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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
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破壊活動

 その後、ユティス達は渓谷へ辿り着く前に町へと到着する。


「これは……凄まじいな」


 ユティスは小さく呻く。その理由はひどく明白。町には生活していた痕跡などを残してはいたが、村と同様人が存在していなかった。

 なおかつその町も、破壊と荒廃に包まれていた。損傷していない建物が存在せず、中には家が魔法で消滅したように、上半分だけが綺麗になくなっているといった物も存在する。かなり不可思議な状況ではあるため、アルガについて考察できるかもしれないとユティスは一瞬考える。


「どこかに避難はしていると思うんだけど……にしても、この町の住人が町を捨てるほどだ。しかもここはまだマグシュラント王国の入口だ。中はどんなことになっているんだろ?」


 渓谷を抜けた先にどれほどの地獄が存在するのか――ユティス達は町を呆然と眺めながら、不安と重圧が肩にのしかかる。


「町を確認するか?」


 御者台にいるジシスが問う。ユティスは一考し、


「……さすがに誰かが残っているとは考えにくいし、大通りを一度見て回るくらいにしようか。破壊の規模を確認すれば、アルガについて能力を推測できる」


 そう述べるとユティスはアシラの操作する馬車へ目を向けた。


「そちらは町の入口で待機してくれ。町の外で何か異変があればすぐに連絡を」

「わかった」


 オズエルが了承。そこでユティスはジシスへ指示を出し、町の中へ。


「これを、アルガがやったの……?」


 フレイラが町を見回しながら呟く。潰された露店。入口付近がぐちゃぐちゃになった酒場。そしてガレキのみが残された建物――大通りから伸びる路地に目を向けても、道の左右に存在する建物は例外なく破壊されていた。


「全ての建物が……というのは、何か理由があるのかしら?」

「壊す理由、その手段……どれをとっても謎だらけですね」


 建物から情報を得ることができないかと、ティアナは目を凝らす。そうした中、ユティスは一つ言及する。


「現状、諸国から得られている情報を統合すると、アルガは数度交戦した記録がある。その情報の一つとして、槍を扱うことがわかっている」


 そう口にした後、資料を頭の中で思い返し、


「魔法などを使ったことはないみたいだけど、それはあくまで使う必要がなかったから、と捉えることもできるからな……」

「さすがに槍一本でどうにかできる範囲を超えているわ」


 フレイラはユティスを見返しながら言及。


「それに、槍がどれだけ強力でも住民を虐殺なんて普通は無理よ。物理的にという話ではなく、槍で一人一人殺していくなんて人々は当然逃げるし、なおかつ時間もかかる。まして敵は建物まで律儀に破壊している……能力があると考えるのが妥当ね」

「考えられる能力は、何でしょうか?」


 ティアナが口元に手を当てながら呟く。そこでユティスは、


「村もそうだけど、一つわかったことがある」

「それは何ですか?」

「この町もそうだけど、町の外では破壊活動が行われていない。街道は無事だし、例えば道中に存在していた木々などが倒されているわけでもなかった……大天使の力を所持しているとしたら、人間の町――つまり文明が存在する場所を狙って攻撃しているということで理由付けにはなる」

「そうですね……」

「で、だ。町の規模で破壊活動ができる可能性としては候補が二つ。一つは武装の槍を魔力で大幅に強化する方法。例えば槍を巨大化させるとか。それにより一度に大量殺戮を行うことができる……と、考えたんだけど、そう捉えるのは無理がある」


 言ってからユティスはある一点を指差す。そこには二つの建物。片方の建物は最早原形を留めていないものだが、もう片方は入口周辺が木っ端微塵に破壊されているだけ。


「巨大な槍で一度に薙ぎ払ったりしたら、隣同士の建物でここまで被害にばらつきはでないはず。そもそもそうした技法なら、町はもっと破壊し尽くされ、僕達より背の高い建物なんて消え失せているかもしれない」

「例えば衝撃波を撒き散らす、とかは?」


 ティアナから言葉。ユティスはそれに腕を組み、


「確かにそれならわからないでもない……けど、アルガが虐殺を始めた段階で、住民達は逃げるはずだ。例えば僕らが町へ入った入口から攻撃を仕掛けたとしたら、住民達は反対側へ避難するはず。にも関わらず、被害は甚大……」

「結界か何かを使えた、と考えるのが妥当かしら」


 フレイラはそう語りながら周囲を見回す。


「町を覆う結界を構築し、逃げ道を無くしてから攻撃する」

「僕も同じようなことを考えた……それに加え槍により衝撃波とかを撒き散らし、破壊活動を行う……うん、十分候補にはなる。けど」

「けど?」

「生存者がゼロではないだろ? アルガの目を避けられたと考えるのもアリだけど……村の破壊なども考慮したらアルガが単独で無茶をやっているのではなく、彼が例えば……魔物を使役して襲わせているとかなら、この状況も十分あり得るかなと思ったんだ」

「魔物……なるほどね。その辺りのことは生存者に聞けばわかるかしら?」

「そうだね。もし魔物が出現していたのなら、誰かが語ってくれるはず……これならマグシュラント王国という国家が壊滅的打撃を被るというのもある程度理解はできる。魔物の規模はあるけれど、単独で動くより破壊活動に時間が掛からないから、一気に被害を大きくできるし」

「そうなると、私達は彼と戦う場合に魔物も警戒しなければいけないってことね……不安要素がまた一つ――」


 その時、突然馬車が止まる。何事かと思った矢先、ジシスが真正面に鋭い視線を投げていることに気付いた。


「ジシス、どうした?」

「ユティス殿の推測が合っているかもしれんぞ」

「ということは――」

「うむ」


 返事と共に、真正面から気配が生まれた。フレイラとティアナは剣を抜き、ユティスも戦闘態勢に入る。


「こちらが気配を察知していることを理解し、隠密から威嚇に切り替えたか」


 語りながらジシスは視線をさらに鋭くする。


「どうやら普通の魔物ではない……ここに来る人間を始末するために、残しているか」


 どうやらアルガの魔物――そう心の中でユティスが呟いた矢先、路地の陰から魔物が姿を現した。


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