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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話

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異能者対異能者

 レイモンの動作はほんの一瞬。懐から抜き打ち短剣を突き刺すまで、数秒足らずの出来事。レイモンに意識を向ける人がいるのかどうか、さすがに町の人間全てに目を向けるわけにはいかないが――彼自身は大丈夫だと、根拠はないがそう考えていた。

 そしてこの動作は、レイモンにとって幾度となく繰り返した動き。彼が手にした異能の中には、こうして仕留め得たものもある。


 だからこそ、レイモンはこの戦型に絶対の自信を持っていた。仕留められる。もし相手が気付いても避けられるようなタイミングではない。

 短剣が女性の首下へ――とった、と思ったその直後だった。


「さすがに普通だったら、無理だよな」


 声が聞こえた。刹那、レイモンの腕が――止まった。

 何事かと思い目を丸くすると、女性がレイモンの腕を握っている。


 いや、違う――女性だと思っていた存在は、突然男性に変わっていた。


「よう異能者」


 何だ――気付けば自身の異能が途切れている。状況がわからずどうすべきなのか思考がフリーズした直後、足下から魔力が湧き上がるのを感じた。

 罠――だがそれと同時になぜ、という疑問が頭の中に浮かぶ。


 気付かれていなかったはずだ。いや、それこそ自分の誤解であり、敵は自分達の尻尾をつかんでいたのか。

 魔法が発動する。どうすればいい、と胸中で呟いた矢先、横から衝撃が入った。


 事態についていけず、レイモンは短剣を取り落とす。またそれは相手にとっても想定外だったようで、驚いた表情を示した。

 見れば、レイモンを突き飛ばしたのは、所定の位置へ向かっていたはずのドミニクだった。


「――逃げた方がいいわよ」


 そんな警告と同時、魔法によってドミニクが飲み込まれる。途端、レイモンは即座に立ち上がった。そしてどうすべきか――


 気付けば周囲に人がいなくなっていた。騎士達が周辺住民の避難を行っており、なおかつ彩破騎士団の面々が近づいていた。


(……第二プランというやつか)


 視線を向ける。ドミニクが膝をついている。彼女もまた異能者であり、水流を操ることができるのだが――それを発動させて逃げるようなことはしない。


(魔法には異能を封じる何かが仕込まれている……? そんなことが可能なのか――)


 いや、できる。そうレイモンは判断した。相手もまた異能者――異能を封じる異能者がいてもおかしくない。

 思考が戻り、冷静さを取り戻す。先ほど突然女性が男性に変化した――これもまた異能だろう。


(他者同士を強制的に入れ替える、というのはタイミング的にはあり得ない。おそらく俺を誤認させた……女性だと思い込まされていた)


 実際はレイモンの存在を認識した上で、奇襲しても対応できる人間だったのだろう――単なる幻術とは異なるかもしれない。これもまた異能だと解釈していい。

 ならば、自分は――周囲を兵士や騎士が取り囲んでいく。状況的にまずいが――


「逃げろ、か」


 レイモンは口を端を歪める。ドミニクはこちらに視線を投げているようだったが、彼自身は見向きもしなかった。


「なるほど、こちらの存在に気付き対策を練っていた、と。俺はそれに気付くことはなかった……普通なら最初の罠で終わりだった」


 レイモンは腰に差した剣を抜く。それは――過去ロゼルストで得た『魔術師殺し』。

 彼にとって第二の切り札。奇襲が通用しなかった際に使用した、異能者さえも圧倒することができる、魔剣。


「来るといい……教えてやろうじゃないか、俺があらゆる異能者を超えていることを」


 剣を強く握り締める――気付けば周囲は戦場と化していた。



 * * *



 ユティスはレイモンが握る剣が『魔術師殺し』であることを認めた瞬間、因縁の相手であると改めて感じた。


「敵対勢力……その内の二つは僕らの国に入り込んでいたってことか」

「ユティスさん、どうする?」


 リザが問う。隣にいるアシラは既に臨戦態勢に入っており、周囲の騎士達も剣を抜き放ちレイモンを威嚇している。


「最初の作戦は失敗……けど、共に行動する女性は拘束できたみたいだけど」

「彼女も異能者だったんだろう……それで、この状況では相手としても容易に異能は発動できないはずだ」


 取り囲まれている以上、どのような異能を用いて対処するのかも判断が非常に難しいはず。また、ユティスが複数異能を所持していることにより、いくつか検証することもできた――特に重要なのは異能の同時起動は可能ではあるが、相当な魔力を使うこと。


 ユティス自身が『創生』二種を持っていることから確認できたが、同時発動するとそれだけで魔力が消耗していく――無論他の種類ならば魔力消費が少なくなる可能性はあるが、それでも併用すればするほどこの状況では不利になることは間違いない。


『異能は驚異的な特性を持っていますが、基本的には魔法と同じであり、複数同時に使用することは想定されていない、ということでしょう』


 これはエファの指摘――異能を奪うことは可能だが、それを自在に扱えるだけの容量を人間が持っていないのでは――そういう見解だった。

 とはいえ、例えば異能を即座にチェンジするなど、戦い方は十二分に存在する。彼が暴れれば被害は免れない以上、できることなら彼が異能を発動させる前に決着をつけたいところだが、


(それはさすがに厳しいか)


 現状、レイモンはフリーの状態にある。まだ『彩眼』を起動させてはいないようだが、騎士達が飛びかかれば即座に異能を発動できる態勢にはあるはずだ。


(次のプランとしては、エファさんが直接異能を封じに掛かる……とはいえ、それは武器を持った相手を素手で取り押さえるもので、単独では無理だ)


 他の場所に設置した罠にはめるというやり方も考えられるが、動き回る相手に成功する可能性は非常に低い。どうしたってレイモンの動きを止める必要が出てくる。


(どのような異能を用いるのかもわからない状況だからな……)


 とはいえ、ユティスとしても決して無策というわけじゃない――


「……来い」


 刹那、レイモンの瞳の色が変わる。ただしそれは一瞬のこと。だが変化は明確にわかった。


「人が近づいてくる……部下ね」


 おそらく、異能を発動させるということを見せかけるための部下。とはいえ異能者がいないとも限らない。ここで複数の異能を同時に使ったのなら、少なくともレイモン以外に異能者がいる可能性がある。


(どちらにせよ、リスクはとらないといけない)


「リザ、アシラ」


 名を呼ぶと二人は頷く。それと同時にオーテスから騎士達へ号令が掛かる。

 同時、彼らはレイモンへと仕掛ける――戦いが、いよいよ始まった。


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