越しをした。上の階の部屋は狭く地味で普通の部屋だった。その部屋は日当たりが悪くいつも薄暗いイメージだった。私と母とトミタのおばちゃんの3人で暮らすには少し手狭な部屋だった。母は日中仕事に出ていた。しかしトミタのおばちゃんは昼過ぎまで寝ている。母が帰る夕方くらいになるとトミタのおばちゃんは身支度を整え仕事に行くと言って家を出て行くのだ。置き去り事件の後、私は道に迷うことがなくなり色々な所へ1人で冒険に行くようになっていた。母もトミタのおばちゃんも毎日忙しく私の相手をしている時間などなかった為、私がそのような遊びを覚えたことも知らなかったし、私が友達から相手にされずいつも1人で遊んでいることにも気がついていないようだった。ある日私は夕方仕事に向かうトミタのおばちゃんの後をこっそりとついて行った。しかしすぐにバレてしまいトミタのおばちゃんは異常なほど怒りだし私を叱りつけた。え?そんなに怒る?と幼いながらに困惑したのを覚えている。しかし懲りない私はまた別の日に仕事に向かうトミタのおばちゃんの後を前回よりもよりこっそりとついて行った。綺麗に化粧をしベージュのロングコートを着たトミタのおばちゃんの後ろを人混みに紛れながら見つからないようについて歩いた。しばらくついて行くと来たことのない場所にたどり着いた。子供の姿など1人もいない。おかしな雰囲気の場所だった。あたりは暗くなりはじめていたがその場所は沢山のネオン看板で昼間のように明るかった。トミタのおばちゃんは立ち止まり黒と白の服を着たおじさんと親しげに話していた。そしてそのおじさんの後ろにある建物の扉に入って行った。あ!と思った私は思わずそのおじさんの前に姿を出してしまった。おじさんと目が合う。『あれの子供か?』とおじさんが聞いてきた。『違う。』と答えて私は逃げるようにその場から立ち去った。子供ながらに見ちゃいけなかったと思った。トミタのおばちゃんは女を売る仕事をしていたのだ。その次の日トミタのおばちゃんからまた怒られた。ついて行ったことがバレていたのだ。あの白と黒の服着たおじさんがトミタのおばちゃんに私のことを話したみたいだ。しかし私は断固として認めなかった。ついて行ってないと言い切った。別に怒られるのが嫌だったのではない、見てないことにしたかった。何故だかわからないけど何も見ていないことにしなければいけないと思ったのだ。その様子を見ていた母がこっそりと私を呼び出し『本当はどうなの?本当はついて行ったの?お母さんにだけ教えて。』と言った。私は少し間を置いて小さく頷いた。そして母に抱きついてしばらく自分の中のおかしな感情と向き合った。母は何も言うことなく静かに私を抱きしめた。

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