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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十一話
352/411

援助する者

 これが最後の戦いになる――そうユティスは予感すると共に、彩破騎士団の一員としてマグシュラント王国の国境までやって来た。関所が存在し、隣国の兵士が手続きを開始する。


「……現在、あちらとは連絡がとれない状態となっています」


 そう兵士は語る――異能者アルガが暴れ回ったせいなのだろう。


「この関所にも本来は多数のマグシュラント王国所属兵士がいました。しかし本国に招集された後、誰一人戻ることはありませんでした」

「新しい情報はありますか?」


 ユティスが問い掛けると兵士は難しい顔をする。


「国境を越えた商人の話によると、どの村、町も犠牲者多数とのこと。流行病などではなく、明らかに人の手によるものだと」


 恐ろしい状況らしい。話を聞いているためか、兵士の声も少なからず萎縮している。


「町や村、人がいる所は全てそうなっているそうで……」

「例外なく、ですか?」

「はい」

「わかりました。ありがとうございます」


 礼を述べユティスはその場を立ち去る。そうして近くにある馬車に戻ると、フレイラやティアナがいた。

 今回、移動手段としては馬車。ただし二台に分かれており、ユティス側の御者はジシスが行っている。ちなみにもう片方はアシラ。馬車の運転等は学んだことがあるらしかった。


「情報をもらってきた。村や町全てで殺戮が行われていると」

「徹底的に、というわけか」


 フレイラは重々しい言葉で告げる。ユティスは首肯した後、別に見解を述べる。


「ここで重要なのは、首謀者……アルガはどうやって町や村を残らず襲撃しているのか。マグシュラント王国内の地理を完全に把握しているのか?」

「あるいは、何かしら能力を所持しているか」


 ティアナが口を開く。ユティスは頷き、


「能力を所持しているのなら、心底面倒だ。索敵範囲がどの程度なのかわからないが、奇襲される危険性が高い」

「できればアルガと出会うまでに魔力の集積点には到達しておきたいよね」


 フレイラの指摘にユティスは「まさしく」と応じる。


 アルガが持つ異能――いや、それは果たして異能と呼べるかどうかわからないものだが、彼は人類の文明を壊す生体兵器『大天使』の力を所持している。彼に対抗するためにはユティスの『創生』の異能を用いて対抗できる武具を作成――魔力集積点については把握しているが、問題は現在アルガはどこにいるのかわからないこと。加え、能力を抱えているのなら準備をする間に攻撃をされる危険性もある。


「そして、さらに一つ問題が生じるな」

「そうね。町や村全てで被害……補給とかをどうすればいいのか」


 ユティスの呟きにフレイラも同意する。


 元々、ユティス達は馬車で移動しアルガとの戦いの準備を進める予定だった。堅牢な天然の要害であっても街道は整備されており、馬車を用いた移動については不便がない。加え、国側が機能不全に陥っていたとしても、町や村などは日々の暮らしのために機能しているはずなので、そこで食料などの調達をしようと考えていた。

 だが、全てが破壊されているというのなら――補給面についても考慮に入れなければならなくなる。


「攻め込む前に難題ができてしまったな……もしこれを解決するには――」

「補給線を用意するようなことが望ましいけど、それほどのことをする場合、当然軍を動かす必要性が出てくるわね」


 懸念に対しフレイラは明瞭に語る。現状、ユティス達はアルガを倒すために動いているが、本国であるロゼルスト王国からバックアップを受けようにも遠すぎる。よって、近隣の国に助力を願うしかないのだが、それも難しいだろう。


 マグシュラント王国内でどうなっているのかもまったくわからない現状では、他国も怖くて援軍など出せない。そもそもそういうことができるのなら、彩破騎士団だけで挑もうなんて考えに至っていない。


「国へ入る前に解決しておかないとまずいな。このまま進むと戦いどころではなくなってしまう」

「所持できる食料なんかにも限界はあるからね。でも虐殺の可能性があることを考えれば、どこも軍を出すなんてことは――」

「あの、すみません」


 ふいに声。視線を転じれば、男性騎士が一人いた。


「あの、ロゼルスト王国所属の彩破騎士団の方々ですね?」

「そうですが……あなたは?」

「私は……組織の人間であると言えば、おわかりになりますか?」


 組織――それはつまり、クルズと同じ場所に所属している人間ということか。


「クルズ様よりあなた方の援護をしろと仰せつかり、この場を訪れました」

「援護……?」

「マグシュラント王国内の情勢については、こちらが把握しております。村や町の大半は壊滅しておりますが、人々が全滅したわけではありません。被害の程度にもばらつきがあり、避難している方々もいます」

「そういう場所から、援助してもらうと?」

「我々組織の人間が、各地で交渉を開始しております。今回の虐殺する存在……その人物を打倒するために来訪する戦士達だと。国が崩壊した以上、人々も寄るべき者を求めております。我々はそれを利用し、物資等をあなた方に提供します」

「正直、あまり良い方法ではないわね」


 フレイラはそう評価する。しかし男性騎士は表情を引き締め、


「私達としてはそのような形でしか援護することができませんからね……あなた方に物資を提供するには、これしか方法がないのも事実」

「……まあ、現地で狩りとかするよりは良いかな」


 ユティスはそう告げた後、男性騎士へ述べる。


「わかりました。あなた方の援助を受けることにします」

「ありがとうございます……それとマグシュラント王国内で避難場所等がどこにあるかを記した地図を渡しておきます。このまま街道を進めば渓谷に挟まれた道に到達します。そこを越えれば一つ目の避難場所がありますので、そこを訪れてください」

「わかりました……あなたは?」

「私は村や町の生存者の確認へ向かいます……ご武運を」


 男性騎士は去る。国としては完全に崩壊してしまったが、組織の存在により秩序維持などはどうにか保っている――いや、略奪などをするような輩だって消え失せてしまったのかもしれない。


「ひとまず、問題は解決したな」


 そうユティスは呟くと、フレイラ達へ言った。


「とにかく先へ進もう……マグシュラント王国でこれ以上被害の拡大を防ぐには、できるだけ早く戦える状況にする……それしかないからね――」


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