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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
341/411

敗者との対面

 数日後、ユティスは許可をとりレイモンと面会をすることができた。オーテスが帯同し、なおかつ騎士団からはフレイラが共に行動する。


「こちらです」


 オーテスの案内に従い、ユティスは牢屋を訪れる。そこは実質個室のような形であり、床面にはエファの異能の力と思しき魔法陣が組まれ、異能を封じていた。

 ユティスの真正面には太い鉄格子。その向こう側に、椅子に座りユティス達を見据えるレイモンがいた。


「……敗者に何の用だ?」

「話をしようと思っただけだ」


 ユティスはそう告げた後、一つ確認を行う。


「正直、答えが返ってくるとは思っていないけれど、質問をさせてくれ。大陸各地を周り、異能者を殺し異能を奪っていたのは間違いないみたいだけど……他の勢力とも繋がりがあったのか?」

「それは我が祖国を滅した奴のように、国家に仇なす存在と関わりがあったか、ということか?」


 ユティスが頷くと、レイモンはどこか他人事のように語る。


「その質問の答えはあった……が、手を組むようなことはなかった。大なり小なり関われば、俺の所持する利点が消えるかもしれないからな」

「……他者の異能を奪えるという点か」


 ユティスの言葉にレイモンは口の端を歪ませた。


「それさえ暴かれることがなければ、勝てたかもしれないのに……な」

「ここに来たことが露見した時点でそちらの敗北だよ」


 切って捨てるようなユティスの発言。それに対しレイモンはあきらめたように「だろうな」と応じた。


「で、ここに来たのは何故だ? その確認を行うために来たのか?」

「……あなたの国を蹂躙した存在について、だ」


 その言葉にレイモンは合点がいったように口笛を鳴らす。


「ああ、ヤツのことか。もしかして戦うつもりでいるのか?」

「色々としがらみがあって、すぐに行動とはいかないけどね……できることなら、マグシュラント王国に足を踏み入れて戦うつもりでいる――」


 ユティスの口が止まる。原因は明白で、レイモンが笑い始めたためだ。


「……どうした?」

「いや、改めて思ったんだが」


 と、彼は笑いながら話し始める。


「国が崩壊した事実を鑑みれば、おそらく王族は死滅しているだろう……俺の知るヤツの言動から考えて、間違いなく根絶やしにしている」

「自信ありげな言葉だな……それほどまでに凶暴ということか」

「違うな」

「何?」

「ヤツは本能に任せて暴走しているわけではない。ヤツは……理性を持ちながら、暴虐に及んでいる」


 断言した後、レイモンは笑いを収めた。


「一度はこの世の終わりみたいな感情を抱いたが、嫌な存在……俺を迫害した者も消え失せたのだ。そのことを思えば、まあ多少なりとも憂さも晴れた」

「ずいぶんと後ろ暗いな……まあいいよ。そのヤツに関する情報を喋ってはくれないか?」

「対価はあるのか?」

「ここで何かしら条件を提示することは無意味だろうけど……要望があれが聞くよ」


 沈黙が生じる。ユティスの隣にいるオーテスは油断なくレイモンを見据え、フレイラはユティス達の会話に口を挟むことなく見守る構え。


「……ふん、まあいいだろう」


 やがてレイモンは、口を開く。


「ここで従順にしておけば、少しくらいは境遇もマシになるかもしれないからな」

「というより、最後の敵対勢力を倒せなかったら、それこそ全てが終わる……あんたも死ぬんじゃないか?」

「かもしれないな……とはいえ、だ。俺が知るのは名前と身体的特徴くらいだ」

「名は?」

「アルガ=ブランダ。もっとも本名かどうかは知らないが」


 ユティスはその名を頭の中に刻み込んだ後、さらに質問を重ねる。


「能力についてはわからないな?」

「さすがにそれは話そうとしなかった……が、ヤツの異能は大きな特徴がある。その情報はどこにも出回っていないため、上手く隠したのだろう」

「それは?」

「俺達は異能を発動させる時、目が『彩眼』へと変化する。しかしアルガは違う。ヤツは、常時『彩眼』を宿していた」


 常に――その言葉にユティスは疑問を提示する。


「常に? 異能を発動させたままということか?」

「おそらくそうではない……ヤツは異能を強制的に発動させている……いや、発動し続けることが制約なのだろう」


 そう語るとレイモンは目を細めた。


「それによりどういう効果をもたらすのかはわからない。ただ一つ言えるのは、異能を常時発動させ続けることによって、あれだけの力を振るうことができる」

「理由はわからないが……アルガという人物は、僕らとは異なる特性を抱えているというわけか」

「そういうことになるな」

「会話はできるのか?」

「無論だ。会話そのものはかなり理性的かつ論理的。もっとも、多数の人間を殺めている以上、倫理観は破綻しているのかもしれないが」


 肩をすくめながら語るレイモンにユティスは小さく頷く。


「異能による影響か……それとも……」

「どうとでも解釈できるな。異能により性格が歪んだ。あるいは異能の特性により人を殺さなければならない……ただそこは異能がどういうものなのかを解明しなければ無理だろう」

「そうだな。情報提供、感謝する」

「ああ」


 笑みを浮かべるレイモン。先ほどの哄笑とは異なり、含みを持たせるもの。


「結果を楽しみにしているぞ」

「期待していてくれ……さて、それじゃあ最後の質問だ」


 ユティスは一拍間を置き、


「お前は、この戦いの裏を知っているのか?」


 問い掛けにレイモンは答えない。ただ、相変わらず笑みを張り付けたまま。


「……それを訊いてどうする?」


 やがて発した質問はそれ。ユティスは、


「あなたが力を得ようとしていたのが、本当に全てを手に入れるためだったのか……それを知りたかった」

「仮に裏を知っていたとしたら、俺の行動に納得がいくのか?」

「そうだと思っている」


 オーテスなどからすれば意味不明な会話かもしれない。しかしユティスとしては何よりも意味があった。


「……悪いが、俺は何も知らない」


 多少の沈黙の後、レイモンはこう答えた。


「もし裏があるのなら、是非とも教えてくれ」

「もしかしたら、直にわかるかもしれない……ありがとう。フレイラ、行こう」


 ユティスは彼女達と共に牢を出る。そして、


「もし国から許可が出れば、彩破騎士団が全員集まる……もしかするとその時、この戦いの裏側に迫れるかもしれない」

「それは、何故?」


 フレイラの疑問にユティスは微笑を伴い、


「色々と調べていたからね……もし何か核心的な情報を得ていたら、オズエルが持ってきてくれるさ」


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