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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
368/411

拠点

 ユティス達はまず城の中へ通され、なおかつ男女に分かれる形で大部屋へと案内される。中には人数分のベッドに加え、生活に必要な物が全て揃っていた。


「ここを拠点にするのは間違いなさそうだな」


 ユティスの言葉にジシスやアシラはしきりに頷く。


「馬車の旅をしながらでは体調面についても不安があった故、こうした場所に寝泊まりできるのは良いことじゃな」

「ジシスさんと同意見です……ただ、思わぬ形でここへ辿り着いてしまいましたが、どこまでこの国の人達を信用して良いのか」


 アシラが不安を吐露する。流れに任せてここまで来てしまったので懸念を抱くのは当然。

 ただ、ユティスはそれに対し楽観的な見方を示した。


「彼らはアルガを打倒しようとしている。加え、王族の大半は潰え身内同士で争うような状況でもなくなっている。彼らにとって僕らの助力は必須と言えるし、そう問題にはならないんじゃないかな」

「そう、でしょうか」

「まあジュオンはこちらが警戒するようなことを前提に歓待している節もあるけど、夜に見張りくらいは立ててもいいかな……さて、大天使との謁見にはまだ時間があるようだし、僕らは作戦会議でも――」


 ここでノックの音。フレイラ達だと思いユティスが返事をすると、女性陣が中へ入ってきた。


「それじゃあ、今後について話し合おう」


 フレイラの言葉によって全員が静まる。そうした中で話し始めたのは、ユティス。


「現状のおさらいだけど、僕らは一つ目の武具を生成した後、ここへやって来た。そしてどうやら、ここから次の魔力集積地へ向かうことはそれほど難しくないらしい」

「つまり、ここを拠点にして武具を生成していくと」


 フレイラの言葉にユティスは首肯。だが、


「けど、アルガに関する情報を統合して、現時点で効果的なものであると考えられるのは一つだけだ。それは大天使を調べれば、有効なのかを確認できる」

「――ユティスさんは、大天使を封じる器に着目したわけだ」


 オズエルが語り出す。どうやらユティスがどのようなことを考えているのかを察している様子。


「大天使自体を封じている器……それが大天使由来のものではなく、大天使を作成した存在が用意した物であるなら、その力を利用すればアルガの攻撃を防げるかもしれない、と」

「そうだ。仮に大天使由来のものであったとしても、自分自身を千年間封印するような代物だ。応用して攻撃を防げる何かを作成できる可能性がある」

「なるほど、だから大天使について調べたいと」


 フレイラが納得の声を上げる。


「でも、それに成功しても……現時点で作成したのは魔物の生成を封じる武具と、防御の武具。つまり攻撃面についてはまだ」

「そう。問題は圧倒的な耐久力を有するアルガをどう倒すか。体力は無尽蔵であり、最強の異能者による攻撃すらも受けきった……ここから考えるに、単純に強力な武具を作成しても意味はない。理想的なのはアルガの弱点を突くような特性を付与することだけど」

「その穴は現時点で見受けられませんね」


 ティアナの提言。ユティスは「そうだ」と返事をした。


「正直、アルガへ異能を行使した人物の能力は、間違いなく最強だ……そして

僕らが同じことをやろうとしても無理だ」

「一応、私達は単純な力勝負で戦うわけじゃないから、やり方次第で効くかもしれないけど」


 発言したのは、リザ。


「私の異能もそうだし、アルガの欠点を突く手段が生まれる可能性はあるわね」

「かもしれない……例えばボクの異能はそうだし、フレイラやティアナの持ちうる能力も、馬鹿正直に物量で押し込むタイプとは異なっている。だからアルガの隙を突ける何かがあるかもしれないけど……それを試すのはリスクが高すぎるし、かといって情報があるわけじゃない」

「現時点で手に入る情報から、突破口はまだ見えないな」


 オズエルもユティスに賛同する。


「魔力を解析するにしても、接近した時点で俺達は殺される。準備もなしに戦うことになったら十中八九まずい展開になる……情報を取るには接触するしかないが、それをすれば確実に死ぬ。ジレンマだな」

「うん。だから今できることは手に入れた情報に基づいて有効な武具を作成する……攻撃手段がないにしても、アルガの攻撃さえ防ぐことができればそれだけでも進歩だし、最悪の状況……アルガと遭遇してしまった時にも一応対処はできる。よって、防御手段を手に入れることをひとまず優先するということで、いい?」


 全員が頷く。確認の問い掛けだったがユティスとしても他に選択肢がないための、妥協に近い結論だった。

 もっとも、この場所もいずれアルガに見つかるだろう。しらみつぶしに探していけば、ここもいつかは捕捉される。それがどのくらい先なのかわからないが、とにかくそれまでには準備をしておかなければ――この場にいる者達が全滅する。


 それはマグシュラント王国の完全崩壊を意味すると共に、二千年以上人間が戦い続けてきた大天使という存在に、敗北することとなる。


「……時間はあるようだし、この城を散歩して内部構造くらいは把握しようか」

「自由行動ですね。とはいえ一人になるのはまずいですよね」


 ティアナの指摘にユティスは「そうだ」と同意し、


「もし城内を散策するなら、最低二人以上で行動してくれ……というわけで僕は動こうと思うのだけれど、付き合ってくれる人はいる?」

「では私が」


 手を上げたのはティアナ。よってユティスは彼女と共に、城内を歩き回ることに。

 他の面々はどうするか悩んだ様子だが、最終的にフレイラとジシスが動き、他の面々は部屋で待機することにした。


「それじゃあ留守は頼んだよ」


 部屋にいるアシラやオズエルにユティスは告げると、ティアナと共に廊下へ出る。人が結構動き回っており、防備の準備を整えているのだろうか。


「この城自体は、かなり堅牢ですね」


 そうティアナは考察する。


「アルガが相手でなければ、大軍相手に籠城できそうなくらいの準備をしてあります」

「まさしく最後の砦かな……悲しいかな、今回の相手が強大すぎて、出番が回ってきてしまったわけだ」


 戦闘準備も着々と進んでいるようだが、圧倒的な武力を持つアルガにどう立ち向かうのか。これについてはユティス達よりも戦ったことのあるマグシュラント王国側が詳しいかもしれないが、果たして――


「……どちらにせよ、ここへアルガが到来したら覚悟を決めるしかないな」


 そんな呟きを発する。ティアナは「そうですね」と返事を行い、二人は城内を歩き続けた。


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