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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
362/411

一つ目の武具

 その後、ユティス達は予定通りの行程を経て目的地である魔力集積点へと到達する。


「ここか……」


 標高はそれほど高くないが山の中であり、その一角が森となっている。周囲から見ればただそれだけの場所なのだが――森をかき分けた先に、小さな泉があった。

 そこからわき水と共に魔力が地底から噴出している……それこそ、ユティス達の求めるものだった。


「よし、手早く済ませよう……準備を」


 指示に従い動き出したのはオズエル。次いで補助役としてティアナやフレイラも動き始める。

 ユティスが創生に使うための魔法陣を描く準備を行う。手順については事前に確認してあるため、そう経たずして準備を追えることができるはずだ。


「どのような物にするか、きちんと浮かんでおるのか?」


 準備を眺めていると、ジシスが問い掛けてくる。それにユティスは首肯し、


「ここへ来るまでに熟慮し……どうにか、いけそうなものが浮かび上がったよ」

「それは何よりじゃな。しかしこれはあくまで第一段階」

「そうだ。これから魔物生成を封じる武具を作成するけど、それは取り巻きを取り除くだけで、肝心のアルガを倒す手段を構築したわけじゃない」


 そんな返答をする間に、ユティスの横にアシラがやって来た。


「資料を見ましたけど……異能をまともに受けて平気だというのは――」

「異能に耐性があるのだとしたら、大天使は千年前の戦いで窮地に追いやられるようなことにはならない。よって、アルガが独自に防御力を高めているなどしていると、僕は最終的に推測した」


 そこまで言うとユティスは肩をすくめる。


「ただ、肝心の能力についてはわからないので、現状武具を作成することは難しい。ただこの情報は言ってみればアルガの核心部分でもある。これが露見すればまずいのは相手もまた理解しているだろうし、そう簡単に尻尾をつかませてはくれないだろうな」

「そこが最後の難関になる、ということじゃな」


 ジシスの指摘にユティスは「まさしく」と応じた。


「単なる結界だったら異能が突き破るか、あるいは城側が攻撃していて気付くだろうしね……よって、まだ未解明の部分だと言える。もっと情報が得られれば……」

「となると、マグシュラント王国側の人間と接触するしかあるまい」


 ジシスの意見。ユティスはそれに同意はしたが、


「組織『星の館』の人については協力的であるのは間違いない。まあ必要に迫られてという面は強いだろうけど……ただ、国側の人間が果たして同じように友好的かどうかはわからないけど」

「ふむ、確かにこの国は王が神のような扱いを受ける国だ。それを考えるとどれだけ不利な状況下でも協力などしない、と考えてもおかしくない……しかし、駄目元で話をしてみるのも一興じゃろう」


 ――それが、一番情報を得られる可能性が高い、か。


「……とりあえずここで武具の作成に成功したら、予定通り避難所へと向かうことにしよう」


 そうユティスが語る間に準備が終わる。フレイラ達が声を上げ、それに応じるようにユティスは歩き始めた。

 泉の近くに魔法陣は設置されていた。滞留する地下からの魔力を引き寄せ、武具を作成する。


「ユティス、体調はどう?」


 フレイラの質問。それにユティスは「大丈夫」と応じ、


「今回武具を作成する上では何も問題はないよ……それじゃあ、始めようか」


 異能発動。ユティスの瞳が『彩眼』へと変化し、魔力が高まっていく。

 刹那、周囲の大気が震えた。ユティスが発した力によって森全体が鳴動したようにも感じられる。ザワザワと葉擦れの音が聞こえ始め、ユティスは魔力を高めるごとにその音もまた騒々しくなっていく。


「……よし」


 ユティスはそう一つ呟いた直後、両手に魔力を収束させた。同時、魔力が白い光となって出現し、ユティスの思い描くとおりに形を変えていく。

 時間にして、数分程度の出来事。しかしこの場における誰もが、その短時間で恐ろしい物が生み出されようとしていることを、はっきりと認識していた。


 ユティスの両手の中で形になる物――それは一本の杖だった。


 なぜそういう武具にしたのか。これにはユティスにとって明確な理由が存在するのだが――

 やがて魔力が収まっていく。森のざわめきも静かになり、気付けばユティスの足下にある魔法陣の光もまた、消えていた。


「……ミッション完了、だな」

「ユティス、それが魔物の生成を封じる物?」


 フレイラが杖を指差し尋ねる。


「形状などについてはユティスに任せるつもりだったけど……なぜ杖に?」

「これは僕が扱い、制御するためだよ」


 その言葉にフレイラやティアナは驚いた様子を示した。


「えっと、ユティスが?」

「うん。例えば腕輪か何かを身につけて魔物を生成する能力を封じるとしよう。その状態で戦闘すれば、間違いなく能力が落ちてしまっている。つまり前衛より後衛に持たせた方がいいと判断したんだよ」

「あー、それなら理解できるけど……」

「加え、アルガの魔物生成手段は一つだけじゃなく、いくつか手があるとなった場合、僕なら場合によってはリカバリーができるかもしれないと思ったんだよ」

「なるほど……でも、そんな武具を所持していたら狙われない?」

「そこは百も承知だよ」


 ユティスはそう応じながら杖を振る。


「応用が利くようにしないと危険だったからね……杖の効果については馬車内で色々と解説しよう……とにかくここでのミッションは達成だ。次は避難所へ――」


 そう声を発した直後、ドオン、という爆発音のようなものが耳に入ってきた。


「え……?」

「誰かが魔法を使用したのか?」


 近くで眺めていたジシスが空を見上げながら告げる。そこでユティスは、なんだか嫌な予感がした。


「……すぐに森を出て確認しよう。もし魔物がこちらへ来ているのだとしたら、できるだけ速やかに対処しなければまずいかもしれない」


 言葉と共に、フレイラ達は頷くと速やかに移動を開始する。彼女達の後方にユティスは控え、手に握る杖を強く握り締めた。


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