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君が為に捧ぐ力  作者: 湖水
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プロローグ

俺、蔵野 日陽斗は筋トレが大好きだ。

元々好きだった訳じゃない。

これは今は亡き父さんの影響だ。

俺の父さんは筋トレバカだった。

暇さえあれば筋トレしている、そんな父さんだった。


聞いたところによると18歳の頃から始めたらしい。

だから俺は小さい頃から筋トレをやらされた。

俺にとって筋トレはつらいものでしかなかったのだ。

そんな父さんに一泡吹かせてやろうと殴りかかって何度殴り返されたことだろう。

敵う気はしなかったが殴らずには腹の虫がおさまらなかったのだ。


そんな日々が続いたある日、父さんとロードワークに出ていた。

そして、解体中の建物の傍を通り過ぎようとした時、「危ない!!」声が上から聞こえ、見上げてみると鉄骨が一本落ちてきている。

俺はそれを見た時足がすくんでしまって一歩も動けなくなってしまった。

父さんの方に目をやると、何とも涼しそうな顔をしているではないか。

「父さん!!」鉄骨に押し潰される!そう思い、叫び目を瞑った瞬間、ドンッ!という鈍い音が鳴る。

ん?俺は目を上に向けると、自分の目を疑った。父さんが両手で鉄骨を支えている。

俺が父さんのことを尊敬し始めた日である。

またある日は道路に飛び出た子供を目にも止まらぬ速さで助けたり、ひったくりを飄々と捕まえたりしていた。

俺はいつの間にか父さんを尊敬し、滅茶苦茶嫌っていた筋トレも嫌いじゃなくなっていた。


そして高校生になる少し前に父さんは亡くなった。

父さんは亡くなる直前、病室で俺に言った。

「お前にはーー色々苦しい思いをさせたなーー。日陽斗、最期に言っておきたいことがあるーー。俺が筋トレを始めた理由だーー。お前の母さんはなーー俺が殺しちまったんだ。」

俺は驚きに目を見開いた。父さんが?嘘だ。

俺の母さんは俺が産まれたときに死んでしまったと聞いている。

「お前が産まれる直前に母さんが階段で足を滑らせたんだ。俺はそのすぐ後ろにいたから母さんの腕を掴もうとした。だが、母さんの腕は俺の手の中からするりと抜けた。俺に力が無かったばかりにーーー。病院に連れていったときには母さんは既に亡くなっていた。だがお前が生きていた。俺はその時から本気で自分を鍛え、そしてお前を鍛えた。自分だけじゃない、誰か大切な人をその手で守れるように。」

そんなことがーーー。暫し沈黙が流れる。

「ーー父さんには感謝してるよ。父さんは母さんを救えなかったかもしれない。でも、沢山の人を救ったのも父さんだ。俺は父さんを尊敬するよ。そして俺はこれからも誰かを助ける為に頑張るよ。」

俺は力強くそう言った。

「そうかーー。」

父さんは満足気な顔でそう言って目を瞑った。


俺はそれからさらに筋トレに励んだ。

体つきも逞しくなり、自分でいうのも何だが顔もイケメンの部類に入ると思う。

そして俺はひったくりを捕まえたり、強盗犯を捕まえたりした。


高2の時に彼女が出来た。

この人を守ろうと俺は1人心に誓った。


その彼女と高3のクリスマスイブに買い物に出掛けた。大型デパートでゲームしたり、服を買ったりした。

幸せだった。彼女の笑顔をずっと守りたい。

俺はそう思った。

俺はトイレに行きたくなったので、彼女に待ってもらった。

トイレを終え手を洗っている時に鏡越しに頰の緩んだ自分の顔を見て恥ずかしくなるーーと、叫び声が聞こえた。

俺はすぐさま手を拭き声の聞こえた場所に向かうと俺の彼女が倒れている。胸の部分を真っ赤に濡らして。俺は激昂し、近くにナイフを持った人物が見えたので襲いかかった。そして俺の右拳を振るう。

が、その右拳は届くことはなかった。

俺の耳に銃声が響いたと共に俺の頭を銃弾が貫通したのだ。

犯人は1人ではなかったのだ。

俺はあまりの怒りに周りが見えなくなっていた。

「芽依ーーー」

俺は彼女の名前を呟き、倒れた。

俺は守れなかった。

俺の大事なー一番大切な人をーー自分すら。

そして倒れて、横に芽依を見た時、俺の意識はプツンと切れたーー



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