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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
321/411

騎士団の役目

 翌日、会議の席は議題を大きく変更し、敵対勢力に関する議題に割かれることとなった。


「罠の設置については、まあ任せてもらえればいいさ」


 そう告げたのは、ナザ――彼こそユティスがフレイラ達へ説明した異能の所持者だった。


「大通りで仕掛けるってことは、ずいぶん派手にやるわけだが、オーテスさん達はそれでいいんだよな?」

「むしろ大通りにいてくれた方が良いでしょう。人通りは多いですし避難誘導でもたつけば犠牲者が出る危険性もある……ですが、大通りの方が兵も動かしやすく、相手を拘束しやすいのも確かです」

「罠にはめるにしても、できるだけ短時間で決着を付けたいところですね」


 ユティスの言にオーテスは「そうですね」と返事をした。


 ひとまず準備についてはエファとナザの二人がやることは確定したのだが、ユティス自身はどう立ち回ればいいか迷い始める。


「……彩破騎士団の動向ですが」


 と、ふいにオーテスが語り始めた。


「もし直接的な戦闘になってしまう場合、十中八九彩破騎士団のお力が必要になるでしょう。異能者との実戦を重ねているのはあなた方以外にはいませんから」

「……準備期間は下手に動かない方がいいでしょうね」

「だと思います。ただ警戒を強めるのもまた非常にまずい。敵に勘づかれる危険性が高まります」


 ユティスは頷く。よって、やることとしては――


「敵としても彩破騎士団の実績を調べているでしょうし、警戒を強くするのは確か……ですがあなた方が気を緩めていれば、敵もまた緊張度合いを下げることになるでしょう」

「なるほど……つまり僕達は油断させることを目的にすべきだと」

「そうです。やり方についてはどうしましょうか?」

「それはこちらで決めることにします……とにかく相手を油断させればいいんですね?」


 ユティスの問いにオーテスは頷き、さらに話し合いを続ける。

 そうした中でユティスとしてはどういう手がいいか悩み始める。


(敵を油断させる……か。町を観光がてら歩くのが効果的かなと思うけど、敵としては密かに見回りをしているとか、そういう考えに行き当たるかもしれないな)


 だとするなら――ユティスが内心思案していると、やがてオーテスは手を鳴らした。


「ひとまずこのくらいですね。本来話し合うべき事柄についても一通りは終わっていますし、今日はこの辺りで解散しましょうか」


 提案に一同頷く――といっても現段階で既に昼は回っている。


「もう片方で会議をしている方々に報告しまして、後は政治的にどうか、というのを考慮に入れます」

「報告はまだしていないのか?」


 ナザの問い。オーテスは小さく頷き、


「現在、国の上層部には報告し、実際に動き始めています。現段階で敵側に動きがないので、少なくとも私達の国に内通者がいる可能性は低いでしょうね」

「このまま突っ走るということでいいのか?」

「大なり小なり混乱はあるでしょうが、敵に露見されないためにはそうする他ありません。責任は……こちらが持ちます」


 その言葉は、今回の作戦を必ず成功させると共に、町の人間に被害を出さないための覚悟を見て取ることができた。

 ナザはそれに納得してそれ以上の言及はなかった。よって本日は解散ということになったのだが、会議室を出る前にユティスはリザに呼び止められる。


「ユティスさん、今後について提案なのだけど」

「提案……? どうするんだ?」

「そう固くならなくてもいいわよ。オーテスさんの言うことが正しければ、相手が警戒を緩めることをすればいいのよね?」


 綺麗な笑み。それが何なのかわからずユティスが首を傾げると、


「簡単な話よ。ただ問題は相手をどうするかだけど――」


 そう前置きをして、リザは内容を伝えた。



 * * *



 初日とは異なり、二日目の会議でユティス達は昼過ぎに帰ってきた。フレイラは彼らと食事を共にした後、ユティスから話し合いを行った。

 場所は廊下。ユティスは何やら悩んでいる様子ではあったのだが――


「どうしたの? これからのことについて相談ということだけど」

「あ、うん。リザから言われたんだけどさ、敵を油断させるために色々と動く……というのはつまり、出掛ければいいってことになるんだけど」

「町を見て回るというわけね」

「うん。それで……」


 なんだかまごまごし始めるユティス。ここでもしティアナがいたのなら、たぶん「お相手をどうするか悩んでいるのでしょう」とでも言うはずだ。


(リザのことだから、デートのような演出をすればいいって言ったんだろうね)


 確かにそれなら敵も油断するだろう。仲むつまじい光景を示すことができれば、罠を準備しているとは考えにくくなる。

 で、なぜ彼はまごまごしているのか――それをフレイラは理解すると同時、苦笑した。


「ユティスの言いたいことはわかるよ」


 と、言った瞬間彼の口が止まる。


「うん、そういうことなら私も協力するよ」

「いいの?」

「ええ……ただ、一つだけ条件があるの」


 フレイラはにっこりとなる。それにユティスは眉をひそめ、


「条件、って?」

「相手を油断させるための作戦……そういう建前で動くのだから、体に力が入るのは当然かもしれない。けれどそれを敵に気取られてもまずい。よって、ユティスは本気で楽しまなくてはいけない」


 ――作戦のために楽しむというのはなんだか矛盾しているようにも思えるが、事実なのでユティスも文句は言わない。


「よって、ユティスの方もどうするかきちんとプランは立てること」

「プラン……けど、急場だし」

「とはいっても、無策って雰囲気じゃないんでしょ?」


 ユティスは沈黙を置いて、コクリと頷く。それを見てフレイラは「よし」と声を上げた。


「なら、早速実行に移そう。昼過ぎで夕刻までそう時間があるわけじゃないけど、まあそのくらいの方が丁度良いかもしれない」

「わかった……フレイラ、頼むよ」

「ええ、任せて」


 自信ありげに頷くフレイラ。そうしてユティス達は改めて行動を開始した。


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