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スパイ多そうだな

 話を遮る奴はもういないだろうし、漸く本題に入れる。


「で、まぁ話は戻るんだけど」

「あぁ、私が君達をこちらに来させた理由だな」

「…その前に、そっちの言葉遣いもやめてくれない?」

「えっ?」

「いやぁ、俺は良いんだけどね?ソウちゃんが緊張しぃだからさ。もっと砕けてほら」

「う…うむ」

「ほらほら」

「分かった、分かったから!…これでいい?」

「おk」


 敬語やら立場を慮っての言葉遣いも仕方がないけど、やはり子供は子供らしくしてほしい。


「最近は砕けた言葉遣いも使ってなくてな…使ってなくて」

「どうせ俺達は異世界人なんだ。偉いも偉くないも今は関係ないだろ?」

「…そうだね!」


 また嬉しそうにまぁ。


「で、話を戻そうか」

「そうだね…でも、変わってないかな?」

「んん?」


 どういうことだ?今の話が変わってない?あー…。


「つまりアッ君は、立場もない友達が欲しかったと?」

「あ、アッ君・・・!?」

「アークライト君って長いじゃん?」

「お主は…また…」


 爺さん突っ込み役が増えてきたなー。気苦労が多そう。


「お主だけじゃ…」

「心を読むな心を」


 読心術の魔術あるんじゃねーのほんと。


「アッ君…ふふ。僕もそう呼んでいいかな…?」


 お、ソウちゃんがアッ君に心を開いた!いけアッ君!こじ開けろ!


「あ、あぁ…違った。うん、宜しく。ソウゲン」

「僕はソウって呼んで?」

「…分かった!ソウ!」


 ソウちゃんお友達1号がここに誕生した。良き哉良き哉。


「…ゴホン!」


 顔を赤くしたアッ君が場を仕切りなおそうと親の真似をするようにせき込む。


「大丈夫?アッ君。風邪かな?顔赤いよ?」


 しかし ソウちゃんには つうじなかった!


「ち、違うんだソウ…。場を仕切りなおしたかったんだ…」

「「ハッハッハ!」」


 俺と爺さんは笑いがこらえきれなかった。



‥‥‥‥



「さ、さて。今後についてなのだが」


 和やかな雰囲気の中、恥ずかしそうにしながらも持ち直したアッ君が話し始める。


「アッ君、口調口調」

「真面目な話だ。今は許せ」


 流石にもう流されなくなってしまった。お兄さん悲しい。


「君達2人の立場は、王族の客人としての待遇となる」

「それはどれくらいの立場なんだ?」

「貴族にタメ口を利いても許されるくらいかの?」

「そうだな」

「おい…」


 今度は王子と爺さんが笑う。


「具体的には、特に何かする必要もないが、代わりに何かを命令したりすることも出来ない。君達に付けるメイドや執事以外にはな」

「うーん、正直メイドも執事もいらないからソウちゃんと暮らせる家が欲しいなぁ…」

「そうもいかない。何せ客人だからな。権限も特にないが、仮に事件に巻き込まれたら王が動くほど重要な立場でもあるのだ」

「まじかぁ…」


 俺らの行動で一国が動くこともあると…。


「すまないがそういうことで、少なくともしばらくは城で生活してもらうことになる。もし問題ないと判断されたら、護衛などは付けるが城の近くに家は用意できるだろう」

「アッ君としばらくは一緒?」


 ソウちゃんが質問をしている。おお、アッ君はちゃんと身内認定されたようだ。


「そうだな。私も常に一緒という訳にはいかないが、可能な限りは一緒にいよう」

「友達だもんな」

「うんっ」

「…そうだね」


 嬉しそうなソウちゃんとアッ君。子供の頃って簡単なことで友達になれたもんな。大人になるとしがらみが付いて回って、人間関係も打算と欲にまみれたものになってしまう。きっと2人は生涯の友人になれるだろう。


「分かった。他には?」

「ここで暮らす内にやりたいことも出来るだろうから、そういう時は私に言ってくれれば申請しておく。流石に全てが通ることはないだろうが、ある程度は通らせる」

「通らせる」

「通らせるとも」


 つまり申請が通る(権力)的な。滅多なことは申請しないでおこう。


「儂も基本は城で勤務しておるからの。困ったことがあれば言いなさい」

「ありがとう爺さん」

「ほっほっほ」


 だが、俺はここで言っておかなければならないことがある。


「でもな…うーん」

「何か?」

「いや、俺はさ、召喚されたというより、巻き込まれただけなんだよね」

「…ほ?」


 爺さん機能停止!衛生兵!衛生兵を呼べ!


「ソウちゃんが魔法陣に囚われてるところを見て、助けないとって思って彼の手を取ったら一緒に来たんだ」

「お兄ちゃん、助けてくれようとしたんだね」

「あぁ、結果的にはソウちゃんと一緒に来れてよかったよ」

「うん!」


 だが、彼らが呼んだのはあくまでソウちゃんだけとなる。


「俺もソウちゃんと一緒に居るって言ったけど、俺の待遇はどうなるんだろうね?」


 最悪、ソウちゃんだけ置いてここを出ることになるかなぁ。あんなに格好つけたのになぁ。


「ふーむ。まぁ、人一人増えた程度なら何も問題はないじゃろう」

「そうだな」


 爺さんとアッ君は何とも思ってない。あれ?


「だけどさ、俺ってぶっちゃけて言えば魔術の適用範囲外の人間だったわけで」

「それがどうかしたのかの?帰すことは残念ながら出来んが…」

「あぁ、貴殿は…」

「お兄ちゃん…どこかいっちゃうの…?」


 ソウちゃんがものっそい悲しそうな顔をする。こんな顔をさせたいわけじゃないのに。


「いや、俺はソウちゃんと一緒に居たいよ」

「そっか!」

「だけど、爺さんはそうも言えなかったりしないのか?」

「何故じゃ?」

「お爺ちゃん、お兄ちゃんのこと嫌いなの…?」


 ソウちゃんの攻撃!おじいちゃんはダメージを受けた!


「そ、そんな訳なかろう!儂はお主とソウの味方じゃよ!」

「あぁすまん。言葉が足りなかったな」


 爺さんは思った以上にソウちゃんを可愛がりたかったようだ。まじすまん。


「俺が言いたいのは、召喚魔術に未練が無い以外に設定した項目は無かったのかってこと」

「むっ…」

「例えば、召喚する人物が犯罪者だったり、国を乗っ取ろうと考えたりする奴な場合も考えられる。なら、爺さんはそういうやつらを除外する項目も設定したんじゃないのか?」

「ふむ…確かに野心を抱いている者、罪を犯している者は除外としたの」

「だろうな。で、ソウちゃんは間違いなくそんなことはないけど、巻き込まれた俺はそういう奴じゃないって保証はないわけだろ?危険じゃないか?」

「お主はそんなこと考えとるんか?」

「例えばの話だよ。俺が自分で野心抱いてませんなんて言っても分からないだろ?」


 別に俺が野心を抱いてるかどうかという問題じゃない。保証がないのが問題なんだ。身元不詳、経歴不明の異世界人とか怖くないか?


「まぁ、お主はそんな奴じゃなかろうし問題ないじゃろ」

「そうだな」


 爺さんと王子はあっさりとそんなことを言う。


「…この国スパイとか多そうだな」


 言外にお人好しと皮肉る。


「クックック…言うのお」


 爺さんは楽しそうだ。王子はまだ皮肉が分からなかったようだ。


「まぁ、そういう事なら一応上に挙げておくわい。お主が不利にならんように動くから安心してここにおればいい」

「流石筆頭魔術師殿」

「ほっほっほ。もっと褒め称えてええんじゃぞ?」

「子煩悩爺」

「…それ悪口じゃの?」

「子煩悩は悪いことじゃないだろ?」

「はぁ…変な所には頭が回るのう。巻き込まれたことも言わなければよかったものを」

「隠し事は下手なんでね」


 何故か昔から隠し事しても周囲にばれるんだよなぁ。兄ちゃんのおもちゃ壊したときとか、告白されたと思ったらドッキリだったことに仕返ししようと画策してる時とか。


「ま、お主もソウも暫くはここに居なさい」

「うん。歓迎するよ!」


 じゃぁ、ソウちゃんと異世界のお城を堪能することにしますか。

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