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猫
ボサボサ頭の青年がアパートへ帰り着いた頃はもう夜は相当暗かっただろう。その前からアパートの脇の駐車場には、猫がなに食はぬ様子でそこを支配し続けていた。
コツコツコツと青いスニーカーが階段を降りる。猫と青年が今日二度目の対面を果たした瞬間、青年が一言呟いた。猫はその場の支配を止め一目散に林へと走って行った。
数少ない周りの街灯が照らすのは猫でも、道路でもない。青年だった。薄暗いオレンジ色が青年を追いかけっこする。また、この光景で彼はぽろりぽろりと涙を浮かべながら歩いている。ここよりも暗いどこかへ流される様に彼は遠くへいってしまった。
駐車場へ猫がなに食はぬ様子で戻ってきた頃には猫には少し夜が明るく見えた。