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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
376/411

倒すための武具

「……ユティス様?」


 会話の最中、様子が変化したユティスに対しティアナが疑問を寄せる。だが当のユティスは答えない。


「ちょっと……待って……えっと」


 頭の中を整理する。果たしてこの考えは正解なのだろうか。


「オズエル、一ついい?」

「ん、どうした?」

「現時点の情報だけでは足りないと思うんだけど……その、大天使は今手持ちの資料だけでは、絶対的な防御力を持っているよね?」

「アルガもそうだが、強固なのは間違いないな」

「ただ、物理的に無敵の存在を作るのは不可能だと思うんだ。いくら二千年前の技術でも、完全防御という効果を持っている兵器なんて、あり得ない」

「……例えば物質というのは、どれだけ強固であっても弱点が存在する」


 オズエルは解説を始める。


「万能な物質というのは存在しない。魔力で補強するなら擬似的にそういう物質を精製することも不可能ではないと思うが……正直、現実的ではないな」

「大天使はあくまで兵器だ。人類を二千年間脅かしている恐ろしい存在であるのは間違いないけれど……当然兵器である以上、コスト面を考えて完璧な物質なんてもので作り上げているとは考えにくい。そもそも最初は数も多かったわけだし、無敵の物質なんて非効率な物を作って製造するなんてあり得ない」

「ユティスさん、何が言いたいんだ?」

「ああごめん。大天使を形作っている素材とか、そういうのを少し考えてみたんだ。オズエルとしても、無敵の物質なんてことは考えられないんだね?」

「ああ、そこはおそらく間違いないと思う」

「なら、当然大天使にも弱点はあるはずだよね?」

「弱点、と呼べるかどうかはわからないが……何かしら穴があるとは思う。だが、それを見つけ出すのは至難じゃないか?」

「うん、それもわかっている……で、だ。大天使は融合して、千年前の戦いを突破した」

「ああ、そう組織の人間は語っていたな――」


 そこで、オズエルの言葉が止まった。彼もまた、何かに気付いたようだ。


「オズエル?」


 ティアナの問い掛けに対しオズエルは何も答えず、口元に手を当てた。


「そうか……なるほど、ユティスさんの考えはそうか」

「確証はまったくないけれど」

「いや、案外良い線いっているかもしれないぞ。ただ、ここで最大の問題は果たしてそれを解析して武器とすることができるのか、だ」

「うん、そうだね。そこが一番の課題だけど……見えてきたかもしれない」

「ユティス様、どういうことですか?」


 なおも問い掛けるティアナに対しユティスは、


「ごめん、僕とオズエルの考えていることはあくまで仮説の上だ。よって、一度城に戻って調べる必要がある。ただ、もしこの考えが正解であったのなら……次に創生する武具は決まった。それは、アルガや大天使を倒すことのできる物だ――」



 * * *



 フレイラが散策を終えて城内へ戻ってきた時、リザとアシラが話し合っていた。


「アルガとの交戦の場合、私とあなたが頑張らないとまずいわよね」

「情報通りだとするなら、正直誰が立っても同じだと思いますけどね……」


 アシラが頭をかきながらそう返答。そこへフレイラは割って入り、


「二人とも、何を?」

「ああフレイラさん。簡単な話よ。現状の資料を精査して、もしアルガと戦うのなら……そういう考えで仮想戦をいくらかやってみたの」

「仮想戦……で、結果は?」

「攻撃が通らないから、倒すのは不可能。よって私達は最悪、ユティスさんを逃がすために殿という形で居残るつもりで頑張ったわけだけど……あまりもたないという結論に至ったわ」


 肩をすくめ、リザは語る。


「異能などによって攻撃そのものを食い止めることはおそらくできるはずよ。ダメージを与えるのは無理だとしても、のけぞったりはするだろうし。でも傷を負わせられない以上は、できてもその程度。その後に槍を突き立てられて終わりという寸法ね」

「時間稼ぎにもならないと?」

「雷をまともに食らって平気な相手だからね……正直、私の異能で魔力の質を変えてもあまり意味はなさそうよね」


 腕を組み、リザは首を傾げながら告げる。


「完全に準備が整うまでは手出ししない方が無難よね」

「そうね……あ、それと」


 フレイラはジュオンからもたらされた情報を二人へ伝える。それにリザは、


「組織の残された者達か。ここまでよく生き延びたと言いたいところだけど……けど、北部にアルガは行ったの?」

「そうみたいね。この情報が確かなら、ユティスがまた武具作成のために山を登る時間くらいはあると思う」

「そうね。でも、問題は後一つくらいが限界かしら。さすがにアルガだってこの場所をいずれは見つけてしまう……それがいつのになるのか」


 決戦までそう遠くないだろうとフレイラ自身も考えてはいる。それがよりよい状況下での戦闘ならばまだいいが、防備が整っていない状況で戦闘したのならば、おそらくユティスが武具を作成できていても、厳しいかもしれない。


「リザは」

「ん?」

「ユティスを生かすために、動くの?」

「それはそうよ。ユティスさんがいなければ彼に勝てないから。こう言ってしまうとアルガを倒せば……と考えてしまいそうだけど、まだ大天使との戦いが待っている」

「そうね……」


 この城に眠る天使。それが目覚めたのならこの国に収まる話ではなくなってしまう。

 その時、自分に何ができるのか。フレイラは考えながらも、懸念がつきまとう。


(ユティスは大天使に勝てるだけの物を生み出せるかもしれない。でも、それを操るのはあくまで人間。私達だって強くならなければならない)


 最終的に誰が武具を握るかはわからないが、彩破騎士団の中で決める確率は高いだろうと思う。よって、


「リザ、体を動かさない?」

「訓練ってことかしら? 確かにいつ何時アルガが来てもいいように体を温めるのは良いことね。アシラはどう?」

「付き合います」


 二人が賛同する。よってフレイラ達は移動を開始。その途中でアリスとも合流し、四人で体を動かそうという展開に。

 今はまだ準備期間。ただユティスばかりに負担を背負わせるわけにはいかない。とにかく、自分にできることをやろう――そう心の中でつぶやきながら、フレイラは城の外へ出ることとなった。


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