猫5話
「コンビニのご飯は健康に悪そうだけど、とっても美味いにゃ」
「人の金で飯食ってるのに一言余計なんだよ」
目を覚ました猫様は、俺が買ってきたハンバーグ弁当(450円)を美味しそうな表情を浮かべて食べている。
会話していた時はほぼ真顔というか……感情の変化を一切感じられなかったのだが、ご飯を食べているときは幸せそうだ。
「ところで、なんで猫様を呼んだのにゃ?」
「俺のプライベート空間を散々荒らしといて、かなり今更な台詞だな……」
「なんで呼んだか聞いてるの。ゴミ」
「……いい加減俺のことゴミって呼ぶのやめろ!!!」
「わかった。ゴミって呼ばない。で、あなた何者なのにゃ?」
「俺の名前は須藤巧だ!」
「名前なんか聞いてない。興味ない。もう二度と名乗らないで。で、何者か聞いてるのにゃ」
「何者って……いや……その……」
「何者か名乗れないの?」
「…………働いてすぐ会社を辞めて……家にずっと引きこもってしまうような……ゴミ野郎だよ!!!」
「やっぱり呼び方ゴミであってるにゃ」
「こっちが年下相手に心さらけ出してるのに、グサグサ刺さるようなこと言うな!!」
「にゃ?ゴミ野郎って呼ばれなかったのが心外だった?」
「そういう問題じゃねーよ!!!」
「過去はゴミ野郎だったとして、今は何者になりたいの?」
「……いや……んな急に……別に今は、何かになりたいわけではないんだけど……変わった人と会えば……現状の何かが変わるかなって」
「黙れゴミ」
「言えっていったのはそっちだろ!!!」
「猫様と会っても何も変わらないし、変えられない。変われるのは自分だけ」
「……ははっ。そりゃ……そうだな」
「でも猫様は優しいから飼うことはできるにゃ」
「ははっ。……は?」
「堂々とゴミが『何者か』言えるようになるまで、飼ってあげるにゃ」
「……はぁ!?!?」
こうして俺は、自分で引き起こしてしまったドタバタに巻き込まれ、猫様に飼われることになってしまった。