出逢い
赤いワンピースを着た一人の少女がいる。彼女の名前は、赤瀬葉月。彼女は雨の中傘も差さずに、涙ぐみながら、夜の歩道橋を歩いている。前を見ていなかった葉月は、傘を差した男にぶつかった。男の名は、馬越浩太。だが、彼女は気にせずに歩き続ける。彼女の後ろ姿を見て、浩太は首をかしげた。浩太がふと視線を落とすと、そこには一枚の手紙が落ちていた。葉月が落としたものである。浩太はそれを拾い、彼女を追いかけようとしたが、人見知りの激しい彼は、彼女に話しかける勇気がない。彼は戸惑ったが、その手紙を手に持ったまま、また進行方向へと歩き始めた。
家に帰った浩太は、手元の手紙の内容が気になったので、少しだけ見てみることにした。封筒の表には、「赤瀬へ」と、裏には「光輝より」と書いてあった。浩太は、罪悪感を抱きながらも、封筒を破ってしまわないように、マスキングテープをゆっくりとはがし、手紙を取り出した。
赤瀬へ
赤瀬、ごめんな。赤瀬だけだった。おれにあんなことを言ってくれたのは・・・。だけど、どうしても無理なんだ。ごめん。許してほしい。赤瀬なら分かってくれるよな? これは、おれのためでもあるけど、赤瀬のためでもあるんだ。あっちでも、たまにこうやって手紙書くよ。だから心配すんな。おれ、がんばるよ。
光輝より
浩太は考えた。赤瀬という名のあの少女は、光輝にどんなことを言ったのか、光輝はどこへ行ってしまうのか、彼女はなぜ泣いていたのか・・・。彼は、考え抜いて、『赤瀬が光輝に告白をしたが、光輝は引っ越すので断った』という結論を出した。そうすれば、彼女が泣いていた理由も理解できる。
浩太は答えにたどり着くことができ、すっきりとしたので、丁寧に手紙を封筒の中にしまい、寝室へと入っていった。
葉月は、ようやく家の近くの少し広めの公園まで辿り着くと、ベンチに座りしばらくぼーっとしていた。ぼーっとしている間に彼女は、手紙がないことに気付いた。まだ中身を読んでいない彼女は、とても慌てた様子でベンチの下や公園中を探し回ったが、当然手紙はなかった。彼女は諦めて、帰ることにした。