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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話

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未来の事

 騎士団にユティスが表明して、空気が少し硬くなった――のだが、それを和ませるような言葉が、リザからもたらされた。


「ねえ、一つ気になっていることがあるのだけれど」


 ふいに放たれた言葉に、全員の視線が彼女へ集まる。


「む、そんなに身構えなくてもいいわよ……ちょっとした疑問が頭の中に浮かんだだけだから」

「何か気になることが?」


 ユティスが問い掛ける。そこでリザは、


「ええ、ユティスさんに関わることなのだけれど……」


 騎士団を見回す。思わせぶりな態度であり、


「リザ、どうしたんだ?」

「火急の用件であれば、すぐにでも言うべきです」


 ティアナがユティスに続いて告げる。それでリザも、


「そうね……わかったわ。といっても今回の戦いと少しズレてしまうのだけれど」


 国側の話だろうか、とユティスが疑問に思った時、


「ユティスさんとティアナさん、いつ式を挙げるの?」


 ぷっ、とティアナが飲んでいたお茶を噴き出した。途端、リザが爆笑を始めた。


(あ、これタイミングを窺っていたな)


 ユティスにはわかった。たぶん彼女がお茶を飲んでいるところを見計らって言ったに違いない。


「あ、あの、リザさん……それ、火急の用件でもないでしょう!?」

「重要なことよ。彩破騎士団について今後のあり方だって左右されるし」

「あなた、単に話題を振って動揺するのが見たかっただけでしょう!?」

「バレたか」


 隠すことなく言及したリザに、ティアナは肩をコケさせ、


「あ、あなた……ユティス様、これは注意すべきなのでは――」


 と、告げたところで口が止まった。理由は明白。ユティスが口元に手を当て何事か考えていたためだ。


「ユ、ユティス様……」

「――ティアナのことについてはまあ、そもそも国側に報告していないからあーだこーだ色々あると思うんだけど、もう一つ大切なことがある」


 その言及に今度はユティスへ視線が集まる。


「それは僕らの活動について、だ。このマグシュラント王国の戦いで、大天使とも決着がつくことになるかもしれない。その場合、彩破騎士団として……今後、どうしていくべきか選択に迫られる」

「この組織の成り立ちを考えれば、当然か」


 フレイラが腕を組み、考え込む。


「名称自体、彩眼を持つ者……異能者への対抗手段として設立した騎士団だから」

「同じように銀霊騎士団だってどうすべきか、一考の余地はあるけど……大天使が滅んだからといって異能者がなくなるわけじゃない。少なくともこの世界に異能者は居続けることになる……大天使という明確な目標がなくなったからといって、異能者達を国が放出するかと言えばそうではなく、確実に保護することになるとは思うし、もし在野の異能者が発見されれば、やっぱり保護という形になる」

「保護、という言い方はずいぶんと優しいわね」


 と、リザが述べる。ユティスもわかっている。実際の話、異能者の能力は強大だ。「全知」に属するものであれば戦闘能力は皆無だが、それ以外であれば応用次第では国を滅することだってできるかもしれない。

 それは直接的な能力でなくても構わない。例えば水を操る異能者であれば、洪水などを意図的に引き起こして国に甚大が被害を及ぼすことができる。そういう風に攻撃すれば、国が傾き政治が破綻することだってあり得る。異能者は、一人でそれだけの力を持っている。


 つまり保護というのはあくまで建前。実際は国が管理する対象ではある。


「今後、邪な考えを抱く異能者が現われてもおかしくない。マグシュラント王国に存在していた異能者を管理する組織は潰えたんだ。在野に眠る異能者を発見する手立てなどは喪失したと言っていい。であれば、これまであったように異能者同士が手を組んで国家を潰そうという輩が現われてもおかしくはないんだ」

「その辺りを説明して、騎士団の存続を請うってこと?」


 フレイラからの質問。そこでユティスは、


「どうすべき、なんだろうね……大天使との戦いで一段落するのは間違いない。これを機に国側は彩破騎士団の扱いをどうするか、一度は議論すると思う」

「このまま存続というのは、ないということですか?」


 疑問はアシラからもたらされた。騎士団そのものがなくなるという可能性を危惧し、不安に思ったかもしれない。しかし、


「ウィンギス王国の一件もあるから、異能者を中心にした組織を維持するのは間違いないと思う。ラシェン公爵も彩破騎士団よりだし、王室も僕らに近しい立場にあるから、即座に解散ということはないよ。仮にそうなっても、どこかに再配属されると思う……が」


 ユティスはアリスへ目を向けた。


「この騎士団については、本来騎士になる立場ではない人間が特例として所属しているからね……僕らとしてはそうした面々についてもしっかり対応してもらわないと、折れるつもりはない」

「少なくとも、路頭に迷うことだけは避けられる、と」


 リザがやれやれといった表情で肩をすくめる。


「お城の政争とかも絡んでくるのかしら」

「ロゼルスト王国内におけるゴタゴタもあったし、僕らをどうにかしようって勢力はたぶんないと思うけどね……そう不安になる必要性はないよ。ただまあ、帰ってから少し忙しくなるかもしれないのは、覚悟しておいて欲しい」

「そのくらいは、当然じゃろう」


 ジシスが了承。そこでユティスは長話していることに気付き、


「さて、休憩もそろそろ終わりにしようか……そう遠くない内に魔力集積点へ出掛けることになるはずだ。人選などをどうするかについてはその時の状況によって考えることにして……全員、何があっても動けるように備えておいてくれ」


 ユティスは立ち上がる。騎士団の面々はそれに頷き、全員が食堂を出て解散した。


「ユティスさん、ティアナさんと話さなくていいの?」


 最後にリザが近寄ってきてそう言及する。式についてだろうが、


「まずは帰ってからだね。正直、僕達の一存で決められるものじゃないから」

「そっか。なんだか残念ねえ」

「リザも茶化すのはやめてあげてね……」

「彼女次第ね」


 笑いながら話す彼女。そんな態度に「頼むよ」と一つ念を押してから、ユティスは再び作業へ戻るべく、廊下を歩き始めた。


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