猫8話
「臭い。きもい。早くシャワー浴びて」
まさか猫様が起きて早々、こんなセリフを言われるとは思ってもいなかった。
しかし言われてみれば確かに臭い気がする。……そりゃそうだ。風呂も入らずにベランダで1日寝れば臭くもなる。
すぐさま着替えとバスタオルを用意して浴室に入る。
蛇口を捻ると勢いよくシャワーヘッドから水が流れ出す。針を刺すように細かく突いてくるお湯が何だか心地良い。やはり疲れが取れる。このまま寝てしまいそうだ。
シャワーを浴び終わると、洗面所に用意しておいたバスタオルで体を拭く。体も気持ちもどこかサッパリとすることができた気がする。
体を拭き終わると、事前に用意しておいた着替えに……?あれ?着替えは??
……何故だか用意していたパンツしか置いていない。
俺がうっかり用意したと思い込んでいたのだろうか?
着替えを取ってもらおうと思い、猫様に呼びかけてみるが、何の反応もない。全くの無反応。
このままでは埒があかないため、部屋に着替えを取りに行こうかと思ったが、パンツ一丁で行くのは流石にまずい。猫様が起きていても問題がないように、慎重に部屋を覗き込む。
……しかし、そこには猫様の姿はなかった。
家のどこにもいなかった。
そして、俺の衣類が全て盗まれたことに気づいた。