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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
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決戦における作戦

 アルガの状況を確認しながら、ユティス達が砦へ戻った直後から検証を始めた。作成した武具は三つ。一つはユティスが使用する魔物の生成を封じる武具。二つ目は六芒星を象ったペンダント。これは大天使を封じる器の魔力を利用した防御系の武具。三つ目はメダル。これこそアルガを――ひいては大天使を倒すために生み出された、切り札。


「ユティス、大丈夫?」


 作戦会議を行うために訓練場を間借りしているのだが、ユティスは椅子に座っている。砦へ戻り疲労していたため、一人だけ体を休めている。


「話し合いには参加できるから問題ないよ……それで、どうしようか?」

「アルガについては性格などがあまりわかっていない。よって、心理の裏をかくといった戦法は、あまり適さないだろう」


 そんな意見を述べたのはオズエル。


「とはいえ、行動を読むのはそれほど難しくない……彼は騎士としての訓練を受けたわけではない様子だから、単純な力押しで来るだろう。最大の問題はその力押しが、国一つを滅するだけのものであること」

「はっきり言って、それだけの力を抱えていれば技なんてものは必要なくなるよ」


 ユティスはオズエルへそう返答する。


「結局のところ、アルガの力に真正面から抗えるだけの技術というのは存在しない……それだけの圧倒的な力を持っているわけだから。ただオズエルも言った通り、行動を読むのはそれほど難しくないと思う」

「目の前の存在を斬る、だけだからね」


 フレイラは肩をすくめる。言葉にすればひどく単純ではあるのだが、その恐ろしさは資料などを通してわかっている。


「後は幻術が通用する……けど、組織が罠にはめた際に幻術を使っていたみたいだし、次も効くかどうかは……」

「アルガ自身、幻術に弱いということは身をもって知ったはずだ。仮に幻術が通用したとしても、アルガもそれなりに対策は考えるだろう。そもそも見た目に騙されず強引に槍を一閃するだけで味方は消し飛ぶ。退却する時などの目くらましにはなるだろうけど、実戦ではあまり活用できないかな」


 攻撃する場合はアルガへ向け動く以上、幻術により視界を誤魔化しても気配には気付くはず。攻撃能力がない以上、幻術は戦術の選択肢ではあるが、有効打になるかどうかは疑問が残る。


「手札は以上……そして、武具について。魔物の生成を封じればアルガを倒すだけになるわけだけど……問題は二つの武具を誰が持つのか」

「アルガに通用するのかどうか……それを察知できるのでしょうか?」


 疑問を呈したのはティアナ。


「魔力を多大に抱えているのはわかります。ただそれが、自分を傷つける武具であると認識するのかどうか……」

「微妙なところだけど、魔力により対策を立ててきた、くらいは認識するはずだ。ただ、そうだな……」


 ユティスは手元にあるメダルとペンダントを見つめる。


「二つとも抱えて戦う場合は、明らかに一線を画する魔力だと気付いてもおかしくないな」

「でも、斬り込むわけだから防御は必要でしょう?」

「そうなんだけど、さすがにアルガとしても多大に魔力を抱える存在が一人いれば、注意くらいはするんじゃないかな。僕……『創生』の異能を持つ人間がいるってことは、理解しているだろうし」

「多少なりとも危険ではあるが」


 と、ここでジシスが語り出した。


「儂は別にすべきじゃと思う。守り手と攻め手、分かれて動きたい場面もあるじゃろうし、戦術の幅が広がる。それに、少し薄情ではあるのじゃが」

「攻撃役の誰かが倒れても、他が対処すればいいだけだから……かな」


 ユティスが続ける。つまり攻撃役が犠牲になったとしても、切り札は武具なのでそれを別の誰かが使えばいい――そういう考えだ。


「確かに、僕は誰でも役目を持てるようにと、武具の形を携帯できるような品物にした。うん、ジシスの言う通り……考えたくはないけど、そういった可能性も考慮して、戦術を組み立てるべきだな」

「具体的には?」


 リザが問う。そこでユティスは騎士団に問い掛ける。


「まず、幻術を突破して森からアルガが出現した状況を想定しよう。守りを固めている兵士達を薙ぎ払って、アルガは砦へ向かうはずだ。その目標は間違いなく、大天使そのもの」

「迎え撃つ形をとってから、相手の動きを誘導するのが得策かな?」


 フレイラが首を傾げながら話す。それにユティスは同意し、


「ここについては僕だけでなく、この砦にいる者達とも話をしなければならないな。真っ直ぐ相手が砦目掛けて突っ込んで来たのならば、正直止める手立てがない。大天使を倒すための切り札は確かに切り札だけど、それは膂力を上げるとか、そういう性能はあまりない。相手を傷つけることができる……その一点に特化したものだ」

「逆を言えば」


 と、アシラがユティスへ述べる。


「傷を付けることができるとしたら……アルガは止まるかもしれない」

「かもしれない、だけどね。しかし今まで傷一つつかなかった体に変化をもたらせば、さすがにアルガの足も止まるだろう」


 ユティスはそう述べた後、口元に手を当てた。


「ここへ来てアルガのとる可能性は二つ。真っ直ぐ大天使の所へ向かうか、あるいは手近にいる者達を殲滅し始めるか。どちらのケースでもいいように策を練っておく必要がありそうだ」

「犠牲も多くなりそうだな」


 オズエルが懸念するように告げる。そこでユティスは、


「犠牲者はないようにしたいけどね……作戦の内容次第では兵士達に犠牲が出るとは思う。もちろん、僕達も」

「問題は誰が切り札を握るかだけど」


 リザは肩をすくめる。だれがふさわしいか。それは、


「……今からそれぞれ、武具を手にとって試してもらう。あくまで僕はアルガの能力に基づいて作り上げただけだ。個々の特性などは考慮していない。よって、誰が持つと一番効果を発揮するのかは、これから調べないといけない。といっても、そう時間は掛からないさ。今日中にまとめることはできる」


 ユティスは一度仲間を見回す。全員が、緊張した面持ちだった。


「それでは、始めることにしようか。まずはフレイラ。ペンダントとメダルを渡すから、それぞれに魔力を込めてくれ。その結果を記録して、調べていくことにしよう――」


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