猫9話
俺の衣類を盗むような犯人は一人しかいない。
絶対に猫様だ。
……暫くして騙されたことにようやく気付く。
何故こんなことをしたのだろう?そんなことを考えていくうちに、一つの発言を思い出す。
『猫様が飼ってあげるにゃ』
……行動を制限するためだ。俺の今のかっこはパンツ一枚だけ。こんなの普通に考えて外に出られない。警察を呼ばれるのがオチだ。
猫様は俺を飼うと言っていた。まさにペットが逃げないように檻を用意するような感覚。勝手に外に出歩かないように『俺の家で』俺を飼おうとしているのだ。
頭がいいというか……本当にヤバイやつに出会ってしまったと再度後悔をする。
念のために他に盗まれたものがないか部屋中を確認してみる。……ない。ない。ない。衣類以外にも盗まれている。
衣類に注目がいっていたが、ズボンに入っていた携帯がそのまま盗まれている。パソコンの電源ケーブル、テレビのアンテナケーブルが盗まれている。
この部屋にあった、俺が時間を潰してきたものが全てなくなっている。
こんな何もない部屋で一体何をして過ごせっていうんだよ……。
ふざけんなよ……!!!
イライラを発散させようと、やり場のない怒りでベッドを殴り続ける。
ふと、机に置いてあったノートがもう一冊重なっていることに気づく。……こんなノート昨日はなかった。
何か猫様がメッセージを残している可能性が高いと思い、パラパラと捲る。……何も記入されていない。新品なのだろうか?
……しかし、最後のページを捲ると大きく荒々しい文字で、猫様からのメッセージが書かれていた。
『このノートでいっぱい遊べ』
……人が何も文句言わないからって好き放題しやがって……!!!馬鹿にしてんのか!!!
昨日までは自分が引き金だと思っていたからこそ、敢えて文句を言わなかったが、そろそろイライラが限界だ。一体何様のつもりなんだよ!!!
俺はこのノートに無我夢中で、猫様に対する愚痴を書きまくった。