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猫3話

 住所を教えるなんて完全に馬鹿のやることだと思う。


 でもこういう『変わった人』には『変わったやつ』だと思わせる必要がある。


 だから住所を教えた。


 それで『変わったやつ』と思われて、何か返事でもくれたらラッキーぐらいに思っていた。



「にゃ」


「は、はじめまして……」


 まさに家に来てくれるなんて全く想像もしていなかった。


 勝手なイメージで、アカウントの印象とは違い、実物はハゲたおっさんなんじゃないかと想像をしていたが、予想は完全に裏切られる。


 自分よりも一回り年齢の低い女の子が家の玄関の前に立っていた。


 さらりとした黒髪にパッツンの前髪。どこかクールな印象を受けるが、まつげがぱっちりとしたクリクリの大きな目をしている。まるで人形のように整った顔立ちだ。


 何故か頭には猫耳を付けている。服装はコスプレ喫茶か何かで働いてるの??と思ってしまうようなゴスロリファッション。整いすぎた容姿と相まって、同じ生物とはなんだか思えない。


「入る」


「え?」


 そう言い、俺の許可もなく土足で部屋にズカズカと入っていく。


「……汚い。不愉快にゃ。」


「いや!その前に靴脱げよ!っつかゴミとかないだろ!部屋は案外綺麗にしてる方だし……」


「今からいらないと思ったものは全部捨てる」


「な、何言ってんの!?」


 冗談などでは一切なく、どこからか取り出したゴミ袋を使い、読んでいた雑誌、ゲームソフト、大事に飾っている写真まで、全てをなんの躊躇もなくゴミ袋の中につっこむ。


「ちょ!お前!何やってんだよ!!!」


「お前ではない猫様にゃ。失礼だぞゴミ」


「発言が矛盾してんだよ!!!」


 その後、なんの躊躇もなくゴミ袋にポイポイと突っ込んでいく。まるで強盗に襲われているのをただただ眺めているだけのような感覚だ。


 なんで止めないの?と思われるかもしれないが、ここまで迷いのない潔い行動をされると止めるに止められない。というか出会って数分の女の子にこんなことをされて止め方が全くわからない。


 ただ茫然と眺めることしかできなかった。


 しかし、そんな俺でもノート一冊分は守ることができた。


「それはやめろ!!!……いや!やめてください!!!」


「これは大事なの?」


「……そうだ。それだけは捨てるな」


「わかったにゃ」


「ふぅ……よかった……」


「じゃあこれ以外は捨てるにゃ」


「嘘だろ!?マジかよ!?」


「楽しくなってきたにゃ」


 猫様は誰がどう見ても変なやつだというのは言うまでもないが、ノート1冊分しか捨てるのを止められない自分も相当変な奴だと思ってしまった。



「ふぅー。綺麗に片付いたにゃ」


「……俺の部屋がああ!!!必要な家具しか残ってないって……どんな状態だよ!!」


「家具は重たいからやめたにゃ」


「もっと捨てなくていい物いっぱいあっただろ!!」


「にゃ。後からグチグチ言うな。ゴミ」


「……た、確かに最初から言えって話だけどよお!!!」


「じゃあちょっと寝るにゃ。おやすみ」


「はぁ!?!?」


 俺のベッドでボンッと寝ころび、すぐさま小さな吐息を立てて猫様はそのまま寝てしまった。

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