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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
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対抗武具

 ユティスは資料を一読すると、フレイラ達へ向け口を開く。


「この資料から対策すべきことはいくつもある。いくらでも湧き出てくる魔物。そして絶対的な耐久力。それらを突破しない限り、勝利はない」

「どれもこれも難題ですが、一番最初にやるべきことは魔物の発生を抑えることでしょうか」


 ティアナが考察する。ユティスはそれに同意し、


「魔物を封じる武具……資料にある感じでは大地の魔力を利用しているってことかな?」

「――少なくとも、大地に干渉していることは間違いない」



 と、フレイラは述べる。


「アルガは魔物を生成している様子はないみたいだけど、大地に何かしら魔力的な干渉をしているのは事実だし、大地と彼の魔力を結びつけないようにすれば、魔物の生成を防ぐことはできると思うわ」

「……ただ、一番の問題は確証がないことかな」


 そうユティスは言う。


 アルガの魔物生成を抑え込むことについては確定だが、それを防ぐ武具を作成する場合、やり方を誤れば防ぐことができない可能性がある。

 現時点である情報を基にすれば大地に干渉していることは明白なので、それを防げば問題ないとは思うのだが、


「けど、アルガと直接戦って確認するなんて無茶もできないし、ここは推測しかないけど……どうすれば確実に魔物の発生を防げることができるのか」

「大地に干渉しているのは事実だから、それを妨害することが一番なのではないかしら」


 フレイラの意見にユティスは黙し考える。大地に干渉がある以上は、そこをどうにかすれば――色々と頭を悩ませる問題ではあるが、これはひたすら考え続けるしかない。


「次に耐久性ですが……異能を受けても平然としているというのは、異能そのものに耐性を強化する効果があるのでしょうか?」


 ティアナの疑問に対し、ユティスは口元に手を当てる。


「いや、異能そのものに防御能力があるのだとしたら、大天使そのものだって異能に防御能力があってもおかしくない。そういった話はクルズの説明にはなかった……というより、そうした能力があるのなら、千年前の戦いで決着がついてもおかしくない」

「なら、純粋に防御能力があるってこと?」


 フレイラは口にしながら目を細める。


「これを突破するのは……強力な武具が必要ってことか」

「逆に難しいな。どのくらいの威力が必要なのかわからないし」


 ため息をつきながらユティスは応じた。


「他にも色々と疑問はあるけど……目下対応すべき点はその二つかな。後は、情報収集を行って結論を出すしかない」

「情報収集、といってもアルガ相手にというのは難しいのでは?」


 ティアナのもっともな問い掛けではあったが、ユティスは苦笑を伴い返答する。


「いや、情報源はあるよ。マグシュラント王国の王族達だ。彼らだってアルガの驚異的な戦闘能力を目の当たりにして対策を講じて迎え撃っているはずだ。もしそれでも駄目だったら……その情報をもらい、僕らは武具を作成する」

「彼らが負けて情報を集めれば集めるほど、こちらが取れる選択肢も増える、というわけですか。なんだか皮肉ですね」

「まったくだよ……ただそのくらいやらないとアルガから情報を得られないのは事実」


 そう語りながらユティスは窓の外へ視線を移す。


「とにかく、現時点でわかっている部分で創生の異能を使うとしよう……魔物の生成する手段もそうだけど、アルガの戦闘については膨大な魔力を保有していないと成り立たない部分がある。魔物の生成にしても、その耐久能力にしても。逆に言えば何かしら魔力の供給手段さえあれば、可能だとも言える」


 本来、人間が抱えられる魔力の総量には限度があるため、アルガのような無双を行うのは無理だ。例えば聖賢者のヨルクならば似たようなことは魔法でできるかもしれない。けれどそれはあくまで一時的なもの。アルガのように大軍勢を相手に戦い続けるなどという行為は、不可能だ。

 つまり、どこからか魔力の供給があるためにできるということ――それが魔物を生成するために大地を利用するように、外部から供給する手段を確保しているのだとしたら、魔物の生成をストップさせる武具を作成することで供給そのものを止められるかもしれない。


(いや、さすがに安直すぎるか……)


 大天使がそういう構造ならば、千年前に人間側が勝利していてもおかしくない。ならば考えられるのは、極めてシンプルな答え――すなわち、大天使のスペックが恐ろしいほど高い。


(魔物の生成についてはさすがに大地の魔力を利用して、というのは間違いないだろう。いくら大天使の力を持っているとはいえ、一国全体に魔物をばらまくほどの数を生むのはかなり大変だろうし。ただ、身体強化については純粋にスペックが高いというのなら、相応の準備をしないといけない)


 これはユティス達も能力を突破するために小細工無しの力勝負を行う必要性があることを意味する――果たしてそれが創生の異能で可能なのか。

 ウィンギス王国との戦いのように、十万の兵を一掃できるほどの力を手にすることができるのは事実。しかし、それはあくまで一過性のもの。アルガの能力を鑑みるに、どれだけ強力な武具でも一撃とはならないかもしれないため、熟慮する必要性がある。


(長期戦を前提とするなら……いっそのこと飛び道具とかにして、食い止める間にアルガを撃ち抜くとかした方がいいか?)


 それはマグシュラント王国の異能者がやったことそのものではある。もっとも異能を用いた落雷でダメージがなさそうに見えたのだ。その攻撃能力を遙かに上回る武具を手にしなければならない――


「ユティス」


 ふいにフレイラが名を呼んだ。


「資料を読んでまだ頭も整理し終えてないでしょ? 少し休んだら?」

「いや、でも……」

「そうです。状況が状況ですし、根を詰めるのはわかりますがユティス様の体調についても心配です」


 フレイラに続きティアナも発言。それに対しユティスは反論しようとしたが、体が少し重い気もした。

 この状況下で倒れるのは迷惑だろう――と思い直し、


「なら、少し横になるよ。馬車に揺られてだからあまり疲労もとれないだろうけど」

「うん、それがいいわ。今日はこのまま進み続けるだろうし、野営することになったら起こすわ」


 そしてユティスは横になる。目をつむってみると馬車による振動はあったのだが、疲労していたらしく睡魔が襲ってきた。


(……アルガ……)


 ユティスはまだ見ぬ脅威について思考する。それと同時に武具のことを頭に浮かべ――程なくして、意識が沈んでいった。


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