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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
348/411

戦いの結果

「千年間で集めた情報や技術を用いて、私達は休眠していた大天使を討つために動き出した……そして、敵もまた千年後、ついに目覚めて動き始め――世界の存亡を賭けた戦争が始まりました」

「しかし話によれば当時の人々の協力を得ているとは言いがたい、ですよね?」


 ユティスが問うとクルズはすぐさま首肯する。


「はい。そもそも千年前に存在していた兵器が再び動き出す……とてもではありませんが、信じられるものではない。組織に所属していた者達も、その光景が記録されているものを見なければ信じることはなかったでしょう。けれどそうした中でも戦ってくれる者がいた……さらに言えば、色々な実験を通して得られた技術もあった……できる限りの準備をした上での戦争だったようです」


 その結末は――ユティス達が沈黙していると、クルズはさらに続けた。


「最初、人間側は非常に優勢だったようです。対応策が功を奏し大天使を打ち崩すことができた。母胎となる大天使は消滅しているため、目覚めた者達を殲滅できればいい……幸いながら、予測していた数の大天使が目覚めており、この苦境を打破することができれば大天使という呪縛から逃れることができると、確信できる状況でした」

「……しかし、大天使が反撃を?」


 フレイラが口を開く。それに対しクルズは肩をすくめた。


「いえ、大天使は為す術もなく……とまではいきませんが、確実に数を減らしていった。異能者達の動きは非常によく、勝利までそう掛からないところまで来ました。残る大天使は十数体……奴らは一ヶ所に固まり、徹底抗戦の構えでした」


 そこで、クルズは間を置く。圧倒的な数に対し優勢だった人間側。けれど、それを大天使は――


「けれど、最後の最後で予定外のことが起こりました……集結した十数体の大天使……翌日、総攻撃を仕掛けるつもりだったらしく、千年越しの戦いが終わると誰もが思っていた……けれど大天使は、打ち破るだけの手段があった。千年前の者達にとって最大の落ち度は、大天使もまた、人間のように考えることができるということ……つまり、こちらを圧倒するだけの強さを得る必要があると考えたようです」

「強さを得る?」


 意味がわからずフレイラが首を傾げると、クルズは彼女と目を合わせた。


「最初に大天使は生体兵器だと言いました。自己再生能力などを有し、文明を破壊するまでは止まらない存在だと……奴らは勝てないと判断した矢先、奇策に打って出た。十数体の個体が、融合し始めたのです」

「融合……!?」


 まさかそんな単語が出てくるとは予想外で、ユティスも声を上げた。


「つまり、力を集約した?」

「そうです。最終的な数は三体。その報告を聞いた人間側は、それでもいけると考え、交戦を仕掛けた……けれど、勝てなかった。退却をして一度態勢を立て直せば……そういう判断をすべきだったのでしょうけれど、押し込んで勝てると考えていた人間側は、一気に畳み掛けた……しかし、大天使は揺るがなかった」

「それほどまでに、強くなっていたと」

「はい。元来の弱点……というか異能そのものは通用したのです。けれど圧倒的な能力を前に、いくら異能を受けても耐えられるだけの能力を得た……残るはたった三体。けれどその三体が、まったく討ち果たせなかった」


 クルズは深く息をつき、


「……結果的に、異能者は敗北した。立っている者は誰もおらず、まさしく完全な敗北だった。そこから、大天使達は動き出した。もっとも数はたったの三体。だからこそ、破壊は時間が必要だった……けれど、逆に言えば阻む者がいない以上、いくらでも時間を掛けることができた」

「そこから大天使は、たった三体で世界を潰した?」

「そうです。これにより二千年前からの文明は完全に崩壊。奇跡的に残った地下の研究所についても、まともな物はほとんど残らなかった……そこからおよそ千年。人間は少しずつではありますが文明を築き立て直している。けれど、何もかも全て失ってゼロからのスタートでは、文明の歩みも遅い」


 そもそも二千年前の技術だって、数千年の時を経て達成したもののはずだ。それを潰されては、元の文明技術まで立ち直ることは難しいに違いない。


「そして残された三体は全てを壊した後に、再び眠りにつき……今まさに復活の時が近づいている」

「大天使が眠る場所は?」

「そこもマグシュラント王国です」


 どうやらそこに全てが集結している――ユティスは頷くと、


「一つ質問が。僕達はこれからアルガという人物を打倒する……あなたは以前、彼を倒せば全てを話すと語っていた。それは意味があるんですか?」

「はい、アルガだけは他の異能者とは違う能力を抱えていた……それは、大天使の力を受け継ぐ、言わば大天使のコピーのようなものです」

「なるほど、ね」


 と、リザが唐突に語り出した。


「そいつを倒せるだけの力を異能者が手にできれば、打倒できる可能性があると」

「そうです……この千年で私達組織も苦境に立たされました。思う存分に異能者を生み出すことも難しい……よって、こうするしかなかった。即ち、異能者同士の制約などを利用し、最強の異能者を作る……これしかないと」

「けれどアルガに敗れれば、大天使に勝てる存在はいなくなるんじゃないの?」

「もしアルガが残れば、大天使の力は消え全ての異能が彼に結集することになりました……彼は生い立ちも含め非常に特殊です。これも大天使と戦うための技術を応用したものになります」


 おそらく、非人道的なものだろう――そうユティスは胸中で呟いた。


「そして、もう一つ……アルガがマグシュラント王国を襲ったのは、組織があるから……というのも理由でしょうが、一番の理由は大天使が眠っているからでしょう。彼が目覚めさせるような能力を持っているわけではありませんが、引き寄せられる何かがあるのは事実……私から話せることは以上です」


 沈黙が生じる。ユティスは仲間達がクルズの話した内容を頭の中で整理していることを確認しつつ、口を開いた。


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