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透き通った悪意
右手の血は眺めるのは辛く、
右手だけは傷つけられないように
守りたかった。
例え体が穢れても
譲れないなにかがあることが
幸せだと信じていれたから
魂はいつ穢れるのと
問うたことがあった。
彼は笑って、
穢れてると思ったときこそ
清らかで、気付くことを恐れた
時こそ穢れている。
だから気づかない。
死ぬまでその者は
穢れていることを知らず
生きれることは偽善であり幸福だと
天使の産声が耳に届くまでに
音速を越えて罷り通ると
盲信した。
人は動悸が衝動を司る機関だと
認知していて、
涙が機械で出来ていることを
いつ嘆くのだろうか。
お喋りな彼女はまた跪く。
毅然と遥か遠くの旅路が
取り返しにぱらぱらと
絹雨に揺らめいていた。