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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
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異能の考察

 ユティス達が目的地へ到着したのは、その日の昼過ぎ。幸いユティスの体調に変化はなく、予定よりも早い時刻に到達することができた。

 その場所は、山脈の中にある窪地。そこに木々が存在し、森とまでは言わないが周囲から姿を覆い隠すくらいはできるくらい木々が生い茂る場所だった。


「よし、準備できた」


 木々の中央、雑草も生えていない場所で、ユティスは武具構築の準備を行う。草木がまったくなく、土の地面が覗いている場所なのだが、その理由は魔力が漏れ出ていることにより、植物の成長ができないためであるとユティスは推測する。


 魔力というのは基本動植物に恩恵をもたらすことが多いのだが、量が多くなれば弊害も生まれる。過ぎたるは及ばざるがごとしという言葉通り、毒にも薬にもなるわけだ。

 この場所は魔力集積点として、かなりの魔力量を誇っている。ただ周囲からはその魔力を感じ取ることはできない。木々が発する魔力を吸い取っているからだ。


「地面周辺の魔力濃度は高いため植物が育たないけど、周囲に拡散することで希薄化し、木々の成長を促している……この場所に存在する木々は、そうして生育しているみたいだね」

「魔力にも色々と特性があるからな」


 オズエルが述べる。ただその視線は周囲を油断なく見据えている。


「ここから噴出する魔力は、濃度がかなり高いため薄めないと毒になる、ということだ。もっともその特性は武具差す制する俺達にとってみれば扱いやすくもあるのだが」

「――ふと、思ったのですが」


 ユティス達の会話に、ティアナが口を挟んだ。


「マグシュラント王国がこうした魔力集積点を見つけていたのは……」

「領土内に存在する集積点を見つけるのは、当然じゃないのか?」


 オズエルが問い返す。確かにロゼルスト王国もそうした調査は行っているし、だからこそウィンギス王国との戦争にも活用された。


「仰る通り、魔力集積点の調査は国としても必要だとは思うのですが……こんな辺境中の辺境の場所を調べ尽くして意味があるのかどうか」

「……集積点の調査は作付けなどにも影響するために行うのが普通だが、言われてみるとこんな人里離れた窪地まで調べようとは思わないな」


 オズエルはそう言いはしたが、何かしら確信を持っている様子。


「ま、それに対する答えは一つだな。つまり」

「大天使との戦いに備え……ですか?」

「必要になると思ったんだろう。あるいはあの城……大天使が封じられている城を建築するに当たって、どういう場所が望ましいのかを調査する間に発見したとか、だな。あの場所も地底に魔力集積点が存在しているから」

「なるほど……ただこう考えると、マグシュラント王国は建国当初から大天使に対する備えをしてきたと?」

「そんな可能性も否定できないな。真実は初代王様のみが知る、だが」


 オズエルはそう述べた後、ユティスへ顔を向けた。


「準備はできたようだな」

「うん、いつでもいける……それじゃあ、始めようか」


 創生の異能、発動。それと共にユティスは頭の中でどのような武具を作成するのかをイメージする。

 アルガとの戦いの際に役立つ武具。これがどのような意味を成すのかわからないが、少なくとも今は必要だと信じてやるしかない。


 準備に反し異能による武具作成はものの数分で終了する。生じたのは首飾り。銀製のように見える、六芒星を象ったペンダントだった。


「よし、できた」

「デザインはユティスさんの好みか?」

「センスがないのは認めるよ……効果があるのか実証するのはぶっつけ本番になってしまうけど」

「防御系の武具、ということでいいんだな?」

「うん。誰が使用するのかを含め、どうするかは戻ってから考えよう」


 一度城へ帰還し、そこからさらに武具を作成する。その間にアルガが攻め寄せたのなら大変だが、今は大丈夫だと信じる他ない。

 ユティスは首飾りを懐へしまう。次いで視線を地面に落とす。


「どうした?」

「……オズエル、現状の見解でいい。アルガを……大天使を倒せる武具というのは、異能による構築で可能だと思う?」


 質問にオズエルは押し黙る。ただその雰囲気は厳しいという事実を暗に語っている気がした。


「……現在の考察でいいんだな?」

「うん、頼むよ」

「そうだな。まず……大天使そのものについては不明瞭な部分もあるため、アルガについて語ろう。これまでの戦いを資料などから見る限り普通の攻撃は通用せず、また最強の異

能と思しき攻撃も通用していなかった。ただし、千年前の戦争などにおいて大天使に対する攻撃は通用した。この違いは何なのか?」


 オズエルはそこまで述べると、空を見上げた。


「千年前の異能者が強かったという解釈もできよう。なおかつ相応の準備が整っていた……逆に言えば正攻法で挑む場合、異能者も少なく、なおかつ資源も少ない今では抗うことは不可能に近い」

「それを逆転するためには、どうすればいいと思う?」

「大天使やアルガへ攻撃を通すためには、正攻法では現状厳しい。ならば何かしらの策を必要とする……手持ちにあるのはユティスさんとリザの異能だ。この二つは異能の性能的に癖が相当強いが、だからこそ逆転の芽はある」


 オズエルが続ける。変わった異能ではあるが、それ故に手立てがあると。


「まず最初に考えたのは、ユティスさんの異能により大天使やアルガにも通用する武具を作成すること……これだけ聞くと普通ではないかと思うところだが、切れ味を鋭くするとか、攻撃力を上げるという次元の話ではない。文字通り物質の創生だ」

「この世にはない物質を創ることによって、大天使やアルガの防御をすり抜けると」

「途方もない戦法ですね……」


 ティアナが口元に手を当て声を漏らす。


「ですが、この世にはない物質? ピンとこないのですが」

「それは僕やオズエルも同じだよ。そもそも矛盾しているんだ。この世にはないってことは僕らは分析もできないため、構築もできない」

「綿密に大天使を解析できればまだ可能性はあるが、そこまでして通用するかは賭けに近い。最終手段として候補に入れておいてもいいが、それが他に手立てがないという場合に対してやるべきだろう」


 オズエルの言葉にユティスは頷く。もっと確実な方法を――

 その時、ユティスはふと疑問に思うことがあった。それが頭の中を掠めた時、突如――頭の中が、その疑問で埋め尽くされた。


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