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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
318/411

異能者の秘密

「一つ、異能について確認したことがあります。行使していいですか?」


 ユティスが問い掛けるとオーテスは眉をひそめ、


「突然ですね……それは今までの話と関係が?」

「はい」


 即答したユティスにオーテスは「わかりました」と応じ、


「ただし、魔力量については少量でお願いできますか」

「大丈夫です。確認作業をするだけなので」


 ユティスは頭の中でイメージを始める。例えばユティスが持つ『創生』の異能。それは者などを触って魔力を知覚し、同様の者を創り出すということが可能だが、それ以外にユティス自身がイメージした物を創り出すことも可能。ただしどのような物を作成するか、強くイメージした方がより効力の高い物が創り出せる可能性が高くなる。


 ユティスとしてもそのイメージを膨らませ――次いで浮かび上がったイメージは、手のひらではなく背後に魔力が生まれた。

 直後、この広間にいる面々には魔力が感じられたことだろう――次の瞬間、ユティスの背後には全身鎧の騎士が現われていた。


「……それは……」


 やや沈黙を置いてオーテスが問う。彼はどうやら理解した様子。

 なおかつフレンやナザも一歩遅れてだが、察知した。やがてユティスが発した異能が何であるかこの場の面々が認識した直後、


「……おそらくこれが、異能者にとって大きな事実、なのでしょう」


 ユティスはゆっくり、口を開く。


「この場においては誰もこの事実を認識していない……当然です。この場には僕を除き、おそらく異能者と戦い殺めた人がいないから」

「つまり、こういうことか」


 ナザが代表し、口を開いた。


「異能者同士の戦いにおいては一つルールが存在する。すなわち、相手を殺したらその異能を奪うことができると」

「今まで僕は自覚がありませんでした。つまり異能を得たとしてもそれは実践してみなければ認識できない」

「まさか相手の異能を取り込んでいるとは、思いませんからね」


 オーテスの言葉にユティスは神妙な顔つきで頷いた。


「僕は図らずも異能……ウィンギス王国の異能者が所持していた異能を抱えているようですが、だからといって何か体調に変化があった、というわけではありません」

「つまり、新たに異能を得ても身体的な影響はなしだと」


 オーテスの問いにユティスは首肯。すると、


「これは、どの異能者を殺めても奪える、ということでしょうか?」


 ふいにフレンが問い掛ける。回答する者はいなかったのだが、彼はさらに続ける。


「例えば『全知』の異能者を殺めた場合、知識が頭の中に入ってきますよね? だとするなら気付いてもおかしくありませんが」

「異能の種類によって奪った際に認識できるものだってあるかもしれません」


 ユティスはそう告げると、敵対勢力のことを頭に浮かべ、


「敵はどういう経緯かわかりませんが、異能者を殺すことができればそれを奪えることがわかった。とはいえおそらくその条件としては異能者自身が異能者を殺さなければおそらく奪うことができない」

「なるほど、な。大体展開が見えてきたぜ」


 と、ナザが発言。


「敵は複数異能を所持していて、それを利用し奇襲、この会議の席にいる面々を殺し、さらに異能を得るって話だな」

「話としてはわかりやすくなりましたが、当該の異能者が暴れ出したら犠牲者が出る可能性もありますね」


 オーテスが言う。ユティスは頷き、さらに言葉を紡ぐ。


「現時点で複数異能を持っていることはほぼ確定していると考えていいでしょう。問題はどう相手を抑え込むか、ですが……」

「異能を封じ込める手段ってあるのか?」


 ナザが問う。それについては誰も答えられない。

 そういう手法がないのであれば、最終手段として彼を殺めるしかないが――ユティスとしては彼から情報を得たいとは思う。


 それはどうやらオーテスも思っているようで、


「……奇襲すれば、おそらく彼を処断することはできるでしょう。しかし彼は異能者について何かしら情報を持っている可能性もある。できることなら拘束し、尋問したいところですが……ナザ殿の言う通り、異能を封じ込める何かがあれば一番なのですが……そもそも何かの手法で封じることができるものなのでしょうか?」


 ――まず、体を拘束しても魔力を使える以上は異能を行使することは可能。これはユティス自身も試していて、動きを縫い止めてどうにかするというのは難しい。ともあれ『全知』の異能や『同化』の異能ならば、物理的に動きを封じてしまえばどうにかなる可能性はゼロではない。


 つまり敵の異能がどういったものかによって手法が変わってしまう。複数所持しているのなら当然『全能』の異能を所持している可能性が極めて高く、体が動けなくなってもこの異能については行使が可能であるため、それを所持しているだけで拘束するという手段はできない。


「あの、よろしいでしょうか?」


 ここで小さく手を上げる人物が。エファだった。


「その、異能自体をどうにかすることは無理ですが、異能を使えない状況にするのは可能だと思います」


 まさかの発言――ただオーテスは彼女の述べた意味が上手く理解できなかったらしく、


「えっと、異能をどうにかするのは無理ならば、発動を抑えるのは難しいのでは?」

「いえ、異能者に対しても魔法は通用します。例えば魔力を弾くような異能を所持していたとしても、その体には魔力が宿っている。言わば体の内部に干渉することができれば、魔力を生んで異能を発動するというプロセスそのものを封じることができるんです」


 ユティスも彼女の口上について理解した。異能そのものについて封じるのではなく、体に宿る魔力に標的を定め、その魔力そのものに干渉することで異能を封じるというわけだ。


「具体的にはどのようにやるんですか?」


 ユティスが興味を抱き問い掛ける。それにエファは微笑を見せ、


「これは、実践形式で見せた方が早いかもしれませんね」

「エファさんはそうした技法を所持していると」

「はい。異能について研究する際、一番重要なのはそれをどう抑え込むか、だと思ったので。ただし手順が必要です。もしこの方法をとる場合、必要なことも多いです」


 オーテスは少し思案する。けれど他に相手を「封じる」手段を持っていると表明する人がいない以上、選択肢は一つだった。


「……わかりました。ではエファ様、技法についての説明と実践をお願いできますか」


 彼の言葉にエファは小さく頷いた。


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