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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
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活路

「いずれ来る決戦については、そちらに任せる」


 そうフーヴェイは述べた後、さらに話を続ける。


「こちらも出せる情報は全て出そう……ただ、その様子だと何かしら考えが浮かんでいるようだな」


 フーヴェイの指摘にユティスは、小さく頷いた。


「はい、可能性としては薄いと思いますが……その前に、いくつか質問が。先ほど言っていたアルガの探し物とは?」

「彼が幼少の頃より所持していたロケットだ。言わば形見のようなものであり……それを偶然、私達が手に入れていた」


 それだけだった。アルガの素性などについては明確になっているため、これ以上語る必要はないということだろう。


「今回、それを誘い出す道具として使っていた……正直なところ、アルガが暴走をし始めて何か利用できないかと考えずっと持っていただけだ。処分されてもおかしくなかったが、最後の最後で役に立ったな」

「そうですか……話を戻しますが、僕が頭に浮かべた手法はあくまで可能性の話です。これが真実なのかどうかはわかりません」

「参考にどのような手法か、聞かせてもらえるか?」


 フーヴェイの要求にユティスは頷き、


「アルガだけでなく、大天使にも当てはまることだと思います……先ほど大天使は進化する存在だと言いましたね? その能力によって、あらゆる異能を弾く……説得力のあるものですし、資料などを通してわかったアルガの戦歴から考えれば、十分考えられるかと思います。そしてこれは、大天使にも通用する」

「そうだな」


 フーヴェイはあっさりと認める。


「その中で、進化を上回る技法があると?」

「いえ、僕達が考えたのはもっとシンプルな考えです。フーヴェイさん、大天使について研究史続けたあなたの意見を聞かせてください……千年前、大天使は窮地に追いやられた段階で残った個体が融合し、力を得た」

「そうだな。私の異能により、その時の光景は今起きている出来事のように理解できる」

「それにより、攻撃が通用しなくなり敗北……これは仮定の話ですが、もし再度大天使は窮地に陥った場合、同じ事をすると思いますか?」

「微妙なところだな……ただ、三体が残っているのなら、可能性としてはゼロではない」

「その融合のプロセスはわかりますか?」

「そう難しいものではない。そもそも大天使は魔力の固まりだ。肉体も所持してはいるが、大天使の特性により魔力に分解も可能だ。つまり双方の魔力が結びついて、一緒になっている」

「つまりそれは、大天使が同じ大天使に干渉できる、ということですよね?」


 その質問にフーヴェイは――沈黙した。何が言いたいのか理解できたらしい。


「君が考えたことは、もしや」

「はい。大天使に攻撃が通用するのかわかりません……が、確実なことが言える。大天使は大天使同士で仲間割れすることはありませんが……例えば融合のように、相互に干渉し合うことができる。つまりそれは言い換えれば……大天使の力であれば、大天使の体に影響を及ぼすことができるのではないか、と」

「なるほど、つまり大天使の力を用いて、叩く……まさしく毒をもって毒を制すだな」


 フーヴェイは何事か考え始める。


「大天使の防御能力が他者の力を遮断するような性質があるのも事実。ならば他ならぬ大天使自身の力であれば、少なくとも体に攻撃が届く……ということだな」

「けど、それって力を吸収されて終わりにならない?」


 リザが疑問を呈する。無論、そこはユティスも考慮はしており、


「そこは、僕の異能でどこまで調整できるか、だね……ただ決して難しい話ではないと思う。この土地には他ならぬ大天使そのものが眠っている。そこから情報を収集すれば」

「私達の情報も参考にしてもらえればいい」


 と、フーヴェイが先ほどの言葉を繰り返し述べた。


「千年前の者達にも、その発想はなかった……いや、気付く余地はあったのだろうが、膨大な戦力を保有していたが故に、考慮する必要性がなかったと考えるべきか。ともあれ、千年前と比べても戦力が少ない中で……突破口は、見えたかもしれないな」

「この方法で良いでしょうか? 時間的にも資源的にも他の方法を模索することはできないと思いますが」

「とはいえ現状では、アルガの能力を正面から打ち破る方策はないだろう?」


 フーヴェイの指摘にユティスは押し黙る。それは事実だったからだ。


「この私の見解も、どこまで説得力があるかわからないが……千年前の戦いの記憶を保有する異能者から言わせてもらえば、十二分に勝算はある。運任せに武具を創るより、確実性はあるはずだ」

「……これで、いいのか?」


 ユティスは仲間達に呼び掛ける。それにフレイラやティアナが小さく頷き、


「心配しないで、ユティス」


 と、フレイラはにこやかに、


「その武具が通用しなくても……希望はあるはず。全てをユティスに背負わせる気もない。だから、存分にやってくれればいい」

「こちらも、同意だ」


 ジュオンが、次に口を開いた。


「此度の戦い、仕損じれば世界の崩壊が確定する……だが、それにはまだ猶予がある。本当の終わりが来るまで、あがき続ける……ここはだからこそ作られた。本当に滅亡が始まるその時まで、協力させてもらう」

「こちらも惜しみなく力を託そう。といっても、期待に応えられるかわからないが」


 フーヴェイもまた、ジュオンに続く。


「一度の失敗で全てが終わるような戦い方にはしないよう、こちらも上手くやらせてもらう。組織の人員についても自由に使ってくれ」


 全員が、ユティスへ注目する。後は自身の胸先三寸――


「……わかった」


 ユティスは、そう返事をした。


「ならこの方針でいく……現時点で創生した武具は二つ。魔物の生成を封じる物。次いで防御できる物。三つ目が……大天使を破壊するための、武器だ。武具を創生する以上、魔力集積点へ赴く必要があるけれど……」

「ここからそう遠くないポイントがいくつかあるので、そこへ訪れましょう」


 ティアナの助言にユティスは「そうだな」と応じ、


「ならば、早速動き出すとしようか……全ては、大天使を打ち破るために」


 言葉と同時、全員が弾かれたように動き出す。いよいよ大天使との決戦へ向け、準備が始まった。


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