異能力者の作られ方
約1万年前。人類は初めて神様から『火』というものを授かった。
が、そのころの人間は頭が悪くせっかく授けて貰った『火』を自分達の領域を広げる為の『武器』として使用してしまう。いや、『火』だけではなく石を鋭く研いで木の棒の先っぽに付けた『槍』や、硬い石を手持ちサイズにした『鈍器』を作り、結果『新人類戦争』を引き起こしてしまった。
女、子供も戦いに駆り出され、死人はその頃の人口の半分を超えてしまった。
それを見ていた神様は痺れを切らしたのか、人類に魔力を与えてくださった。
だが、魔力を与えるだけでは身を守る以外にも攻撃として魔力を使いかねない。その為、『シールド』『バリア』『プロテクト』などの防御にのみ魔力を使えるように工作をしたらしい。
勿論、不平等があってはならないから全ての人類にも、これから生まれてくる人類にも平等に使える魔力を設定した.........らしい。
らしい?なぜ『らしい』なのかって?
答えは簡単だ。この僕、『光陰 護』には生まれた時から一切の魔力も持たず、防御魔法を貼ることが出来ないからである。
「お前『シールド』も使えねーんだってなぁ?!」
「.........」
ほら。今日も馬鹿なナリヤンが俺をからかいに来た。
「黙ってんじゃねーよ。調子乗ってんの?」
「おいおいやめてやれよー。こいつブルブル震えてんじゃーん。」
僕に力があるならこいつらをぶっ飛ばしてやりてぇよ。
でも出来ない。
「ちょっと裏こいや。」
「へへっ......」
僕は今日も校舎裏に連れて行かれ、腹の辺りをボコボコに殴られた。
でも僕は反応することは無い。ここで反応したら、彼奴らはもっと楽しくなってもっと僕を殴ってくる事だろう。
「今日はこれぐらいにしといてやるよ。」
「殴ってやった代金♪貰っといてやるよ〜。」
そう言ってナリヤン二人はルンルン気分で何処かに行ってしまった。
なんで僕ってこんなに弱いんだろうか?
魔力がないから?シールドを貼れないから?
違う。彼奴らを殴り返す勇気がないだけだ。
「クソっ!!!!」
目から涙がどんどん流れ出てくる。
でもこんな人生とは、もうおさらばだ。
校舎の屋上に登る階段を一歩一歩確実に進んでいく。僕は今日、人類初の自殺者に名を刻む事ができる。
なぜ今まで自殺者が0だったかって?
簡単なことだ。リストカットをしようとしたら『プロテクト』が発動する。
飛び降り自殺をしようとしたら『シールド』『バリア』が発動するし、海や線路に飛び込んでも絶対に助かる。
だいたい、今まで自殺願望者は少なかった。DVやさっきのようないじめも殴られようものなら防御魔法が無意識のうちに発動してしまうのだから。
「ここの景色も見納めだな........」
いつのまにか屋上にたどり着いてしまった。ここは僕の特別な場所だから誰も入れないように人為的な細工はしてある。
ここから見る景色を僕は一番好きだ。
綺麗に月が見える。街全体を一望できる。地平線の彼方までも見えてしまう。
「今日も綺麗だな.......」
遺書はある人にのみ書いておいた。大好きだった祖父母は少し前に息を引き取ってしまった。親戚は俺なんて居ないように扱う。
両親からは特に理由はないが、金を盗んだなどと適当な理由を付けられて高校に上がると共に勘当され、今はなんやかんやで優しくしてくれるバイトの店長の家に住み込みで学校に通っていた。
遺書を書いたのは勿論その店長にのみだ。
「本当にごめんなさい........」
謝るのなら自殺などしなければ良いと思うかもしれないが、今の僕はそこまで追い詰められていたのだ。
フェンスを乗り越え一回、前にジャンプをしたら直ぐにでも重力の影響を受け地面に叩きつけられる位置まで移動する。
足がガクガクして全く動かない。
死ぬ寸前にこんなにも『生きたい』と思ってしまうとは......
「よしっ........」
もう十分だ。こんな世界に未練は無い。こんな俺でも神様が見ているというなら、次もしも転生できたなら、せめて普通の人と同じような魔力を持たせてやって欲しい。それが唯一の願いだ。
最後に夜空を見上げる。満月が顔を見せ始め、星がキラキラと輝いている。この満点の星空にカッコ良く一言言うとしたら.....そうだな.......
「今日も星が綺麗じゃな。」
僕が言ったのではない。後ろから幼い女の子の声が聞こえたのだ。
「死ぬのか?今の人類は強制的に防御魔法が発動するだろうから死ねぬとは思うがの......」
「ぼ、僕には生まれつき魔力がないんです。防御魔法を貼れる魔力す、すら。」
「それは災難じゃの。同情するぞ。」
返ってきた返事はとても同情してるような声のトーンではない。
「じゃが、ここで飛び降りればお主、後悔することになるぞ?」
「君には関係ないことだろ?」
「なんじゃ?そんなに死にたいのか?」
「そうだよ。もうこんな人生嫌なんだ。」
「そうか、じゃあわしの役に立って死なんかな?」
そうすると幼女は何を原理に飛んでいるのか俺の前にホバリングしてきた。
フードをを深くかぶっているため顔は全く分からないが、声と体型からして10歳ぐらいに見える。
「取り敢えずそんな危ないところではなく、フェンスを乗り越えて戻ればどうじゃ?」
「誰も協力するとは.....」
ビクッ!
幼女の方を再び見たとき凄い殺気に気づいた
「分かったよ........」
まぁ、せっかく僕のいらねぇ命1つが役に立つなら使って貰っても構わないか。
そそくさとフェンスを乗り越え屋上に戻り座りこむ。
それを見届けるとフード幼女は僕の目の前に座る。
「で、僕は何をしたら良いですか?臓器提供?未だ誰にも知られてない魔法の生贄?できたら過酷労働はやりたくないんだけど......」
「そんなことでは無いぞい。単刀直入に言わせてもらおう........」
するとフード幼女は深くかぶっていたフードを脱ぎ、顔を見せる。
ピンク色の髪をポニーテールにとめている。まぁ、可愛いほうだと思う。
もう少し見た目が上だったらストライクゾーンぴったりだったはずだ。
普通の人間と違うところといえば『犬歯が発達している』ことだった。
「血を飲ませてくれんか?」
そう言うと幼女は不敵な笑みを浮かべた。
「分かりました。」
「えっ?!本当にいいの?!」
自分で言っておいて.......。
「...........」
「な、なんですか?吸いたいなら勝手に吸血すればいいじゃないですか。」
「...........」
なんで黙ってるんだ?
暫くすると黙っていた幼女が口を開いた。
「やっぱやめたわい。嫌がる人間から血を吸い取るのは大好きじゃがお主みたいな人間は初めてじゃ。」
結局吸わないのかよ。
「もう用はないんですか?じゃあもう死んでもいいですよね?」
「さっきから気になっておったのじゃが、なぜお主は死ぬ必要があるのじゃ?」
「何故って.......」
そうか。この人にはまだ俺の境遇を話してなかったっけ?
「長い話になるけどききます?」
「できるだけ手短に頼むぞ。」
俺は俺が生きてきた中での出来事を包み隠さず全て幼女に話した。
どんな話になっても一切表情を変えない所を見ると、本当に人間ではないらしい。
「ということで、僕は早く死にたいんです」
「なんじゃ。それだけか。」
「それだけって.......」
こんな災難ばかり起こる人間が他にいるとは思わないんだが.......。
「んで、お主はそのいじめっ子とやらに復讐はしたくないのか?」
「復讐って......さっきも言った通り僕には防御魔法が使えないし、例えどんな攻撃を仕掛けようとも『オートプロテクト』で完全防御魔法されて終わりじゃないか。」
「まだまだじゃな 。
お主は『シールド』『プロテクト』『バリア』のことを全く分かっておらんじゃないか。」
「だから僕は使えない.......」
「否!それはただの逃げじゃ。せっかくじゃから教えてやろうかの。」
教えてもらわなくてもわかってる。
『シールド』は発動すると水銀みたいな液体が長方形に固まって相手からの攻撃を完全に防御できる。3っつの中では一番硬いけど、銀色壁みたいなものだから自分の前に出しちゃうと障害物になる。
『バリア』は『シールド』と違って透明だし、使う人によって形が変わるのが特徴。人によっては『シールド』より硬くなかったり、範囲が広くなったりするからその人の人格が見えてきたりもする。
最後に『プロテクト』だけど、これは今までの『バリア』や『シールド』と違い自動で発動する。しかも実態はなく体を包んでる膜みたいなものだ。勿論悪い所もあって、『バリア』と『シールド』は完全に防御してくれるけど、『プロテクト』は衝撃を吸収してくれるだけで完全に防御してくれる訳じゃない。
でも衝撃を殆ど吸収してくれることにはかわりないから、10000メートル上空から地面に着地しても骨折で終わった実験結果もある。
「大事なことを忘れておるの。」
「大事なこと?」
「そうじゃ。お主は防御というものを信じすぎじゃ。」
「いやいや。防御魔法は神様から授かった絶対的な守りだよ?信じるのが当たり前じゃないか!」
「ふむ。まぁ見ておれ。」
幼女は『シールド』を生成しはじめた。
「あれ?防御魔法は人間だけが授かったんじゃなかったけ?」
「そうじゃ。わしは人間と吸血鬼のハーフじゃからな。人間の母親から産まれておる故使えるのじゃ。」
「へ、へぇー。」
なんで純人間の俺が使えなくて、半分人間である目の前の幼女が使えるのか疑問に思ったが........まぁいいか。
「ほれ、触ってみ。」
幼女は『シールド』を生成し終えるとそれを俺に投げてくる。
「ちゃんとした硬さじゃろ?」
「まぁ......そうだね.......実物を実際に触ったのはこれが初めてだからあんまり分かんないけど。」
「ほれ。これもじゃ。」
生成済みのシールドの次は、どこにでもありそうなハンドガンを渡された。
たしか、M92Fとかいう名前だったはずだ。
「シールドを壁にでも立てかけて撃ってみろ。」
「う、うん。」
言われた通りシールドを壁に立てかけて、10メートルほど離れハンドガンを構える。
と、ここで気付いたことがある。
「これ、どうやって使うの?」
「なんじゃ!そんなことも知らんのか?!」
「そんなことって.......日本じゃあ一般人が銃を持ってる時点で銃刀法違反に引っかかるんだから知らないのが当たり前だろ?」
「それならそうと早く言わんか!」
「...........」
ちょっと理不尽じゃないですかね?!
「もう既にマガジンは入っとる。スライドを引けば初弾が装填されるぞ。」
「わ、わかった。」
少し重く感じるスライドを引き、 取り敢えず構えてみる。
初めて握るハンドガンは思ってたよりも重く、構えてみるとなかなか照準が定まらない。この物体から放たれる弾丸で人が死ぬのだと考えると手が震えてしまう。
「あまり銃であることを意識するな。今持っている物は水鉄砲だと思うのじゃ。」
「いや、その例えだと銃である事に変わりないから!」
だが、少し震えが収まった気がした。まだおぼつかない様子だがしっかりとリアサイトを覗けている。
「さぁ。そのままトリガーを引くのじゃ。少し反動があるじゃろうがしっかりと構えておくのじゃぞ!」
「は、はい!!」
言われた通りトリガー引く。
トリガーは思ってたほど重くなく簡単に弾けてしまった。
弾丸が真っ直ぐ飛んでいきシールドに当たる。
カンッ!
いや、まぁ.......そうですよね。
初めて撃った弾丸は呆気なく粉砕されてしまった。
ただの盾に。
「普通にガードされてるんだけど。」
「そうじゃろうな。普通に撃ったのじゃからな!」
「ほら!結局シールドの破壊なんて出来ないじゃないですか!」
どんなに硬い鉱石を使った盾よりも断然硬いのだ。銃弾一発.....いや、何万発飛んで来ようが貫通することなんてできないだろう。
「なら見せてやろうかの......ほれ!わしにハンドガンを。」
「あ。はい。」
投げて渡すと怒られそうなので近付いて手渡しする。
「投げれば良かったものを......」
「人から貸してもらったものを投げるなんてできないよ。」
「ほぉ。それも日本の法律とやらか?」
「いや。これは僕の中の常識さ。」
「ふぅーん.......まぁよい。」
幼女吸血鬼は何かを察したのかそれ以上は聞き返して来なかった。
「話が逸れたの。では見ておれ。」
さっきと同じ様に幼女吸血鬼もハンドガンを構える。
しかも片手で。
僕の腕もそこまで太くないが、彼女よりかは男である僕の方が丈夫なはずだ。
彼女の腕は細く、色白で全然筋肉もない。
「片手じゃ撃てないだろ.......」
「それは、人間の少女だったらの話じゃろ?わしはハーフ吸血鬼じゃ。勿論、何百年も生きてきた。」
僕と同じ様にスライドを引き初弾を装填する。
「同じように人間を数え切れない程殺してもきた。」
装填した後、ハンドガンに赤い線が走ったような気がした。
「つまり人生経験の差じゃ。ハンドガン程度ならしっかりと構えておれば片手で撃てなくもない。」
「それは吸血鬼だからだろ?」
「まぁ、ハーフじゃがな........見ておれ!」
トリガーを引き弾丸が放たれる。不思議なことにさっきのシールドに弾かれたような音はしない。
「どうじゃ?」
「どうじゃって言われても.......」
シールドに近付き確認してみるが銃弾が貫通してもいなければ、破壊もされてない。
「何にも変わってないけど......」
「そうかの.......?では、シールドを退けて見てみるが良い。」
言ってる意味があまり分からなかったが、とりあえずシールドを横にずらす。
「っ!!」
僕はその場の光景に目を疑った。
「なんだよこれ?!」
「見ての通りじゃ。」
シールドには一切傷は無かったし、穴も空いていなかった。
だが、目の前にある壁にはしっかりと銃弾がめり込んでいる。
「あつっ!」
めり込んでいる弾に触れてみたが熱い。
さっき撃った弾丸であることが証明されている。
「どういうことなんだ?」
「正直わしにも全く理屈はわかっておらん。じゃがな、今の手法で撃てばシールドだけじゃなくプロテクトやバリアも貫通しておる。」
「でも!こんなことって!!」
「実際にわしは多数の研究家を殺してきた。実際に受けた奴らもお主と同じような顔をしておったわい。」
だがこれだととある矛盾がしょうじてしまう。
「確かに今のことで防御魔法が完全ではない事が証明できたかもしれない.......
でも!殺人事件が起きたなんてニュース、僕は......いや!僕の周りの人間は一切聞いたことない!」
「まぁ、そうじゃろうな。お主ら『人類』は防御魔法を持っておるから人類通しの殺して合いは無かったであろうな。」
「じゃあ......!」
「じゃがな?!それは悪魔でも人類だけでの話じゃ!わしら吸血鬼なんかには防御魔法なんて能力なんぞ授かっておらぬ。
故に、わしらの同族は沢山殺されてきた。だからわしらも抵抗して殺し返してきた!!」
「そんな.......。でも!!人間が殺されたなんニュース.......」
一度も聞いた事がない。僕が生きてきた中では......。
「それはそうじゃろうな。人類は防御魔法に頼り切っているのじゃから、
殺人事件が起きた=防御魔法は完璧じゃない。
という事実が全人類に知れ渡る事になる。それのせいで全世界がパニックにおちいればそれこそ人類崩壊じゃ。」
「そんな.......。」
井戸の中のかわずということわざがあるが、まさにこう言うことなのだろう。
僕達は全く知らなかったことを、この吸血鬼は全て知っている。
「わしらの同族は理不尽にもどんどん殺されておる.......。それを知ってもなおお主は自ら命を断つのか?!」
そうか........。それでこの幼女吸血鬼は俺を止めようとした。
「でも.......」
次の言葉言おうとした瞬間に僕の目の前には幼女吸血鬼の顔があった。
「もう一度問うぞ?なぜお主は死のうとしておるのじゃ?」
泣いていた.......。他人の涙を見るのは人生で二度目だが、やっぱり胸が苦しくなってくる。
底の見えない悲しみが宿ったような不思議な目だった。
なんで僕は死のうとしていたのか?それは僕が不幸にも防御魔法が使えなかったからでは無い。僕には勇気が無かったんだと思う。
「......。女の子を泣かせるなんて最低ですよね。僕.......」
喉からの声を絞り出し、やっと言えた言葉。
「どうせ死ぬなら貴方の役に立って死にたいです。僕はどうしたらいいですか?」
僕も泣いていた。この人になら全てを晒け出せる。そんな感じがした。
「ふふっ.......ないてなんぞおらんわい。
そうじゃの.......わしと一緒に着いてきてくれるかの?」
涙を拭く仕草がとても愛らしく感じてくる。
「はい.....。喜んで。」
初めて人にお願いされた嬉しさがこみ上げる。
「まずはお主との契りを交わさなければな。首筋が少し痛むかも知れぬが我慢するのじゃぞ。」
「うん。分かったよ。」
幼女吸血鬼の言った通り針が当たったレベルの痛さだった。
血を吸われているのが分かる。もし、プロテクトがあったら絶対に結べ無かったであろう契り......。これも神様が定めた運命......
「少し頭がクラクラする.......」
『もう少しじゃ!我慢するのじゃぞ。』
待て。なんで僕は彼女を抱きしめようと手が動いているんだろうか?
だいたい、普通に考えれば人間を恨んでいる吸血鬼が人間と契約を結ぼうとするはずが無い。
「待って......ちょっと.......」
「ふふっ!もう遅いのじゃ。もう少し早く気付いておれば対処ができたであろうに。」
「やっぱり......僕は貴方の嘘に騙されたんですね.......?」
なぜもっと早く気づか無かったんだろう。
「もし言葉だけで騙され無かった場合は、身体を使う事も考えたのじゃが......」
ちらっとはいていたスカートめくりあげる幼女吸血鬼。
「お主がまだ幼くて助かったわい。」
「..........」
本当に最悪だよ。僕はこのまま血を吸われ続けて干からびて死んでしまう。
「このまま寝ても良いのじゃぞ?お主が死んでもわしの中のでは生き続ける。
お主がさっき望んだようにわしの役に立てるのじゃぞ。」
『お主の初恋の相手に........。』
耳元でそう囁かれた気がした。
2、3人の足音が聞こえる。これも幻惑の一部なのか......。
ズガンッ!!
屋上のドアが蹴破られる音が聞こえた。
これも幻惑........じゃない。
「ちっ!随分と早い邪魔が入ったものじゃな。」
「こちとら信頼できる人からの預かり子、兼バイト君の命の危機を感じてダッシュしてきたつもりなんだけどなぁ?!」
「ルー君!!大丈夫なのですか?!」
「店長......ミサ先輩.......」
店長とバイト先輩達だった。あと、結衣先輩もいる。
「でもどうして.....?」
「玲奈が.......教えてくれた......」
「.........」
玲奈......僕が初めて泣かせてしまった女の子だ。
もちろんここには来てないが。
「ふふふっ!!勢揃いのようじゃの?!じゃがもう遅いわい!!!
既にそこの少年はわしらと同じ吸血鬼の仲間じゃ!!」
「それがどうした?!護少年は俺たちの家族である事にかわりないんだから.........なっ!!」
店長がハンドガンを取り出し幼女吸血鬼を狙ったかと思うとすぐさまトリガーを引いた。
さっきの幼女吸血鬼が持っていたようなハンドガンではなく、デザートイーグルという大型のハンドガンだった。
ガタイのいい筋肉質な店長が大型のハンドガンを持っても小さく見えてしまう。
「っ!!!」
店長撃った弾丸は吸血鬼の心臓を逸れ、肩貫く。
「人間もプロテクトを貫通する魔術を使えるとわの!」
「あいにく、これは魔術なんて面倒くさいもんじゃなくて人類が発明した特殊弾だよ!!」
もう2、3発撃っていくが、幼女吸血鬼もホバリングをし始め全く当たらない。
撃つたびにこっちまで振動が伝わってくるのだから相当な反動があるのだろう
「わしはこれでおさらばさせて貰うぞい!!
そこの少年!!お主はこのわし、『ヘウンリー・カテラルク・ネリア』との契約を結んだ初めての相手じゃ!!その事を胸に今後絶対に死ぬなんて思わぬ事じゃな!!そのうちに迎えに行くからの!ふふふっ!!」
そう言って幼女吸血鬼は闇の中に消えていった。
「まったく訳の分からん奴だったな。」
「で、でも!!彼女のおかげでルー君が助かったのは事実なのですよね?!」
「まぁそうだな........彼女には一応感謝しておくか。
次に会った時は撃ち落としてやるがな。」
店長が近づいて来る。
「遺書.......読んだぞ。」
「.......ごめんなさい。」
「まったくだ。」
「.........怒らないんですか?」
「怒っているさ。だが、親に捨てられたって言う文に関しては俺が説明して無かった.......というより朱莉とアラタに口止めされてたからな.......」
「口止め?」
「あぁ。だけどもう説明する必要もなさそうだな。あの吸血鬼さんが護少年と契約したことで、防御魔法なんて比にならないくらいの能力を手に入れたんだからな。」
「そうだ!!僕は吸血鬼に!!」
「正確にはハーフ吸血鬼だけどな。吸血鬼が聖水に弱かったり太陽に弱かったりするのに、ハーフ吸血鬼はそれがないからな。
その代わり、実際の吸血鬼より怪我の治りが遅い。だが俺たちよりはるかに有利なのは確かだ。」
それに、と店長
「普通は契約した親と子は呪いのようなもので繋がってる。
護少年が死のうと彼奴には関係ないが、彼奴が死ねば護少年も.......」
その後は言わなかった。
「ち、ちなみに!!一度契約しちゃえば!!子が親吸血鬼を殺さない限り!!親は一生生き返り続けるのですよ!」
「へ、へぇー。」
ミサ先輩良くそんなこと知ってるな。
ふと周りを見渡すと何かが落ちているのが分かった。
拾いに行ってみるとさっき渡したはずのM92Fだった。
「それは処分しておいたほうがいいかもな。」
「待って!!!」
気付けば口から言葉が出ていた。
「それは僕が持っておきます。どちらにせよ彼女を殺せるのは僕だけですから。」
「ま、それが最善かもしれないな。でも殺せるのか?一応命の恩人だろ?」
「例え殺さなくても、僕が持っているだけで多少の牽制にはなるはずです!」
うーん。と悩む店長。
「そういうことにしておくか。大切にしろよ。」
「勿論です!!」
僕は今までの人生は全て周りのせいにしてしまっていた。
「帰るぞ。24時間営業のコンビニが閉まってたなんて知られたら上から何を言われたかわかったもんじゃねぇ。」
「店長.......さっき上のほうにはさっき電話しておいた。」
「おっ!さすがは結衣だな!!」
「うん.......。町の人がいきなりゾンビ化したからコンビニ閉めさせて貰いますって.......」
「結衣ちゃんっ!!それはさすがに無理があったんじゃないかなっ?!」
僕は1人じゃ無かった。
いつのまにか印されていた右手の紋章が僕の心を映し出すように赤く光っていた。
元ネタのキャラは考えてませんので、もし似てるキャラがいたら教えて頂けると嬉しいです。