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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
332/411

作戦行動開始

 その日、ユティス達は静かに身支度を終え、宿を出た。一応部屋はとってある。本来ならば――敵がいると判明していなければ、チェックアウトするつもりだった。


「さて、いよいよだな」


 ユティスは呟く。会議の閉幕――それが昨日言い渡され、全ての日程がつつがなく終了した。

 ラシェン公爵によれば、結果としては上々だったらしい。異能者同士を連携させるために、国同士で協議し合う場などを作成するといった条約も調印し、大陸全体で敵対勢力に応じるような体制が形成された。


 とはいってもそれはすぐに、というわけではない。組織として運営する必要性がある以上、どうしたって時間が必要になる。よって現実的に組織として活動し始めるのはもっと先。ユティスとしてはおそらくそれが機能する前に敵が動き出すと思っている。


「ただ、体裁は整った感じかな」


 少なくとも国同士が敵対勢力に対し懸念を抱き、どうにかしようという意思を持っていることは明確になった。それが上辺である可能性は否定できないが、今まで無関心であったり我関せずといった態度を示していた国々に対しても話し合った意義は大きい。


 もっとも、だからといって事前に説明もなく敵対勢力に対し罠を仕掛けることが許されるわけではないと思うが――

 ユティスは今一度頭の中で作戦を確認すると、部屋を出てフレイラ達と合流する。


「それじゃあ動くとしようか」

「ええ……念のために確認するけど、私達は――」

「二手に分かれて行動する。表向きの理由としてはラシェン公爵と会議の結果を確認することと、先にこの都を出立する異能者達の見送りだ。前者はフレイラ。後者は僕」


 また人選に関しても既に決めてある。ユティス側がリザとアシラ。そしてフレイラとティアナ――どちらが狙われるか、という話ではないだろう。敵――レイモンという名の敵対勢力としては、実績のある彩破騎士団と戦う前に、いくらか他の異能者を倒しておきたいはず。


 それはオーテスを始め会議にいた面々の共通認識。無論、ユティス達を先に狙って対処するという可能性もある。しかしイドラとの戦いについてある程度知っているのなら、奇襲等は通用しないと考えていてもおかしくないため、そのような結論に至った。


 もちろんユティス達が先に狙われた場合でも大丈夫なようにプランは立ててあるのだが――


「それと、朝方連絡が来ていた」


 フレイラが語る。


「敵の動きについてだけど、レイモンという人物のパートナーであるドミニクという女性……彼女が部下らしき人物を率いている」

「異能者か、レイモンという人物が策のために用意した者達か……どちらにせよ、敵も今日が好機と捉え動いたみたいだな」


 ユティスはそう呟くと、フレイラに指示を出す。


「このまま作戦行動に移る。僕らは一度会議場に入って最後の挨拶を行う。フレイラ達はラシェン公爵と合流し、対応をよろしく」


 エドルについては別行動だが、会議場で顔を合わせてからラシェン公爵達と行動する形となる。やれることは全てやった。後は成功することを祈るのみ。

 ユティス達は宿を出る。レイモンの手勢が見張りなどを行っている可能性を考慮し、和気あいあいとした雰囲気を出しながら会議場へと向かう。


「行動に移す以上、敵は気付いていないようね」


 リザの指摘。ユティスは「そうかもしれない」と応じたが、


「けど、だからといって確実に罠に掛かってくれるわけじゃない。できる限り成功率は上げているけど、さすがに百パーセントじゃない以上、どんな状況でも対応できるよう備えておかないと」


 そう告げた後、ユティスはリザを一瞥し、


「そこについては、心配する必要はないか」

「私なりに考えてはいるわよ……もっとも、こういう時って思いも寄らない方向に話がいったりするのよねー」

「そういうことがないようにしたいけどね……これは敵の動きもあるし、仕方がないか」


 ユティスは苦笑する間に、会議場へと辿り着く。これまでのように中へと入り、既に待っているオーテスへ視線を送った。


「どうですか?」

「さすがに時間がないので完璧……とまではいかないですが、できる限りのことはやりました。最後の説明については、全員集まってからにしましょう」


 そうオーテスが語った直後、リュウトやエドルが姿を現す。そうして一人、また一人と会議場に入ってくる異能者達。やがて全員が集ったところで一度扉が閉まる。


「さて、ほとんど情報を漏らすことなく作戦準備は完了しました。皆さんの協力もあり、態勢についてはおおよそ構築できた……罠についても上々です」

「後はその罠が効くかどうか、だな」


 ナザが告げる。そこについてはエファが返答。


「魔法陣には十分な仕込みを施しました。例え複数の異能を持っていたとしても、異能の発動の仕方については同じでしょうし、通用するとは思います」

「……仮に駄目であっても、罠が発動した直後ならばこちらにまだ利があります」


 オーテスが述べる。つまり相手の虚を衝くという点だ。


「この作戦は二段構えです。本来なら罠により異能を封じることで対処したいところですが、もしそれが通用しなかったり、思うような結果が得られない状況でも、すぐさま攻撃に転じるよう、対応します」


 そこでオーテスは自身の瞳を『彩眼』へと変えた。


「作戦中に説明を行いましたが、ここで私の異能を発動させていただきます……皆様、ご武運を」

「はい」


 ユティスが代表して応じる。その直後、室内がオーテスの魔力で満たされる。

 彼の異能が発動する――これもまた作戦の一つ。エファの異能封じと共に示された、作戦の要。


 敵をどう罠にはめるのか。それを相談した際に考案したのがこの手法。彼の『全能』にまつわる異能を用いるもの。


「ただ、気をつけてください。私の異能は他者に付与できますが、魔力を多大に発すればそれだけで効果が途切れます。全員、先走るようなことはなく作戦を優先するよう、お願いします」


 全員が頷く。それでオーテスも問題ないと悟ったか、


「では、参りましょう……戦場へ」


 異能者が動き出す。こうして異能者同士の戦いが、静かに幕を開けた――


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